前回のdivの説明がいまいちわかりにくかった様子なので、補足をした。今日はほとんどこれだけで終わってしまった。

追加プリント:divの意味と応用

1 divの意味:水流で考えて

div2D.png

前回の授業とは少し違う形で、divという記号の意味を説明しておこう。説明の都合上、z軸を省略してx-y平面で考えよう。ここに一つの水の流れがある(川をイメージして欲しい)。この川の中に、仮想的な長方形(縦\Delta y、横\Delta x)を入れる。今この長方形内にあった水は、\Delta t秒後にはどこにいることになるであろうか?

実際の川でもそうであるように、水の流れる速度が場所によって違っているとする。その関数を\left(V_x(x,y),V_y(x,y)\right)のように書くことにする。

\Delta tは非常に小さい時間だと考えているので、ほとんどの水はまだ長方形内にいるだろうが、少しだけ外へはみ出すことになる。はみだす水の量を計算してみる。ある場所(x,y)にいる水が\vec V(x,y)=\left(V_x(x,y),V_y(x,y)\right)という速度をもって流れているとする。

まず天井から抜け出る水の量を考えよう。

div2D1.png

右の図の平行四辺形*1の中の水が、時間\Delta tの間に天井((x,y+\Delta y)-(x+\Delta x,y+\Delta y)の線)から流れ出てきた水である。底辺は\Delta x、高さはV_y(x,y+\Delta y)\Delta tとなる(平行四辺形の高さは速度のうちy成分のみで決まることに注意)。これに今考えている水の面積密度をかければ、天井から抜け出る水の量が出る。すなわち、

\int_x^{x+\Delta x}\rho V_y(X,y+\Delta y)\Delta t dX\simeq \rho V_y(x,y+\Delta y)\Delta t \Delta x

である。ここで、x座標を積分の中ではXを使って書いて、(x,x+\Delta x)という範囲の積分で表したが、実際のところ\Delta xは小さいので、右辺のように近似してかまわない。

div2D2.png

同様に、底から抜ける水の量を考える。この図の場合、底((x,y)-(x+\Delta x,y)の線)での水流の速度は下(つまり負の方向)を向いているので、抜け出す量を考える時はマイナス符号が必要となる(つまり、図の-V_y(x,y)\Delta tはこれで正の量である)ので、そこから抜けていく水の量は

-\rho \int_x^{x+\Delta x}V_y(X,y)\Delta t dX\simeq -\rho V_y(x,y)\Delta t \Delta x

である。どちらも、平行四辺形の面積の計算においてはV_yのみしか寄与していない(V_xは関係ない)ことに注意しよう。

div2D3.png

次に、左右の辺から出入りする水の量を考えよう。こちらの場合「左から入り、右から出る」という図になっている点がさっきとは違う。

図の右の辺から出る水の量は、底辺\Delta y、高さV_x(x+\Delta x,y) \Delta tの平行四辺形の面積(図で見る限り台形だが、その差は小さいので無視)に面積密度ρをかけたものになる。今度はV_xのみが関係することに注意しよう。この水の量は、

\int_y^{y+\Delta y}\rho V_x(x+\Delta x,Y)\Delta t dY\simeq \rho V_x(x+\Delta x,y)\Delta t \Delta y

である。

div2D4.png

最後に左の辺で考えると、入ってくる水の量ならば、これまで同様面積に密度をかけて、

\int_y^{y+\Delta y}\rho V_x(x,Y)\Delta t dY\simeq \rho V_x(x,y)\Delta t \Delta y

である(これで正の量となっている)。

しかし、今計算したい、出て行く水の量は

-\rho V_x(x,y)\Delta t \Delta y

と逆符号になる。入っていく量ではなく出て行く量として統一して足し算するために、マイナス符号をつけておく必要があるわけである。

以上で、仮想的な長方形の4つの辺から出て行く水の量を表すことができた。後はこれを全部足した後、単位体積あたり、単位時間あたりの量に書き換える。h

4つを全部足すと、

\begin{array}{rl}& \rho \left( V_x(x+\Delta x,y)-V_x(x,y) \right) \Delta t \Delta y +\rho \left( V_y(x,y+\Delta y)-V_y(x,y) \right)\Delta t \Delta x \\ \simeq &\rho\left( \partial_x V_x + \partial_y V_y \right)\Delta x \Delta y\Delta t\end{array}

