自然科学のための数学2015年度第15講

面積・体積と積分

円錐・角錐の体積

円錐や角錐の体積は底面積を$S$、高さを$h$とすると、${1\over 3}Sh$で書ける。これを定積分を使って出そう。

頂点を原点として、底面に垂直な方向の距離を考えて、その距離${x}$とする(面に垂直な下向きの方向に${x}$軸を取る)。

そして定積分の精神に従って、この${x}$を微小区間に切り刻み、その一つの微小区間の幅(この円錐や角錐をビルと考えた時の「一階の高さ」である)を$\mathrm dx$とする(座標${x}$から座標${x}+\mathrm dx$までを切り取って考える)。

この一階の体積は、この階の底面積$\times \mathrm dx$である。面積はスケールの自乗に比例するから、底面積は$S\times{{x}^2\over h^2}$である(右の図では円錐の場合を示したが、角錐であっても同様)から、

\begin{equation} \int_0^h {S{x}^2\over h^2}\mathrm dx =\left[{S{x}^3\over 3h^2}\right]_0^h={Sh\over 3} \end{equation}

となる。分母の3の出処は$\int_a^b{x}^2\mathrm dx=\left[{{x}^3\over 3}\right]_a^b$の3だったのである。

ここで体積を計算した方法からすると、円錐や角錐の頂点が(底面に平行な方向に)移動したとしても体積が変わらない(つまり体積は底面積と高さだけで決まり、傾きにはよらない)ことが納得できる。これは円柱などの場合でも同じである。

球の体積

球も同様に微小な高さ$\mathrm dx$に分けて考える。

今度は${x}=0$は球の中心におくと、図に描いたように、各階の床は半径$\sqrt{r^2-{x}^2}$の円で、底面積$\pi(r^2-{x}^2)$を持つ。これに高さ$\mathrm dx$を掛ければ一階分の体積が出るから、範囲$-r < x < r$でこれを積分して、

\begin{equation} \int_{-r}^r \pi(r^2-{x}^2)\mathrm dx=\pi\left[r^2 {x}-{{x}^3\over 3}\right]_{-r}^r=\pi\left( r^3-{r^3\over 3}-\left(-r^3 + {r^3\over 3}\right)\right)={4\pi r^3\over 3} \end{equation}

となる。

 球の体積については、別の計算方法もある。球を面で切るのではなく、薄い球殻に分解する。つまり半径$r$の球の上に、厚さ$\mathrm dr$の薄い膜をくっつけたと考えると、そのことにより球の体積は(球の表面積$4\pi r^2$)に$\mathrm dr$を掛けた、$4\pi r^2\mathrm dr$だけ増える。これを積分して、 $$ \int_0^R 4\pi r^2\mathrm dr=\left[{4\pi\over 3}r^3\right]_0^R={4\pi\over 3}R^3 $$ とすることで球の体積が計算できる。逆に、${4\pi\over 3}R^3$を$R$で微分すれば表面積$4\pi R^2$が出る。

微分方程式

微分方程式

微分方程式とは

 「微分方程式(differential equation)」とは、関数とその微分によって表現された式である。

実例:放射性物質の崩壊

 放射性物質は一定の期間(半減期)でもとの${1\over2}$倍になる。たとえば「セシウム137の半減期は30年」などというが、これは別に30年待って半分になることを確認したわけではなく、(30年に比べて)短い時間での崩壊の様子から求める。これも微分方程式(つまり、小さい部分での法則)から求められる。

 放射性物質が今$N$個あるとする。$N$は時間に依存する($N(t)$)。では「微小時間$\mathrm dt$経つとどれだけ減るか」と考える。実は放射性物質の崩壊は純粋に確率によって決まり、放射性物質それぞれの状態には依存しない。別の言い方をすれば、同じ種類の放射性物質には「個性」がない(年寄りの放射性物質も元気な放射性物質もなく、崩壊は平等に訪れる)。よって、$N$の変化量は $$ \mathrm dN= -\alpha N \mathrm dt $$ という式に従う。ここで$\alpha$は正の定数である(その前にあるマイナス符号が「減る」ことを表現している)。減る量が「今ある量$N$」と「経過時間$\mathrm dt$」に比例することが大事である。

