2005年度「相対論」試験解答例

[問い1の解答例]
  1. x=ctを代入すると、x′=A(v)(c−v)t,t′=B(v)(c−c2α(v))tとなる。これがx′=ct′を満たすのだから、
    A(v)(c−v)t=B(v)(c−c2α(v))t
    より、A(v)(c−v)=B(v)(c−c2α(v))。
  2. A(v)(c+v)=B(v)(c−c2α(−v))となる。
  3. ここまでの答えを辺々割ると、

    c−v
    c+v
    = c−c2α(v)
    c+c2α(v)

    より、
    (c−v)(c+c2α(v))=(c+v)(c−c2α(v))
    つまり、
    −vc + c3α(v) = vc −c3α(v)
    となって、 α(v)=[v/(c2)]となる。これを元の式に代入して整理すれば、A(v)=B(v)も出る。二つの式の和を使ってA(v)=B(v)を出していた人も多かった。それも正解。
  4. 二つの式を組み合わせると、

    (
    x′
    t′
    ) =A(v)(
    1
    −v
    −α(v)
    1
    ) A(v)(
    1
    v
    α(v)
    1
    )
    (
    x′
    t′
    )
    となる。これから、
    (A(v))2(
    1
    −v
    −α(v)
    1
    )
    (
    1
    v
    α(v)
    1
    ) =(
    1
    0
    0
    1
    )
    となる。α(v)=[v/(c2)]であったことを使うと、
    (A(v))2(
    1− v2
    c2
    ) =1
    とわかる。 よって、 A(v)=[1/sqrt(1-v^2/c^2)]
 問題文の間違いに惑わされた人は少しいた。ごめんなさい。

[問い2の解答例]
  1. 固有時の式より、

    (
    dt
    ) 2

     
    = 1− 1
    c2

    ( ( dx
    dt
    ) 2

     
    +( dy
    dt
    ) 2

     
    +( dz
    dt
    ) 2

     
    ) = 1− (v1)2+(v2)2+(v3)2
    c2

    となるので、


    dt
    = 
    sqrt(1-v^2/c^2)
    である。τとtの向きはそろえるので、復号はいらない。これから、 Pi=m[(dxi)/dt][dt/dτ]=[(mvi)/sqrt(1-v^2/c^2)]。 また、P0=[mc/sqrt(1-v^2/c^2)]
  2. τはローレンツ不変であるから、[d/dτ]によってローレ ンツ変換の仕方は変わらない。よって、 (P′)μμ νPν
  3. dx=dy=dz=0、つまり粒子が瞬間的に静止しているような座標系におい て、dt=dτとなる。つまり粒子自身にとっての時間と考えることが できるから。
  4. ημνPμ Pν = m2 ημν[(dxμ)/dτ][(dxν)/dτ]だが、τの定義より、 ημνdxμ dxν = −c22であるから、 ημνPμ Pν = −m2 c2
  5. 前問の答を微分すると、 ημνPμ dPν = 0となる。両辺にdτをかけてmで割れば、
    −dx0 dP0 + dxi dPi=0
    となる。dx0=cdtとしてdtで割ることにより、
    −c dP0 + dxi dPi
    dt
    =0
    を得る。[(dPi)/dt]=fiが力であることを考えると、
    d(cP0) = fi dxi
    となる。右辺は仕事であり、仕事の分だけcP0が増加するという式になってい る。つまりcP0はエネルギーである。

[問い3の解答例]
  1. 下の図のようになる。
    停止する電車の時空図
  2. ローレンツ変換の式より、t′=[1/(√{1−[(v2)/(c2)]})](t−[v/(c2)]x)である。先端が加速する((x′,ct′)座標で 考えると停止する)のはx=L,t=0であるから、 t′=−[1/sqrt(1-v^2/c^2)][vx/(c2)]。後端の停止は 原点。つまり、 先端が停止してから[1/sqrt(1-v^2/c^2)][vx/(c2)]たってか ら後端が停止する。
  3. 静止している長さLの電車を速さvで動きながら見た、ということにすぎない ので、ローレンツ短縮により、Lsqrt(1-v^2/c^2)
  4. 最初は(x,ct)座標系で測ればよく、当然固有長さL。加速後の固有な 我さは(x′,ct′)座標系で測る。電車の先端の位置は、(2)で考えたのと 同様に、(x,ct)座標系の(L,0)をローレンツ変換すればよく、 x′=[1/sqrt(1-v^2/c^2)]Lである。固有長さはLから、 [1/sqrt(1-v^2/c^2)]Lに伸びた。
  5. (x′,ct′)座標系で考えると、電車はバックしながら、先端が先に停止 し、後から後端が停止する。一部が静止しているのに残りが進み続ける のだから、引き延ばされることになる。
 この問題は1.の図が描けるかどうかで「同時の相対性」をちゃんと理解できているかどうかがわかると思う。ヒントはたくさん与えておいたのだが。

