自然科学のための数学2015年度第20講

 先週やったことをまとめておく。

 非斉次の場合、つまり${y}$の1次のみではなく${y}$の0次の項がある線形微分方程式 \begin{equation} \left(A_n({x})\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^n +A_{n-1}({x})\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^{n-1} +\cdots +A_{1}({x}){\mathrm d\over\mathrm dx} +A_0({x}) \right){y} =C({x}) \end{equation} の解を考えてみる。

線形非斉次微分方程式の重ね合わせ

「$C_1({x})$を源とする解」と「$C_2({x})$を源とする解」の和は「$C_1({x})+C_2({x})$を源とする解」。

「$C_1({x})$を源とする解」と「$C_2({x})$を源とする解」の線形結合の場合に拡張すれば、「$\alpha_1 C_1({x})+\alpha_2 C_2({x})$を源とする解」を作ることもできる。上の場合、$\alpha_1=\alpha_2=1$の場合である。$\alpha_1=1,\alpha_2=-1$にすれば「差」になる。

 特に、次のようなことも言える。

非斉次方程式の解+斉次方程式の解=非斉次方程式の解

 非斉次方程式 \begin{equation} \left( A_n({x})\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^n +A_{n-1}({x})\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^{n-1} +\cdots +A_{1}({x}){\mathrm d\over\mathrm dx} +A_0({x}) \right){y}=C({x})\label{hiseijirei} \end{equation} と、上の式で$C({x})=0$とした斉次方程式 \begin{equation} \left( A_n({x})\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^n +A_{n-1}({x})\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^{n-1} +\cdots +A_{1}({x}){\mathrm d\over\mathrm dx} +A_0({x}) \right){y} =0 \end{equation} を考える。非斉次方程式の解として$y_1({x})$を1つ、斉次方程式の解として$y_0({x})$を1つ、それぞれ見つけたとする。${y_0}({x})+y_1({x})$もまた、非斉次方程式の解である。

 これは上で考えたことの$C_2({x})=0$の場合にあたるから、証明は不要だろう。わざわざこんな(言わば、「あたりまえ」の)ことをここに書いたのは、この事実は応用範囲が広いからである。というのは、斉次方程式と非斉次方程式では当然斉次方程式の方が解きやすい。非斉次方程式の方の解は一つだけ求めておいて、斉次方程式の解を見つけられる限り見つけておけば、重ねあわせによって非斉次方程式の解をたくさん(見つけられる限り)見つけることができるようになる。

ここで大事なことは、前にも説明したように、$n$階微分方程式の解は$n$個の未定パラメータを持つ(持たなくてはいけない)ということである。よって一般解は一般解であるためには微分の階数と同じだけの未定パラメータが必要である。
 (非斉次方程式の一般解)を(斉次方程式の一般解)+(非斉次方程式の特解)で作る時、未定のパラメータは(斉次方程式の一般解)の方に入っている(特解はパラメータを含まない)。

定数係数の線形斉次微分方程式

 一般的な線形斉次微分方程式の解き方を考える前に、ここでは線形斉次で、かつ係数$A_i({x})$が定数$A_i$である場合、すなわち \begin{equation} \left( A_n\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^n +A_{n-1}\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^{n-1} +\cdots +A_{1}{{\mathrm d\over\mathrm dx}} +A_0 \right){y} =0\label{teisuusenkeiseiji} \end{equation} の形の微分方程式を解く一般的な方法を示そう。

