今日は実験の先生から強力なネオジム磁石を借りてきて、いろいろ実験してみせた。一つめはパソコンのCRT画面に磁石をつけて画像のずれるところを見せた。特にローレンツ力で電子が回転するせいで画面がぐにょっと傾くところが好評。なかなか面白い絵だったから、写真とっておけばよかったな。

反磁性についても話すので、プチトマトで弥次郎兵衛を作ってネオジム磁石を近づけると水の反磁性のせいで磁石から離れる方向へ回り出す、というのもやってみせたが、あまりうまくはいかなかった。一応動くことは動いたのだが、小さいしなかなか全員には見えなかったと思う。後、1円玉(アルミなので常磁性)の磁石を重ねて置いてさっと持ち上げると少しだけついてくるところなど。10円玉(反磁性)ではこんなことはできない。

以下の章末問題は、今のところ宿題ではありません。次の5章が終わった後に、4章と5章まとめて宿題を出します。

4.4 章末演習問題

[演習問題4-1]質量m、電荷qを持つ粒子が、$\vec F= - m\omega^2r\vec e_r$で表現される復元力を受けて原点に束縛されている(rは原点からの距離である)。直交座標系で表現すれば、 $$ \vec F= -m\omega^2 \left(x\vec e_x+y\vec e_y+z\vec e_z\right)$$ であり、運動方程式は $$ m{d^2 x\over dt^2}= -m\omega^2 x, m{d^2 y\over dt^2}= -m\omega^2 y, m{d^2 z\over dt^2}= -m\omega^2 z$$ であるから、角振動数ωの単振動をする。

ここでz軸方向に磁束密度Bの磁場をかける($\vec B=B\vec e_z$)。すると$q\vec v\times\vec B$の力が加わることになる。

  1. この時の運動方程式を立ててみよ。
  2. z方向の運動方程式は磁場が無い時と同じなので、x,y方向について考えよう。X=x+iyという複素変数を使うとx,y方向の二つの(実数)方程式を、一つの複素数方程式にまとめることができる。まとめてみよう。
  3. この方程式を解きたい。$X=e^{i\Omega t}$と解の形を仮定して代入し、$\Omega$を定めよ(2種類の解が出る)。
  4. 解として出る二つの運動はどのような運動か、図解せよ。

[演習問題4-2] z方向を向いた一様磁場(磁束密度B)がある。この磁場に平行な方向に$v_\parallel$、磁場と垂直な方向には$v_\bot$という速さをもって、質量m、正電荷qを持った粒子が運動し始めた。もし磁場がずっと一定なら、この粒子はz軸方向に$v_\parallel$の速度で運動しつつ、xy面内で速さ$v_\bot$の等速円運動をする(螺旋運動)。

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  1. 磁束密度がzに依存して少しずつ強くなっていく場合を考える。磁束密度のz成分$B_z$が、ある場所で$B_0$であり、そこからz方向に$\Delta z$進んだ点では$B_0+\Delta B$だったとしよう。磁力線がつながる(${\rm div}\vec B=0$になる)ためには、図の円筒に垂直な方向の磁束密度成分$B_\bot$はどれだけでなくてはいけないか?
  1. 磁場が円筒面に垂直な成分を持つため、z方向にも力が働く。$\Delta z$進む間に、$v_\parallel$はどう変わるか?
  1. $B_\bot$と$v_\parallel$があるおかげで、xy面内に働く力もある。この力により、z方向に$\Delta z$進む間に$v_\bot$はどう変わるか?
  1. $\Delta z$は微小だとして、この時運動エネルギー${1\over2}m\left((v_\parallel)^2+(v_\bot)^2\right)$が変化しないことを示せ(磁場は仕事をしないのだから当然の結果である)。
  1. このまま磁場がz方向に進むにつれて大きくなっていくとすると、この荷電粒子はどんな運動をすることになるか、考察せよ。

