常微分方程式

$\def\coldr{\rcol{\mathrm dr}}\def\coldvecx{\xcol{\mathrm d\vec x}}\def\intdx{\opcol{\int \mathrm dx}}\def\E{\mathrm e}\def\I{\mathrm i}\definecolor{opcol}{RGB}{149,139,0}\definecolor{hai}{RGB}{137,137,137}\definecolor{tcol}{RGB}{166,54,109}\definecolor{kuro}{RGB}{0,0,0}\definecolor{xcol}{RGB}{169,103,49}\def\opcol#1{{\color{opcol}#1}}\def\ddx{\opcol{{\mathrm d\over \mathrm dx}}}\def\ddt{\opcol{{\mathrm d\over \mathrm dt}}}\def\xcol#1{{\color{xcol}#1}}\definecolor{ycol}{RGB}{217,61,137}\def\ycol#1{{\color{ycol}#1}}\def\haiiro#1{{\color{hai}#1}}\def\kuro#1{{\color{kuro}#1}}\def\kakko#1{\haiiro{\left(\kuro{#1}\right)}}\def\coldx{{\color{xcol}\mathrm dx}}\def\Odr{{\cal O}}\definecolor{ncol}{RGB}{217,51,43}\def\ncol#1{{\color{ncol}#1}}\definecolor{zcol}{RGB}{196,77,132}\def\zcol#1{{\color{zcol}#1}}\definecolor{thetacol}{RGB}{230,0,39}\def\thetacol#1{{\color{thetacol}#1}}\def\diff{\mathrm d}\def\kidb{\opcol{\mathrm db}}\def\kidx{\opcol{\mathrm dx}}\def\coldy{\ycol{\mathrm dy}}\def\coldtheta{\thetacol{\mathrm d\theta}}\def\ddtheta{\opcol{{\mathrm d\over\mathrm d\theta}}}\def\tcol#1{{\color{tcol}#1}}\def\coldt{\tcol{\mathrm dt}}\def\kidtheta{\opcol{\mathrm d\theta}}\def\dtwodx{\opcol{\diff^2\over\diff x^2}}\def\kokode#1{~~~~~~~{↓#1}}\def\goverbrace{\overbrace}\def\coldz{\zcol{\mathrm dz}}\def\kidt{\opcol{\mathrm dt}}\definecolor{rcol}{RGB}{206,114,108}\def\rcol#1{{\color{rcol}#1}}\def\coldtwox{\xcol{\mathrm d^2x}}\def\PDC#1#2#3{{\opcol{\left(\opcol{{\partial \kuro{#1}\over \partial #2}}\right)}}_{#3}}\def\PDIC#1#2#3{{\opcol{\left(\opcol{\partial \over \partial #2}\kuro{#1}\right)}}_{#3}}\def\PD#1#2{{\opcol{\partial \kuro{#1}\over \partial #2}}}\def\PPDC#1#2#3{{\opcol{\left(\opcol{\partial^2 \kuro{#1}\over \partial #2^2}\right)}}_{#3}}\def\PPDD#1#2#3{{\opcol{{\partial^2 \kuro{#1}\over \partial #2\partial #3}}}}\def\PPD#1#2{{\opcol{{\partial^2 \kuro{#1}\over \partial #2^2}}}}\def\kidy{\opcol{\diff y}}\def\ve{\vec{\mathbf e}}\def\colvecx{\xcol{\vec x}}\definecolor{usuopcolor}{RGB}{237,234,203}\def\usuopcol#1{\color{usuopcolor}#1}\def\vgrad#1{{\usuopcol{\overrightarrow{\opcol{\rm grad}~\kuro{#1}}}}}\def\dX{\rcol{\mathrm dX}}\def\dY{\thetacol{\mathrm dY}}\def\opdf{\opcol{\mathrm df}}\def\coldf{\tcol{\mathrm df}}\def\dtwof{\opcol{\mathrm d^2f}}\def\murasakidb{\zcol{\mathrm d b}}\def\ao{\ycol}\def\aodV{\ycol{\diff V}}\def\aka{\xcol}\def\akadm{\xcol{\diff m}}\def\gunderbrace{\underbrace}$
まずは常微分方程式の復習。

 常微分方程式とはどんなものか?ということをわかってもらうため、 で遊んでもらったのが授業の全半部分。

 以上でざっと微分方程式の雰囲気をつかんでもらった。すなわち、微分方程式の解を求めるというのは微分を含む式から「曲線群」を求めることである。求められた関数の表す曲線を「解曲線(solution curve)」と呼ぶ。

 では、具体的に解曲線を数式で求める例として、 \begin{equation} {\coldy\over \coldx}=-{\xcol{x}\over \ycol{y}} \end{equation} を考えよう。変数分離すると、 \begin{equation} \ycol{y}\coldy=-\xcol{x}\coldx \end{equation} であり、両辺を積分することで \begin{equation} {1\over 2}\ycol{y}^2 = -{1\over 2}\xcol{x}^2 +C \end{equation} となる(積分定数$C$はこの場合0以上でなくてはいけない)。整理すると \begin{equation} {\xcol{x}^2}+{\ycol{y}^2}=2C \end{equation} となるから、半径が$\sqrt{2C}$で短径が$\sqrt{2C}$である円となる。微分方程式を解くとは、このように「傾き」という情報から二つの変数$\xcol{x}$と$\ycol{y}$の関係を導き出すことである。

