自然科学のための数学2015年度第21講

ここまででできるようになったこと

 ここまで学んだことで、たとえば、$A,B,C$を定数、$g(x)$が既知の関数として、 $$ \left(A\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2+B{\mathrm d\over\mathrm dx}+C\right)f(x)=g(x) $$ という微分方程式を解く方法には迷わなくなったはず(「あれ、どうするんだっけ?」と思った人は勉強が足りない)。

 というのは、このような線形非斉次微分方程式は、まず線形斉次にした、 $$ \left(A\left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2+B{\mathrm d\over\mathrm dx}+C\right)f(x)=0 $$ を解いて一般解を求めてから非斉次方程式の特解を足せばよい、ということを知っているし、また斉次化したこの方程式は$f(x)=\mathrm e^{\lambda x}$と置くことで、 $$ A\lambda^2+B\lambda+C=0 $$ という二次方程式を解く問題に変わることも知っている。

 というわけで今日はこういう問題を具体例で考えよう。

定数係数の二階線形方程式の例

空気抵抗を受ける質点

質量$m$の物体が$F$という力を受けるとき、物体の位置座標${x}$に関する微分方程式である運動方程式$m\left({\mathrm d\over\mathrm dt}\right)^2 {x}= F$が成り立つことが力学で知られている。この$F$が$-K{\mathrm d\over\mathrm dt}{x}$($K$は比例定数)のように${x}$の時間微分に比例する場合実際、速度が遅い場合の空気抵抗はだいたいこの式であっている。、すなわち、 \begin{equation} m\left({\mathrm d\over\mathrm dt}\right)^2 {x}= -K{\mathrm d\over\mathrm dt}{x}\label{FKv} \end{equation} という微分方程式が成り立つ場合を考えよう。

 この方程式に${x}=\mathrm e^{\lambda{t}}$を代入すると、

\begin{equation} m\lambda^2 \mathrm e^{\lambda{t}} = -K\lambda \mathrm e^{\lambda{t}} \end{equation} となり、特性方程式は$m\lambda^2=-K\lambda$となる。この方程式の解は$\lambda=0,-{K\over m}$なので、 \begin{equation} {x}({t})= C_1 + C_2 \mathrm e^{-{K\over m}{t}} \end{equation} が解である。グラフは右に描いたようになり、積分定数の意味は、$C_1$が${t}\to\infty$での${x}$の値、$C_1+C_2$が${t}=0$での${x}$の値である。

 つまり、初速度を決めることが$C_2$を決め、最初の位置を決めることが$C_1$を決める。未定のパラメータはこのような初期条件が決めることになるのである。

この微分方程式の解は、ボールなどを床に転がした時この状況であればボールは水平に動くので、重力は運動とは関係ない。にどのようにボールが運動するかを表している。

運動は、下のように起こる。初速度を変えて「再スタート」させてみよう(初期位置は固定されている)

初速度=


 横軸に時間$t$、縦軸に$x$を取ってグラフにしたのが以下の図である。
初速度をいろいろ変えて運動の様子を見よう。

初速度=

 この微分方程式の解は \begin{equation} {\mathrm d\over\mathrm dt}{x}({t})= -{K\over m}C_2\mathrm e^{-{K\over m}{t}} \end{equation} であるから、$C_1=v_0{m\over K},C_2=-v_0{m\over K}$のとき${x}(0)=0,{{\mathrm d\over\mathrm dt}}{x}(0)=v_0$になる。初速度に比例した距離だけ移動できることがわかる。「止まるまでの時間」は$\infty$である!とはいえ、速度は指数関数で急速に0に近づくので、見た目は止まったように見えるだろう。厳密に式の通りの運動が起こるのなら、「無限に遅い速度で永遠に動き続ける」ということになる。しかしここで扱っているのは理想化した状態で、実際には式に表した以外の力も働いている。

空気抵抗を受けて落下する質点

空気抵抗を受けて落下する質点

空気抵抗を受けて落下する質点

 運動方程式に重力$F=-mg$を加えて$-mg$とマイナス符号をつけるのは、図に書いたように上向きに${x}$軸を取ったから。、線形非斉次な方程式 \begin{equation} m\left({\mathrm d\over\mathrm dt}\right)^2 {x}= -K{\mathrm d\over\mathrm dt}{x}-mg\label{Fkvmg} \end{equation} にしてみよう。方程式を非斉次にしている$-mg$を消せばさっきの式になるが、その解はすでにわかっている。つまり斉次方程式の一般解は既に知っているから、非斉次方程式の特解を一つ見つけて足せばよい。

