今日はまず最初、ネオジム磁石を配って、

  • 磁石が同極どうしは反発し、異なる極どうしは反発すること。
  • その力は距離が近づくと急激に大きくなること。

を「自分の手の触感」で実感してもらった(ほんとは静電気の授業だから電荷でやるべきだが、電荷ではネオジム磁石ほどの触感は得られない)。

クーロンの法則

逆自乗則

その「触感」を実験によりちゃんと数式として説明したのが「クーロンの法則」である。

クーロンの法則は「距離r離れた電荷Qと電荷qの電荷の間には、$F={Qq\over4\pi\varepsilon_0 r^2}$の力が働く」というものである。距離の自乗に反比例するということで、「逆自乗則」と呼ばれる。

ネオジム磁石の手応えを感じていると、近づくと急に力が強くなる、ということを感じるはずであるが、これは 磁石の力が静電気力と同様に、「距離の自乗に反比例」という性質を持つおかげである。

逆自乗則は、「ある一点から何かが等方的に(つまりどちらの方角にも均等に)放射されている」ような時に自然に現れる。

denkyu.png

たとえば上のように、電球から出る光の明るさを考えると、距離が2倍になれば明るさは4分の1になる。

目に入る光の量が明るさを決めていると考えると、2倍遠いところにある目に入って来る光の量は4分の1になっている、と考えることができる。なぜそうなるかは、次の図を見よう。

menohikari.png

この図は平面で描いているので距離が2倍だと光の量が2分の1のように見えるが、実際には立体的に考えなくてはいけなくて、縦も横も2分の1になると全体の量は4分の1になる。

この電球の光と同様に、点電荷が周りに及ぼす力も「一点から球状に広がる」という性質を持っていると思うと、逆自乗則に従うことの意味が見えてくるのである。

ところで、クーロンの法則が成立することは、キャンベンディッシュによる実験と考察で解る。

tamanonaka.png

という図である。もしクーロン力が距離によらないなら、電荷が多い分、左側が勝つ。一方、遠くになると全く働かなくなるのなら、左側の力はなくなってしまうから、右側が勝つ。どっちにもならず、力がつりあうのはどんな時か??---と計算してみると、逆自乗則が導ける。

どう導けるかは、また後でやろう。

クーロンの法則を式で書くと、

$F={Qq\over4\pi\varepsilon_0 r^2}$

となる($\varepsilon$はイプシロンと読む)。$\varepsilon_0$は「真空の誘電率」と呼ばれる量で0が「真空の」を表す。物質中ではちょっと違ってくる(が、しばらくは真空中しか考えない)。

この式で電気量の単位は「C(クーロン)」である。

比例定数$k={1\over4\pi\varepsilon_0}$は、$9.0\times10^9$という大きな数字である。これは光速度の自乗に$10^{-7}$をかけたものになっているが、その理由は(ずっと)後で話そう。

この値から、「1Cと1Cを1m離しておくと働く力は、約100万トンの物体を持ち上げる力である」ということになる。これはどう考えても1Cという電荷は大きすぎる!ということになるが、これは電流の単位であるアンペア(A)を先に決めて、「1Aが1秒で運んでくる電気が1C」という決め方をしたせいである(1Aは割と常識的な値)。

我々の体の中には何万クーロンもの正電荷があるが、ちょうど同じだけの負電荷があって消し合っているので、普段静電気力を感じることはあまりない。

電荷により、電場ができるイメージ

電球の比喩から、「電荷から何かが放射されている?」というイメージが作られるわけであるが、その「何か」に対応する「流れ」のようなものとして「電気力線」という線を考えよう。

まず、先週話した「近接作用」の考え方から、空間の各点各点に「電場」というものがあって、それが電荷と電荷の間の力をなんらかの形で「伝えている」と考える。

一つの比喩としては、

stocking.jpg

のように、ある一点をつまみあげることで、回りにある物質(ちなみにこれは女性向けストッキング)が持ち上がる。このストッキングにできた斜面を物体が転がるところを想像してみるといい。指が直接物体を動かしたのではなく、指は斜面を作り、斜面が物体を動かした、ということである。

我々は真空を「何もないところ」と考えてしまうが、実は真空はプラス電荷やマイナス電荷の影響を受けて「ゆがみ」のようなものを生じさせ、それを伝えていくのである。それが「電場」である。

よって、電場は場所の関数(各点ごとに定義される量)である。

ある場所に試験電荷$q$を置いたと仮定すると、その電荷に力$\vec F$が働くとする。この時、その場所には$\vec E={\vec F\over q}$の電場$\vec E$が生じていると定義する。別の言い方をすれば、「電場$\vec E$とは、その場所に単位電荷を置いた時にその電荷が受ける力である」としてもよい。

