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学位論文発表会(16:20〜理学部313教室)

講演者: 下地伸明(琉球大学 理工学研究科 博士後期課程)

講演題名:
「Electronic States on Silver and Copper Halides Superiionic Conductor」

講演概要:
概要は[[談話会]]のページにて。

イオン結晶中のイオン伝導は金属や半導体の電子伝導に比較して小さい. 
しかし, 通常のイオン結晶と異なり, 固体でありながら電解質溶液中の
イオン伝導と同程度の高いイオン伝導を示す物質群がある. この様な物
質群は超イオン導電体として知られている. 多くの超イオン導電体物質は
固体と液体の性質を合わせ持つ副格子融解構造を示すため,物性理論では
興味深い物質である. この様な特異な性質を持つ超イオン導電体の特性を
明らかにするためには, イオンのダイナミックスと共にイオン移動に伴う
電子状態の変化を考慮しなければならない. これらの事から,我々は代表的
な超イオン導電体を含めた 銀, 銅ハライド化合物のモデルを再現しDV-Xα法
に基づいて解析を行った. 
 γ相(低温相)での銀, 銅ハライド化合物 (AgCl, AgBr, AgI, CuCl, CuBr, 
CuI)の 状態密度の結果から銀ハライド化合物AgCl, AgBr, AgIのp-d混成が
銅ハライド化合物CuCl, CuBr, CuIよりも強い事を確認した. また共有結合
の結果では, 6配位のAgBr, AgClよりも4配位の AgI, CuCl, CuBr, CuIの共
有結合が強くなる結果が得られた. この配位の違いによる共有結合の相違は
Phillipsのイオン性度F_{i}=0.785から求まる共有性度F_{c}=0.215を境に
して 生じているため, 我々の結果はPhillipsの結果と矛盾していない. 
α相ではAgIとCuBrの2つの超イオン導電体のみ解析を行った. AgIとCuBrは
α相において共に同じ平均構造を持つため,DV-Xα法による計算ではモデル
クラスターM_{4}X_{15}を用いて結晶を再現している. γ相では銅ハライド
化合物のp-d混成は確認できない結果が 得られたが, α相では銅ハライド
化合物であるCuBrのp-d混成 を確認する事ができた. また, オーバラップ
ポピュレーションの結果からAgI, CuBr共に 結合と反結合の強さがほぼ等
しく, 打ち消し合っている事を確認する 事ができた. この打ち消し合いが
固体内のイオンの可動性が良くなる1つの起源である という報告もある. 
さらに, 共有結合の結果を星埜等の中性子回折実験のデータと比較する事
で化学結合に対する可動イオン間の相関を解析した. 解析から, 超イオン
導電体α-AgI,α-CuBrでは陽イオン-陰イオン間の共有結合は強く, 陽イ
オン-陽イオン間の共有結合は弱いながら確認する事ができた. 
さらに陰イオン-陰イオン間の共有結合はほぼゼロである事も確認できた.


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