極座標でのdiv

直交座標では${\partial E_x\over \partial x}+{\partial E_y\over \partial y}+{\partial E_z\over \partial z}$という形になったdivであるが、極座標など他の座標系ではそうではない。単純に


とってもよくある間違い(この式を覚えちゃダメ!)

$${\rm div} \vec E={\partial E_r\over \partial r}+{\partial E_\theta\over \partial \theta}+{\partial E_\phi\over \partial \phi}$$


などとやってはいけない。

この式は、divって何かを知らない人でも、間違った式だとわかる式である。なぜなら、この式は次元すらあってない!---rが長さの次元があるのに大して、θとφには次元がない。単位で考えると、Eの単位が[V/m]なので、${\partial E\over\partial r}$は[V/m${}^2$]であるのに対して、${\partial E\over\partial \theta}$は[V/m・rad]になってしまう。単位の違う(次元の違う)量は足せない!

正しい答は、

$$ {\rm div} \vec V={1\over r^2}{\partial\over \partial r}\left(r^2 E_r\right)+{1\over r\sin\theta}{\partial \over \partial \theta}\left(\sin\theta E_\theta\right)+{1\over r\sin\theta}{\partial E_\phi\over \partial \phi}$$

である。ここでどうして単にrで微分するのではなく「$r^2$をかけてから微分して、微分後に$r^2$で割る」などというめんどうなことが必要なのか。

具体的な計算は後で行うが、直交座標でdivを計算する時には「微小な直方体を考えて、その床と天井と4つの壁(合計6つの面)から抜け出す流れを足し算する」という計算を行った。極座標でやる時も同様に微小な箱を考えるのだが、その箱は直方体ではなく、極座標の座標であるr,θ,φの方向に伸びた線で区切られたものになる。

yukatenjou.png

ちょうど地球という球面の上に家を建てるようなものである。この床と天井からの「流れ出し」を考えようというのがdivである。電場Eが「電気力線の単位面積あたりの本数」であり、電気力線の本数を計算する時には電場に面積をかける必要があった。直交座標での「床」と「天井」は同じ面積であったから、面積をかけなくてもよかったが、極座標での「床」と「天井」は$r^2$に比例する面積を持っているから計算する時に$r^2$をかけておく必要があるのである(そして、微分の後もういちど$r^2$で割る)。

bishouV.png

正しい極座標のdivを求めるために、図のように微小体積を設定する。この微小体積は、$\Delta r$と$r\Delta \theta$と$r\sin\theta \Delta \phi$という3辺の長さを持っている。ゆえに微小体積は$r^2 \sin\theta \Delta r \Delta \theta \Delta \phi$となる。気をつけるべきは、この微小体積は直方体ではないということで、たとえば天井の面積が$(r+\Delta r)^2 \sin\theta \Delta \theta \Delta \phi$なのに対し、床の面積は$r^2 \sin\theta \Delta\theta\Delta\phi$なのである。

図の床にあたる部分は面積$r^2 \sin\theta \Delta \theta\Delta \phi$を持つ、一方図の天井の部分は、$(r+\Delta r)^2 \sin\theta \Delta\theta \Delta \phi$という面積を持っていることに注意しよう(つまり、直方体の場合と違って、向かい合う面の面積は同じではないのである)。

天井から抜け出るfluxは$(r+\Delta r)^2 V(r+\Delta r,\theta,\phi)\sin\theta \Delta \theta \Delta \phi$、床から抜け出るfluxは$-r^2 V(r,\theta,\phi)\sin\theta \Delta \theta \Delta \phi$ということになる(例によってマイナス符号は、$E_r>0$の時に入ってくる方向だからついている)。

よって、天井と床からの湧き出しは、 $$\begin{array}{rl}&(r+\Delta r)^2 E_r(r+\Delta r,\theta,\phi)\sin\theta \Delta \theta \Delta \phi-r^2 E_r(r,\theta,\phi)\sin\theta \Delta \theta \Delta \phi \\=&\left((r+\Delta r)^2 E_r(r+\Delta r,\theta,\phi)-r^2 E_r(r,\theta,\phi)\right)\sin\theta \Delta \theta \Delta \phi\end{array}$$ となる。

divは単位体積あたりの量だから、これを部屋の体積$r^2 \sin\theta \Delta r \Delta \theta\Delta \phi$(=床の面積掛ける高さ)で割る。するとdivのうち、天井と床からくる部分は、 $${1\over r^2}{(r+\Delta r)^2 E_r(r+\Delta r,\theta,\phi)-r^2 E_r(r,\theta,\phi)\over \Delta r}$$

(天井と床の式)

であることがわかる。この式の分子は${r}^2V({r},\theta,\phi)$の${r}$が$r+\Delta r$の時の値$\left((r+\Delta r)^2 E_r(r+\Delta r,\theta,\phi)\right)$とrの時の値$\left(r^2 E_r(r,\theta,\phi)\right)$の差である。(天井と床の式)はそれを$r^2 \Delta r$で割った式になっている。${1\over r^2}$を横にどけておいて残りを見れば$\Delta r\to0$という極限を取れば微分の定義そのものである。