 では、この微分方程式を解こう。

解き方その1:関数の形を予想する。

 ちょっと式を直して $$ {\mathrm dN\over\mathrm dt}=-\alpha N $$ とすると、この$N(t)$という関数は「微分したら元の$-\alpha$倍に戻る」関数だとわかる。そんな関数はあったっけ?―と記憶(記憶で足りなければ数学辞典でもなんでも見て)を掘り起こすと「お〜、$\mathrm e^x$は微分しても$\mathrm e^x$だった」と想い出す。この場合は元に戻るのではなく元の$-\alpha$倍になり、かつ変数は$x$ではなく$t$だから、 $$ N=\mathrm e^{-\alpha t} $$ が解になりそうだ。しかし実は解は他にもある。というのは、 $$ N=N_0\mathrm e^{-\alpha t} $$ も解なのである($N_0$は定数)。これも微分すれば元の$-\alpha$倍になる。

解き方その2:変数分離

 変数分離とは名前の通り、変数を分ける。この場合変数は$N$と$t$だから、左辺に$N$を、右辺に$t$を集めると、 $$ {\mathrm dN\over N}=-\alpha \mathrm dt $$ となる。これを積分して、 $$ \int {\mathrm dN\over N}=-\alpha \int\mathrm dt $$ を行なうと(${1\over x}$の積分が$\log x$だったことを思い出して) $$ \log N = -\alpha t +C $$ となる。

 積分定数、左辺には要りませんか?
 よくぞ気づいてくれました。実は左辺に入れても、入れなくても結果は同じなんです。入れるとすると、 $$ \log N +D= -\alpha t +C $$ のようになります($D$はもう1つの積分定数)。でもこれは $$ \log N = -\alpha t +C-D $$ ということで、右辺だけに積分定数を入れた場合に比べると、$C\to C-D$という違いでしかありません。
 もともと積分定数は「まだ決まってない数」だったので、まだ決まってない数とまだ決まってない数の引き算は、やはり1つのまだ決まってない数です。つまり、$C$と書こうが$C-D$と書こうが、中身には何の違いもないです。
 それなら、鉛筆が減らない$C$のみの方でいいや、というのが左辺に積分定数を入れなかった理由です。

 両辺を$\exp$して、 $$ N=\mathrm e^{-\alpha t+C} $$ となる。これは、 $$ N=\mathrm e^{-\alpha t}\underbrace{\mathrm e^C}_{N_0} $$ と書き直せば、「解き方その1」の解と同じになる。

 他にも解き方はあるが、よく使われるのは以上の二つ。

実例:ロケットの到達速度

燃料を噴射して飛ぶロケットの噴射した燃料の量と到達速度の関係は微分方程式から求めることができる。もし、我々が微分方程式というものを知らないとすると、以下のような「大間違い」をやらかすことになる。

大間違い

静止していた質量$m_0$のロケットが質量$m'$の推進剤(燃料を燃焼させた結果であるガスなど)を速さ$w$で後方に噴射した。噴射後、ロケットが速さ$V$になったとする。運動量の保存から、

\begin{equation} 0=(m_0-m')V +m'\times (-w) \end{equation}

が成り立つ。

結果として、$V={m'\over m_0-m'}w$である。

上の「大間違い」は何が間違いなのかというと、ロケットの質量も速度も連続的に少しずつ変化していく量なのに、まるで一気に変わったかのように考えてしまったことである。連続的に少しずつ変化していく量は微分や積分を使って表現しなくてはいけない。そこで、微小変化について絵を描くと以下のようになる。

左の図はすでにある程度噴射した途中の状態で、すでに速度$V$を持っている。この時の質量は最初の$m_0$に比べて少ない$m$になっている。その微小時間後に、ロケットは質量$m+\mathrm d m$で速度$V+\mathrm dV$になっている。噴射された推進剤は「大間違い」の図のように$w$の速度で後方へ進むのではなく、$V-w$という速度で前方へ進む($w>V$ならば$w-V$の速さで後方へ進む)。既に速度$V$を持っているロケットから、$w$の速さで後方に噴射されたのだから、$w$ではなく速さ$w-V$になる、と考えればよい。

ここで、$\mathrm d m$は「質量の変化量」であるから、今質量が減っていくという状況においては負の量であることに注意しよう---だからといって気を利かせたつもりで、噴射後の質量を$m-\mathrm d m$とかやってはいけない(よくある間違いである)。$\mathrm d m$など$\mathrm d $のついた量はあくまで「変化量」であり、減る時は$\mathrm d m<0$であると考えていかないと、積分結果がおかしなことなってしまう。よって、噴射された推進剤は質量が$-\mathrm d m>0$なのである。

運動量保存則を考えると、

\begin{equation} m V = (m+\mathrm d m)(V+\mathrm dV) -\mathrm d m (V-w) \end{equation}