[演習問題4-3]一様な磁場$\vec B$中にある磁気双極子モーメント$\vec \mu$の持つ位置エネルギーは$-\vec\mu\cdot\vec B$である。これを計算で確かめたい。

磁気モーメントは以下の図に示すような二つの定義方法があった。

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ここで$\vec S$は、その絶対値が今考えている面積で、向きは面積の法線(電流の向きにネジを回した時に進む方を向く)のベクトルである。

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以下では磁場がz方向を向いているとし、磁気モーメントはz軸に対して角度θだけ傾いているとする。

第1の考え方だと、磁位$V_m=-Bz$と考えて、二つの磁極の持つ位置エネルギーが$mV_m(z),-mV_m(z+ L\cos\theta)$で与えられるとすれば計算できる。

テキストで$mV_m(z),-mV_m(z+ L\sin\theta)$となっていたのは誤りです。↑が正しい。

第2の考えだと、ベクトルポテンシャル$\vec A=(0,By,0)$が存在していると考えて、その中で電流の持つ位置エネルギー$-\vec I\cdot \vec A$(これは単位長さあたり)を足していけばよい。電流回路は一辺aの正方形としよう。

この二つの方法で磁気モーメントの持つエネルギーを計算し、一致することを示せ。

第5章 磁性体中の磁場

5.1 磁性

誘電体中の電場を考えた時のように、磁性体内の磁場を考えていこう。

誘電体中では、外部からかけられた電場によって物質が分極を起こした*1。その分極によってできる電場によって電場は弱められる。その関係は $$\vec E ={1\over \varepsilon_0} \left(\vec D-\vec P\right)$$ と表現された。

ここでもし電場と磁場が「電荷がつくる電場」に対し「磁荷がつくる磁場」というふうに対応関係にあったとするならば、話は全く同じになり、 $$\vec H ={1\over \mu_0} \left(\vec B-\vec P_m\right)$$ となるだろう($\vec P_m$は「磁気分極」とでも呼ぶべき量)。

しかし、実際には磁場は磁荷がつくるのではなく、電流または荷電粒子のスピンがつくる。どちらの場合も、電荷の場合の分極に対応する現象(磁荷が二つに分かれるというような現象)は起きない。実際に起こるのは、物質中になんらかの形で電流が発生して、その電流の作る磁場が元からあった磁場に重ねられることになる。この時どのように電流が発生してどのような磁場が重ね合わされるかは物質の種類によって違う*2

このようにして外部磁場などの原因で物質に磁場が発生する事を「磁化する」と言い、物質が磁化する時の性質を「磁性」と呼ぶ。磁性の現れ方は様々であるが、その多くは以下の3つのタイプに分類される。

  • 反磁性(diamagnetism) 磁場がかけられると、その磁場を打ち消すような磁場を作る*3
  • 常磁性(paramagnetism) 磁場がかけられると、その磁場を強める*4
  • 強磁性(ferromagnetism) 外部磁場だけではどのような磁場ができるかは決まらない。外部磁場がない時でも、磁場を作っていることもある*5
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では、以下で各々の場合にどのような物理現象がそこに起こっているのか、を考えていく。その前に、外部からの磁場に対する物質の反応を記述するための量をいくつか定義しよう。

まず、「磁化」と呼ばれるベクトル量がある。これは物質中に存在する磁気モーメントの体積密度で表現される。磁気モーメントの大きさは電流Iが面積Sを囲むように流れているならばISとなるし、+mの磁極と-mの磁極が距離$\ell$離れて存在していたならば、${m\ell\over\mu_0}$という大きさで求めることができた。ISで考えるとわかるように、磁気モーメントの単位は[Am${}^2$]であり、単位体積あたりの磁気モーメントである磁化の単位は[A/m]である。磁化と磁場と同じ単位となる。

