第2章 ガウスの法則と電場の発散

ガウスの法則の意味

ガウスの法則というのは、ここまでで考えた電気力線に関する法則をまとめた結果としてできる。

大事なことは電気力線は分裂/合流したり途中で途切れることはないので、電荷がない限り本数が変化することはない、ということである。よってある閉曲面を考えて電気力線の出入りする本数を数えると、その本数は閉曲面内部にある電荷だけで決まる。

ここまで、「電場に面積をかけると電気力線の本数になる」という計算をしてきたが、実はこういう単純な計算でよいのは電場が考えている面積の法線方向を向いている時だけである。そうでない場合、少し修正が必要である。具体的には、

ES.png

図のように、電気力線に対して斜めになっているような面積を考えた時、電気力線の本数は電場$\vec E$の強さを$|\vec E_{}|$、面積を$S$とすると、$|\vec E_{}|S\cos\theta$」となる。

このように二つの量の大きさ$\times \cos\theta$という形になっている計算というと「内積」が思い出せる。実際、

面積ベクトル$\vec S$

を面の法線ベクトルで長さが面積$S$に等しいベクトルとして定義すれば、電気力線の本数は$\vec E\cdot\vec S$と内積で表現できる。

ここまでやったところで、androidタブレットを使って、最初にやったfluxの意味を立体的画像(自分で動かして回せる)を使って実感してもらった。

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上の青いベクトルは面積ベクトル、赤いベクトルが電場。黄色い領域が「Flux」すなわち面積ベクトルを通り抜ける流れ。

画面左(上の画像には入ってない)にある矢印をドラッグして二つのベクトルを変更できるので、いろいろ変えてどのようになるかを見る。

ここで使ったプログラムのapkファイルは右のアイコンからダウンロードできます。→Flux.apk 

なお、ここで面積ベクトルを導入したが、「面積がベクトル?」と不思議に思う人は多いようである。しかし、面積は「どの面の面積か」という点で向きがあるのである。

そのことを示すために、去年も使った「面積ベクトルの紙工作」を見せた。

mensekivec.jpg

面がxy平面にあれば、面積ベクトルはz軸方向を向く。

面がyz平面にあれば、面積ベクトルはx軸方向を向く。

面がzx平面にあれば、面積ベクトルはy軸方向を向く。

面積の計算方法は「外積」であるが、外積ベクトルの向く向きはまさに面積ベクトルの向きである。

こうして、$\vec E\cdot\vec S$という計算で「電気力線の本数」を計算できるが、こうして内積で定義したことで「$\vec E$と$\vec S$が逆向きのときは本数がマイナスになる」という定義になっている。これのおかげで、電荷を内部に含んでいない閉じた面があると「$\vec E\cdot\vec S$の和」は0になる。正になる(電気力線が出ていく)ところと負になる(電気力線が入ってくる)ところがちょうど同じだけ出てくるからである。

omoteura.png

のように正負には意味がある。

閉曲面(領域をもれなくつつみこむような面)を考えて、その表面を微小領域にわけて、その各々に面積ベクトルを立てる。

dSs.png

そして、今この閉曲面内に電荷はないとして、通り抜ける電気力線を考えたとしよう。電気力線には「途切れない。分裂しない。合流しない。正電荷で始まり負電荷で終る(逆に電荷以外のところでは始まりも終わりもしない)」という性質があったから、どこかで面に入った電気力線は、かならずどこからから出る。

EdSs.png

$\vec E\cdot\mathrm d\vec S$という計算で「電気力線の本数」を勘定することで、「入る」電気力線はマイナスで、「出る」電気力線はプラスで計算されるので、中に電荷がない限り、$\vec E\cdot\mathrm d\vec S$の、「全閉曲面での和」は0になる。

実際に計算するときは(微小面積を考えて)「和」ではなく積分となり、 $$ \int \vec E\cdot \mathrm d\vec S=0 $$ という式が出る。

そして、中に電荷があったなら、その電荷$Q$は${Q\over\varepsilon_0}$の電気力線を出すので、 $$ \int \vec E\cdot \mathrm d\vec S={Q\over\varepsilon_0} $$ という式になる。これがガウスの法則である。

これをもう少し精密に考えておこう。

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まず、電荷$Q$を中心半径$r$の球面でこの法則が成り立つことは、これまでもやっている計算である。この場合、$\int \vec E\cdot \mathrm d\vec S$という積分をやるとき、$\vec E$と$\mathrm d\vec S$は常に平行なので、内積を取るときの$\cos\theta$は常に1であり、内積は普通のかけ算になる。また、考えている球面上では電場の強さは一定だから、 $$ \int \vec E\cdot \mathrm d\vec S =E\int \mathrm dS=E \times 4\pi r^2 $$ と積分の外に$E$を出してしまっていいわけである。

