今日の講義の内容
前回ルジャンドル変換の一般論をやったので、今回はまず理想気体の場合で具体的計算をやりました。
特に理解して欲しかったのは、理想気体の内部エネルギー$U$を$T,V,N$の関数として表すと、
$$
U(T,V,N)=Nu + cNRT
$$
という味もそっけもない関数になり、ある意味簡単でいいのだけど、これではここから$P$や$V$の情報を取り出すことは不可能。
しかし、完全な熱力学関数になるように、$U$を$S,V,N$の関数として表すと、
$$
U[S,V,N]=cNR\times{T^*(v^*N)^{1\over c}\over V^{1\over c}}\exp\left({S\over cNR}-1\right)+Nu
$$
となり、これを微分するとちゃんと$P=-{\partial U\over\partial V}$で圧力を求めることができるのである。
授業の後半では、ギッブスの自由エネルギーについてさらに話したが、内容はにある通り。
ついでに、高校物理などでは「定積比熱は${3\over 2}R$、定圧比熱は${5\over 2}R$」などと習ったと思うが、あの違いは実は$F$と$G=F+PV$の違いである。定圧過程で使う$G$の方が$+PV$がついている分、余計に熱が必要、ということが二つの比熱の差に現れている。
最後に、小テスト。
$$
F=NRT\mathrm e^{-\alpha {V\over N}}
$$
という架空のヘルムホルツ自由エネルギーを考える(この$F$は架空のものなので、現実的ではない点をいくつか持っていることに注意)。
- 圧力を求めよ。
- $F\to G$のルジャンドル変換をして$G$を求めよ。
- (時間が余った人への問題:点数化しない)${\partial G\over\partial p}$が何になるかを「確認」せよ。
教科書・ノートはいくらでも見て良い。
解答
- $p=-{\partial F\over \partial V}$をちゃんと計算して、$p=\alpha RT\mathrm e^{-\alpha {V\over N}}$。
- $G=F+pV$を計算するのだが、ここで大事なのは『ルジャンドル変換する』ということは変数を$V\to p$と変えるということなので、$V$を使わずに$p$で表さないと(つまり、$G[T,p;N]$の形にしないと)いけない。そのため、$p=\alpha RT\mathrm e^{-\alpha {V\over N}}$から$V=-{N\over\alpha}\log{p\over \alpha RT}$と計算しておく。
$$
G=\overbrace{NRT\mathrm e^{-\alpha {V\over N}}}^F+p\overbrace{\left(-{N\over\alpha}\log{p\over \alpha RT}\right)}^V
={N\over \alpha}p-{pN\over\alpha}\log{p\over \alpha RT}
$$
-
$$
{\partial G\over \partial p}={N\over \alpha}-{N\over\alpha}\log{p\over \alpha RT}-{Np\over\alpha}{1\over p}=-{N\over\alpha}\log{p\over \alpha RT}=V
$$
となって、結果は$V$になる(ルジャンドル変換の性質からして当然である)。
途中でヒントとして「ルジャンドル変換したからには$G$は$T,p,N$で表さなくちゃダメだぞ〜〜」と言った。そもそもルジャンドル変換という計算が何をするものなのかがわかっていれば、$V$が残った形ではルジャンドル変換したことにならないのがわかるはずである(それがわからなかった、という人はもう一度勉強やり直し!)。
$G$を$T,p,N$の関数として書くことがちゃんとできてないと、最後の${\partial G\over \partial p}$を計算しても$V$に戻ってこないはずである。
★テストに関するお知らせ
来々週がテストですが、テストではA41枚(裏使ってよし)の「自作カンニングペーパー」のみ、持ち込みを認めます。「自作」は友人との合作を含めます(コピーはダメ)。復習して勉強しつつ、まとめを作成して持ってきてください。
受講者の感想・コメント
青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。
F,G,H,Uがルジャンドル変換で結びつくことを実際の計算で確認して、本当にそうなっていることがわかった。
本当になっているです。でもそれはやっぱり自分で手を動かして確認しないと実感できないよね。
定圧比熱のところで、高校の時にやっていたことをより深くやっていたことを知り、面白いと思った。
高校物理にも、「深い」話が結構あるものです。
ルジャンドル変換のやり方はわかったが、使うタイミングがわからない。
「何を使ってエネルギーを表したいか」が変化したとき、ルジャンドル変換の出番です。
計算は難しいですね。現象は簡単なのに難しい計算ばかり…。
現象が簡単でも、数学使って表して考えていくのは、それなりにたいへんです。
理想気体の計算でもややこしいのに、現実の気体は相当難しそうだと思いました。
ファンデルワールス気体でも、かなり面倒です。
小テストできなかった(同様の関数ものすごく多数)。
う〜ん。ちゃんと微分して計算してくれればいいだけなんだけどなぁ。