先週の続き、ソレノイドコイル内部の磁場についてのお話から。

先週は、ソレノイドコイル内部の磁場がもし一定でないとしたら

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のような図が描けるが、これはアンペールの法則に反している!---というところまでやった。

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のように回ると、上の方で大きなプラスの仕事、下の方で小さなマイナスの仕事をされるので、トータルでブラスの仕事をされてしまう、ということであった。

これで「中では磁場が一定」ということがわかったので、次に中の磁場を求めてみよう。

solenoid2.png

現実のコイルでは磁場は多少は外に漏れることもあるのだが、ここでは理想的状況を考えて、コイルの内側にのみ磁場があると考える。すると、コイルの中の磁場は少なくともコイルの端以外ではコイルの軸方向を向く(そうでなかったら、磁力線はどこかに漏れてしまったことになる)。そのような状況で、左図のようにループを考えよう。

ループEFGHは、内部に電流が通っていない。よってこのループに沿って磁極を一周させると、磁場のする仕事は0でなくてはならない。F→GとH→Eでは明らかに磁場は仕事をしない(進行方向と垂直)。よって、E→Fでの仕事とG→Hでの仕事がちょうど逆符号とならなくてはいけない。ということは直線EF上と直線GH上では、磁場の強さが全く同じではくてはいけない。これはコイルの内側のどこでも成り立つから、コイル内部では磁場の強さは一様となる。

どうして外側の磁場は0なんでしょうか?

今「理想的」な状況を考えていて、つまりコイルがものすご〜〜く長いと思ってます。そうすると、コイルの端で出た磁力線は反対側の端に戻るんだけど、

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↑のように外を回って戻ってくるので、コイルが長ければ長いほど、コイル真ん中付近の外側には磁場は小さくなると考えていいわけです。

ループABCDでは、C→Dでの仕事も0である。磁場が仕事をするのはA→Bのみである。直線ABの長さをLとし、磁場の強さをHとすれば、磁場が一周でする仕事単位磁極に対してはHLとなる。ループABCDの中には電流が貫いている。今コイルが単位長さあたりn回巻きになっているとすると、電流IがnL回貫くことになり、全電流はnLIとなる。アンペールの法則により、

$ HL=nLI$ ゆえに $H=nI$

とソレノイドコイル中の磁場の強さを求めることができた。

ついでに練習問題も考えておこう。


  • 演習問題

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$H=nI$と言う式は、コイルの端では成立しない。磁力線の「混雑を嫌う」という性質によって、磁力線の密度(単位面積あたりの本数)が下がってしまうからである。よって図のABで磁場がする仕事は$nLI$より小さくなる。では、図のループABCDの場合はアンペールの法則は成立しなくなってしまうのか?---成立するとしたらどのようにか?---計算で確かめなくてもよいので「このようにして成立する」という予想を示せ。


わかりますか??

上を通る時(図のC→D)でも仕事をするからじゃないですか?

はい、一つはそういうこと。現実は磁場がもれて外側で逆行して戻るから、上を通る時もプラスの仕事をします。でもこれだけで納得しちゃダメ。というのは、実際計算してみると、これだけじゃ足りない。他にもプラスの仕事がある。

横の、上がる時(図のB→C)ですか?

そうです。ここには少しだけ磁場に上向き成分がある(だから磁場が広がっている)から、この部分でも仕事します。そして、全部の仕事を合わせると、ちゃんと$nLI$と同じになります。

無限に広い平面板を流れる電流の作る磁場

無限に広い板(厚さ2dとして、z軸に垂直に配置して、z=dの面とz=-dの面が表面になるようにしよう)を考えて、これに電流密度jの一様な電流をx方向に流す。この板の近所ではどのような磁場ができるだろうか。

この問題を、アンペールの法則の微分形を使って解いてみる(積分形でも解ける)が、そのためには「対称性」を使うことが大事である。特に

  • y軸方向の反転(zx平面を鏡にして反転しても、物理的状況が変わらないこと)
  • z軸方向の反転(xy平面を鏡と見て反転しても、物理的状況が変わらないこと)
  • x方向の並進(x方向に移動しても、物理的状況が変わらないこと)
  • y方向の並進(y方向に移動しても、物理的状況が変わらないこと)

