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★2013年6月28日(金)13:30-14:30

場 所:理313教室

講演者:Roland Resel 教授(グラーツ工科大学, オーストリア)

講演題名:「Buried interfaces in organic electronic devices: X-ray reflectivity studies 」

講演概要:

The properties of the interfaces are crucial for the performance of electronic devices, since the charge transport at metal / semi-conducting interfaces as well as along the semiconducting / dielectric interfaces are strongly determined by the interface properties. In organic electronic devices besides the interface roughnesses also the orientation of the molecules at the interface is crucial due to the large anisotropy of the charge transport. The talk will show how surface sensitive x-ray scattering techniques like x-ray reflectivity and grazing incidence x-ray scattering can be used to characterize buried interfaces in organic electronic devices. Examples on thin film transistors and organic photodiodes will be given. The properties of metal / organic interfaces and polymer / polymer interfaces will be described on specific examples and the influence to device performances will be discussed.

★2013年7月5日(金)16:20-17:20

場 所:理313教室

講演者:野田幸男先生(東北大学名誉教授)

講演題名:磁気誘起強誘電体と有機物強誘電体 −新奇な強誘電体と構造物性−

講演概要:

誘電体は実用的な面も含めて長い研究がある。強誘電体の発見は1921年のロッシェル塩のDEヒステリスループの報告が最初(Phys. Rev. 17 (1921) 475)といえるが、それいらい100年近くがたっている。全ての学問で、ある分野に属する新物質の発見とその数は相転移の「核形成−ドメイン成長」と同じ曲線をたどって飽和してしまう。強誘電体の分野も同じ道をたどっていたが、「磁気誘起強誘電体」、「有機物強誘電体」などの新分野が起こったことにより、新たな局面、新たな時代を迎えている。本講演では、この新しい強誘電体の概要と実験的側面、特にX線や中性子による構造物性研究について解説する。

★2013年11月18日(月)16:20-17:20

場所: 理313教室

講演者: 川北至信・セクションサブリーダー(原子力機構・J-PARCセンター、中性子利用セクション)

演題: 量子ビームを用いた構造不規則な物質の構造とダイナミクス

内容:

J-PARCの物質・生命科学実験施設では、世界最強レベルのパルス中性子を用いた中性子散乱実験が可能となっている。様々な新しい中性子分光デバイスやevent dataを記録する新しい計測システムにより、これまでの中性子実験とは次元の異なる実験が可能となりつつある。本講演では、そのJ-PARCの装置群や、先進的な研究成果、ガラスや液体などいわゆる構造不規則系における最新の成果を紹介しながら、今後の中性子実験の発展性を示したい。

★2013年12月16日(月)17:20-17:20

講演題目: ガドリニウム化合物で四極子が見える?

講演者: 堀田 貴嗣・教授(首都大学東京大学院理工学研究科物理学専攻)

場所: 理313教室

内容:

3価のGdイオンは7個の4f電子をもち、フント則から$S={7\over2}$のスピンが形成され、軌道角運動量はゼロになり、結晶場の影響は受けない、というのが「教科書」の理解である。しかし、上記の考えはLS結合に基づくものであり、実際にはクーロン相互作用は有限であることから、四極子の影響が生じる可能性がある。そこで、クーロン相互作用とスピン軌道結合の両者を考慮して、f電子が7個の場合に四極子感受率を簡単な平均場近似で計算した結果を報告する。さらに、Gdスクッテルダイトを念頭において、弾性定数のソフト化の検出の可能性についても議論したい。

★2014年1月7日(火)17:00-

講演題目:「いざ幕開け重力波天文学〜重力波観測の現状と展望〜」

講演者: 高橋弘毅 氏(長岡技術科学大学大学院工学研究科経営情報系)

場所: 理313教室

内容:

一般相対論によりその存在が予言されている重力波が、中性子星やブラックホールなどのコンパクト星の連星系(コンパクト連星)から放射されていることは、連星パルサーPSR1913+16 などの電波観測で間接的に明らかになっています。しかし、重力相互作用は非常に弱いため、この重力波を直接検出することは未だ実現していません。近年のレーザーを用いた微小計測技術の発展により、重力波を直接検出することが実現可能となりつつあります。

重力波の検出は、一般相対論の検証において、動的な重力場の性質に関するものとして非常に重要であると同時に新しい天文学を開く可能性を秘めています。特に、途中の物質との相互作用が小さいという重力波の特質から、電磁波による観測とは質の異なった新しい情報が得られることが期待されています。このような「重力波天文学」の創生に向け、日本の TAMA300、米国の LIGO、欧州の GEO600、Virgo は 2000 年前後に建設され、重力波検出に対する技術的な有効性を実証してきました。

さらに、LIGO と Virgo は感度向上のための改良が行われており2016 年の稼働をめざしています。我が国では、大型低温重力波望遠鏡 KAGRA 計画の一部が「最先端研究基盤事業」の補助対象として採択され、岐阜県神岡地下に建設が開始されています。本発表では、KAGRAの現状とKAGRA 等の重力波 検出器が狙うサイエンス、得られたデータから重力波の情報を取り出す方法などについて議論をします。

★2014年1月30日(木)16:30-

''場所:"理313教室

講演者: 田代 徹 氏 (お茶の水女子大学)

講演題名: 階層バスモデル―まねする集団でひろがる流行―

講演概要:

 流行は社会の中でどの様なメカニズムで伝搬していくのだろうか?