 円の例でわかるように、微分方程式の解は$\ycol{y}=f\kakko{\xcol{x}}$の形にまとまるとは限らない(楕円の場合、一つの$\xcol{x}$に対し二つの$\ycol{y}$が対応している場合がある)。むしろまとめない方が簡潔に式が表現できる場合も多いので、無理に$\ycol{y}=f\kakko{\xcol{x}}$の形にする必要はない。

 積分定数$C$のおかげで様々な長短径を持つ楕円が現れたこと(解曲線である楕円が1個の未定パラメータを持ったこと)に注意しよう。1階微分方程式を解くと必ずこのような未定パラメータが出てくる。これはその解き方が本質的に「不定積分する」ことであり、その結果としての積分定数を答えが含むことになるからである。二階以上の微分方程式では階数に応じて積分を行うことで解を得るので、$n$階常微分方程式の解は$n$個の未定パラメータを含むと言える。

 ここで、積分を行ったことにより積分定数という「未定のパラメータ」が解に入り込んだことに注意しよう。このパラメータ(積分定数)の未定性のおかげで解は1本の曲線ではなく曲線「群」となる。

線形常微分方程式

線形常微分方程式とその分類

 「線形常微分方程式」とは、求めたい関数$\ycol{y}=f\kakko{\xcol{x}}$とその微分(微分の階数は何階でもよい)に関して1次以下の式のみを含む常微分方程式である。特に$\ycol{y}$の0次(これは定数という意味ではなく、$\xcol{x}$のみの関数であっても「$\ycol{y}$の0次」である)を含まない場合を「線形斉次」、含む場合を「線形非斉次」と呼ぶ。「斉次」とは次数が揃っていることで、「非斉次」はそうでないこと。「線形斉次」で「1次式のみ」という意味になる。

 $n$階の線形非斉次常微分方程式は \begin{equation} \left( A_n\kakko{\xcol{x}}\left(\ddx\right)^n +A_{n-1}\kakko{\xcol{x}}\left(\ddx\right)^{n-1} +\cdots +A_{1}\kakko{\xcol{x}}\ddx +A_0\kakko{\xcol{x}} \right)\ycol{y} =C\kakko{\xcol{x}} \end{equation} と書くことができる。右辺においた、線形非斉次常微分方程式の0次の項$C\kakko{\xcol{x}}$($\ycol{y}$を含んではいけないが、$\xcol{x}$の関数であってもよい)のことを「ソースターム(source term)」あるいは単に「源」または「ソース」と呼ぶ話し言葉では「ソース」と呼ぶことが多い。このように呼ぶ理由は、このような方程式が「$C\kakko{\xcol{x}}$という量が$\ycol{y}\kakko{\xcol{x}}$を作り出す」という法則を表現することが多いからである。たとえば「ストーブがあると周りは温度が高い」「質量があると周りに重力場ができる」「電荷があると周りに電場ができる」などの場合「ストーブ」「質量」「電荷」がソースである(こういう現象も微分方程式で表現できるのだ)。。ソース$C\kakko{\xcol{x}}$がない場合、この方程式は「線形斉次常微分方程式」となる。

重ね合わせの原理

 線形常微分方程式の応用として面白いのは、以下の事実である。


線形非斉次常微分方程式の重ね合わせの原理

「$C_1\kakko{\xcol{x}}$を源とする解」と「$C_2\kakko{\xcol{x}}$を源とする解」の和は「$C_1\kakko{\xcol{x}}+C_2\kakko{\xcol{x}}$を源とする解」。


 これを数式で確認しておこう。 \begin{equation} \small\begin{array}{rlll} & \left( A_n\kakko{\xcol{x}}\left(\ddx\right)^n +\cdots +A_{1}\kakko{\xcol{x}}\ddx +A_0\kakko{\xcol{x}} \right)y_1\kakko{\xcol{x}} &=C_1\kakko{\xcol{x}}\\ & \left( A_n\kakko{\xcol{x}}\left(\ddx\right)^n +\cdots +A_1\kakko{\xcol{x}}\ddx +A_0\kakko{\xcol{x}} \right)y_2\kakko{\xcol{x}} &=C_2\kakko{\xcol{x}}\\[3mm] \hline & \left( A_n\kakko{\xcol{x}}\left(\ddx\right)^n +\cdots +A_{1}\kakko{\xcol{x}}\ddx +A_0\kakko{\xcol{x}} \right)(y_1\kakko{\xcol{x}}+y_2\kakko{\xcol{x}})&=C_1\kakko{\xcol{x}}+C_2\kakko{\xcol{x}}\\ \end{array}\label{ConeCtwo} \end{equation} となる。