特性方程式

 まず、この微分方程式には、$\mathrm e^{\lambda {x}}$という形で表せる解がある($\lambda$はこの後決める定数である)。これが解になるかどうかを確認するために代入してみると、 \begin{equation} {{\mathrm d\over\mathrm dx} }\mathrm e^{\lambda{x}}=\lambda\mathrm e^{\lambda{x}},~~ \left({{\mathrm d\over\mathrm dx} }\right)^2\mathrm e^{\lambda{x}}=\lambda^2\mathrm e^{\lambda{x}},\cdots, \left({{\mathrm d\over\mathrm dx} }\right)^n\mathrm e^{\lambda{x}}=\lambda^n\mathrm e^{\lambda{x}} \end{equation} となることを使うと、微分方程式は \begin{equation} \left( A_n\lambda^n +A_{n-1}\lambda^{n-1} +\cdots A_1 \lambda + A_0 \right)\mathrm e^{\lambda{x}}=0 \end{equation} という式に変わる。よって、 \begin{equation} A_n\lambda^n +A_{n-1}\lambda^{n-1}+\cdots A_1 \lambda + A_0=0\label{tokusei} \end{equation} となるような$\lambda$が存在していれば、その$\lambda$を代入した$\mathrm e^{\lambda {x}}$が解である。$\lambda$が満たすべき方程式を「特性方程式」と呼ぶ。

 簡単な例として、特性方程式が二次方程式になる場合をやってみよう。

 $\left( \left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2-{\mathrm d\over\mathrm dx} -2\right)f({x})=0$の解が$\mathrm e^{\lambda{x}}$だと仮定し代入すると、${\mathrm d\over\mathrm dx}\mathrm e^{\lambda{x}}=\lambda\mathrm e^{\lambda{x}}$,$\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2\mathrm e^{\lambda{x}}=\lambda^2\mathrm e^{\lambda{x}}$を使って、 \begin{equation} \begin{array}{rccccl} \biggl(& \!\!\!\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2 & \!\!-&{\mathrm d\over\mathrm dx}&\!\!-2 \biggr)\mathrm e^{\lambda{x}}=0 \\[-1mm] & ↓ & &↓ & & \\[-3mm] \biggl(& \lambda^2& \!\!-&\lambda&\!\!-2 \biggr)\mathrm e^{\lambda{x}}=0 \end{array}\label{nijiex} \end{equation} という式が導かれ、特性方程式$\lambda^2-\lambda-2=0$が満たされれば$\mathrm e^{\lambda{x}}$が解になることがわかる。特性方程式は$(\lambda-2)(\lambda+1)=0$と因数分解できるので、$\lambda=2,\lambda=-1$の二つの解があり、 \begin{equation} f({x})=C\mathrm e^{2{x}}+D\mathrm e^{-{x}} \end{equation} のような重ねあわせが微分方程式の一般解であるとわかる。$\mathrm e^{2{x}}$と$\mathrm e^{-{x}}$が線形独立であることにも注意しよう。$n$階線型微分方程式は線形独立な解を$n$個見つければ、それで「$n$個のパラメータを持つ解」を作ることができる。

 二階微分方程式は二つの未定パラメータを持つ筈なので、これで解は求まっている。確認しておこう。二階微分方程式なので、ある点${x}=x_0$での関数の値$f(x_0)$と一階微分の値$f'(x_0)$を決めれば、すべての${x}$に対して関数の値$f({x})$が求められる。${x}=0$での場合を考えると、$f(0)=C+D,f'(0)=2C-D$である。$f(0),f'(0)$がどのような値でもそれに応じて$C,D$を決めてやれば(この場合なら、$\textstyle C={f(0)+f'(0)\over 3},D={2f(0)-f'(0)\over 3}$})、関数の形は決まる。よってこれで一般解である。

 ここでは特性方程式を出してから因数分解し$\lambda$を求めたが、もともとの微分方程式を、 \begin{equation} \left( {\mathrm d\over\mathrm dx} -2 \right) \left( {\mathrm d\over\mathrm dx} +1 \right) f({x})=0\label{factorDE} \end{equation} と書き換えてもよい(いわば『微分演算子の因数分解』)。この式の左辺が0になるためには、 \begin{equation} \left( {\mathrm d\over\mathrm dx} -2 \right)f({x})=0~~~または~~~ \left( {\mathrm d\over\mathrm dx} +1 \right) f({x})=0 \end{equation} のどちらかが成り立てばよいと考えてもただし、こう考えてもよいのは$ \left({\mathrm d\over\mathrm dx} -2\right) \left({\mathrm d\over\mathrm dx} +1\right)$を掛けることと、$\left({\mathrm d\over\mathrm dx} +1\right) \left({\mathrm d\over\mathrm dx} -2\right)$を掛けることが同じ効果を産む場合、つまりこの二つの微分演算子が「交換する」場合である。定数係数の場合ならもちろん大丈夫だが、一般にそうとは限らない。、$C\mathrm e^{2{x}}+D\mathrm e^{-{x}}$という解が出てくる。