となる。この式を整理すると、

\begin{equation} \begin{array}{rl} \underbrace{mV}_{相殺→}=&\underbrace{mV}_{←相殺} + \underbrace{\mathrm d m V}_{相殺→}+ m\mathrm dV +\underbrace{\mathrm d m \mathrm dV}_{高次の微小量} \underbrace{-\mathrm d m V}_{←相殺}+ \mathrm d m w \\ -m\mathrm dV=& \mathrm d m w \\ \mathrm dV=& -w {\mathrm d m \over m} \end{array} \end{equation}

となる。この積分結果は$V=-w\log m +C$である。$m=m_0$(初期値)の時に$V=0$という初期条件を使うと、$C=w\log m_0$となるので、

\begin{equation} V=-w\log m+w\log m_0= w\log\left({m_0\over m}\right) \end{equation}

が成立する式となる。$\delta=\left({m_0\over m}\right)$という量は「質量比」と呼ばれる(文字通り、噴射前と噴射後の質量の比である)。グラフで分かるように、$\delta$を大きくしても$V$はどんどん増えるというわけにはいかない($\log x$という関数は傾き${1\over x}$だから、傾きがどんどん緩くなっていく)。ロケットの性能を上げるには$w$を大きくすることが大事であることがわかる。

実例:兵力自乗の法則

 二つの軍隊が戦争をしている。それぞれの兵力を${A},{B}$とする。時間が経つと、${A}$は$B$に比例して減り、${B}$は${A}$に比例して減るから、 $$ {\mathrm d A} = -\alpha {B} \mathrm dt,~~ \mathrm d B=-\alpha {A} \mathrm dt $$ という式が成立する。

これはいわば「連立微分方程式」だが、(第1式)$\times {A}-$(第2式)$\times {B}$という計算をすると、 $$ \begin{array}{rl} {A}{\mathrm d A} - {B}{\mathrm d B}=&-\alpha {A}{B}\mathrm dt +\alpha {A}{B}\mathrm dt=0 \\ {A}^2 -{B}^2 =& 一定 \end{array} $$ という式が導かれる。これは「兵力自乗の法則」(またはランチェスターの第2法則)として知られる。たとえば最初は${B}=B_0,{A}=2B_0$だった(${A}$の方が2倍の兵力を持っていた)場合、${A}^2 -{B}^2 =3(B_0)^2$となるから、${A}=\sqrt{3}B_0$になったところで${B}=0$となる。${B}$の兵力が文字通り全滅した時、${A}$は($2{B_0}\to\sqrt{3}B_0$と変化したので)最初の${\sqrt{3}\over 2}$倍が残っている。

 他にも、テキストには「流行の方程式」というのが載っているので、勉強しておいてください。
 期末テストについて。
 期末テストは8月6日にあります。
 試験では、A4一枚の「自作カンニングペーパー」持込可です。自分が忘れそうな公式や問題の解き方などを書いてきてください。それ以外(教科書など)は持ち込み不可です。
 「自作」に限りますが、他の人と共同で制作するのは構いません。
面積・体積 受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

微分評定式の使い途がとても凄いと思った。
まだまだいろいろありますよ。

単位が取れるよう頑張ります。
頑張りましょう。単位の為というよりは、数学を理解し使えるようになるために。

微分方程式の例が楽しかった。帰ったら教科書に書いてある他の例を見て楽しみます。
読んで、計算してみてください。

良い授業だった。
どうも。

めっちゃわかりやすかったです! 物理学演習でわからなかったところがわかりました! 運動量保存の高校と違うのにびっくりしました。
高校の範囲では微分方程式にできないので「噴射は一度に行われた」ということにして計算してます。

微分方程式は誤差はあれど全ての現象を式、グラフにすることができる?
いい質問です。ほとんどの場合はできます。ただ、世の中には微分ができない現象もある(たとえば水が水蒸気になるとき、急激に体積が増える、など)もあるので、「全て」とはいきません。

円錐や球の体積の公式は、積分を使って導き出されていることを初めて知りました。
実はそうです(というか、それ以外では求められない)。

ロケットの燃料タンクがあんなに大きい理由が数式からわかった。戦争の兵力もわかったので微分方程式の威力がわかった。
logという関数があまり大きくならない関数なのでああなります。

微分方程式がかなり万能だということがわかった。おそらく今後ずっと使っていくと思うので慣れていきたい。
今後も使う機会は多いでしょう。

微分方程式まじ楽しかったです! 微分と積分を両方使っているのが面白いし、色々な自然現象が表現できるのも楽しかったです。ロケットの燃料が灯油というのは地味に知らなかったです。
立てたり解いたりすると微分方程式は楽しいです。

あらゆる自然現象を微積分で説明できるというのはすごいなと思いました。戦争まで計算できるとは思いませんでした。来週のテストはがんばりたいです。
「あらゆる」は言い過ぎですが、かなり説明できます。