後で出てくる反磁性も常磁性も、磁性によって現れる磁気モーメントは、外部からかける磁場に(ほぼ)比例する。そこで、磁化を$\vec M$とすると、 $$ \vec M= \chi\vec H={\chi\over \mu_0}\vec B$$ のように書くことができる。$\chi$は無次元量で「磁気感受率 (magnetic susceptibility)」と呼ばれる(「磁化率」という呼び方もある)。この磁気感受率が物質の種類によって違ってくるわけである。強磁性体の場合は、磁化の中に外部の磁場と関係しない「自発磁化」を含む。

5.2 反磁性

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反磁性とは名前の通り、磁場をかけられた物質が逆向きの磁場を発生させることである。その一例としては、自由に動き回る荷電粒子を内部に含む物質(金属など)がある。前の章で考えたように、磁場中では荷電粒子は円運動する。荷電粒子の円運動は一種の円電流と考えることができて、この時作られる磁場は外部からかけられた磁場と逆を向くのである(図を参照)。

このようにしてできる円電流の磁気モーメントを求めておこう。電流の作る双極子モーメントは(電流)×(電流の作る面積)で計算できる。今の場合、面積はもちろん円の面積$\pi r^2$である。この電荷qが速さvで等速円運動しているとすると、単位時間の間に、円上の一点を${v\over 2\pi r}$回通過するので、電流(単位時間あたりに流れてくる電気量)は${qv\over 2\pi r}$であり、磁気モーメントは $$p_m={qv\over 2\pi r} \pi r^2 = {qvr\over2}$$ 上の式は、分母にくるべき2が分子に来てました。訂正しておいてください。次の行の式も同様です。 である。円運動の角運動量はL=mvrであるから、角運動量と磁気モーメントの間には、$p_m = {q\over 2m}L$という関係がある。

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その時、荷電粒子に上向きや下向きの力が働いたりしないんですか?

一つ注意しておくと、磁場中にある磁気モーメントに力が働くためには、磁場の強さが変化してないとダメです。磁気モーメントは等しくて逆符号の磁極が貼り合わされているようなものなので、磁場が一様だと力は働かないのです(授業の後で気づいたが、今日の授業ではこの点を強調しそこなった。トマトの実験にしても、磁場に勾配(場所による大小)がないと、決して動かない。反磁性によって作られた磁場はとても小さいので、外部磁場がほとんどで、ほぼ一様と考えていいので、力は働きません(外部磁場自体に勾配があると話は別だが)。

ただし、以上のナイーブ*6 な考え方は実は正しくなく、厳密に古典力学的計算をするとこの効果は消えてしまい、反磁性が現れないことがわかっている。上で考えたように一個の荷電粒子の運動を考えれば磁場ができるように思われるが、金属内には多数の荷電粒子があり、それぞれがいろいろな半径でいろいろな点を中心に円運動することを考えると、話は変わってくる。いっけん、図では反時計回りの電流ばかりが書かれているので、紙面表から裏へ向かう磁場があるように思えるかもしれない。しかし、(図に実線で書いたような)壁に衝突しながら回る粒子の作る電流(時計回り)を考慮すると、磁場の和は0になる*7

後に、量子力学を使って考えると荷電粒子の運動は完全に自由で乱雑なものとはならないので、結果として反磁性が発生することになることがわかった*8。というわけで実は反磁性が出現するには量子力学の効果が必要なのであるが、ここでは量子力学の話にはこれ以上立ち入らないことにしよう。

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自由電子は反磁性の原因となるが、自由でない電子(原子に束縛された電子)も反磁性を生じさせる。原子核の周りを電子が円運動している、という古典的な原子模型でこの反磁性という性質を説明することを試みる。ただし、以下の計算はあくまでも概念だけであって、現実にこうなるというわけではない(上の場合と同様に、実は量子力学なしに反磁性は説明できない)。ここでは概念だけをつかんでおくように。