次に、この球の上に張り付いた小さな部屋を考えてみる。

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この小さな部屋(この球を地球だと考えれば、その上に立てられた校舎の教室である)に出入りする電気力線を考えると、「床」から入って「天井」に抜ける(4方の壁は垂直になっているので、電気力線が貫かない、電場$\vec E$は常にr方向を向いている)。

床での電場の強さは$E={Q\over 4\pi \varepsilon_0 r^2}$、天井での電場の強さは$E'={Q\over 4\pi \varepsilon_0 (r+{\mathrm d} r)^2}$である。つまり、 $$ E:E'={1\over r^2}:{1\over(r+\mathrm d r)^2} $$ である。一方、床の面積を$S$、天井の面積を$S'$とすれば $$ S:S'={r^2}:{(r+\mathrm d r)^2} $$ であるから、 $$ ES=E'S' $$ となる。

実は部屋の天井の広さは、床の面積より少しだけ、広い(地球が丸いんだからそうなる)。ちなみにどれくらいかというと、地球の半径約6000kmに対し1階の高さは約3mと、長さの比にして200万分の1違う。

結局この微小体積の小さい部屋の表面で$ \int \vec E_{}\cdot {\rm d}\vec S$を計算すれば0になるということになる。

例によって物理の常套手段である「細かく区切って考える」を使うと、任意の曲面に関しても$ \int \vec E_{}\cdot {\rm d}\vec S={Q\over\varepsilon_0}$が成立していることが言える。なぜなら、この微小体積を「ブロック」としてくみ上げていけば、任意の形の曲面に囲まれた図形を作ることができるからである。

block.png

上の図は、その状況を次元を一つ落として平面図で表したものである。ブロックAから出る電気力線(図では3本の矢印で書いてある)は同時に、ブロックBに入る電気力線でもある。よって、今ここで定義したように、「考えている範囲から出る電気力線の正味の本数=考えている範囲から出る電気力線の本数−考えている範囲に入る電気力線の本数」を計算して足し算していくと、結局今考えている部分の外側での電気力線だけが計算結果として残ることになる。

このようにして、出る量から入る量を引いたものを「正味の量」という言い方をする。「正味の」とつくと、「出たり入ったりするけど、入る量はマイナスにして足すという約束だからね」ということを意味する。

つまり、ブロックのくみ上げを行う時に、内部に電荷を含まないように組み立てることにすれば、ブロックから出る電気力線の総量は0になる(入ったものは必ずどこから出る)ので、$\int\vec E_{}\cdot {\rm d}\vec S=0$となる。

内部に電荷を含むブロックについてだけは出る電気力線の正味の本数0ではなく${Q\over\varepsilon_0}$であるから、$ \int \vec E_{}\cdot {\rm d}\vec S={Q\over\varepsilon_0}$となる。これは任意の形の面について正しい。

中心に点電荷Qを置いた半径rの球という閉曲面の場合で計算するとその球面を通る電気力線の本数は全部で${Q\over\varepsilon_0}$になる、ということは前にも述べた。球でない場合はどうなるかというと、

wawawa.png

のように考えると、「電荷Qを囲むような面なら、どんな面でも通り抜ける電気力線の本数は${Q\over\varepsilon_0}$である」ということが確認できたことになる。

数学屋さんならもう少し厳密に計算が必要なところ。物理屋さん的にはこの程度で理解しておけば十分。

こうして、ガウスの法則 $$ \int_{\partial V}\vec E\cdot \mathrm d\vec S = {1\over\varepsilon_0}\int_V \rho \mathrm dV $$ が示せた。この式は左辺が「閉曲面の面の上の2次元積分」、右辺が「閉曲面の内側の積分」というふうに、全く違う領域の積分が結び付けられているという面白い法則である。内側の情報を全く知らなくても、表面の電場の様子を知れば「中に電荷が何クーロン入っているか」がわかるということになる。

ガウスの法則は、前に考えた立体角の考え方でも導くことができる。

電荷になったつもりなって、自分が電気力線を四方八方に発射していると思おう。すると、「自分から見て同じ立体角に入っている物体は、自分が出した電気力線を同じだけ受ける」ということが直感的にわかると思う。

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上の図の二つの物体は「目」から見て同じ立体角に入っている。そして、目のところに電荷があるとしたら、同じだけの電気力線を受ける。