が大事である。対称性がないとすると、

$$H_x(x,y,z)$$ $$H_y(x,y,z)$$ $$H_z(x,y,z)$$

と、3つの変数x,y,zを持った3つの関数に対する連立微分方程式

$${\partial H_z(x,y,z)\over\partial y}-{\partial H_y(x,y,z)\over\partial z}=j_x$$ $${\partial H_x(x,y,z)\over\partial z}-{\partial H_z(x,y,z)\over\partial x}=j_y$$ $${\partial H_y(x,y,z)\over\partial x}-{\partial H_x(x,y,z)\over\partial y}=j_z$$

を解かなくてはいけない。しかし、ここでx,y方向に並進しても状況が変わらないということから「磁場はx,yにはよらないはず」と結論できる。これで、

$$H_x(z)$$ $$H_y(z)$$ $$H_z(z)$$

となるから、問題がいっきに簡単になる(z方向の並進に関しては不変ではない)。

次に、$z$軸反転に関して対称であることから、磁場のz成分が$z>0$で上向きならz<0では下向きになるだろう(あるいはこの逆)。しかしそれでは${\rm div} \vec H_{}=0$にならない(磁場に湧き出しや吸い込みがあることになる)。

divBneq0.png

よって磁場はz成分もない。

さらに、x方向に電流が流れていることと、電流の周りを回るように磁場ができる、ということを考えると、$H_x$もないだろう。結局計算すべきは

$$H_y(z)$$

のみであり、解くべき方程式は

$$-{{\mathrm d}H_y(z)\over{\mathrm d}z}=j$$

となる。これは簡単に解けて、

$$H_y=-jz +C$$

となるけど、積分定数$C$は0になる。

どうしてですか?

上下対称性。真ん中である$z=0$が磁場に関しても対称になっているはず。たとえば自分が$z=0$にいるとすると、自分の上と自分の下に同じだけの電流が、まったく同じ形で流れていることになるから、この二つの作る磁場の大きさは同じ。磁場は電流の周りに回るようにできるから、上と下はちょうど打ち消す。

外側では$j=0$ですか?

そうです。だから、

$$H_y=C'$$

になります。あとは内側と外側で磁場が急激に変わったりしないようにつないで(接続して)やればよい。

結果は

$$ H_y=\begin{cases}-jd & d<z \\ -jz & -d < z\le d\\jd & z\le -d\end{cases}$$

ということになる。

磁場のできる状況をグラフに書くと次の図にようになる。網掛けした部分が電流が流れている部分で、この部分では${\rm rot} \vec H_{}$が0ではない。電流が流れていないところでは磁場は一定になり、もちろん${\rm rot}\vec H_{}=0$である。

heimenH.png

どこまでいっても磁場減らないんですか?

この場合はね。そうでないとアンペールの法則が成り立たなくなる。もっともこれも「理想」的状況を考えているからで、現実的な板だと、端っこがあるから話が変わる。

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↑有限な板の場合の図で、こうして外側でぐるっと回りこむことになっていると、その分磁力線が膨らんでいくことになります。

その板の端っこでも、一周回ったら仕事=0ですか?

もちろん。ここには電流流れてないから。

#ref(): File not found: "itayuugen2.png" at page "電磁気学II2012年度第4回"

↑こう回ると、A→BもB→CもC→Dも、全部プラスの仕事になる。だけどD→Aは磁場と逆行して、マイナスの仕事。で、ここの磁場が一番強いから、やっぱり全部足すと0になっている、というわけ。

来週の予告

さて、ここまででアンペールの法則は終わりました。次にやることの予告をしておきます。

アンペールの法則は電場で言えばガウスの法則に対応し、その微分形${\rm rot}\vec H=\vec j$は、電場での${\rm div}\vec E={\rho \over \varepsilon_0}$に対応しました。

電場を求める方法って他に何があったかな??

電位を求めて微分する?

惜しい。それもあるけどそれは「次にやること」じゃなくて「次の次にやること」なんです。もう一つ。

「電荷を小さく区切って求めて積分する」?

