前回は電気力線と等電位面が垂直であることを図で説明したところまでだったので、今日はまずそれを数式で表現するところから。

これを数式で表現しよう。ある点\vec xにおいて、等電位面の接線方向を向くベクトルを\vec aとする。等電位面の接線方向ということは、その方向に微小な距離だけ移動しても電位は変化しないから、

V(\vec x+\epsilon\vec a)-V(\vec x)=0

が成立する(εは微小量。\vec aは微小ではないが\epsilon\vec a は微小になる)。まだ\vec \nablaなどの記号に慣れてない人のために少しくどくなるがx,y,zという座標をあらわに書くと、

V(x+\epsilon a_x,y+\epsilon a_y,z+\epsilon a_z)-V(x,y,z)=0

ということである。εが微小であるから、上の式は

\epsilon\vec a\cdot {\rm grad} V=0 すなわち、 -\epsilon\vec a\cdot \vec E_{}=0

あるいはベクトル記号を使わないならば、

\epsilon a_x {\partial V\over \partial x}+ \epsilon a_y {\partial V\over \partial y}+ \epsilon a_z {\partial V\over \partial z}=0 すなわち、 -\epsilon a_x E_x -\epsilon a_y E_y -\epsilon a_z E_z =0

と書き直すことができる(こうやって並べてみると、ベクトル記号を使った書いた方がスマートで、状況がつかみやすいと思えないだろうか?)。これはつまり、\vec Eが等電位面の接線方向のベクトルと垂直だということであり、\vec E は等電位面の法線だということになる。

Vcondenser.png

左の図はコンデンサの場合の電気力線と等電位面を描いたものである。

コンデンサの場合、電気力線は極板間に集中し、少しだけ外に漏れるという形になる。そのため、「コンデンサの外には電場\vec E_{}は0とする」という近似を使うことが多い。

電位もコンデンサ外では変化(傾きもしくは勾配)が小さくなっていることに注意しよう。見てわかるように、電気力線の密度が高いところでは、等電位面の間隔も狭くなっている。電気力線の混雑も等電位面の混雑も、どちらも「電場\vec E_{}が強い」ということを表現しているわけである。

3.2.3 位置エネルギーが定義できる条件

keiro1D2D.png

さて、前節で、力を\vec F=-\vec\nabla Uと書いたが、これはあくまで、「力に対応するエネルギーが定義できたとするなら」という条件付きであった。

2次元もしくは3次元の中で考える時には、上に挙げた「力F(x)が場所のみの関数である」以外にも、エネルギーが定義できるための条件がさらに必要になってくる。1次元ならある点からある点へ移動する方法は一つしかないので、力を距離で積分した時の答は一つしかありえない。ところが2次元以上の空間ではある点から別の点に行くのに、いろんな方法(道筋)があり得るのである。そして、違う道筋を通った結果積分の結果が違っていたとすると、「いったいどっちの道筋を通った結果を“エネルギー”とすればいいの?」という疑問が発生してしまうのである。

rotAri.png

ゆえに、2次元以上では、一般に場所の関数になっている力\vec Fが与えられた時、それがUの勾配の逆符号で与えられるとは限らない。たとえば単純な例として\vec F=x\vec {\bf e}_y=(0,x,0)を考えよう。F_y=xであるからU=-xyと予想されるが、そうだとすると-{\partial U\over \partial x}=yとなってしまって、F_xが0であることと矛盾する。つまり、\vec F=-\vec \nabla Uと書くことはできない。

テキストでは上のUにマイナスが抜けてました。訂正しておいてください。

右の図のように、y方向に力が働いていて、しかもx座標が大きくなるに従ってその力が強くなっているような場合、仕事が経路に依存する。それは図のA→B→Cと図のA→D→C で仕事を考えてみるとすぐわかる。ゼロでない仕事はB→CとA→Dであるが、あきらかにB→Cの方が仕事が大きい。エネルギーは「仕事の分だけ増える量」として定義されているのだから、A点での位置エネルギーを定めた時、C点での位置エネルギーは、経路によって違うということになってしまって、場所の関数としてエネルギーを定義することは不可能である。