 さて、これで二つの解が求められたと安心してよいか??---実は注意が必要な点がある。一般の特性方程式$A_2\lambda^2+A_1\lambda+A_0=0$が二つの実数解を持つとは限らないので、

  1. $A_2\lambda^2+A_1\lambda+A_0=0$が重解を持つ場合
  2. $A_2\lambda^2+A_1\lambda+A_0=0$が複素数解を保つ場合
を考えていかなくてはいけない(特性方程式が3次以上になる場合も同様である)。

特性方程式が重解を持つ場合

 手がかりとしてもっとも単純な「重解になる二次方程式」である$\lambda^2=0$を考えてみよう。$\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2 f({x})=0$ の特性方程式が$\lambda^2=0$だが、この式の解は$\lambda=0$しかないから、前節の手順の通りに計算すると$C\mathrm e^{0{x}}=C\mathrm e^0=C$という「定数解」だけが出て来る。

 しかし、前節でやったことをいったん忘れて素直に$\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2 f({x})=0$という式を見れば、解が \begin{equation} f({x})= D{x}+C\label{linearsol} \end{equation} なのはすぐにわかる(実際代入してみれば二階微分すると0になる)。これは二つのパラメータを含んでいるから、立派な一般解である。

 では、次に一般的に考えよう。特性方程式が重解になる微分方程式は \begin{equation} \left( \left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2 -2A{\mathrm d\over\mathrm dx} +A^2 \right)f({x})=0~~~すなわち~~~ \left( {\mathrm d\over\mathrm dx} - A \right)^2 f({x})=0 \end{equation} である。これを見て、$\left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right) f({x})=0$になる関数を求めればよいと考えると、$f({x})=C\mathrm e^{A{x}}$という解があることはすぐにわかる。しかし、解はこれで終わりではない。なぜなら我々が求めたいのは$\left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right)$を二回掛けると0になる関数つまり、 \begin{equation} \left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right)\left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right)f({x}) =0 \end{equation} を満たす$f({x})$である。$f({x})=\mathrm e^{A{x}}$が上の式を満たすのはもちろんだが、$\left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right)f({x})=\mathrm e^{A{x}}$を満たす関数$f({x})$があれば、 \begin{equation} \left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right)\underbrace{\left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right)f({x})}_{\mathrm e^{A{x}}} =\left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right){\mathrm e^{A{x}}}=0 \end{equation} となるので、それも解となる。

 そうなる関数はすぐに見つかり、${x}\mathrm e^{A{x}}$である。確認しよう。 \begin{equation} \left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right)\left( {x}\mathrm e^{A{x}} \right)={\mathrm d\over\mathrm dx}\left({x}\mathrm e^{A{x}} \right)-A{x}\mathrm e^{A{x}} =\mathrm e^{A{x}}+\underbrace{ A{x}\mathrm e^{A{x}}-A{x}\mathrm e^{A{x}} }_{相殺}\label{xexpx} \end{equation} こうして、重解である場合はもう一つの解$D{x}\mathrm e^{A{x}}$が出ることがわかったので、

二階線形微分方程式の特性方程式が重解を持つ場合の解

\begin{equation} \left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right)^2 f({x})=0~~~の解は~~~ f({x})=\left(D{x}+C\right)\mathrm e^{A{x}} \end{equation} がわかる($A=0$の時は上の式に一致する)。

