
波動現象が発生する条件
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水面にできる波はもちろん、前節であげた3つの条件を満たしている結果起こる。水面に高い部分ができると、その高い部分は回り同様低くなろうとする1。この復元力によって高い場所が低くな
るということは、当然ながら回りに水が移動することであって、結果として回りの水位が高くなる2。こうして伝播していくのが水面の波である。
音は空気の振動である。具体的には、空気の圧縮と膨張による振動である。たとえば音叉を叩いたとしよう。音叉の棒が振動すると、その振動によって空気が
圧縮されたり膨張されたりする。圧縮された空気は高圧になり、回りを押す。逆に膨張すると定圧になり、むしろ回りの空気から押されることになる。この膨張
および圧縮と、そこから元に戻ろうとする作用が復元力として作用する。また、圧縮した空気が回りを押した結果として、今度は回りが圧縮されることになる。
これが音の伝播の原因である。空気は窒素分子や酸素分子という、質量を持った粒子の集合であるから、当然慣性を持つ。ゆえに、音の振動は遠くへ伝わる波と
なる。
人間に聞こえる音の振動数は20Hzから20000Hzと言われている。Hzというのはへルツと読み、1秒に何回振動するかを表す3。音の振動数の違いは「音の高さ」とし
て認識される。音楽では、ピアノの鍵盤の真ん中あたりにある「ラ」(A4という記号で表す)の振動数が440Hzと決められている4。音の速度(音速)は常温ではだいたい
340m/s程度である。
いっぽう、光は電磁場の振動である。
(1)ある場所に振動する電流または電束密度が発生する(たとえば電波のアンテナなら周期的に変動する電流を流している)。
(2)「電流」もしくは「電束密度の時間変化」は、周囲に渦をまくような磁場を伴う(rot→H=→j+[∂/∂t]→D)。
(3)周囲の空間の磁場が時間変動には、さらにその周囲に渦をまくような電場を伴う(rot→E=−[∂/∂t]→B)。
以上がくりかえされることにより、空間の中を電場と磁場の振動が広がっていく。
電磁場の場合には何が「復元力」および「慣性」になるのであろうか?
電磁誘導の性質として「磁場の変化を妨げる向きに電流を流そうとするような電流が発生する」ということを聞いたことがあるであろう。同様に、「電場の変
化
を妨げるように磁場が発生する」という現象も起こる。これらはまさに「電場(磁場)を作らせまいとする」=「復元力」と「できた電場(磁場)を消すまいと
する」=「慣性」なのである。この時、電磁誘導などによってできる電場や磁場は今考えている場所から離れたところにもできるため、電磁波も伝播していく。
Maxwellはその波動(電磁波)の伝播速度が光速と一致していることに気づき「光は電場と磁場の波である」と気づいた。
なお、真空中の光の速度299792458m/sで、これは今や定義値である。
人間の眼に見える光の波長はだいたい4×10−7mから8×10−7mである。電場や磁場のできる方向と電
磁波の進む方向は垂直である。それゆえに、「光(電磁波)は横波である」と言われる(逆に縦波の電磁波はない!)。
この「波長が長い波はじゃまされにくい」という性質は「散乱」という現象にも現れる。これは障害物によって波が方向を変える(反射したり、少し曲がった
方向に進んだり)することであるが、波には「波長が障害物のサイズよりも長いと散乱されにくい」という性質がある。空が青いのは、波長が短い青の方が空気
による散乱が大きいからである。逆に夕焼けが赤いのは、赤い光は散乱されにくいので、夕日の太陽光が(昼に比べて)長い距離の大気中を走っても赤い成分が
散乱されずに残るからである。