簡単のため、原子殻の周りを二つの電子が、互いに逆向きに回っているという状況を考える。電子の運動も一種の電流だが、二つの逆向きの電流の作る磁場が消し合った形になり、磁場はできない*9。電子が円運動しているのと垂直な方向に磁場をかけてみる。すると電子の運動方程式は $$ mr \omega^2 = {e^2\over 4\pi\varepsilon_0 r^2}\pm er\omega B$$ となる。複号$\pm$は磁場に対して電子が上の図で見て反時計回りに回っている場合に+、時計回りに回っている場合に−となる。ローレンツ力の向きを確認してみよう。

角速度ωを求めるとすれば、 $$\begin{array}{rl} mr \left( \omega^2\mp {e\over m}\omega B \right) - {e^2\over 4\pi\varepsilon_0 r^2}&=0\\ mr \left( \omega\mp {eB\over 2m} \right)^2 +r{e^2B^2\over 4m}+ {e^2\over 4\pi\varepsilon_0 r^2}&=0\\ \left( \omega\mp {eB\over 2m} \right)^2=& -{e^2B^2\over 4m^2r}+ {e^2\over 4\pi\varepsilon_0 mr^3} \omega\\\end{array}$$ のような計算をしていくことになるが、ここまでの計算でωの最終的な値には$\pm{eB\over 2m}$がつき、複号が+の場合と−の場合で、${eB\over m}$の差が現れることがわかる(これはもちろん、rが同じである場合のことである)。複号の上の段(最後の式が−になる方)は図で反時計回りに回っている方であり、この場合は角速度が速くなる。一方複号の下の段は角速度が遅くなる。二つの角速度の差が${eB\over m}$だということになる。

複号のどちらの場合でも、その効果は下向きの磁場を増やす(言い方を変えれば「上向きの磁場を減少させる」)。つまり、これも反磁性の出現である。

反磁性を持った物体は、磁石を近づけると反発することになる。ただし、反磁性は非常に弱いので、強力な磁石でないと現象を目で見ることは難しい。

反磁性を持っている物質としては、希ガスの原子、イオン化することで希ガスと電子配列が同じになっているイオン、水など共有結合で結びついた分子などがある。このような原子・分子は電子や原子核の持つ磁気モーメントがうまく消し合っていて、外部磁場がなければこの物体から磁場が作られることはない。原子サイズのスケールで見ればもちろん、複雑な磁場がそこにあるだろうが、巨視的に見ると(平均化すると)磁場はないと言ってよい。

反磁性体の場合、磁気感受率$\chi$は定義により負の値を取る(外部磁場とは逆向きに磁場ができる)が、その値は非常に小さく、$-10^{-6}$程度である。

なお、一部の物質は極低温で「超伝導」と言われる状態になり、抵抗無しに電流が流れるようになる(これまた量子力学的現象である!)。この時、内部に現れた電流によって磁場は全て打ち消されるので、この場合を「完全反磁性」と言う。この時、$\chi=-1$になっているということになる。

物質磁気感受率
$-2.6\times10^{-5}$
$-9.4\times 10^{-6}$
ビスマス$-1.7\times10^{-4}$
アルゴン$-9.5\times10^{-9}$
水晶$-1.5\times10^{-5}$
$-8.8\times10^{-6}$

5.3 常磁性体

反磁性はもともと磁気モーメントを持っていない電荷が、磁場中を運動することによって円電流と化し、磁気モーメントを持つことから生まれた。それに対して常磁性は、最初から磁気モーメントのある原子・分子が磁場中に置かれた時に起こる。原子・分子が磁気モーメントを持つ理由は、原子核や電子など、一個一個の構成粒子が磁気モーメントを持っていることの他に、電子の軌道運動などがある。原子・分子一個一個が磁石となる(磁気モーメントを持つ)原因は電子のスピンという性質によることが多い*10。なお、電子自体も一個の磁石なので、自由電子が原因となって起こる常磁性ももちろんある。反磁性を示す物質の場合は、これらがうまく消し合って、原子・分子一個の状態では磁性を示さない。そうではない物質の多くは常磁性体となる。