 この答えを出す方法として、 \begin{equation} 任意の関数F({x})に対し、~~ \left({\mathrm d\over\mathrm dx}-A\right)\left( \mathrm e^{A{x}}F({x})\right) = \mathrm e^{A{x}}{\mathrm d\over\mathrm dx} F({x})\label{ddxA} \end{equation} を先に証明しておくというのも良い方法である(後で応用が効く)。すなわち、

${\mathrm d\over\mathrm dx}-A$という微分演算子の後にあった$\mathrm e^{A{x}}$という数を微分演算子より前に出すと、 \begin{equation} \left({\mathrm d\over\mathrm dx}-A\right)\left( \mathrm e^{A{x}}(なんとか)\right) \to \mathrm e^{A{x}}{\mathrm d\over\mathrm dx}(なんとか) \end{equation} のように${\mathrm d\over\mathrm dx}-A$の$-A$が消えて${\mathrm d\over\mathrm dx}$になる。

という置き換えができる。この置き換えを使うと、$\left({\mathrm d\over\mathrm dx} - A\right)^2 \left(\mathrm e^{A{x}}F({x})\right)=0$という方程式は$\mathrm e^{A{x}}\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2 F({x})=0$という方程式に変わるから、解き易い後者の式を解けばよい(この答えが$F({x})=D{x}+C$であることはもう知っている)。

 省略形として$\left({\mathrm d\over\mathrm dx}-A\right)\mathrm e^{A{x}}=\mathrm e^{A{x}}{\mathrm d\over\mathrm dx}$などと書く場合もあるが、この式はそれだけでは(後に微分される関数がいなくては)意味が無い。こういう式はあくまで「記号」としての式であることに注意しよう。

 微分の階数が高くなったら多項式の次数をそれに応じて上げて \begin{equation} \left( {\mathrm d\over\mathrm dx} - A \right)^k f({x})=0~~~の解は~~~ \left( C_{k-1}{x}^{k-1}+ C_{k-2}{x}^{k-2}+ \cdots+C_1{x}+C_0\right)\mathrm e^{A{x}} \end{equation} とすればよい(証明するには実際に代入してもよいし、置き換えを使って考えてもよい)。

 以上の結果をまとめておこう。定数係数の線形同次微分方程式 $$ \left( A_n\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^n +A_{n-1}\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^{n-1} +\cdots +A_{1}{{\mathrm d\over\mathrm dx}} +A_0 \right){y} =0 $$ を解くには、微分演算子$\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^n$を$\lambda^n$という数に置き換えて、 $$ A_n\lambda^n +A_{n-1}\lambda^{n-1} +\cdots +A_{1}\lambda +A_0 =0 $$ という特性方程式を作る。この方程式が$n$個の相異なる解$\lambda_1,\lambda_2,\cdots,\lambda_n$を持っていたならば、 \begin{equation} C_1\mathrm e^{\lambda_1{x}} + C_2\mathrm e^{\lambda_2{x}} + C_3\mathrm e^{\lambda_3{x}} +\cdots + C_n\mathrm e^{\lambda_n{x}} \end{equation} が解である。解が$m$重解を含んでいた場合、重解である$\lambda_k$に対しては上の式の$C_k\mathrm e^{\lambda_k{x}}$を \begin{equation} \left( C_{k,m-1}{x}^{m-1} +C_{k,m-2}{x}^{m-2} +\cdots +C_{k,1}{x} +C_{k,0} \right)\mathrm e^{\lambda_k{x}} \end{equation} と置き換える(上は$m$重解の場合で、$m$個のパラメータを含む)。

 残るは$\lambda$が複素数解を持つ場合だが、その点については次の節で考えよう。

複素数を使って解く

 ここでは、複素数を使うことで微分方程式がどのように解きやすくなるのかを解説しよう

 複素数の微分方程式での利用例として、非常によく出てくる以下の方程式を考えよう。 \begin{equation} \left( {\mathrm d\over\mathrm dx} \right)^2{y}= -{y}\label{tansindounosiki} \end{equation}