[問い4の解答例]
  1. W0=[c/(√{1−[(w2)/(c2)]})],W1=[w/(√{1−[(w2)/(c2)]})]
  2. x′=[1/(√{1−[(v2)/(c2)]})](x−vt),ct′=[1/(√{1−[(v2)/(c2)]})](ct−v/cx)
  3. W0,W1の変換はx,ctと同じ形。だから、 (W′)1=[1/(√{1−[(v2)/(c2)]})](W1v/c W0),(W′)0=[1/(√{1−[(v2)/(c2)]})](W0v/c W1)
  4. 3次元速度は、[((W′)1 c)/((W′)0)]で計算できる。

    (W′)1 c
    (W′)0
    =
    W1 v
    c
    W0

    W0 v
    c
    W1
    = c(w−v)
    c− vw
    c
    = w−v
    1− vw
    c2

  5. |[w−v/(1−[wv/(c2)])]|2−c2を計算して、正であること を示せばよい。




    w−v
    1− wv
    c2


    2

     
    −c2 =

    (w−v)2


    1− wv
    c2

    2

     
    −c2
    =

    (w−v)2−c2
    1− wv
    c2

    2

     



    1− wv
    c2

    2

     

    =

    w2 −2wv + v2
    c2−2wv+ w2v2
    c2

    2

     



    1− wv
    c2

    2

     

    =

    w2 + v2−c2 w2v2
    c2



    1− wv
    c2

    2

     

    =

    (w2−c2)(v2−c2)
    c2
    1− wv
    c2

    2

     


    よって、|v| < c,|w| < cならばこの量は正である。証明終わり。


[問い5の解答例]
マイケルソン・モーレー実験時空図のグラフ
  1. グラフは左の通り。
  2. A点は、光線x=ctと、右の鏡x−L′=vtの二つの直線の交点であるから、 連立方程式として解いて、x=[cL′/c−v],t=[L′/c−v]。ゆえ にA([cL′/c−v],[cL′/c−v])
    B点は、発光点x=vtの上にあり、上下に進む光が[L/(√[(c2−v2)])]か けて進むのだから、B([vL/(√[(c2−v2)])],[cL/(√[(c2−v2)])])。
    C点は、原点からB点に向かっていくベクトルを2倍にのばせばいいので、C ([2vL/(√[(c2−v2)])],[2cL/(√[(c2−v2)])])。
  3. グラフの通り。傾きは、v/cとなる。
  4. 最初から(x,ct)座標系で考えれば何も悩むことはない。A(L,L/c),B(0,L/c),C(0,[2L/c])でよい。



[問い6の解答例]
ヒントに書いた「ある現象」とはローレンツ短縮である。止まっていた+電荷が速度vで動き出したのだから、最初より√{1−(v/c)2} だけ電荷と電荷の間が縮まっている。これにより+電荷は左図より右図の方が圧縮されて(密度が濃くなって)存在する。逆に−電荷は、左図の方が圧縮されて いるのだから、密度が薄くなる。この差の分、導線は+電荷過剰となって、+に帯電する。この帯電によって外にある電子は導線に向かって引っ張られる。この 力は、ちょうどローレンツ力を打ち消す。
なお、この問題の解答としてはここまで十分であるが、ついでなので実際に打ち消すことを証明しておく。左図では+が電荷密度ρ、−が電荷密度−ρを持っていたとすると、右図では +は圧縮されて[ρ/(√{1−(v/c)2})]に、−は圧縮されてたのが元に戻って−ρ√{1−(v/c)2}に。よってトータルの電荷密度は[ρ/(√{1−(v/c)2})]−ρ√{1−(v/c)2} = [(ρv2)/(c2√{1−(v/c)2})]。導線の断面積をSとすれば、距離rのところに [1/(2πε0 r)][(ρSv2)/(c2√{1−(v/c)2})] の電場を作る。よって電子に働くクーロン力は、 [e/(2πε0 r)][(ρSv2)/(c2√{1−(v/c)2})]
次に電流による磁場を考えると、+の電荷密度に面積をかけて、電流は [ρS v/(√{1−(v/c)2})]である。これから距離rのところに作られる磁束密度は、 [(μ0)/2πr][ρS v/(√{1−(v/c)2})]である。よって電子(速さvで動いている)に働くローレンツ力は、 [(e v μ0)/2πr][ρS v/(√{1−(v/c)2})]である。ここで、c2=[1/(ε0 μ0)]を思い出せば、この二つは一致する。

 この問題、果たしてできるかな?と思いながら出したのだが、ちゃんと正解者がいたのは恐れ入りました。


[問い7の解答例]
  1. この二つの現象は、相対的には同じ現象であるから、(B)を一方の粒子と 同じ速度で併走しながら観測すれば(A)が起こっているように見える。ゆ えに、v1は速度の合成則を使ってv2とv2を合成すればよい。答 は、
    v1 = 2v2
    1+ (v2)2
    c2

  2. エネルギー保存より、
    2 mc2

      


    1−
    v2
    c

    2

     
     
    =Mc2
    ゆえにM=2[m/(√{1−([(v2)/c])2})]
  3. 最後の結果を見て判断すればよい。(A)では質量Mの粒子は動いている。 (B)では止まっている。当然、(A)の方が与えるべきエネルギーは大きい。




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On 3 Aug 2005, 00:21.