今日は電気力線の性質の後半として、クーロン力(同種電荷が反発、異種電荷が引き合う)は、電気力線の

  • 短くなろうとする。
  • 混雑を避けようとする。

という力学的性質から説明できる、という話をした。

詳しい話は後でやるが、これは「エネルギーを下げる方向」と考えると理解しやすい。電気力線が短くなるということは強い電場が存在する領域を狭くするし、混雑を避けるということは電場を弱くしようとする、ということ。実はどちらも電場のエネルギーを下げる作用なのである。

その後点電荷ではない電荷分布の場合の計算の例として、線分上に分布した電荷の作る電場について考えた。

基本は「物理の極意」でもある、


物理の常套手段:細かく区切って考えよう

Step 1. 広い範囲に広がっているものを微小な区間に分ける。

Step 2. 微小な区間による影響を考える。微小な区間なので、この計算はまるでその微小区間が点であるかのごとく計算してもいい。

Step 3. 全微小区間にわたって影響を足し上げる。


この計算は決して楽ではなく、はっきり言って面倒くさい。

以下は教科書の通りの計算を行ったが、

sendenka.png

という風に棒状の電荷について考えた。

Step 1. すでに述べたように、長さ${\mathrm d}z$の微小部分は$\rho {\mathrm d}z$の電荷を持つ。

Step 2. 試験電荷のいる位置を(x,0,0)としよう。 (0,0,z)から$(0,0,z+{\mathrm d}z)$までの間にいる電荷$\rho {\mathrm d}z$が作る電場$\vec E_{}$の大きさは、 $$ {\rho {\mathrm d}z\over 4\pi \varepsilon_0 (x^2+z^2)} $$ である。

ただし、この電場$\vec E_{}$は斜めを向いている。まじめに計算するならばこれをz方向とx方向にわけて考えて別個に足し算すべきだが、今考えている状況が上下対象であることを使うと、z方向は足し算すると0になることがわかる。そこで、どうせなくなる部分を計算するのはやめにして、x方向だけを考えよう。三角形の相似により、 $$ {\rho {\mathrm d}z\over 4\pi \varepsilon_0 (x^2+z^2)}\times{x\over \sqrt{x^2+z^2}}= {\rho x {\mathrm d}z\over 4\pi \varepsilon_0 (x^2+z^2)^{3/2}} $$ が断片による電場$\vec E_{}$のx成分である。

sensekibun.png

↑クリックするとフルサイズで見ることができます。

Step 3. 断片による電場$\vec E_{}$を足す。

足すと言うことはすなわち、zに関して(-L,L)で積分するということ。上の図の長方形一個一個の面積が、${\rho x {\mathrm d}z\over 4\pi \varepsilon_0 (x^2+z^2)^{3/2}}$であり、それをzを変化させながら足していく。それはすなわち、$\int_{-L}^L {\rho x {\mathrm d}z\over 4\pi \varepsilon_0 (x^2+z^2)^{3/2}}$という積分になる。上に書いた図では${\mathrm d}z$が有限の幅を持っているため、足し算の結果はでこぼこした角柱の足し算になる。

しかし、そのような計算は現実には合わない(実際の電荷は点ではなく連続的に分布しているので)。そこで分割数を大きくして、どんどん現実に近づける。そうすると、それは積分という計算になるのである。

積分においては${\mathrm d}z$は微小量である(つまり、${\mathrm d}z\to0$の極限をとって面積を計算するのが積分である)。よって、積分することで今考えている電場$\vec E_{}$のトータルがちゃんと計算できることになる。

結局、$\int_{-L}^L {Q\rho x \over 4\pi \varepsilon_0 (x^2+z^2)^{3/2}}{\mathrm d}z$という積分をしなくてはいけないのだが、この積分は$z=x\tan\theta$とおくことで簡単に計算できる形になる。θの意味は図にある通りである。図を見るとわかるように、$\sqrt{x^2+z^2}={x\over \cos\theta}$である。これは$1+\tan^2\theta={1\over \cos^2\theta}$という公式を使っても確認できるが、図で考える方が楽だろう。

z=Lになる時は$\tan\theta={L\over x}$になる時であるから、そうなる角度をαとおくと、 $$ \begin{array}{rll}&\int_{-\alpha}^{\alpha} {\rho x \over 4\pi \varepsilon_0 \left({x\over \cos\theta}\right)^{3}}{x\over \cos^2\theta} {\mathrm d}\theta& \\= &{\rho \over 4\pi \varepsilon_0 x}\int_{-\alpha}^{\alpha} \cos\theta {\mathrm d}\theta= {\rho \over 4\pi \varepsilon_0 x}\left[\sin\theta\right]_{-\alpha}^{\alpha}={\rho \over 2\pi \varepsilon_0 x}\sin\alpha\\\end{array} $$

(積分結果)