「こうなる関数を探す」という方法でこの微分方程式を解いておこう。要は「二階微分したら元の関数の$-1$倍になる関数」である。我々はそういう関数を二つ知っている。$\sin {x}{\to }\cos {x}{\to}-\sin {x}$と$\cos {x}{\to }-\sin {x}{\to}-\cos {x}$である。よって、解は${y}=A\cos{x}+B\sin{x}$である。

 ここまでやってきた定数係数の線形微分方程式の一般論からすると、${y}={\mathrm e^{\lambda {x}}}$としたくなるところだが、代入すると \begin{equation} \lambda^2\overbrace{\mathrm e^{\lambda {x}}}^{{y}}= -\overbrace{\mathrm e^{\lambda {x}}}^{{y}} \end{equation} となり、$\lambda^2=-1$という実数の範囲で考えれば解なしの方程式が出てくる。虚数を知らない人は、ここでああ、この微分方程式はこの方法では解けないと諦めてしまう。しかしすでに虚数を知っている我々は、$\lambda=\pm\mathrm i$という「とりあえずの答え」を出して、$\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2{y}= -{y}$の解は、$\mathrm e^{\mathrm i {x}}$と$\mathrm e^{-\mathrm i {x}}$(およびその線形結合)であると考えて先に進む。

答えが実数じゃなくていいんですか?

「とりあえずの答え」ならよい。実数ではなくてはならないのは最終的に求められる解であって、計算の途中で現れる量は複素数でもよい。最終結果が実数であるように、以下で調節する。

 ここで出てきた二つの解$\mathrm e^{\mathrm i {x}}$と$\mathrm e^{-\mathrm i {x}}$が互いに複素共役であることに注意。実数の係数の方程式(我々が主に扱うのはこのタイプの微分方程式だろう)の解が複素数になる時は、その複素共役も解のペアとして必ず現れる。その理由は、$$\left(実数係数のみを持つ微分演算子\right)f({x})=0~~~例:\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2{y}=-{y}$$という方程式の複素共役をとれば$$\left(実数係数のみを持つ微分演算子\right)f^*({x})=0~~~例:\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2{y^*}=-{y^*}$$となる、ということを考えればわかる。

先に進んでみよう。一般解は \begin{equation} {y}=A\mathrm e^{\mathrm i {x}}+ B\mathrm e^{-\mathrm i {x}}\label{Csindou} \end{equation} となる。$A$と$B$は今から選ぶ定数(複素数であってよい)である。

 この答えは一見複素数に見えるが、実際に欲しいのは実数解である。そこで、以下の二つの考え方のどちらかで実数解を得る。

  1. この解が実数になるように任意パラメータの$A,B$を調整する。
  2. この解のうち実数部分を取り出せばそれが欲しい解である。

まず(1)の方法で考えよう。この解が実数になれということは、複素共役である \begin{equation} {y}^*= A^* \mathrm e^{-\mathrm i {x}} +B^* \mathrm e^{\mathrm i {x}}\label{Csindoustar} \end{equation} が元の${y}$と同じであれ、ということである。そうなるためには、$A^*=B$であればよい。こうすると自動的に$B^*=A$であることになる。こうして$A$と$B$に関係がついたから、以後は$B$を$A^*$と書くことにして、 \begin{equation} {y}=A \mathrm e^{\mathrm i {x}} +A^* \mathrm e^{-\mathrm i {x}} \end{equation} を解とすればよい。ここで、複素数である$A$を極表示複素数を$R\mathrm e^{\mathrm i\theta}$のように表示するのを「極表示」と言う。}して$A=|A|\mathrm e^{\mathrm i\alpha}$($\alpha$は実数)とすると、 \begin{equation} {y}= |A|\left( \mathrm e^{\mathrm i({x}+\alpha)} +\mathrm e^{-\mathrm i({x}+\alpha)}\right) \end{equation} と答えをまとめることができる(この形の方が実数であることが明白である)。

 さらに${\mathrm e^{\mathrm i\theta}+\mathrm e^{-\mathrm i\theta}\over 2}=\cos\theta$を使うと、以下のようにまとまる。 \begin{equation} {y}=2|A|\cos({x}+\alpha) \end{equation}