ということから「電荷から見て、同じ立体角(つまり、見かけの大きさが同じ)ならば、その物体を通る電気力線の本数は同じ」と言える。

自分(電荷)が閉曲面の中にすっぽり入ってしまった場合、どっちを向いてもその閉曲面が見えるのだから、立体角は4πで一定である。よって、閉曲面がどんな形であろうが、その閉曲面を通る電気力線の本数が変わることはない。

考えている閉曲面が複雑で、同じ電気力線が何度も出たり入ったりするような場合もありえる。

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同じ電気力線が面を3回貫くので、この部分だけは答えが3倍にならないかと心配になるかもしれないが、${\rm d}\vec S$は閉曲面で必ず「外」を向いている。そのため、3カ所のうち一カ所に関しては$\vec E_{}\cdot {\rm d}\vec S$が負になって、3つあるが正味の量は1個分、ということになる。よって複雑な面であっても、ガウスの法則が成立すると結論できる。上の図で「-1(入る)」と書いたところがそこである。電気力線はドーナツ面を3回通っているが、正味で考えると1回分なのである。

教科書の問い2-1を解いておこう。

点電荷$Q$から$r$離れたところにある無限に広い平面を貫く電気力線の総本数を計算せよ。

という問題だが、計算するまでもなく、全電気力線${Q\over\varepsilon_0}$の半分である${Q\over2\varepsilon_0}$になる。

ちゃんと積分しよう。

電荷の真上を$R=0$として平面極座標をとって考えると、電場の強さは${Q\over 4\pi\varepsilon_0(r^2+R^2)}$であるが、向きは面に垂直ではなく、面に垂直なな成分は \begin{equation} {Q\over 4\pi\varepsilon_0(r^2+R^2)} \times R \mathrm d R \mathrm d\theta \times {r\over\sqrt{r^2+R^2}} \end{equation} となる。これを積分していく。θ積分は$2\pi$という結果に終わり、 \begin{equation} \int_0^\infty {QrR \mathrm d R \over 2\varepsilon_0(r^2+R^2)^{3\over2}} \end{equation} Rの積分は$r^2+R^2=t$とおけば$2R\mathrm d R=\mathrm dt$となるので、 \begin{equation} \int_{r^2}^\infty {Qr\mathrm d t\over 4\varepsilon_0 t^{3\over2}}={Qr\over 4\varepsilon_0 } \left[-{2\over t^{1\over2}}\right]_{r^2}^\infty ={Q\over 2\varepsilon_0} \end{equation} となって、予想通り。

学生の感想・コメントから

法線ベクトルの説明が本当にわかりやすかった。

面積をベクトルで表現するのは、いろんなところで出てきて、大事なところです。

「面積もベクトル」が初めてでおもしろかった。

面積も、向きがある量でしょ。

面積ベクトルのシミュレーションとてもわかりやすかったです。

それはよかった。

予習したときcosθをEにかける理由がよくわからなかったが、今日理解できた。

流れをイメージして理解しておきましょう。

今日はプログラムもあり理解しやすかった。2章もがんばります。

がんばりましょう。

タブレットのやつで数値もあったらもっとイメージしやすいと思った。図だけだといまいち、どのくらい量がかわっているかよくわからなかった。

なるほど。来年の為に考えます。

タブレットのやつよりも教科書の説明の方がわかりやすかった。床と天井の面積が違うらしいのには驚いた。

今回のプログラムは3D図見るだけでしたからね。

今までよくわかっていなかったガウスの法則について、イメージがよくつかめた。

イメージないとね。

よくわかった。

OK!

電気力線は色々な場面で大切なんだと思った。ガウスの法則についてもしっかり理解していきたい。

電場を図でイメージするためには、電気力線が一番。

ガウスの法則について理解が深まった。

この後使っていきましょう。

1年の時もガウスの法則は少し習ったが、そのときは理解を深めきれなかったので今回はしっかり理解していきたい。

こっから、さらに深くやっていきます。

今日はまったくわからなかったので復習して次にのぞみたい。

わからないところは質問してくださいね。授業の後でもいいので。

高校の時なんとなく使っていたガウスの法則がよく理解できた。

「なんとなく」は物理には禁句だなぁ。

今までやってきた事を理解できていたので、ガウスの法則の理解もしやすかった。

つながりが大事ですね。

ガウスの法則について少しだけ理解した。

え、「少しだけ」??

ガウスの法則について学んだ。しっかりマスターして、使いこなせるようにしたい。

マスターしましょう。

今までよく理解できていなかったガウスの法則が理解できたように思う。

ここは理解しないと!