と計算できる。

こういう計算は、授業で聞いているとできたような気になっても、いざ自分でやってみようとするとできない、ということが多い。だから今日家で自力でできるか、やってみること。

angleAlpha.png

もし、この直線が無限に長いのならば、$\alpha={\pi\over2}$となるので、電場は$E={\rho \over 2\pi \varepsilon_0 x}$となる。ここで「分母に$2\pi x$があるということは、何か円と関係しているということなのだろうか?」と気がつく人もいるかもしれない。その予想は当たりである。実はこの場合には、後で出てくるガウスの法則を使う方が簡単に答が出るのである。その時、$2\pi x$となる意味も明瞭になるだろう。

なお、この棒に含まれている全電荷量Qは密度ρに長さ2Lをかけたものであるから、この電場$\vec E_{}$は $$ {Q \over 4\pi \varepsilon_0 xL}\sin\alpha= {Q \over 4\pi \varepsilon_0 x^2}\times {x\over L}\sin\alpha $$ と書くこともできる。この${Q \over 4\pi \varepsilon_0 x^2}$は、中心に電荷Qが集中的に存在している場合の電場$\vec E_{}$である。$\sin\alpha={L\over R}$であることを考えると、${x\over L}\sin\alpha={x\over R}$であり、これは1より小さい。つまりこの時の電場$\vec E_{}$は、棒の中心に電荷Qが全部集まったとした場合よりも弱くなる。弱くなってしまった原因は、電場$\vec E_{}$のz成分が消し合ってしまったことと、電荷の大部分がxより遠い距離にいることの二つである。

数式だけでは「結局何を計算してるのか?」がわからないという人のために、android タブレットを使ったシミュレーションを各自実行する時間を持った。

#ref(): File not found: "senseki.png" at page "電磁気学I2012年度第4回"

上のようなプログラムで、線積分している様子をアニメーションで見ることができる。

#ref(): File not found: "senseki1.png" at page "電磁気学I2012年度第4回"

↑クリックすると拡大表示します。

↑は、N=5、すなわち5分割しての足し算をやっているところ、プログラムでは動いているところが見える。右側に積分に対応する足し算がどのように行われているのかも表示されるので、何を計算しているのかの実体をつかんで欲しい。画面上にあるスライダでNを変えることができるので、たとえばN=30にすると、

#ref(): File not found: "senseki2.png" at page "電磁気学I2012年度第4回"

↑クリックすると拡大表示します。

のように表示が変わり、30分割して計算しているものの意味がわかる。

他に「R=1.3」などとなっているところを変えると棒の長さを長くしたり

#ref(): File not found: "senseki3.png" at page "電磁気学I2012年度第4回"

短くしたり、

#ref(): File not found: "senseki4.png" at page "電磁気学I2012年度第4回"

できる。また電場を観測する位置も「Z=」「X=」の数値を変えることで変更できるので、できる電場の様子がどうなっているか、いろいろと確認して欲しい。

来週は円盤の作る電場をやる予定だが、その予行演習として、「円環電荷の作る電荷」も見ておこう。

真ん中辺りの「直線電荷」あるいは「円環電荷」と書いてあるボタンを押すと直線←→円環をトグルできる。円環電荷の作る電場も、

#ref(): File not found: "senseki4.png" at page "電磁気学I2012年度第4回"

のように動くところが見える。

ここで使ったプログラムのapkファイルは右のアイコンからダウンロードできます。→LineCharge.apk 

androidを持っている人は、試してみてください。

さらに、複数の電荷がある場合の電気力線の様子を、別のandroidタブレットによるシミュレーション「電荷たくさん」で行った。

このプログラムでは電荷をたくさん並べて電気力線がどんなふうにできるかを観察できる。

#ref(): File not found: "takusan1.png" at page "電磁気学I2012年度第4回"

今日やった線分の電荷ならば、

#ref(): File not found: "takusan2.png" at page "電磁気学I2012年度第4回"

のような感じである。いろいろな形(学生さんたちはほんとにいろんな形で試していた様子)の電荷分布で電気力線が作れるので、いろいろやってみよう。

「電荷たくさん」のapkファイルは右のアイコンからダウンロードできます。→Charges3D.apk 

なお、「なんとか交わる電気力線が作れないか」とがんばっている学生さんがいたが、もし交わった電気力線が表示されたら、それはプログラミングがバグっているということである(^_^;)。

学生の感想・コメントから

タブレットのプログラムがかなりすごかった。物理シミュレーションのプログラム(連成振動とか)を組んだことはあるければ、3Dはあまり扱ったことがないし、けっこう難しかったと思うのですごいと思う。

プログラム作ったことがあるんですね。3Dは最初はとっつき悪いですが、ある程度慣れると普通にできます。

電荷たくさんがおもしろかった。

遊ぶ中で、電場の雰囲気をつかんでください。

広がった電荷による電場がx方向にしぼられたのは、電場が上下対称でその重ねあわせでx方向になるからですか。

はい、その通りです。

$x=z\tan\theta$とおいた時から、早くて説明聞けなかったので、次の時間にできたら説明お願いします。

質問・疑問があったらその時にすぐ言うこと。あるいは時間が終わってからでもすぐに聞きにくること。来週、今週のことを忘れた頃にもう一回説明するのは、あなたにとっても私にとっても効率が悪い。

うまく電気力線の定義を覚えたいです! 基礎が大事!