 特解を見つける方法はいろいろあるが、ここでは「できるだけ式を簡単に」ということで「両辺が0になるのはどんなときかな?」と考えてみよう。左辺(二階微分)が0になるのは$x$が$t$の1次式なとき。そこで簡単な、${x}=v{t}$を試すと、$0= -Kv -mg$となるから$v=-{mg\over K}$とすれば${x}=-{mg\over K}{t}$という特解を得る。一般解は以下の通りである。 \begin{equation} {x}= \underbrace{C_1 + C_2 \mathrm e^{-{K\over m}{t}}}_{斉次方程式の一般解} \underbrace{- {mg\over K}{t}}_{非斉次方程式の特解} \end{equation}

 二階微分方程式だから未定のパラメータ二つでちょうどよい。そのため、${x}$-${t}$のグラフで一点を指定しても曲線は決まらない。一点と、「その点での傾き(微係数)」を指定すると、曲線が一つ決まる。

 結果はもちろん、特解$-{mg\over K}t$が足されるという形になる。よってさっきの場合は「静止状態」になっていったが、この場合は「等速運動」に変化していく。

 これも下のプログラムで動きを見ながら解を確認しよう。

初速度=

空気抵抗を受ける質点 今日の小テスト

今日の小テスト

微分方程式${\mathrm d^2\over \mathrm dt^2}x=-kx -mg$を解け。

ただし、${\mathrm d^2\over \mathrm dt^2}x=-kx$の解が$x=A\sin(\sqrt{k\over m}t+\alpha)$であることはつかってよい。
だいたいてきてましたが、途中で止まってしまっている人もちらほら。この問題に全く手が出てない人はここまでの話が全くわかってないと思われます。授業の最初まで戻って復習してください。

解答は簡単で、すでに斉次方程式の一般解は書かれているから、非斉次方程式の特解を探せばよい。

左辺が0になるのはどんな時かと考えるのがわかりやすい。

 「左辺が0」ってのはつまり、力が0、すなわち「つりあい」を探しているということ。特解を考えるときはこんなふうに「物理的に簡単じゃ状況」を思い浮かべるとよい。

$0=-kx-mg$なので、$x=-{mg\over k}$とすれば右辺が0となり、これは定数だから二階微分しても0となり、特解になっている。

斉次の一般解+非斉次の特解として、

$x=A\sin(\sqrt{k\over m}t+\alpha)-{mg\over k}$

が解である。答としては、単振動の中心がずれただけ。

誤答の例:
  • なぜか特解にまで余計な定数をつけて、$x=A\sin(\sqrt{k\over m}t+\alpha)-B{mg\over k}$としてしまっている人がいたが、これでは解にならない。
  • やはりなぜか、特解に$t$をかけて$x=A\sin(\sqrt{k\over m}t+\alpha)-{mg\over k}t$としてしまっている人がいたが、これも解ではない。

 別の解法として、こういうやりかたもある。

 ここで右辺が$-kx-mg$と非斉次な形だから解きにくかったわけだが、これを斉次な形(1次のみの形)にするにはもう一つ「平行移動する」または「座標原点をずらす」という手がある。具体的には、$-k\left(x+{mg\over k}\right)$と変形して$X=x+{mg\over k}$を新しい座標にしてしまうのである。こうすると、 $$ {\mathrm d^2\over \mathrm dt^2}X=-kX $$ という式になる(左辺は微分しているので、$X$と$x$の違いである定数は消えてしまう)。

 こうして、原点ずらしで線形斉次な式にしてから解いて、$X=A\sin(\sqrt{k\over m}t+\alpha)$としてから$x$の式に戻せばs、全く同じ答えが出てくる。

 物理的には「原点はどこにしても問題の本質は変わらない」ということを使って問題を解くという方法もあるというわけ。

空気抵抗を受けながら落下する質点 受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

前半部分しか参加することはできなかったですが特解を求め、線形結合して一般解を求めるやり方がわかった。
今後も使う考え方です。お大事に。

単振動や抵抗を受ける楽体に関する運動方程式の解き方を確認できた。
一般的なやり方がかなり「使える」ということを確認しておきましょう。

がんばります。
はい、がんばろう。

小テスト符号ミスをしたのがとても悔しかった。
それは残念でした。

今日の話はよく分かった。特解を求めるために左辺0を考えているときは、つりあっている状態だという表現がとてもしっくりきた。
数式の「表現している状況」を思い浮かべて考えていくことが大事です。

実際に空気抵抗を受けて落下する質点の方程式を解くことででてきた一般解が何を意味しているか理解できた。
現象と方程式を結びつけて理解していきましょう。

座標を取り直すという考え方は目から鱗だった。どちらが有効なのか場合によると思うが、新しい考え方がわかったので、色々試してみたい。
座標は「人間に都合のよいように」決めればよいものなので、いろいろ考えてみてください。

最後の問題の解き方で、座標を取り直すやり方が面白いと思った。
応用がいろいろ効きます。

よく見る運動方程式がさらさらっと解けるのが面白かったです。もっと色々な微分方程式を解いて、たくさんの解法を身につけたいです。
微分方程式を使うと、いろいろ解けて楽しいです。