となる。これを\Delta x\Delta y\Delta tで割ったもの、つまり単位面積当たり、単位時間当たりに直したものが\rho{\rm div}\vec Vである。

途中で小さいからと無視したものは全て、たとえ残しておいたとしても、最後に\Delta x\Delta y\Delta tで割った後に\Delta xなどを0にする極限を取った時点で消えてしまう。だから計算しなくてもよかったわけである。

この考え方では{\rm div}\vec Vは場所によって違う速度\vec Vで水が流れたことによって今考えている領域に入っていた水がどの程度膨張したのか、を表現する量になる。divは水流やジェットエンジンなどを考える時にも重要であるが、それは流れの物理的性質を表現し計算するのに便利だからである。

もし、実際の水がそうであるように流れていくうちに体積が増えたり減ったりしないのであれば、{\rm div}\vec V=0となる。あるいは今考えた領域の中になんらかの水源があって水が湧き出していると、{\rm div}\vec V>0となるし、どこかに吸い込み口があったり、この水がどんどん蒸発していたりすると、{\rm div}\vec V<0になるであろう。どちらの場合も、{\rm div}\vec Vの値は「単位体積あたりで、その中の水の体積増加」を示すことになる。

なお、湧き出しも吸い込みもないのに{\rm div}\vec V\neq 0だったとすると、必然的に水の密度ρが変化せざるを得ない。その時は上と違って、質量(=密度×体積)について上と同じような計算を行ってやれば、

{\rm div}\left(\rho \vec V\right) = -{\partial \rho\over \partial t}

が成立する。ρが変化する量になったので、ρは微分の内側に入っており、出すわけにはいかない。

この式の左辺は「単位体積から出て行った水の質量」ということになるから、右辺の「単位体積あたりの質量の減少」(マイナスがついているため、ρが減少している時にプラスになる量である)と一致することになる。連続の式は質量保存則の別の表現である。

2 {\rm div}\vec Vの簡単な例

2.1 \vec V=(V_0+ax)\vec e_x- ay \vec e_yの場合

この流れの場合、x=0(y軸上)ではV_x=V_0である。x方向に離れるにしたがって、流速が速くなっていくことになる(a>0の場合で考えよう)。

Vxx.png

前節で考えた仮想的長方形の横幅はどんどん伸びていく(縦幅は変わらない)から、もしy方向の流れがなかったとしたら、{\rm div}\vec V>0である(実際計算してもそうなる)。もしこのように表現できるような電場があったとして、電気力線を書いてみたらどうなるかを示したのが右の図である。流れの方向に線をひっぱっていくと、横線がたくさんひけるが、「電気力線の密度が電場の強さ」という性質を考えると、電気力線がどんどん生まれて増えて行かなくてはいけない。つまりこんな電場があるとしたら、そこに電荷があって、電気力線を出していなくてはいけないわけである。これが水の流れなら、どんどん水が湧き出してないとおかしい、ということになる*2

Vxx1.png

流れにy成分があると、どんどん速くなりつつも、{\rm div \vec V}=0になるようにできる。例えばV_y = -ayのようになっていればよい。その場合の流れの様子を描いたのが右の図である。この場合、仮想長方形は横幅が伸びつつ、縦幅が縮んでいるので面積一定を保つ。つまりこれが水の流れであるとしたら、湧き出しも吸い込みもない。電場だと思って電気力線を描いてみると、どこにも電気力線が増える場所はないが、右に行くほど密度が上がっている(電場が強くなっている)。

この場合のdivは

{\partial V_x\over \partial x}+ {\partial V_y\over \partial y}= {\partial (V_0+ax)\over \partial x}+ {\partial (-ay)\over \partial y}= a-a =0

となってちゃんと0になる。

2.2 \vec V={1\over r}\vec e_r={1\over x^2+y^2}\left(x\vec e_x + y\vec e_y\right)の場合

er.png

これは2次元で点電荷の作る電場の式であると思ってよい。3次元なら点電荷は{1\over r^2}に比例した電場を作るが、2次元ではこうなる。電気力線が円上に広がっていくからである。

x\vec e_x + y\vec e_yというベクトルは、ベクトルr\vec e_rに等しい。そのことは右の図で「x方向にxだけ、y方向にyだけ進む」ということと、「r方向にr=\sqrt{x^2+y^2}進む」ということが同じ意味になることを確認すればわかる。