 こうしてもよい。$\mathrm e^{\mathrm i {x}}$と$\mathrm e^{-\mathrm i {x}}$を使って実数となる組み合わせを作ると、$\mathrm e^{\mathrm i {x}}+\mathrm e^{-\mathrm i {x}}$か$\mathrm i(\mathrm e^{\mathrm i {x}}-\mathrm e^{-\mathrm i {x}})$か、どちらか(もしくはこの二つの線形結合)である。つまり、上の式を \begin{equation} {y}=C\underbrace{\left(\mathrm e^{\mathrm i {x}}+\mathrm e^{-\mathrm i {x}}\right)}_{2\cos {x}}+\mathrm i D\underbrace{\left(\mathrm e^{\mathrm i {x}}-\mathrm e^{-\mathrm i {x}}\right)}_{2\mathrm i \sin {x}} =2C \cos {x} -2D \sin {x} \end{equation} と書きなおす。$C,D$は実数であり、上の$A,B$とは$A=C+\mathrm i D,B=C-\mathrm i D$という関係がある。

 (2)の方法を取る時は、まず$A=|A|\mathrm e^{\mathrm i\alpha},B=|B|\mathrm e^{\mathrm i\beta}$と極表示して、 \begin{equation} {y}= |A|\mathrm e^{\mathrm i({x}+\alpha)} +|B|\mathrm e^{-\mathrm i({x}-\beta)} \end{equation} としてからこの実数部分を取り出せば、 \begin{equation} {y}=|A|\cos ({x}+\alpha) +|B|\cos ({x}-\beta)\label{coscos} \end{equation} となる。ここで、実数を取った結果であるこの式を見ると、実は第1項だけで十分であったことがわかる。というのはこの式は$\cos$と$\cos$の足し算だから、やはり$\cos$で表される1つの関数となる($C\cos({x}+\gamma)$のように)$|A|\cos ({x}+\alpha)+|B|\cos ({x}-\beta)=C\cos({x}+\gamma)$と置いて両辺を比較すれば、$C,\gamma$をいくらにすればこの等式が成り立つかが計算できる。。つまり、一見$|A|,|B|,\alpha,\beta$という4個のパラメータを含んでいるように見えて、$C,\gamma$という二つのパラメータしか持っていないのである。

 よって、(2)の方法を取るとき、つまり「後で実数部分だけを取り出そう」と計算するときは、 \begin{equation} {y}=|A|\cos ({x}+\alpha) \end{equation} を解として考えれば十分なのだ。

 ここでは生真面目に$\mathrm e^{\mathrm i {x}}$と$\mathrm e^{-\mathrm i {x}}$の二つを解としたのだが、よく考えてみると、元々の方程式は実数係数のものであったから、$\mathrm e^{\mathrm i {x}}$が解であったなら、その複素共役である$\mathrm e^{-\mathrm i {x}}$が解であることは「計算するまでもなくあたりまえ」である。よって「微分方程式に現れる数が全て実数である場合」には、複素共役の両方を解にする必要はなく、どちらか一方のみを解として考えればよい(もちろん「これの複素共役も解だぞ」と覚えておく)。もちろん、元々の微分方程式が$\mathrm i$を含んでいる場合はこうはいかない。

受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

yを2回微分すると$-y$になる。$x$と$y$の式ということは2次元? 図形にするとどういうイメージなのでしょう?
いえ、$y$は従属変数で、$x$を決めると$y$も決まるので、1次元です(2次元になるのはずっと後でやります)。図形にすると、いわゆる正弦波になります。

二階微分方程式は因数分解で出した答を定数倍して足すと一般解が求められる。また、重解のときは簡単な例を探して、代入して解く。$\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2y=-y$や${\mathrm dy\over\mathrm dx}=y$から$y$の値を予想し考えることや、パラメータの数に注意することがわかった。
「二階線形」の場合ね。あと重解のときは、単純に「簡単な例を探す」しても答は出ない。勉強しなおそう。あと、微分方程式は「$y$の値」を求めるものではなく「$y$の関数形」を求めるものです。