常磁性体を構成する原子・分子は一個だけで0でない磁気モーメントを持つ。いわば「ミニ磁石」である。では常磁性体は磁場を発するかというと、やはり外部磁場が0ならば磁場を発しない。原子・分子の「ミニ磁石」が互いにでたらめな方向を向いているので、トータルの磁場は0になってしまう。

外部磁場がかかると、少し状況が違う。方位磁石がそうであるように、原子・分子の「ミニ磁石」は磁場の方向を向きたがる。といっても、いっきに磁場の方向を向いてしまうというわけにはいかない。原子・分子はそれぞれが乱雑な運動をしている(そして、その運動は温度が高いほど激しい)ので、個々を見るとでたらめだが、全体で平均を取ると磁気モーメントが磁場の方向を向く、という形になる。

熱運動のせいで磁化が弱まるんだとすると、絶対零度だとどうなりますか?

いい質問です。次で話しますが、実は常磁性体の磁気感受率は絶対温度に反比例します。つまり絶対零度では発散しちゃいます。実際には発散はあり得ないのですが、絶対零度では非常に強く磁化するということなので、強磁性体同様に完全に整列することになるでしょう。

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「低きに流れる」(物理的に表現すれば「エネルギーを下げる方向に状態が遷移する」)というのが自然界における一つの傾向である。これだけならば、ミニ磁石は全部磁場方向を向いてしまうように思われる。しかし実は自然界にはもう一つ「乱雑を好む」という傾向がある*11。これは物理的に表現すれば「エントロピーが高くなる方向に状態が遷移する」ということになる(エントロピーについての詳しいことは3年の熱力学と統計力学で勉強しよう)。実際に起こる物理現象は、この二つの傾向の「平衡点」である。「低きに流れる」からといって全てが最低エネルギーに落ち込むということはないし、「乱雑を好む」からといって外部磁場にまったく反応しないということもない。

多くの常磁性体では、磁気感受率は$10^{-5}$から$10^{-3}$の程度である(反磁性よりは強く出現するが、後でやる強磁性に比べると、その効果は小さい)。磁気感受率はおおむね絶対温度に反比例する(高温になると、分子運動が激しくなって、磁化を消してしまうと考えればよい)。

こうして磁化すると、常磁性体は磁石にくっつく。常磁性体となる物質は数多いが、意外なところでは、酸素が常磁性体である(液体酸素は磁石につく)。

物質磁気感受率
アルミニウム$2.1\times10^{-4}$
白金$2.9\times10^{-4}$
空気$3.7\times10^{-7}$
液体酸素$3.5\times10^{-3}$

5.4 強磁性体

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強磁性体とは、いわゆる「磁石」になる物質である。鉄、コバルト、ニッケルなどが該当する*12。外部から磁場をかけられたりしなくても勝手に(自発的に)磁化しているような物質である。誘電体の場合の「強誘電体」に対応するものであることは言うまでもない。

常磁性体も強磁性体も、「ミニ磁石」の集まりであって外部磁場をかけると同じ方向に磁場が作られる点は同じである。違うのは磁場を弱くしていった時の振る舞いで、常磁性体の場合、外部からの磁場を0にすると磁化も消えてしまう。強磁性体の場合は磁化は一般には消えない。