なお、この計算は、先に$(r+\Delta r)^2=r^2+2r\Delta r+(\Delta r)^2$と展開してから計算してもよい。そのようにした場合、まず$(\Delta r)^2$は微小量の二次の項なので無視する。

$${1\over r^2}{(r^2+2r\Delta r) E_r(r+\Delta r,\theta,\phi)-r^2 E_r(r,\theta,\phi)\over \Delta r}= {E_r(r+\Delta r,\theta,\phi)-E_r(r,\theta,\phi)\over \Delta r}+{2\over r} E_r(r+\Delta r,\theta,\phi) $$ となるが、右辺第一項は${\partial E_r\over\partial r}$の定義そのものであり、右辺第2項は$\Delta r\to0$で${2\over r}E_r$になる。結果は $$ {\partial E_r\over\partial r}+{2\over r}E_r={1\over r^2}{\partial\over\partial r}(r^2E_r) $$ と同じである。

よって、divのうち、天井と床から来る部分は${r}^2V({r},\theta,\phi)$の${r}$微分に${1\over r^2}$をかけたもの、すなわち $$ {1\over r^2}{\partial \over \partial r}\left( r^2 E_r(r,\theta,\phi)\right)$$ となることがわかる。

この答はナイーブな予想の${\partial\over\partial r}E_r$とは違う。原因はもちろん、天井と床の面積の違いである。そのため、天井での流れ出しと床からの流れ出しは、$E_r$に$r^2$をかけた量に比例する。よってこの量$r^2 E_r$を微分しないと、正しい意味での湧き出しを計算していることにならないのである。

6つの面を全部考えると、

sp_divdayo.png

のような感じである。微分した後、かけた$r^2$で割って戻す。北の壁と南の壁は$\sin\theta$に比例して面積が違うので、同様のことを行う。

$\sin\theta$で割るのはいいが、さらに$r$で割っているのはなぜかというと、r方向の微分は「変化量をΔrで割る(後でΔr→0の極限をとる)」という計算であるのに対し、θ方向の微分も「変化量をΔθで割る」でいいかというと、そうはいかない。θという座標がΔθ変化した時に動く距離はΔθではなくrΔθだから、θで微分してrで割って、とやって始めて第一項と同じ意味の微分をやっていることになるのである。

これと同じ理由で、最後のφ微分の項(東西の壁)は$r\sin\theta$で割らなくてはいけない。東西の壁は大きさに違いがないので、なにかをかけてから微分する必要はない。

ところでこのような「公式」だが、覚える必要はサラサラない(暗記などというくだらないことに脳髄を使わなくてよい)。公式は必要な時に公式集を見ればいいのであって、覚えておいても益は少ない。それより、「どうしてここに$r^2$がついたのか」というような理由が(式を見た後で)思い出せるように、その理屈をしっかりと理解しておいてほしい。

さて、以上で極座標のdivがわかったので、それを使うとどう問題が解きやすくなるかを見ておこう。

「球対称な電荷分布がある時、電荷の外側ではどんな電場ができるか?」という問題を解く。この場合、球対称性から$E_\theta$や$E_\phi$は存在しないので、 \begin{equation} \begin{array}{rl} {1\over r^2}{\partial \over \partial r}\left(r^2 E_r\right)&=0\\{\partial \over \partial r}\left(r^2 E_r\right)&=0\\r^2 E_r&=C \\E_r&={C\over r^2} \\ \end{array} \end{equation} となって、逆自乗の法則が導けることになる($C$は積分定数であって、他の条件から決めねばならない)。こうしてまたクーロンの法則に戻ってきたことになる。

電荷が存在する場合は、${\rm div} \vec E={\rho\over \varepsilon_0}$を出発点として計算すればよい。例えば一様に帯電した球の場合なら、$\rho$は定数なので、 \begin{equation} \begin{array}{rl} {1\over r^2}{\partial \over \partial r}\left(r^2 E_r\right)&={\rho\over \varepsilon_0} \\ {\partial \over \partial r}\left(r^2 E_r\right)&={\rho\over \varepsilon_0}r^2 \\ r^2 E_r&={\rho\over 3\varepsilon_0}r^3 + C' \end{array} \end{equation} となる。ここで積分定数$C'$は両辺に$r=0$を代入すれば、$C'=0$と求められる。こうして $$ E_r={\rho\over\varepsilon_0}r $$ とわかるが、これは前にガウスの法則で求めたものに一致する。極座標のdivを使うと、積分一回でこれが求められるのである。