ゆえに、上の書き方はどちらでも同じである。このベクトルは原点から(x,y)へと向かうベクトルであり、つまりは原点から離れる方向のベクトルである。

このベクトル場のdivをとってみると、

{\partial V_x\over \partial x}+ {\partial V_y\over \partial y}= {\partial \over \partial x}\left({x\over x^2+y^2}\right)+ {\partial \over \partial y}\left({y\over x^2+y^2}\right)= {1\over x^2+y^2}-{2x^2\over \left(x^2 +y^2\right)^2}+{1\over x^2+y^2}-{2y^2\over \left(x^2 +y^2\right)^2}=0

となって確かに0である。

1overr.png

これが電場だとして電気力線の様子を図示したのが右の図である。距離r離れると電場の強さ(電気力線の密度)が反比例して減る({1\over r})ということがわかる。この時電気力線は途中で増えたり減ったりしない。divが0であるということはそういう意味を持つわけである。

この電場に対してdivが0になることは、右図のABCDのような図形を考えるとわかりやすい。図のBCとDAの部分は電気力線は通り抜けない。ABの部分が半径Rの円弧、CDの部分が半径rの円弧だとすると、ABの部分では電場は{1\over R}だが、円弧の長さはR\theta(θは円弧の中心角)であり、CDの部分では電場は{1\over r}だが円弧の長さはr\thetaであるから、この二つの積はABでもCDでも同じとなるわけである。

ただし、原点をかこむような曲線で考えた時だけは、電気力線の総本数は0とならない(divが0とならない)。

ここでは2次元で考えたので、{1\over r}であったが、3次元の{1\over r^2}でも同様の議論ができる。

3 {\rm div}\vec E={\rho \over \varepsilon_0}の簡単な例

heibanD.png

厚さ2dで無限に広い板に、体積電荷密度ρの電荷がたまっている。この時の電場を求めてみよう。板の表面をz=d、裏面をz=-dとなるように直交座標系(x,y,z)を置く。

この場合、対称性から電場はx,yにはよらないだろうし、E_x,E_yも0であろう。

板の外は真空であるから{\rm div}\vec E=0であるから、{\partial \over \partial z}E_z=0である。これまた対称性からE_zがx,yによらないであろうことを考えるとE_zをzのみの関数とすれば、{d\over dz}E_z=0ということであるが、これは結局E_zが定数だということを意味する。

板の内側では{d\over dz}E_z={\rho\over \varepsilon_0}であるから、

E_z = {\rho\over \varepsilon_0}z +C

が解となる。図が上下対称であることを考えると、z=0でE_z=0であろうから、積分定数Cは0としよう。以上をまとめると、E_z

{\rho\over \varepsilon_0}d  (d\le z)
{\rho\over \varepsilon_0}z (-d< z< d)
-{\rho\over \varepsilon_0}d (z\le -d)

という答えが出る。

この後は先週の講義録のガウスの発散定理などの説明を行ったが、その部分のテキストは前回載せた。

学生の感想・コメントから

結局のところ、divを使うことでわかりやすいことってあるんですか?

これから、たっぷりと出てきますとも。

わかったつもりですがわかってないかもしれないので、暇な時に聞きに行くかもしれません。

いつでもどうぞ。質問歓迎。

divとは「怪しげな洋館に5人入っていったのに、4人しか出てこなかった。一人殺されている」ということですね。

divが負の場合は、そうですね(^_^;)。

\int_x^{x+\Delta x}\rho V_y(X,y+\Delta y)\Delta t dX\simeq \rho V_y(x,y+\Delta y)\Delta t \Delta xの近似のところがよくわからなかった。

その時に質問しなきゃ。積分というのは「グラフの下の面積を計算すること」で、幅Δxが小さければ縦×横で面積が計算できる、ということです。

+電荷があるとdiv E>0、−電荷があるとdiv E<0ということでいいんですか?

はい、その通りです。

水流をイメージしての説明で、少しずつdivがわかりそうです。

今後もどんどん使う予定なので、使っていくなかで理解していきましょう。

divという概念は、それがないと解決できない事象があってはじめて、賢い人が作りだしたものなのですか?それとも、元々あった概念を電磁気学が取り入れたのですか?