もちろん、それは大事。

電気力線面白かったです。

イメージをつかんでくださいね。

・積分の時に図を使って考えるのが面白いと思った。

・電気力線の力学的性質の中でエネルギーとの関係が気になった。

図で考えるのは物理の有用な手段です。エネルギーについては、この講義の後半で。

今日は電場の計算をした。なんとかついていけたけど、先生の言っていた通り、一人でちゃんとやってみようと思いました。

是非、やっておきましょう。

「ガウスの法則を使った方が簡単なのに…」と思いました。タブレットを使うと、図が直接見れるので理解しやすくていいです。

今日の状況では、ガウスの法則は使えません。だから積分を使ってやるのです。

タブレットを使うとイメージがしやすくてよかった。計算ミスがないように練習します。

練習は大事です。そのあたりはスポーツと同じ。

タブレットシミュレーションで、人の位置でどのように電場が変わるのかイメージしやすかった。

物理は、常に現象のイメージを頭の中に持つようにしましょう。

積分の計算を図形からかんがえると簡易に計算できることを確かめることができた。

図でも数式でも、考えていけるようにしましょう。

計算の部分は何回も自分で計算しないと身につかないと思うので、いろんな計算をやってみようと思った。

その通り。自分で手を動かして学びましょう。

演習の授業で、直線電流の作る電場を計算して、答えが合ってなかったが、今回で計算ミスがみつけられた。体調を崩しがちだが、今後電磁気は難しくなると思うので、休まないようにしたい。

計算はじっくりやってみましょう。身体にも気をつけて。

今日やった電場の計算でわからなかったところがあったので、復習してわからないところをなくします。

やっておきましょう。

電場を計算する時に、物理的イメージを持つことが大切だと思った。

その通りです。現象のイメージなしでは物理にならない。

線分上の電荷は、もう一回自分でやろうと思いました。

やりましょう!

復習してみる。タブレットがあるとイメージがつかみやすいので、計算する時に役立つ。

物理現象をイメージできないと、計算する意味がないですからね。

棒の長さが∞の時は、どこに電荷をおいてもx方向にのみ向くのですか。これをz軸方向の並進対称性と呼ぶのですか?

どこでもx方向を向きます。それはどこにおいても上下対称性が成り立つからです。並進対称性もあるけど、x方向を向く理由とはちょっと違うかな。

改めて物理で積分は大事だと思いました。

もちろん、大事です!

積分のことを今まで、微分のおまけみたいに考えてましたが。積分のすばらしさに気づかされて、積分のことを尊敬しないといけない。サンキュー、積分!!

物理をしている時は、微分している時間より積分している時間の方が長いんじゃないかな。

微分、積分もちゃんとやろうと思いました。

これからも使いまくりますよ。

円環電荷の動きが地球の公転運動みたいになってて力同士の相似性を感じた。

これは力で回っているわけじゃないので、少し違うかな。

物理の極意がわかった。タブレット面白い。プログラムを自分で作ってみたいと思った。

是非挑戦しましょう。

タブレットでみると、より分かりやすかったです。

イメージを頭に作るようにしましょう。

アンドロイドタブレットやiPad欲しいですね。

プログラムは公開してあるので、android(タブレットでなくても携帯などでも)があれば家でも遊べますよ。

タブレットで予測できない電気力線を作れて面白かった。

いろいろやってみてください。

ただ計算するだけではなく物理的に考えるととても分かりやすかった。また、タブレットをつかって見ることでイメージをつかみやすかった。

物理現象のイメージあってこそ、計算する意味があります。

タブレットのイメージは本当に分かりやすく面白い。

自分の頭の中に、物理現象のイメージを作れるようにしましょう。

先生の説明を聞いて積分できる気になっているだけだと思うので、家帰ってから復習したいと思う。

その通りです。自分で手を動かしてやってみましょう。

電気力線の力学的性質を理解することができ、直線の作る電場も、数式とイメージで理解できました。また一つ疑問点が解消されました。

物理的実体としての電場の性質を把握しておきましょう。

高校の時にならった公式$\tan^2\theta+1={1\over\cos^2\theta}$の根拠がわからずに、ただ暗記していただけだったのですが、図で考えると理解できたのですっきりしました。積分は数学者と物理学者どちらあ開発したのですか?

式は中身を理解しないと使えませんよ。積分の創始者はニュートンその人です。物理のために作った。

タブレット便利ですね。今日やったこと家でやったら一回ではできなさそう。

やってみましょう。自力でさっとできるようになるまで。

$L\to\infty$の時$2\pi x$が出る理由を考えておきます。

もう少ししたらわかります。

点電荷に分けて式を作る発想はなかったです。

この発想はいろんなところで使いますよ。

微小区間に分ける考え方が大事!!

はい、大事です。これからも電磁気以外でも使います。

かなりわかりやすかったです。

OK!


何かコメントありましたら↓にどうぞ。

  • 電磁気学機丙董砲砲峠妬してます。 -- 近畿大学理工学部? 2018-10-12 (金) 14:45:19


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2018-10-12 (金) 14:45:20 (4d)