そして、その「矢印が作る流れのようなもの」を線で表現したのが「電気力線」である。

電場$\vec E_{}$というものを視覚的に表す手段として、電気力線というものを定義しよう。あくまで視覚的に表現するための手段である! つまり本当にそういう線が存在しているわけではないことに注意しよう。実在はしないが、こういう線を考えることで、電場の物理的、力学的イメージが明確になる。

大事なポイントとして以下の点を指摘しておく。この力を見ていると、

  • 正電荷から力の矢印が湧き出て、
  • 負電荷に力の矢印が吸い込まれている。

というイメージが見える。このイメージが「電場」という概念につながる。ここで、そのイメージを目と手で確認してもらうために、androidタブレットを使ったシミュレーションで遊んでもらった。

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↑これがプログラムの画面(ほんとうは縦長だが、webページにした時に面積が広くなるので、下をカットした。

灰色の矢印は、各点各点の「電場」の向きである。ということはつまり、ここに電荷を置いたらその方向に力を受ける。

電荷の位置は指でドラッグすることで変化できる。また、電気量は上にあるスライダで変化させることができる。とにかく色々動かして電場の変化の様子を実感してもらった。

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↑これは、正電荷が一つ、負電荷が一つある時の電場の様子。電場が「プラス電荷から湧き出し、マイナス電荷に吸い込まれている」という雰囲気を感じて欲しい。

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↑これは、両方の電荷を正にした時の様子。両方から湧きだして電場がぶつかっているような雰囲気を感じて欲しい。

実際に電荷を置いてみよう。電荷の位置以外を指で触ると、その場所に「試験電荷」が現れ、力を受けて動き出す。

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↑の黒い+が試験電荷。赤い矢印は試験電荷に働く力、青い矢印は試験電荷の速度である(上の図は、すでにある程度加速した後)。

このプログラムでは、二つの電荷がどのように電場を作ってそれが合成されているか(下の図)

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も見れるし、電気力線を曲線で書くこともできる(下の図)。

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もちろん、↑この状態で試験電荷を出して動きを見ることも出来る。いろいろ遊べるので遊んでみよう、ということでしばし電場や電気力線を(目に見える形で)実感してもらった。


androidを持っている人へ。

ここで使ったプログラムのapkファイルは右のアイコンからダウンロードできます。→ElectricField.apk 

この他にもandroidによる物理シミュレーションが琉大物理のこのページにあります。


ここで、電気力線の性質をまとめておく。


電気力線の定義と性質

  1. その場所の電場$\vec E_{}$の方向に伸びる。
  2. 単位面積あたりの本数が電場$\vec E_{}$の強さに等しい。
  3. 交差することはない。
  4. 正電荷で始まり、負電荷で終わる。あるいは無限遠からやってくるか、無限遠まで伸びる。途中で途切れることはない。
  5. 途中で分裂したり、合流したりすることはない。
  6. 正電荷$Q$[C]から${Q\over \varepsilon_0}$だけ出る(負電荷$-Q$には${Q\over \varepsilon_0}$だけ入る)。

最後の性質は、電場の強さ${Q\over4\pi\varepsilon_0 r^2}$に球の表面積$4\pi r^2$をかけてえられる。

どうして$\varepsilon_0$で割る必要があるんですか?

いい質問です。これは力の定義ニュートンと、電気量の定義クーロン(さらにその先の電流の定義アンペア)が別々のところから来ているから、その両方をつなぐためには何かの比例定数が必要になる、ということです。

今日はここまで。

次回は今日飛ばした「ベクトルで表現するクーロンの法則」からやって、もう一度電気力線の性質を考えていくことにしよう。

琉大生協からメールがあって、生協でだいたい受講者数分入荷した教科書が、20冊近く売れ残っているとか。来週には返品するそうなので、まだ買ってない人は買っておきましょう。

学生の感想・コメントから

物理学で習った電気力線や電場の話よくわかりました。$4\pi r^2$の話もなっとくでした。

なっとくしながら物理を学びましょう、全ての段階において。

電場などを改めて学べてよかった。iPadで遊べたので楽しかった。

あれはiPadではなく、android tabletです。Appleの製品ではありません。

タブレットで+ー、++、ーー、それぞれの組み合わせの中で動く+電荷の動きが不規則で面白かったです。

どうしてああいう動きをするのか、その物理を考えながら遊んで下さい。

非常にイメージがつかみやすいです。$\varepsilon_0$の数値を考えると電気力線の数に小数が出たりしないんですか?