物理数学IIのときにならったガウスの法則がここで使われているという事を初めて知り、楽しくなりました。自分で理解を深めたいと思いました。

物数で習ったのは、もしかしたら「ガウスの発散定理」の方かも。もちろん関連しているんですが。

今まであんなに苦労して出したのに、ガウスの法則を使うと簡単に出せるようになって驚いた。

でもガウスの法則は対称性よくないと使えないのです。

自分でいろいろな場合を考えてちゃんとガウスの法則が成り立っているか確認してみようと思います。

それはいいことです。いろいろ試してみましょう。

ガウスの法則は高校で少し触れていたので今日は大丈夫だったけど、これから色々応用とかが出てくると思うので頑張りたいです。

応用もあるし、この後「微分形のガウスの法則」ってのが出てきます。

ガウスの法則を忘れずに、今日の講義の内容をしっかり復習したい。

じっくり復習してください。

発表もあるので、予習と復習がんばっていきたいです。

がんばりましょう。

あらためて、ガウスの法則は便利だと思いました。

使い道が限定されるのが残念なところ。

ガウスの法則をしっかり理解できるよう勉強します。

はい。しっかり理解しましょう

ガウスの法則を理解することができたこれから、これを使ってもっと演習を解いて定着させたい。

やりましょう!

細かく分けて積分することは、物理にとってとても大事なことだと再確認した。

もちろんです。そのために積分がある。

証明が複雑そうなのも、立体角を使うと、わかりやすく、簡単にできたので、あらためて立体角は便利だと思った。

電気力線に関係する話では、非常にうまくはまります。

ガウスの法則が説明できるように勉強したい。

勉強しましょう。

一度勉強した内容でも、理解への指針を変えることでまた一層よく理解できることがわかった。

常に「いろんな視点」を心がけることは大事ですよ。

今日はガウスをやった。立体角のすばらしさがわかった。

立体角って便利でしょ。

天井と床の大きさが違う話がおもしろかった。気づかなかったけど、言われてみると当たり前にそうであることで、何か楽しくなった。

実は地球は球ですから。

ガウスに入って計算等は簡単になったがきちんと対称性などがわからないといけないので、もれ残しのないよう勉強したい。

対称性が見えないとガウスの法則使えないですからね。。

問い2-1、${Q\over 2\varepsilon\0}$になることをもう一度、計算(積分)して確かめてみます。

積分の仕方もいろいろあるので、試してみてください。

今日から2章であった。こまかく分けてすべて足すということをよく使うので、それをすらすら使えるようにしていきたい。

これからもずっと使いますからね。

数学屋じゃなくてよかったです。物理の考え方はいいですね。

証明は本質的なところをつかんでおきましょう。

ガウスの法則、めっちゃ便利。

ただ使いドコロを間違えないように。

ガウスの法則のイメージがつかめた。

イメージがまずは大事。

初めて、ガウスの法則を知った。ガウスの法則をみにつけて、計算がしたい。

計算はおいおいやりましょう。

ガウスの法則の考え方が分かりました。

OK!

ガウスの法則、よく考えたら当たり前のことだけどすごいなぁと思いました。

当たり前といえば当たり前だけど、物理法則はうまくできている。

ガウスの法則久しぶりです!! 改めて講義を聴いてまた仕組みを思い出しました。

じっくり理解しておいてください。

ガウスの法則の左辺と右辺の積分の意味を理解することができた。

違う積分をつないでいる法則だというのが面白いところです。

ガウスの法則の便利さがよくわかりました。

便利ですが、使える状況が少ないのが残念なところ。

分かりやすかったです。

それはよかった。

ガウスの法則が分かりやすかったです。

OK!

最後の問いで${Q\over2\varepsilon_0}$ということでしたが、電荷の真横、平板と平行にはしる電気力線も含めていいんですか?

含めようと含めまいと、その電気力線のfluxは0ですから問題ありません。だってその部分は面積0でしょ。

ガウスの法則で電荷の上半分の電気力線の本数${Q\over2\varepsilon_0}$を実際計算で求めたときにちゃんと出てスッキリした。

物理法則がちゃんと成立していると、なんか嬉しくなります。

物理は、一見むづかしそうな事をできるだけわかりやすく、簡単にまとめているところがすごい。

自然法則をみつけて整理していくのが物理の第一段階ですからね。


何かコメントありましたら↓にどうぞ。



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Last-modified: 2013-06-03 (月) 11:57:28 (1962d)