 社会を構成している最小要素は我々人間であるが,特に我々が意図していなくとも(あるいは意図したものとは全く別な形で)流行は発生し,いつの間にか消滅するものや,そのまま社会に根付くものもある.私たちは社会を多体系の一種とみなし,物理学の手法にのっとり,人と人とのやりとり(相互作用)で本質的なものを抜き出し,モデル化し,流行現象を再現することを目指す.

 科学の問題としてこの現象を扱うためには,流行がどの程度広まっているかを示す定量的なデータが必要になるが,我々は普及率を採用した.普及率の動的推移を解析する従来の方法に,ロジスティック方程式とバスモデルを使ったものがある.ロジスティック方程式は元々は生物の個体数増加を記述するトイモデルであり,バスモデルはロジスティック方程式にない,広告の効果を表す新たなパラメータを含む.しかしなぜこれらのモデルが普及率の時間変化に適用できるのかという問いは,決して自明なものではないし, 今日まで原理的な答えは存在しないと言って良い.

 そこで我々は先ず,これらのモデルで記述される普及率の背後にある,人と人との相互作用を明らかにする.次にその不自然さを指摘し,私たちの行動に即したより自然な相互作用を取り入れたモデルを構築し,「階層バスモデル」と呼ぶことにする.更に実際の商品の売り上げデータをこのモデルでフィッティングし,従来のモデルとの比較を行う.

★2014年3月10日(月) 16時より

場 所: 理学部313教室

講演者: 播磨 尚朝 先生 (神戸大学大学院 理学研究科)

講演題名:「結晶の電子状態に現れる相対論効果とパリティ対称性の破れ」

講演概要:

 相対論効果を私たちの日常生活において考える機会はほとんどない。しかしながら、物質の電子状態を通じても相対論効果は広く日常生活に関わっている。相対論効果を考慮した場合に、一電子のシュレーディンガー方程式には、スカラー項(質量補正やダーウイン項)とスピン軌道相互作用という2種類の補正項が現れる[1]。スピン空間と実空間を結びつける後者の相互作用は、磁気異方性やマルチフェロイクスの起源として議論されているが、前者のことはあまり話題に上らない。実は、いずれの相対論効果も異なった形で日常的に現れている。

 典型的な電子の速度をuとして、(u/c)^2の割合で相対論効果は現れる。通常の電子状態のエネルギーでは(u/c)^2は極めて小さい。ではなぜ、相対論効果は現れるのだろう。それについては、原子やイオンの正電荷が多くの内殼電子によって遮蔽されていることに注意する必要がある。例えば、金の1s電子に対する(u/c)^2は約0.3であり、金の内殼電子には大きな相対論効果が生じている。この相対論効果によって、金の5d電子の励起が可視光域で可能になり、私たちは金色を目にすることができる。実は、スピン軌道相互作用の大きさも原子核近傍の強いポテンシャルでほぼ決まってしまい、原子間のポテンシャルの変化には極めて鈍感である[2]。

 さて、通常の物理現象は空間反転を行っても変化しない。このことをパリティ対称性がある、または、パリティが保存されている、と言う。ところが、結晶には空間反転対称性がないものが数多くある。それらは、原子位置で空間反転対称性がないものと巨視的な結晶全体として空間反転対称性のないものに大別される[3]。前者の典型例をダイアモンド構造とすれば、後者の例は閃亜鉛鉱型(ジンクブレンド型)構造となる。この他にも表面状態を考えれば、空間反転対称性が欠如していると考えることができる。結晶でのパリティ対称性の破れは一般に電子状態の縮退を解く。この状態の分裂の背景にはスピン軌道相互作用が重要な役割を果たしているが、分裂の大きさはスピン軌道相互作用の大きさでは決まらない[2,3]。バンドのパリティ対称性の破れによるエネルギー利得によって相転移するCd_2Re_2O_7の電子状態を例に、パリティ対称性の破れと電子状態の関係について解説する。

 講演内容の一部については、新潟大学の柳瀬陽一氏との共同研究である。

[1] D D Koelling and B N Harmon, J. Phys. C: Solid State Phys. 10 3107 (1977).

[2] 柳瀬陽一・播磨尚朝、「スピン軌道相互作用と結晶中の電子状態」(その1〜その3)、固体物理 46-5, 229 (2011); 46-6, 283 (2011); 47-3,101 (2012).

[3] 播磨尚朝、「群と結晶」、数理物理(特集:群と物理学)601 34  (2013).


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Last-modified: 2014-04-07 (月) 22:23:48 (3665d)