出ます。電気力線はあくまで電場のイメージとしてあるもので、「1本」という単位には意味がないです。「0.3本」や「$\sqrt{2}$本」もありです。

気分悪くて外出てました。次から気をつけます。

お大事に。健康管理には気をつけて。

電気力線と点電荷の動きを自分で確かめることは、とても良かったと思います。。

イメージをつけること、物理をやる時はまずそれが最初。

$4\pi r^2$と$\varepsilon_0$がなぜクーロンの法則に使われているのかを認識できた。図が分かりやすかったです。

図は自分でもどんどん描いてみましょう。

タブレットで電場を視覚的に捉えることができました。ストッキングのたとえもわかりやすかったです。

物理現象をイメージ化して理解していきましょう。

タブレットを使った実験、とてもおもしろかったです。磁石を用いた実験もおもしろかったです。

プログラム作った甲斐があった。磁石はまたそのうち使います。

タブレットで実際遊んで(?)みてとても楽しかったし感動しました!! 最初使った磁石もクーロン力を実感できてよかった。

実感することはとても大事です。物理はイメージ。

タブレットはわかりやすかった。あと奥行きがあるので自乗というのは納得だった。改めて電場を知った感じがする。

頭の中に「電場とはこういうもんだ」というイメージを持っていきましょう。

タブレットを使ってわかりやすくなったなと思った。

文明の利器(?)を使って、物理をどんどん理解していきましょう。

電場についてイメージできたのでよかった。

物理はイメージをつかむことが第一歩。

少しわかりにくいところがあったので家で復習したいです。

その場で質問してください。それが一番効果が大きい。

相変わらずイメージが湧きやすく理解しやすい授業だった。ただ自分に力がないから質問できないのが残念。

質問は遠慮なく。とにかく参加していってください。

最後の電気力線の本数を求めるのがよくわからなかったです。次の授業までに消化したいです。

遠慮せず、わからなかったことは質問する!

電荷、電場、電気力線などをイメージしながら学ぶことができた。

イメージは大事。特に電気力線がイメージできるかどうかは大事。

1クーロンの具体的な力の大きさや、なぜ$4\pi r^2$で割るのか、など今まで知らなかったことを学べてよかったです。これからもがんばろうと思います。

1Cがどれだけでっかいのか、というのは感覚として持っておきましょう。

電場について、いろいろわかった気がします。

すばらしい!

わかりやすい授業でした。

よかった。

タブレットを使って具体的に電場のイメージをすることができたのでよかった。後逆自乗則の説明もわかりやすかった。

そのイメージを忘れずに、数式の計算もできるようになりましょう。

クーロンの法則、電場の定義、電気力線について、理解できました。

よかった。

同量のプラスとマイナスとでは、どちらが強いんだろうか。

「同量」ならば、引き分けです。

今日はタブレットを使って、とてもイメージしやすかったです。。

プログラム作った甲斐がありました。

タブレットでのシミュレーションは興味深く、ためにもなった。

動かしながら考えるのは大事ですね。

電場に対するイメージを持つことができた。また、逆自乗則についての話がわかりやすかった。

そのイメージを大切に!

説明がとてもイメージしやすくて分かりやすかった。。

それはよかった。

+、ーの電気力線との関係をよくわかった。

きっちり理解しておこうね。

1クーロンの大きさにびっくり分離を考えたらすごいエネルギーになりそうだと思った。

分離するのに、すごいエネルギーが要ります。

磁石のN極とS極がくっついた時、∞の力が働いているんですか?

そうはいかないのです。今日の後の話でわかったと思いますが、距離の自乗に反比例するのは電気力線の密度(磁石の場合は磁力線の密度)がそうなるからですね。もし、体積0の点であるような電荷があれば、その表面の表面積は0なので、電場無限大になります。しかし、磁石にはある程度大きさがあるので、磁力線密度が無限大にはならないのです。

目を使っての説明はとてもよかった。分かり易かった。

逆自乗の考え方は「見かけの大きさ」という考え方につながってます。

今度はちゃんと発表とテストをやります。

まずは授業にきて、集中してきいて、質問すべきことは質問すること。

光速度は色々なものに関わっていてとてもおもしろいな、と思った。

どうして出てくるのかについては今後をお楽しみに。

いろいろと体験できてわかりやすかったです。

シミュレーションも立派な体験です。

定義があいまいにならないよう、ひとつひとつ理解しながら覚えていく。

定義を確認することはとても大事です。

iPad楽しかったです。

iPadではないですよ。androidタブレットです。

今日習ったところは自分でも理解できていた内容だったので、あらためて再確認できました。

じっくりと頭に入れておいてください。

電場のイメージがしやすかった。

物理はイメージが大事。

電場が何なのか理解できた。

そう、そこが一番大事。

電気力線というものが今までいまいちわからなかったのですが、今日で少しわかった気がします。触ることは大事ですね。

その通りです。何物かがわかった後で使っていけば、ますますわかってくると思います。


何かコメントありましたら↓にどうぞ。



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Last-modified: 2012-04-27 (金) 22:16:12 (2363d)