今日の講義の内容

 テキスト第4章(PDF:クリックしてダウンロード)に入りました。

 最初にこの後やる内容の予告。このあと、断熱操作と等温操作という二つの操作の場合で、それぞれに対応する「系が仕事をすると、その分だけ減る物理量」(すなわちエネルギー)を定義していきます。今日はそのうち、断熱操作の方。

 空気圧縮による発火をやろうとピストンを押しまくったが今日は調子が悪くて発火せず。

 続いて、

を使って「ピストンを動かし、膨張/収縮をして元に戻したとき、系の温度が上がっていく」ことをアプリを動かしながら確認し、それはなぜかということを考えてもらったうえでPlanckの原理について説明した。

 この段階で出た質問(いろいろ出たんだけど中身を全部覚えてなくて雰囲気のみ)。

 等温の環境のときもこうなるんですか
 等温の場合は次の章でやるけど、その場合は環境の温度に戻っちゃうので「温度が上がる」ってことはないです。しかし「系が負の仕事をしちゃう」という点は同じで、それもまた熱力学第2法則のもう一つの表現になってます。
 たとえばピストンを動かした後で手を離した場合、手を離した後では外から仕事をしてないことになりますが(その後は手は仕事をしないのでは?)。
 その場合は手はピストンに運動エネルギーを与えて、その運動エネルギーがなくなるまではピストンが動く、ということになるので、結局手が与えたエネルギーの分気体がエネルギーを得る(熱くなる)のは同じです。

 そのあと断熱仕事について説明し、これをつかって内部エネルギー$U$が定義できるよ、というところまでやりました(4.4節の終わりまで)。次回は4.5節で、理想気体の場合の断熱操作についての説明からやります。

受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

 主なもの、代表的なもののみについて記し、回答しています。


高校のとき断熱状態を習ったときはいまいち必要性を感じなかったが、エネルギーの定義に必要であると知って面白い操作だなと思った。
高校の範囲でも結構重要だよ。

前にニュースで「○○大学が量子力学で熱力学の法則を導くことに成功か」といったものをみたことがあるが、今日で何をどうしたかったのかが少しだけわかった。
第2法則だと思いますが、実際難しいんですよ。

断熱操作をする環境で速く動かすと熱が大きくなっていくのは面白いと思った。
面白いのはいいんだけど「熱が大きくなっていく」は間違い! 「温度が高くなっていく」と言わないと。

エネルギーの定義までに要請がたくさん。
熱力学は確かに要請が多いけど、全部重要です。

先生はいつでも半袖なのに仕事を表すときの手が長袖を着ているのは違和感を感じた。
長袖の方が「手」っぽく書けるからなぁ。

だんねつでつねんだ(←回文)。
「つねんだ」ってなんだよ!!

変化が目に見えないからめんどっちい。
その面倒なのをどう見えるようにしていくか、ってところが物理の醍醐味。

要請はいくらでもあるんですか。
必要なだけ、つけます(必要な分だけ、なるべく少なくなるように)。

要請がいっぱいでてきてややこしくて大変だった。
いっぱいかもしれないけど、割りと「そりゃそうだな」と納得できませんか?

力学とかと違って導出するとかではなく、経験上導かれる法則が多いし、熱力学を作った人達は、身近なことに色々気づく人だと思った。
熱力学は確かに経験則をよく使うのだけど、力学も最初は身近なところから始まるのは同じです。

Planckの原理には納得でした。
物理法則一つ一つに納得できるといいですね。

力学や電磁気学にないような現象や考え方が出てきたので非常に驚いた。
でも自然ってこういうものでしょ?

地球を断熱壁で囲ってピストンを動かせば太陽なくても地球は暖かくなるのかな?
なりますけど、ピストン動かすにはエネルギー要りますよ。

熱力学第2法則は不等式が出て来る唯一の物理法則であるというのが何か深遠な気がして感動した。つきつめていけば時間の一方向性の原理と等価なのではないか? この法則こそが熱力学の本質的な点、力学との根本的な差異であるという気がする。これをミクロな統計力学とかで基礎づけようとするのは、技術的問題点よりも思想的な問題だと思う。
時間の方向性を決める法則になっているのは間違いないですね。統計力学で基礎つけようとすると確率の問題なども入ってきて、いろいろ悩ましい。

前野先生が物理の道に進んだきっかけは何ですか?
SF小説が好きだったことですね。

いつから物理が楽しくなりましたか? どんなときに楽しいと思いますか。
子供の頃から楽しい。何がと言われると、「あ、こういうことなのか!」とわかった瞬間。

授業の内容