うーん、その辺の歴史は私も知りませんが、元々は流体などで使われたものだと思います。

\int_{\partial V}\vec E\cdot d\vec S\int_V {\rm div}\vec E dVをどう使い分けるのかが難しいと思った。\varepsilon_0はどこへ消えたんだろう?

どっちで計算しても答は一緒なので、計算してみてできた方を使えばいいんですよ。この式は電場に限った式でなくて、一般的なベクトル場で使える式なので、。\varepsilon_0は関係ありません。

積分の下の\partial Vは、「表面積が増えた」という意味であり、「体積が増えた」といことではないと覚えていいでしょうか?

うーん、ちょっと違うな。微分の記号を使っている意味は「Vの端っこ」という意味あいなので。増加という考え方はしないほうがいいでしょう。

ガウスの発散定理は電場以外でも使えるという話ですが、電場以外で使い途ってあるんですか。

流体に関係する話でもよく出てきますよ。気体だと膨張したりするし。

\vec E={q\over4\pi\varepsilon_0 r^2}\vec e_rの時に発散定理使うと、\int_{\partial V}\vec E\cdot d\vec Sの方は4\pi r^2 Eとなって{q\over\varepsilon_0}になりますが、divを使って表すとどうなるんですか?

その場合、原点(電荷のいる場所)で{\rm div}\vec Eが∞になっています。原点という体積0の点でのみ{\rm div}\vec Eが∞になって、積分は有限の値になってます。後でまたそこの計算はやりますが、まじめにやるならqが原点だけじゃなくてある程度広がっているとして計算しなくてはいけません。

今日の説明は2次元だったので先週よりわかりやすかった(複数)

やっぱり先週も2次元からやればよかったですね、反省。

divが正の値になることがわかった。

えーと、状況によっては負の値にもなりますよ。

divが負の時は吸い込まれているイメージでいいんですか?

はい、そういうことです。

\int_{\partial V}\int_Sは同じ意味ですか?

\int_{\partial V}と書いた時は、ある体積Vの表面です。\int_Sの方は面積ならなんでもいい。

divというのは全方向の変化量を足したもの、というイメージでいいんでしょうか。

正確には、ベクトルとして方向を考えつつ変化量を足します。イメージはあくまで「湧き出し」です。

危ないですとても。私は先生の授業を聞いてわかっている気でいるだけです。気をつけないとどんどん置いて行かれてしまいます。電磁気こわいです。

こわくないですよぉ。不安なら、演習書を買っていろいろ問題を解いてみることです。というか、問題を解くという作業をしないと、授業聞いているだけではなかなか力つきませんよ。

線型代数でもdivという記号が出てきて次元のことでしたが、関係あるのですか?

線型代数で出てくる次元の記号は、dimだと思います。関係はないです。

電場が時間変化する時でも、{\rm div}\vec E={\rho\over\varepsilon_0}は成立しますか?

します。時間変化する場合については後期の電磁気IIでやると思いますが、その場合でもこの法則は使えます。

{\rm div}\vec Vはベクトルじゃないんですね。

はい。こいつはスカラーです。

\rho V_y(x,y+\Delta y)\Delta t dX\rho V_y(x,y)\Delta t dXでは前者ではV_y>0、後者ではV_y<0でした。符号の違うV_yをまとめていいのですか?

まとめてませんよ。V_y(x,y+\Delta y)-V_y(x,y)とちゃんと符号の違いを活かしながら足し算して、その後で微分に書き直しています。


*1 実はこれは厳密には平行四辺形ではなく、ゆがんだ台形のような形である。しかし今行っている近似の範囲では平行四辺形として計算して十分である。
*2 密度ρがどんどん減少する、という場合でも起こりえる。

添付ファイル: fileheibanD.png 765件 [詳細] filediv2D4.png 670件 [詳細] filediv2D3.png 656件 [詳細] filediv2D2.png 746件 [詳細] filediv2D1.png 742件 [詳細] filediv2D.png 673件 [詳細] fileer.png 654件 [詳細] file1overr.png 674件 [詳細] fileVxx1.png 659件 [詳細] fileVxx.png 729件 [詳細]

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Last-modified: 2017-03-03 (金) 19:02:35 (414d)