最後のロケットの燃料や戦争も微分方程式で出せて面白かったです。先生の授業楽しかったです! ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。

ロケットの打ち上げ、兵力までも微分方程式で出せることにびっくりした! 流行の方程式も気になる…。
流行については、テキスト読んでおいてください。

自然現象だけでなく戦争まで微分方程式が使えるとわかって非常に便利だと思った。
とても便利です。

積分の面白さ、微分方程式を使って解く面白さを知ることができた。活用できるようにしていきたいと思った。
使えるようになると楽しいですよ。

微分方程式を極めたいです。
極めましょう、今後のためにも。

微分方程式について学んだが、次はもっと複雑な問題にも挑戦したい。
後期のIIでもいろいろやりましょう。

なぜ円錐の体積を求める式が$V={1\over3}Sh$なのかわかった。また、自然現象や戦争なども微分で考えられるという話が面白かった。
少しずつ変化していくような量は、だいたい微分方程式でなんとかなります。

微分方程式凄い。
凄いです。

微分方程式を勉強してみて微分する意味や積分する意味がよくわかった。もっと勉強してみたくなった。
もちろん、勉強してください。

来週のテストに向けて今までの復習がんばる。
はい、がんばりましょう。

微分方程式は様々なものに利用されていることがわかった。戦争すらも計算が組まれているのに驚いた。
数学の使い途はかなり広いですよ。

面白い内容でした。
それはよかった。

戦争の兵力についても微分方程式で解けるのはとてもおもしろかったです。
いろいろ使えて面白いでしょ。

いろんな現象を微分方程式で解けるのがすごく楽しかった。
自分でもやってみてください。

微分方程式がいろいろな現象の予測を可能にすることを知り、もっと知りたいと思いました。
後期のIIでじっくりやります。

円錐や球の体積の公式の意味がわかった。試験頑張りたい。
頑張りましょう。

微分方程式はすばらしいです。
立て方、解き方を身につけてください。

微分方程式を理解できた。
それはよかった。

微分方程式の具体例が計算がわかったんですが、物理的な意味がよくわからなかったです。
う〜ん、物理的意味が式とつながることが大事なんですが。

テスト頑張ります。
はい、頑張って。

面積・体積などの計算について学んだ。
練習しておきましょう。

ロケットの話は高校物理で問題としてよく出ていたが、このようなことに全く気づいてなかった。今回このことを言われると納得すると、とても興味深いと思った。
高校の時にやった問題、よく見ると「噴射は一度で」とか書いてありませんでしたか?

勉強がんばります。
がんばってください。

球を表面積で切る方法は目から鱗、でした。流行りを微分方程式で説明できるなんて、すごいぞ微分方程式!
微分方程式はほんとに役に立ちます。

この授業を受けて、これまでの私の数学や物理の考え方が大きく変わったと思います。イメージをすることができるようになり、さらに様々な公式を連動させて問題を解いたり考えたりできるようになりました。テストちゃんと単位を取れるように頑張ります。
授業が役に立ったようでよかったです。それは単位よりも大事なことです。

最後の兵力の奴はおもしろかったです。もっといろんな微分をしてみたいです。
やりましょうやりましょう。

一般的な事象にあてはめて、自分で微分方程式を解いてみることにもチャレンジしていこうと思いました。
チャレンジしてください。自分でやってみるのが上達への道。

微分方程式の有用性はとてもおもしろい。
とっても役に立ちます。

放射性の消えるのを計算するのを$\mathrm dN=-\alpha N\mathrm dt\to N(t)=N_0\mathrm e^{-\alpha t}$で求めきれることに感動した。
微小な時間での現象から、未来が見える、というのが楽しいところです。

微分方程式がとてもおもしろかったです。色々なもので使えるというのは知っていましたが戦争などにも使われているのは知らなかったのでおもしろかったです。
少しずつ法則にしたがって変化するようなものなら、何にでも使えます。

計算例を見るととても微分方程式は便利なものだなと思いました。マスターできるよう勉強したいと思います。
はい、とても便利です。是非マスターしてください。

私はあんまり戦争をしたことがないので、そんな微分方程式の活用性があるとは知らなかった。
まぁ、普通は戦争したことがないと思います。

ロケットの話で運動量の保存は正しいが、微笑時間でみてみるとじょじょに機体の速度が速くなり、じょじょに質量が減る。よってロケットから見た燃料噴射の速さがじょじょに増えると、機体の速さ$V$もじょじょに増える。
ロケットから見た燃料噴射の速さ$w$は一定です。それを外から見ると遅くなるように見える。

ロケットの到達速度と兵力自乗の法則がとてもおもしろかったです。
微分方程式を自分で立ててみてください。

微分方程式