ここに書き忘れたが、名前の通り、非常に強い磁化を起こす(磁気感受率に換算すると6000とかになる)というのも強磁性体の特徴。

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なぜ物質が強磁性を持つのかは現在でも未確認な部分を含む、非常に難しい問題であるのでここでは考えない。実際の強磁性体がどのように磁化を起こしているかについてのみ述べよう。例えば鉄は強磁性体であり、外部から磁場をかけなくても磁化している状態にある。しかし、では一個の鉄の塊は常に磁石になっているのかというとそんなことはない。それは、(磁石になっていない)鉄の内部は「磁区」と呼ばれる区域に分かれていて、各磁区内では磁化の方向がそろっているが、各々の磁区の磁化の方向は乱雑となっているからである。つまり、平均をとると磁化が0になっている。常磁性体も平均とると磁化が0であるという点では同じだが、磁化がそろっている部分のサイズスケールが違う。常磁性体は「原子・分子」スケールでは磁化している。強磁性は「磁区」のスケールで磁化している。

外部から磁場をかけることによって磁区が整列し、大きなサイズの磁区となると、強力な磁石になる。コイルに鉄芯を入れることで電磁石が強くなるのはこの応用である。

強磁性体の場合は外部磁場と磁化は比例関係にはない(後で示すグラフを参照せよ)。

磁石を高いところから落としたりすると磁力が弱まるが、これは磁区の整列が壊れるためである。また強磁性体は熱することによって強磁性を失い、常磁性になる(この強磁性→常磁性の転移が起こる温度をキュリー温度と言う)。それは温度が高いと分子運動が激しくなり、磁区をたもっていられなくなるからである。

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最初外部磁場が0で、磁化もしていない強磁性体(図のaの状態)を考える。この強磁性体に磁場をかけていく(図のa→b)と、磁化がどんどん大きくなっていく。ただし、磁区が整列しきってしまうともう磁化が増えないので、ある程度で磁化は増えなくなる(飽和する)。

その状態から外部磁場を弱くしていく(図のb→c)と、外部磁場が0になってもまだ磁化は残っている(この磁化を「残留磁化」と呼ぶ)。さらに逆向きの外部磁場をかけていってから戻すと、今度は図のdを経てeに戻る。最初から述べているように、強磁性体の場合は外部磁場が0であっても磁化の値はいろいろな値が有り得るのである。

これはいったん整列されられた磁区の状態は外部磁場が消えても残る(記憶される)ということを示している。これをヒステリシスと言い、この記憶効果はカセットテープやフロッピーディスクなどの磁気記憶装置の原理となっている。

ここまでで、原因から磁性の種類をまとめると、

  • (内部で電流が流れる物質)→(反磁性を示す)
  • (原子や分子が磁気モーメントを持っている物質)→(常磁性を示す)
  • (その中でも特に、磁気モーメントが整列したがる物質)→(強磁性を示す)

と考えればよい。ほとんどの物質は内部に電流があるので、反磁性はほぼ全物質に共通と思ってよい。ただし、反磁性は小さいので、常磁性または強磁性を持っている物質の場合、他の性質に隠されてしまって見えないことが多い。つまり「反磁性を持つ物質」はたくさんあるが「反磁性体として観測される物質」は少ない(希ガスの他、銀、銅など)。

常磁性・強磁性を持つ物質は、原子(分子)が「ミニ磁石」として振る舞うような物質である。これは電子の配置などに不釣り合いな場所があり、全体としての磁気モーメントが消し合っていないような物質である。 原子のミニ磁石が整列したがる性質を持たないものは常磁性体に、持つものは強磁性体となる。常磁性体には白金、アルミなどがあり、強磁性体には鉄、コバルト、ニッケルなどの小数の金属などがある。

なお、物質がどのような磁性を持つかは温度や圧力などの諸条件で変化することがあり、それを調べることで原子・分子の構造についての情報が得られることがある。

磁性には他の種類もあるが、ここでは省略する。

学生の感想・コメントから

家のテレビでも磁石を近づけたらああなるのですか?

なりますけどやらない方がいいですよ。↓のような人もいますし。

小さい時にテレビに磁石をくっつけて遊んでいたら色が変わったまま戻らなくなって怒られたことを思い出した。

ああ、テレビのどっかが磁化して残っちゃったんですね。今日使ったCRTは最近使ってない奴なので心おきなくやりました。

水に磁場をかけると蒸発しやすくなるとか普通と違うことが起こったりしますか?