そのため、エネルギーが定義できるためには、「力を位置座標で積分していったもの(すなわち仕事)が経路に依存しない」という条件が必要になってくるわけである。このような性質を持つ力を「保存力」と呼ぶ。後でちゃんと示すが、静電気力は保存力である。

mgh.png

念のためにいくつか思い出しておこう。重力は保存力である。図のA地点からB 地点へ移動する時、どのような経路をとっても重力がする仕事は同じである。A からBまでまっすぐ行く場合、力の大きさはmgだが、力の方向は移動方向と\pi-\thetaだけ傾いていることになる。移動する距離は{h\over \cos\theta}であるから、仕事(力と移動の内積)はmg {h\over\cos\theta}\cos(\pi-\theta)=-mghとなる。

一方、AからCまで水平に移動してから鉛直方向にBに移動する場合、A→Cの時点では重力は(移動方向と垂直なので)全く仕事をしない。C→Bでは重力は移動方向と正反対なので、仕事は-mghとなる。

それ以外の場合でも同様である。仕事は力と移動方向の内積の形をしているので、重力のように一方向(z軸を鉛直上方に取るならば、-z方向)を向いていて、しかもどこでも一定であるような力ならば、\int \vec F\cdot {\rm d}\vec xの結果はz成分の差だけで決まる(途中、どんな積分をしたかは無関係)。

保存力である場合、\vec F= -\vec\nabla Uという形で、位置エネルギーUを定義することができる。重力、ばねの弾性力、万有引力なども保存力であり、対応する位置エネルギーを定義可能である。

ではどういう時にはエネルギーが定義でき、どんな時にはできないのだろうか?---そのことを単純に判定する方法はないだろうか?

3.3 rotと位置エネルギーの存在

3.3.1 仕事が経路に依存しない条件

仕事が出発点と到着点だけに依存し、経路に依存しないためにはどんな条件が必要であろうか?---それを求めるために、またしても物理の常套手段である「細かく区切って考える」を使うことにしよう。つまり、出発点と到着点が非常に近い点にある場合を考える。簡単のため、図のA(x,y)→D(x+\Delta x,y)→C(x+\Delta x,y+\Delta y)という経路と、A(x,y)→B(x,y+\Delta y)→C(x+\Delta x,y+\Delta y)という経路を比較するところから始める。例によって\Delta x,\Delta yは微小と考えるので、各経路における仕事は、以下の図のように計算できる*1

つまり、ここの計算では{\cal O}( (\Delta x)^2 )を無視している。

rotE.png

下二つを足したもの(A→D→C経路での仕事)から上二つを足したもの(A→B→C経路での仕事)を引くと、

\begin{array}{rl} &F_x(x,y)\Delta x+F_y(x+\Delta x,y)\Delta y  -F_y(x,y)\Delta y -F_x(x,y+\Delta y)\Delta x\\= &\underbrace{\left(F_y(x+\Delta x,y) -F_y(x,y)\right)}_{\simeq {\partial F_y\over \partial x}\Delta x}\Delta y + \underbrace{\left(F_x(x,y)-F_x(x,y+\Delta y)\right)}_{\simeq -{\partial F_x\over \partial y}\Delta y}\Delta x\\ \simeq & \left( {\partial \over \partial x}F_y  \right)\Delta x\Delta y -\left( {\partial \over \partial y}F_x \right)\Delta x \Delta y\end{array}

となる。すなわち、経路によらずに仕事が決まる条件は、

{\partial \over \partial x}F_y - {\partial \over \partial y}F_x=0

である。

ここではxy平面で考えたのでこの条件が出たわけであるが、yz面やzx面についても同じ条件が成立せねばならないから、

{\partial \over \partial y}F_z - {\partial \over \partial z}F_y=0
{\partial \over \partial z}F_x - {\partial \over \partial x}F_z=0

も合わせて、3つの条件が必要となる。逆にこの3つが成立すれば、この微小な四辺形を組み合わせていくことでどんな形の面でも作ることができるであろうから、仕事は経路に全くよらなくなる。この3つの左辺を、xy面での条件をz成分、yz面での条件をx成分、zx面での条件をy成分としてベクトルとしてまとめたもの


rotの定義
{\rm rot} \vec F= \left({\partial \over \partial y}F_z - {\partial \over \partial z}F_y,{\partial \over \partial z}F_x - {\partial \over \partial x}F_z,{\partial \over \partial x}F_y - {\partial \over \partial y}F_x\right)

と定義し、「ローテーション(rotation)」と呼ぶ。日本語では「回転」と呼ぶ。なぜ回転と呼ぶのかは、次の節のイメージで理解するとよい。記号はcurl(カール)を使うこともある*2。この書き方を使うと、電位が定義できる条件は{\rm rot} \vec E_{}=0である*3

学生の感想・コメントから

非保存力の例として摩擦力を挙げてましたが、空気や水の抵抗力もそうだと思うのですが、日常に成り立っている保存力って何ですか?