第2章が終わったので発表課題を出しました。7月24日まで、と長めの締め切りにしてあります。ちゃんとやりにきてください。また、第1章の問題がまだの人も急ぐように。

学生の感想・コメントから

私は二度と休みません。そしてとても解りやすかったです。

休まないようにね。どんどん難しいことやっていくから。

復習をしっかりして発表課題をなるべくはやくおわらせたいです。

はいよろしく。

極座標にかわると複雑になると思ったけど、やってみると場合によって簡単になるし、使いやすい。

それぞれ「使いやすい場所」があるからいろんな方法で計算するわけです。

復習がんばります。

はい、がんばろう。

div Eの極座標について学びました。少々複雑だったので、自分で導出してみたいと思いました。

実際にやってみて、慣れていけばそれほど複雑でもない、と思えるようになります。

極座標のdivの計算がとても大変だと思った。

自分でやってみてください。何度かやると、それほど大変とも思えなくなる。

公式を導き出す計算過程を覚える必要はなくて、公式の表す意味を理解することが大事なんですね。

そのとおり。意味が大事なのです。

θ、φがなぜ0次元なのかわかりません。まじすみません、できれば教えてほしいです。

0次元じゃなくて「無次元」。この場合の「無次元」というのは「単位のない数」ということです。rはm(メートル)という単位がある。radは単位といえば単位だけど、(長さ)÷(長さ)で定義されているので、本来は単位がないのです。

やべー。(←先週「復習しないとヤバイな」と書いた人)

復習ちゃんとやっているかぁ? わからないところは聞きに来ること。

計算が大変だった。あと、でてきた式をちゃんと説明できるようにしていこうと思った。

意味を理解していかないとね。

極座標のdivでよくある間違いをしそうだった。面積が変わっているからそのことを考慮するのはなるほど、と思った。

間違えないよう、しっかり理解しておこう。

計算過程を再確認して、何故極座標であの様な式になるかを理解するのが重要だと思った。極座標関連の一般のし機は複雑なのが多い気がするが、じっさいには$E_\theta,E_\phi$が0でEがrのみによる時など、使う時には便利になるのかなと思った。

状況により、どういう計算がやりやすいかが変わってきます。だから計算のための道具はたくさん持っていた方がいいのです。

先週はいろいろありまして、これなくてすみませんでした。今後は全部いきます。

休まないようにね。

極座標では電場が通り抜ける前と後での面積の大きさが違う説明はイメージしやすかった。

イメージを持って、式を理解しておきましょう。

居眠りしてしまった!(←先週も「居眠りしてしまった」と書いた人)

またかっ!

早く進みすぎて説明聞いてなくて板書も取れなかった。

説明聞いてなくて板書も取れないって、じゃあ何やってたの? 板書はしなくていいから説明をちゃんと聞くこと。計算は後で教科書見ればよい。

色々な方法で計算した。

それぞれの計算のやり方の特性を知っておきましょう。

x方向、y方向、z方向でそれぞれを微分してその変化量を足しあわせたものが、小さな箱で考えた時の電気力線の湧きだしの数(div E)である。この考え方であってますか?

だいたいあっているけど、最後は「湧き出しの数を単位体積あたりにしたもの」が正しい。

計算のやり方は簡単だったけれど、めんどくさいなぁ、と思いました。簡単にとけるようになりたいです。

ずっとやっていれば、「慣れ」で、だいぶ楽になってきます。

前回の発表課題26点だったので、次は満点をねらえるようにがんばります。

がんばりましょう。

発表課題を頑張ります。いい点取れるように復習します。

ちゃんと理解しましょう。そうすれば点数も大丈夫。

第2章の発表課題がんばりたい。

がんばろう。

難しいけどなんとなくイメージできた。

その「なんとなく」からはそろそろ抜け出して完璧な理解をめざそう。

極座標のdivの求め方を理解したと思うので、家で復習してしっかり理解します。

復習しときましょう。

ガウスの微分形を使っても電場を求めることができることがわかった。

いろんな方法があるわけです。

復習がんばります!!

がんばろう。

今日は数学ばかりだったのでついていくのが大変だった。

物理もけっこうありましたよ。

発表は前回と今回の二つを満点とったら30点になるということですか?

そうですよ。

今年は中間試験ありませんか?

ありません。シラバスおよび最初の授業で示したとおりです。

復習のとき、先生にあてられたところをがんばって復習したいです。

復習しておきましょう。

極座標のdivは直交座標のdivとは異なっていてびっくりしたが、分かった!!

式は違っていても、中身は同じなのです。

divの意味が理解できた。

これからも使う式なので、よく理解しておきましょう。

課題発表の時気づいたが、「なぜ?」と?をつきつめるのが弱いので、そこを気をつけて勉強したい。

物理はその「?」をつきつめていく学問ですよ(いや、学問はみんなそうかな)。

使い分ければ、とても便利になると思いました。

うまく使い分けてください。

先生の講義録を拝見させてもらって復習がはかどっています。ありがとうございます。

それは嬉しい。作っている甲斐があった。

極座標での考え方が難しかったので、理解できるように復習します。

自分で一個一個丁寧に計算してみましょう。

極座標の計算はちょっと苦手な気がしたので、なれるようにがんばります

なれておきましょう。今後電磁気以外でも使うことになるはずです。

今までは式をただ覚えていたけど、物理の式にはひとつひとつに意味があるんだなと思った。これからは式がどんな意味をもっているかしっかり理解しようと思う。

意味を理解することの部分が「物理」ですから。


何かコメントありましたら↓にどうぞ。



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Last-modified: 2012-07-06 (金) 19:19:39 (2293d)