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#mathjax()
*「根底からの物理」行列のできる物理屋をめざす(その2) [#l879b570]
前回同様固有値や固有ベクトルについて説明した後、その意味と行列式の計算を考えた。
${\bf M}$を行列とする。${\bf M}\vec v=\lambda \vec v$を満たす固有ベクトルがあると、固有ベクトルの前では行列${\bf M}$は、数$\lambda$に置き換えることができる。
物理では行列${\bf M}$を何回もかける計算をしなくてはいけない。たとえば、
$$
\exp({\bf M})=\sum_{n=0}^\infty {1\over n!}{\bf M}^n
$$
を計算することもある。固有ベクトルに対してであれば、
$$
\exp({\bf M})\vec v=\exp(\lambda)\vec v
$$
とできるわけである。
&color(Green){固有ベクトルじゃないベクトルだと計算できないんですか。};
&color(Red){固有ベクトルじゃない時は、固有ベクトルを使って展開します。};
2次元であれば独立なベクトルは2個しかないので、2個の固有ベクトル$\vec v_1,\vec v_2$があったとすれば、任意のベクトル$\vec V$は
$$
\vec V=\alpha\vec v_1+\beta\vec v_2
$$
として、$\alpha,\beta$を適切に選べば表現できる。それぞれに対して固有ベクトルの式を使って、
$$
\exp({\bf M})\vec V=\alpha \exp(\lambda_1)\vec v_1+\beta \exp(\lambda_2)\vec v_2
$$
と計算できる。
**複素数固有値の意味 [#ga52bf0d]
前回ちょっとだけ触れた、複素数の固有値についても、例として
$$
{\bf M}=\left(\begin{array}{cc}0&-1\\1&0\end{array}\right)
$$
という行列を考えた。この行列は
#ref(rotM.png)
のような、90度回転の行列である。
固有ベクトルが「変換で変わらない方向」を表現しているのだとすると、回転という変換には固有ベクトルなどないだろう、と思われる。ところが面白いことに、ある点に目をつぶれば、あるのである。
具体的にこの行列で計算してみると、
$$
\lambda^2 +1=0
$$
で、$\lambda=\pm {\mathrm i}$という答が出てくる。つまり、「実数の範囲で求める」ということに目をつぶれば、固有値はちゃんと出る。ただ、それを図で表現するのは、ちょっと面倒なことになる。
「虚数の固有値とはなんだ!」と言いたくなるところだが、90度回転を2回やると180度回転になることを考えると、
$$
{\bf M}^2 \vec v= -\vec v
$$
である。つまり自乗して$-1$になるのだから、$\pm {\mathrm i}$でいいのだ、ということになる。
「複素数で固有値を求めたとしても、それは役に立つのだろうか?」と思う人もいるかもしれないが、実は線型微分方程式を解く時など、ものすご〜〜〜く、役に立つ。たとえば、
$$
{\mathrm d \vec v\over \mathrm d t}={\bf M}\vec v
$$
のような微分方程式を解く時、解は
$$
\vec v = \exp({\bf M}t)\vec v_0
$$
のようになるのだが、もし我々が複素数を知らなかったら、$\lambda^2=-1$となったところで計算が止まってしまう。
**行列式の意味 [#l86a269d]
ここで、プログラムで行列式の値を出して、「どんな時に行列式が0になるか」を感じてもらった。
#ref(det1101.png)
#ref(det11051.png)
#ref(det1111.png)
#ref(det11151.png)
#ref(det1121.png)
みているとわかるように、行列式=0とは、変換後の面積が0だということである。実は、行列式は2次元ならば、
#ref(detim.png)
という意味がある。3次元の場合は頭に思い浮かべて欲しい。4次元以上だと絵には書きづらいが、やはり「体積が何倍になるか」という意味を持った量だと思ってよい。
行列式が0の行列には逆行列がない。それは「有限の体積を体積0にしてしまうような変換」をすると、元に戻せない、と考えると納得がいく。
ただし、行列式で定義された面積や体積には「負」が有り得ることに注意。面積の場合でいえば「反時計回り方向がプラス」という取り決めに対応している。
#ref(Epm.png)
この取り決めのため、行列式には、
\begin{equation}
\det
\left(
\begin{array}{cccc}
M_{11}&M_{12} &M_{13} &\dots \\
M_{21}&M_{22} &M_{23} &\dots \\
M_{31}&M_{32} &M_{33} &\dots \\
\vdots&\vdots&\vdots&\\
\end{array}
\right)
=-\det
\left(
\begin{array}{cccc}
M_{12}&M_{11} &M_{13} &\dots \\
M_{22}&M_{21} &M_{23} &\dots \\
M_{32}&M_{31} &M_{33} &\dots \\
\vdots&\vdots&\vdots&\\
\end{array}
\right)
\end{equation}
のように、となりあう列を取り替えると符号がひっくり返るという性質がある(となりあう列でない二つの列の場合、となりあう列の交換を奇数回やることになるので、やはり符号は反転する)。
また、
\begin{equation}
\det
\left(
\begin{array}{cccc}
M_{11}&M_{12} &M_{13} &\dots \\
M_{21}&M_{22} &M_{23} &\dots \\
M_{31}&M_{32} &M_{33} &\dots \\
\vdots&\vdots&\vdots&\\
\end{array}
\right)
=
\det
\left(
\begin{array}{cccc}
M_{11}+kM_{12}&M_{12} &M_{13} &\dots \\
M_{21}+kM_{22}&M_{22} &M_{23} &\dots \\
M_{31}+kM_{32}&M_{32} &M_{33} &\dots \\
\vdots&\vdots&\vdots&\\
\end{array}
\right)
\end{equation}
のように、ある列の定数倍を別の列に対しても行列式は変化しない。これは、そうやっても$n$次元の体積(2次元の場合では面積)が変化しないからである。
#ref(onajiS.png)
このようにして、
----
- ある行(列)の定数倍を、別の行(列)に足したり引いたりしてもよい。
- ある行(列)と別の行(列)をいっせいにとりかえてもよい。ただし、とりかえた時には行列式の値に$-1$をかける。
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という操作を続けていくことで、行列式を計算することができる。
----
↓コメントなどは以下にどうぞ。
- !S!WCRTESTINPUT000001!E! -- [[!S!WCRTESTINPUT000000!E!]] &new{2016-09-16 (金) 12:30:03};
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