屈折率が変わるとか、違うことはあるみたいです。蒸発はどうかな???

水滴を磁石で浮かせることはできますか?

浮かせる実験があるそうです。ただし、永久磁石の磁力では無理で、電磁石を使うそうです。

水を張ったおけに強力な磁石を近づけると水はへこみますか?(多数)

実際にやった例があるのかどうかは知らないんですが、相当強力な磁石なら、そういうことも起こせるかもしれません。

古典力学には限界があった。

というわけで、3年になったら量子力学勉強しましょうね。

一個の分子で考えるとわかるのに、粒子全体で考えると古典力学な考えではうまくいかないというのは不思議だ。

集団での運動がどうなるかと考えるのは3年でやる統計力学です。統計力学をやっていくと、現象のいろんなところで量子力学の効果が現れていることがわかってもっと不思議な気持ちになれるでしょう。

化合物になったりすると磁性が変わるんなら、鉄イオンとかでも変わるんですか?

鉄の場合は単体の時でもイオン+自由電子なので、鉄イオンが磁性を持ってます。ただし、鉄は2価イオンの時と3価イオンの時では全く磁性が違います。他の共有結合する原子は、イオン化すると磁性が変わることもあります。

温度によって磁化しやすさが変わるというのが、物って面白いと思った。

そういうところから、物質の中の原子の様子が推測できたりします。このあたりが物理の面白いところ。

実験もっとみたいです(多数)

次は電磁誘導あたりでまた実験見せます。

落としたり熱したりすると磁力が弱まることを始めて知った。

磁石を使う時の注意事項の一つです。今日話しませんでしたが、N極どうしをくっつけて置いておいたりすると、やはり磁力が弱まります。

強磁性体の磁気感受率はどんな感じなんでしょうか? χの値は-1と1の間ですか?

最後の方でちょっと話しましたが、強磁性体の場合は磁場と磁化が単純な比例関係にならないので、磁気感受率という定数は定義できません。磁場と磁化の比を考えると、鉄の場合で6000とか、とんでもない数字になります。それだけ、強磁性体の磁場を強める作用は大きいのです。

磁石に磁場を加えておいて衝撃を加えると磁力が強くなったりしますか?

うーん、それは考えたこともなかった。

原子の向きがきれいにそろって、原子が密な場合が最大の磁極になりますか?

そういうことになります。

今日持ってきた磁石はネオジム磁石ですか? どこで手に入りますか?

はいそうです。辺土先生に借りました。というわけでどこで手に入るのかは辺土先生に聞いてください。

人体は反磁性体ですか?

大部分が水なので、そうです。

人間を磁場中におくと血液中の鉄分が影響受けたりしますか?

ヘモグロビンになっている鉄は、強磁性ではない(酸素とくっついたヘモグロビンは反磁性、酸素とくっついてない時は常磁性)ので、影響は少ないと思われます。0ではないだろうけど。

超伝導は面白い現象だなと思いました。

機会があれば見せますが、超伝導での浮上とかを見ると、「あ、磁力線ってほんとにあるんだな」と実感できます。

磁場中で高温にしてゆっくり冷やすと磁石になるという話ですが、高温だと熱運動が激しいけど分子の向きはそろうのですか?

高温にするのは、まず今ある磁区を破壊するためです。それから、磁場をかけて磁場の力で分子の向きをそろえて、ゆっくり冷やすわけです。

磁気感受率は無次元量ということでしたが、無次元量というイメージがよくつかめません。

うーん、それ授業中に聞いて欲しかった! 無次元量というのは「単位のない量」です。単位がないので、単位に依存しません。つまり無次元量は、メートル法を使おうがヤードポンド法を使おうが尺貫法を使おうが、どんな単位で計算しても同じ数値になるのです。だから物理にとって無次元量はとても大事です。

反磁性の話で出てきた電流はrotで表せないのか、詳しい計算が気になった。

量子力学、統計力学を勉強してからもう一度考えましょう。電流をrotで表せないのか、という疑問は非常にいいところをついてます(これについては電磁気の授業の中でいずれ)。

反磁性、常磁性、強磁性の他にはどんなのがあるんですか?