重解は複素数が出てくると、計算が難しく感じました。虚数の$A$と$A^*$がでてきたのでびっくりしました。虚数が出てくるのは微分方程式を解く過程では普通のことなんだと思えるようになります。
$A^*$ごときではびっくりしないようになってください。

今日のは複素数が前回のことを考えながら解くかんじだったので、ちょっと難しかった。Eulerの公式を忘れていたので復習し直す!!
オイラーの式はこれからも御世話になることよくあります。

Eulerの公式とか$A^*$が複素共役とか全然覚えてなかったので復習しておきたい。
このあたりはこれからも出てきます。

線形微分方程式は解の仮定、方程式が重解、複素数解の確認などややこしくてあまり理解できなかった。微分方程式にある未知数を0とおくなど、式をできるだけ簡単にしてから解くとやりやすかった。
最初に言ったけど、今日やったのは「一番簡単」な部類なので、これで「ややこしくてあまり理解できなかった」では困る(そもそも理解できなかったら質問すること!!)。あと、式を簡単にしてから解くのはあくまで「例」または「ヒント」。それでわかったつもりになってはいけない。

実際に起こっている単振動に虚数が出てきて、結果的に実数になっているところがとても不思議に思えた。虚数も実用性があって驚いた。
虚数は実は、「ないと困る」というレベルで重要なものなんです。

定数係数の線形斉次微分方程式を解くにあたり、因数分解が必要だとわかった。重解や虚数解を求めるのは難しそうだと思ったので、復習を忘れずにしたい。
自分で手を動かして解いてみてください。慣れてくれば難しくはないです。

重解の話からついていけない部分が少しありました。今日の授業のノートと冊子を見て復習します。
ついていけなかったら質問する。授業というのはそういう時間。

今日の内容にとって虚数、実数はすごく苦手ですが、もっと考えます。しかし重解のところ、$y=Dx+c$と$y=C\mathrm e^{Ax}$を結合考えるところはまだ理解できなかった。なぜ最後$(Dx+c)\mathrm e^{Ax}$の解になるか、困ります。
理解できなかった、と思ったらその時すぐに質問してください!!(←授業の最初に言ったはず)。それが一番効率的な勉強です。ここで質問されて、ここで答えてもあまり意味がない。

実数解でも重解でも虚数解でも、因数分解した解からちゃんと解を出すことができることがわかった! 虚数を微分方程式の分野で使うとは思っていなかったので驚いた。
むしろ、微分方程式で使ってこそ虚数がある意味が生きてきます。

虚数が今までで初めて役に立つものだと思えた。オイラーの公式は海流の分野でもでてきた。解いているときに難しいところに来たと思ったら簡単な例をすぐに考える癖をつけたい。
難しい問題に出会ったとき、どう簡単な問題に分解して解いていくか、というテクニックを沢山持っておくことが重要です。

なんで2個答えが出るのかわからない…。
ここに書くんじゃなく、授業中、もしくは終わった後に質問しようよ。二階微分方程式のことなら、「二つの未定のパラメータを含まないと一般解にならないから」ということになるけど。

線形微分方程式を解く際に代入する$y=\mathrm e^{\lambda x}$などを思いつくことがまず自分には必要だと思った。
定数係数線形斉次については、常に$\mathrm e^{\lambda x}$で大丈夫です。

線形斉次、線型非斉次の意味をちゃんと言葉で説明できるようにする。特性方程式はとても便利だなと思った。
定数係数でないと使えないですが、特性方程式で解くと非常に楽ですね。

復習が足りてないことがわかったのでもっと復習したいと思います。虚数解の場合の解き方がきれいでした。もっとどんどん演習します。
自分で手を動かして練習してみましょう。それやらないと身につきません。