たとえば重力、ばねの弾性力、万有引力。日常ではこれに摩擦力や空気抵抗等が加わってしまうので、保存はしないわけですが、それでも重力が保存力であるということは変わりません。

rotの意味がやっとわかった(複数)

divやgradの時もそういう人たくさんいたけど、どれも大事で、これからも使う道具なので、ちゃんと意味を理解していきましょう。そもそも、意味もわからずに計算しちゃダメ。

バイト先でIHヒーターの上に木板、その上に鉄板をのせてハンバーグを温め直しているのを見て「熱くて運べないじゃん」と思ってたら、木板は熱くなかったので運べました。そこでハッと物理を感じてうれしかったです。

IHヒータはまさに電磁気学の応用ですね。電流が流れるものでないと加熱できない。

rotは一周回った時の仕事と言ってましたが、\vec\nabla\times\vec Fと書きましたが、仕事は内積なのにrotは外積???

\vec\nabla\times \vec Fは外積の形をしてますが、\vec\nabla\vec Fの外積です。計算としてはまずはちゃんと仕事(力と変位ベクトルの内積)を計算しているのです。計算の経過をおいかけてみてください。

いろいろ出てきたので整理しなければ(複数)!

整理してみると、意外に覚えるべきことは少ないと思いますよ。

「実はこれ、○○と同じことなんですよね」のハッ!!とする感じが好きです。

物理の面白いとこですねぇ。

{\partial\over\partial x}F_y\Delta x\Delta y-{\partial\over\partial y}F_x\Delta x\Delta y\left({\partial F_x\over\partial y}-{\partial F_y\over\partial x}\right)\Delta x\Delta yって同じですか?

同じですね。書き方の違いです。

V(\vec x+\epsilon\vec a)-V(\vec x)=\epsilon\vec a\cdot{\rm grad}Vって、すぐに持ってこれるものですか?

実際にやっている計算は授業でやった通りです。これを公式のように(あるいはgradの定義のように)思ってください。

V(\vec x+\epsilon)-V(\vec x)=\epsilon{\rm grad} Vとしてはダメですか?

ダメです。まず、\vec x+\epsilonがダメ。ベクトルとスカラーは足せません。それから{\rm grad}Vはベクトルなので、この式は左辺はスカラー、右辺はベクトルになっちゃってます。

rotはイメージがつかみづらいです。

来週、もう少しrotのイメージについて話します。

テストの日程、補講の日を教えてください。

テストは8/5の水曜日です。補講はたぶん、7/30にやります。時間は未定。

{\cal O}((\Delta x)^2)ってなんですか???

\Delta xは小さいので、考えている関数をA+B\Delta x+C(\Delta x)^2+D(\Delta x)^3+\cdotsと展開すると、後ろの方にいくほど小さい量になっています。このうち、C(\Delta x)^2のように\Delta xの2次式になっている部分を、{\cal O}((\Delta x)^2)と書きます。

再来週の7/22は日食の日、ということで日食観測をする予定なのだが、その話をしたせいか月食に関する質問が。

皆既月食の時はなんで月が赤くなるのですか?

地球の大気を通り抜けてきた赤い光(つまり夕焼け、朝焼けの光)を受けるからです。


コメント、質問ありましたら以下でもどうぞ。



*1 ここでも\Delta x,\Delta yは微小なので、&mimetex(\int_y^{y+\Delta y} F_y(x,y'){\rm d} y);という積分をF_y(x,y)\Delta yという掛け算で済ませている。
*2 マックスウェルはcurlを使っていた。
*3 本来、この式の右辺は「成分が0であるベクトル」という意味で零ベクトル\vec 0を使って{\rm rot}\vec E=\vec 0と書くべきなのだが、昔からの慣習で\vec 0のベクトル記号\vec{}は省略されることが多い。

添付ファイル: filekeiro1D2D.png 464件 [詳細] filemgh.png 464件 [詳細] fileVcondenser.png 538件 [詳細]

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Last-modified: 2017-03-13 (月) 10:17:46 (583d)