 上の計算において$y_1$に関する式を定数$\alpha_1$倍し、$y_2$に関する式を定数$\alpha_2$倍してから足すことにすれば、 \begin{equation} \left( A_n\kakko{\xcol{x}}\left(\ddx\right)^n +\cdots +A_{1}\kakko{\xcol{x}}\ddx +A_0\kakko{\xcol{x}} \right)(\alpha_1 y_1\kakko{\xcol{x}}+\alpha_2 y_2\kakko{\xcol{x}})=\alpha_1 C_1\kakko{\xcol{x}}+\alpha_2C_2\kakko{\xcol{x}} \end{equation} という、和を「線形結合(linear combination)」「線形結合」というのは(難しげに聞こえるかもしれないが)「定数倍と足算を組み合わせた演算」のことである。「$C$は$A$と$B$の線形結合である」というのは「$A$と$B$をそれぞれ定数倍してから足算すれば$C$になる」(式で書けば$\alpha A+\beta B=C$)を短く言っているに過ぎない。に拡張した式も作ることができる。

 ソースが電荷である場合なら、これは「+電荷を置いたときの電場」と「ー電荷を置いたときの電場」を解としてもとめておけば「+電荷とー電荷が両方あるときの電場」は足算で計算できるよ、ということ。つまり重ね合わせの原理は問題を劇的に簡単にしてくれるのである。
 同じような複数のソースがある例としては台風が二つある場合の「台風による風」などがあるが、台風の場合は線形ではない部分が効いてくるので単なる重ね合わせにならないのが難しいところ。

 もっとも単純な場合として、$C_1\kakko{\xcol{x}}=C_2\kakko{\xcol{x}}=0$の場合(つまり、線形斉次の場合)を考えよう。この場合は重ね合わせの原理は、


線形斉次常微分方程式の重ね合わせの原理

 線形斉次常微分方程式に二つの解$y_1\kakko{\xcol{x}}$と$y_2\kakko{\xcol{x}}$があれば、その線形結合$\alpha_1 y_1\kakko{\xcol{x}}+\alpha_2 y_2\kakko{\xcol{x}}$も解である。


となる。このことに、前に述べた$n$階常微分方程式の解は$n$個の未定パラメータを含むを組み合わせると、$n$階の線形斉次常微分方程式の解で独立なものは$n$個しかないことがわかる。

 なぜなら、もし$n$階の線形微分方程式の解として線形独立「線形独立(linearly independent)」とは「線形結合で作ることができない」ということ。$A,B$の線形結合が$\alpha A+\beta B=C$となる場合「$C$は$A,B$に線形独立ではない」と言う。逆に、どう$\alpha,\beta$を選んでも$C=\alpha A+\beta B$とできない場合が「線形独立」。「線形独立ではない」ことを「線形従属(linearly dependent)」とも言う。なものを$y_1\kakko{\xcol{x}},y_2\kakko{\xcol{x}},\ldots,y_m\kakko{\xcol{x}}$というふうに$m$個見つけたとすると、それらの線形結合 \begin{equation} \alpha_1y_1\kakko{\xcol{x}}+ \alpha_2y_2\kakko{\xcol{x}}+ \cdots +\alpha_my_m\kakko{\xcol{x}} \end{equation} もまた解である。つまり、$m$個の線形独立な解があれば、未定のパラメータ$m$個を含む解を作ることが可能になる。しかし未定のパラメータは$n$個しかないはずなので、$m\leq n$である。

別の言い方をすると、「$n$階線形斉次常微分方程式の解を$n$個見つけたら、それ以上探さなくてよい」になる。この事実は、実際に微分方程式を解くときに重要である(解がいくつあるかわからずどんどん探さなくてはいけないというのはぞっとする)。

 では具体的に線形常微分方程式を解いていこう、というところで時間が来たので続きは来週。

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

タブレットでいろんな関数を見て、どうしてこうなるのかな?と考えるのが楽しかった。

微分方程式は物理Iで少し触れてたけど、この授業でより深く理解できた。
微分方程式は物理ではずっと使います。

簡単なことを難しく考えてしまうので、柔軟な考えができるように頑張る。
線形に苦手なイメージがあったんですが、思ってやり簡単で便利だなと思いました。
重ね合わせが難しそうだったけど、思ったより簡単で良かった。
↑のような「言葉だけ聞いて難しいと思ってた」という感想が結構あった。
そうなんです、わかってしまったらなんてことはない話なんです。

中学で習ったものが微分方程式で訳に立つとは思わなかった。
後で役に立つから中学で教えているんですよ!

数学が美しいのか、美しく数学を作ったのか。
どっちでしょうね。

今まで解いてきた物理の問題が上部便方程式で解けるようになる、マスターできるように頑張る。
物理の問題の多くは微分方程式を解くことになるので、しっかり身につけましょう。

だんだんと前期に比べて用語や 内容が大学の数学っぽくなってきていて、気を引き締めなければと思いました。
そりゃ大学の数学ですから。

台風おもしろそう。
線形斉次ですまない世界なので、結構難しいですよ。

理屈はわかったけど、これを使えるのはまた難しそうです。実際の例を見て使い方をマスターしたいです。
実際に使っていかないと、自分の身にはつかないですからね 。