予想を立てるところが難しいなと思いました。昔の人の頭を見てみたいです。
昔の人が頭がいいから予想が立った、と思っているのなら、そうではありません。昔の人はいろいろやってみて、失敗たくさんして、その後でやっと正しい予想に到着したんです。あなたもまずは試してみること。

難しかったです。
質問してください。

二次方程式の解き方が、微分方程式を解く方法の一つだとは思いもしませんでした。
二次方程式はいろんなところで役立ちますよ。

虚数から三角関数になるのはびっくりしたが、計算してなっとくしたのでよかった。
なっとくするまでいろいろ計算しましょう。

今日の授業はとても難しく感じました。「〜とおく」というやり方は習得するのは時間がかかりそうだなと思いました。
習得してください。ある意味、基本的なテクニックです。

一見異なるようなふたつの形の解が結局は同じ解になり、なかなか趣深いと思った。
同じ微分方程式の解だから当然といえば当然なんですが、うまくできているもんだなぁ、と思いますね。

重解と複素数を考えるやり方が結構新しいことをぼんぼんやっていたので追いつくのがたいへんだった。ポイントを覚えつつまた来週もがんばる。
実はやっていることはこれまでの積み重ねなんですが。まぁ、来週は例を出しながらやっていくので、それをやりながら身につけていってください。

すばらしく面白かったです。二階線形微分方程式がかなり解けるようになったと思います。
次で実用的なのを解いていきましょう。

微分方程式を解くと虚数が出てきて、それを変形すると三角関数になってとてもすごいと思いました。
三角関数はある意味、微分方程式の解として出てくるわけです。

今日は内容が濃かったのでパラメータがたくさんでた。チャーハンはパラパラが良い。
なんじゃそりゃ。

二次方程式がいろんなところで顔を出すんだなと思った。また虚数が微分方程式を解くためにあるのは初めて知った。
虚数はいろいろ役立ちますよ。

今日扱った内容は難しかったので、後で教科書を見ながら自分で復習したい。
復習は常にやっておきましょう。

定数係数の線形微分方程式の重解と虚数解の場合が難しかったです。簡単な例で考えることを定着させたいです。
まずは教科書見ながら計算を自力でやってみてください。

よく分かりました。
それはよかった。

今日は一つの問題に対し、いくつかの視点から考察した。
いろいろな考え方を身につけてください。

線形斉次の微分方程式の解法がどんどん増えていくのが面白いです。
解法はたくさん持っている方がいいですね。

11月もがんばっていきましょう。
はい、がんばっていきましょう。

重解、複素数解の場合は普通のやつとは少し難しい感じだった。昔習ったことが今つながった。
重解、複素数解も今後は「普通に」出てきます。

定数係数の線形斉次微分方程式の解き方について理解できた。前回の解き方と似ていた。重解のときや虚数のときの考え方は少し難しかった。
これからも使う考え方なので、しっかり理解しておきましょう。

今回は実数解、重解虚数解で異なる解き方をやったので区別してしっかり理解したい。
それぞれの場合でどうしてこうなるか、を理解しておきましょう。

少し頭が混乱しましたが、なんとか大丈夫です。
一度自分で計算をやり直して、整理しておきましょう。

今日はやること多すぎて頭に入らなかった。特に虚解のところは、高校では複素数平面やらなかったのであまり理解できなかった。
今日は複素平面なんて全然使ってないし、複素平面を知らなくても理解できる。あと、高校でやらなくても、いずれ複素平面はばしばし使うことになるはずなので、高校でやらなかったからできないなんて言ってたらえらいことになります。

今日のところは難しかったのでちゃんと復習したいです。
自分で計算を一度やりなおしてみてください。

推理する数字が何を入れていいのかわからない。
「数字」は推理してないけど。推理したのは「関数の形」かな?? 何をいれていいかわからなかったら、とりあえずいろいろ試す。何度か失敗しているうちに、だんだんわかってくる。

今日はメガネを忘れて前の方にすわったら授業がいつもよりよくわかったので割りと楽しかった。
じゃ次からも前の方でよろしく。

線形微分方程式