物理の問題にあてはめてくれたらわかりやすくなりました!
微分方程式はそもそも物理の為に発明されたようなもんですから。

テストはふるわなかったが授業の解説を聞いて理解できた。
それはよかったです。テストも次はがんばって。

特解に任意定数をつけると特解でなくなる、その通りだと思った。自分は言葉の意味を詳しく理解する必要があると思った。
「なぜこうするか(こうしていいか)」という部分を理解して、計算していきましょう。

空気抵抗や重力がある場合などの実例を考えるとわかりやすかったです。
具体例は大事ですね。

線形非斉次微分方程式の計算から空気抵抗やバネと重力があわさった運動の計算ができることがわかった。
他にもいろいろ、計算できます。

小テスト全部満点取りたい。
じゃ、がんばって。

小テスト解けました!
次もがんばってください。

物事を理解するから物理なんですね!!
「物事の理(理屈・原理)」を表してるから物理、かな。

小テストができてよかった。
それはよかったです。

小テストの問題が解けたのでとりあえず一安心です。微分方程式がスラスラ解けるようになってきていて、楽しいです。
楽しんでスラスラ解いてください。

またも小テストで問題を解くことができなかった。もう一度今までやったきてことを見なおして、より深く理解するように取り組もうと思う。
今日のができないというのは、やり直すべきことがたくさんあります。がんばってください。

今日は物理に助けられたので良かったが、特解の出し方とはまだまだ分かり合えない。特解はどれくらい私を知っているんでしょうか?
マジレスすると、特解には誰かを知る能力がありません。

小テストの特解は見つけやすかったです。左辺を0として考えるやり方を定着させていきたいです。
いろいろ見つけ方はあるので、そのうちの一つとして考えておいてください。

今日はおちついて問題の状況をイメージして式を見なおしたら理解がよくできた。次からも、イメージしながら解く!!
イメージは大事です!

物理的な現象を例にして斉次や非斉次の微分方程式をとくのは面白かったです。
いろいろ練習してみてください。

特解を加えるときに斉次の一般解のように線形結合をしそうになったで注意します。また座標軸を取り直すのはなるほどと思いました。
斉次、非斉次はどう違うか、理屈を理解してきましょう。

実際の現象をもとに微分方程式を解くことで、より理解が深まりました。
それはよかった。

非斉次の一般解を出す方法を例を使って解いたのでだんだんわかってきた。ただチェックテストは勘違いしてミスったけど、今はもう大丈夫です。スッキリしました。
スッキリできてよかった。

(非)斉次方程式に少しはなれた気がします。
なれてきましょう。

非斉次の一般解=斉次の一般解+非斉次の特解。このルールを強化記憶します。また、斉次が同じの基礎上、非斉次特解だけを計算すれば解けると感じた。
「記憶」だと忘れるので、「理解」していきましょう。

今回のテストは計算が簡単でできた。だけど復習しないと忘れそうなので解き方を理解するようになる。
理解することがまず第一です。

まだ特解を出してから非斉次の一般解を求めるのに慣れていないので演習を積みます。家に帰ってから空気抵抗の問題を解き直してみます。
練習はどんどん、やりましょう。

特解の見つけ方で物理的に考えるという方法がおもしろいと思った。
現象を考えるための微分方程式ですから。

バネや物体が空気抵抗をうけて運動する時の運動方程式?Fの式?から全体の運動を求めることができたのは物理学入門をとっている自分が物理を理解するときに大きく役立つと思った。
微分方程式を解けるということは、物理にとって非常に大きいことです。

最近、ものすごく下痢に困ってます。授業の途中にトイレに行かなくてはいけないので困り者です。
身体には気をつけて、不摂生してはいけませんよ。

線形非斉次を解くには斉次の一般解、非斉次の特解が重要だと思った。空気抵抗を受ける運動も線形斉次で解けるとわかった。
いろんな問題がこの方法で解けます。

$m{\mathrm d^2 x\over \mathrm dt^2}=0$とふつうにすればよかったのか!
もちろん、この解き方は一例です。

斉次と非斉次のまざった式の解の出し方が理解できた。
?? 「斉次と非斉次が混ざる」ってことは普通ないんだけど。

$m{\mathrm d^2x\over\mathrm dt^2}=-K{\mathrm d x\over\mathrm dt}-mg$で非斉次は0次を含むから、非斉次の一般解を求めるとき、斉次の一般解は定数倍(パラメータとして使う)していいけど、非斉次の特解は0次を含むから定数倍しない(パラメータをつけないで足す)ことがわかった。
「どうするば解になるか?」をちゃんと考えていけば大丈夫ですね。

線形微分方程式