他には反強磁性(となりの原子とは逆に並びたがる。結果としてトータル磁気モーメントは0になる)や、フェリ磁性(2種類の物質の化合物で、二つの物質は逆に向くが、種類によって磁気モーメントが違うのでトータルで磁気モーメントを持つ)などがあります。他にもあるんだろうけど、私はこの程度しか知りません。

電流の正体は荷電粒子で、粒子は波なら、電流も波だということですか?

そういう意味では、世の中にあるものはみんな波です。電流に限らず。

最後の方に話していたことがとてもおもしろかったです。電磁気が好きになりました。

最後の方ってのは、エントロピーの話? それとも強磁性体の話かな。どっちにしろ、好きになってくれるのはうれしいです。

バラバラに並んでいたものがある方向に向くということは、マイナスの電子が一方向に偏るということですか?

一方向に移動するわけではないですが、方向が一定方向に向く、という意味ではそうですね。強磁性を作るのはスピン(電子の自転)で、それが特定の方向を向きます(ただし、強磁性体の場合でも、全電子のスピンが揃うのではなくて、磁性に関係するのは全電子のうち一部です)。

携帯で話している時に強力な磁石を近づけるとどうなりますか?

やるのが怖くてできない実験ですね。。。壊れる可能性が高いです。


*1 強誘電体の場合は外部電場がなくても分極する(自発分極)こともあった。
*2 もちろん、電場の場合も、誘電体の種類によって分極の起こり方にはいろいろある。
*3 diamagnetismのdia-は「横切る」という意味。たとえば直径は「diameter」。「反対を向く」という意味が含まれる。
*4 「常磁性」という言葉は「常に磁性を持っている」というふうにイメージされるかもしれないが、それは誤解である。paramagnetismのparaは「parallel」の「para」。つまり磁場と平行な磁化を意味する。
*5 ferro-は「鉄」を意味する。鉄は代表的な強磁性物質である。
*6 物理の本で「ナイーブ」と出てきたら、「純情」という意味ではなく「物を知らないマヌケ」という意味だと捉えた方がよい。
*7 このことを示したのはボーアの博士論文(1911年)である。その論文では磁性が古典力学ではどうしても出現しないことが証明されている。ボーアはその後に原子の中では古典力学が成立していないという、いわゆるボーアの原子模型(1913年)を提出し、量子力学を大きく発展させた。ボーアが量子力学を考えた理由はここにもあったに違いない。
*8 導体に生まれる反磁性は、ランダウによって量子力学的に説明された。
*9 まったくの余談であるが、しばらく前にテレビで騒がれていた宗教団体は、こういう逆向き電流が流れていると磁場ができない代わりに「スカラー波」ができるのだ(しかもそのスカラー波は何かよからぬことをしですかす)と言っていた。もちろん事実無根。その宗教団体に言わせると、「磁場ができない代わりにエネルギーがスカラー波になって流れ出す(!?)」のだそうだが、実際は磁場を作らないなら作らない分だけ電流を流すためのエネルギーが少なくて済むだけのことである。
*10 スピンとは、古典力学的には自転の角運動量に対応する物理量であるが、その本質は量子力学的にしか理解できない。
*11 一見逆向きの作用に思えるこの二つは、実は同じ内容から導けるとも言える。統計力学を勉強してからこの問題を考えてみるとよい。
*12 最近作られた最強磁石と言われるネオジムはネオジウムを主とした合金。

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Last-modified: 2020-05-02 (土) 23:34:47 (575d)