それです!

磁場を作るのは電流なので、電荷の時のように電流を小さく区切って「小さい電流がどんな磁場を作るか」を考えて、それを足し算(積分)して全体の磁場を求める、ということができます。それが来週からやる「ビオ・サバールの法則」です。

では来週を楽しみに。

発表課題

7章が終わったので発表課題を出しました。今日休んでプリントをもらってない人は取りに来てください。

理307の前野の部屋にきて、どれか1問を黒板で説明してください(レポートの提出は必要ありません)。30点満点で採点します。

締め切りは11/15(木)の夜20:00までとします(ただし、11月5〜8日は出張で不在ですので注意してください)。締め切りが過ぎた場合は2週間以内の場合5点、2週間以上の場合は10点、減点します。

なお、今日やった内容を課題に出しているのですから、

今すぐやるのが最も効率的です!

締め切りまだだからと遅らせていると、かえって苦労しますよ。

電磁気学Iの追試について

追試希望者に対し、日程を決めるためのアンケートを送ってますが、返信してこない人がいます。メールがなんらかの理由で送られていない可能性があるので、「私は追試希望したのにメールが来てない」という人はもう一度メールを送るか、メール以外の方法で連絡してください。

なお、携帯のメールで「携帯のメール以外は着信拒否」という設定になっている場合があり、その場合私のメールが受け取れない可能性があります。チェックしてみてください。

学生の感想・コメントから

めんどくさい式楽しみでーす。

めんどくさいけどおもろいですよ。

わかることを勉強するのは復習。わからないことを、わかるにもっていくことがほんとの勉強かな。電磁気苦しいけど、がんばって考えてわかったら、楽しいやん。

そうそう、わからないことをどんどんわかって、楽しんでください。

ソレノイド、平板での磁場の形や磁力線の形もわかり楽しかった。

イメージがつかめると、楽しいですね。

コイル、平面板など具体例をしたのでアンペールの法則をより深く理解できた。

具体的なところから、法則を理解していきましょう。

平面板を流れる電流に垂直な方向(z成分)がイメージしにくかった。

立体的に物を考えるのは、慣れるまではたいへんです。でも、慣れましょう。

平面板の磁場の対称性を考えるのは面白かった。

しかも、対称性はすごく役に立ちます。

理想化してみる値と、現実での振る舞いを考えるとアンペールの法則が成り立つつながりを持てました。

「現実はどうか?」という視点は大事です。

ドーナツ状のコイルに電流を流すと内部の磁力線はどうなりますか?磁力線もドーナツ状になるんですか?

なりますよ。その強さを求める問題が章末にあります。

ソレノイドコイルやアンペールの法則への理解が深まった。やっぱり、理想化して考えないと現実はわからないものなんですか?

大学2年はまだまだ未熟だから「理想的」に行くわけです。もちろん、本格的にやるときは現実的に行く。

対称性でイメージするとわかりやすかった。アンペールの法則はうまくできていますね。

物理法則って長い間いろんな人が磨いてきたものなので、みんなうまくできてます。

昨年後期で受けた物理学IIで全くわからなかったビオ・サバールの法則を次回の講義でわかるようにしたいです。

大事なところです。がんばって。

アンペールの法則の具体的な使い方がイメージできた。

どんどん演習してみてください。

アンペールの法則についてだいぶ理解できた。

問題演習とかして、完璧な理解にしてください。

式の意味を理解しながら対称を考えながら問題を解いていくのがとても大事!

それがいつでもできるようになりましょう。

無限に広い平面板のイメージが出来ていなかったのが悔しかった。イメージを大切にすることを心掛けます。

磁場は3次元的イメージが必要です。訓練しましょう。

今日最後にやった次回の予告で、電場と磁場の求め方は似ていますが、向きが変わるので、たいへんそうなよかんがします。

その予感は的中するでしょう。でもたいへんなりに面白いですよ。

平面板を流れる電流で、外での$H_y=C'$の$C'$は今後の講義で求めらますか?

あれ、今日やりましたよ。接続条件(板の内部と外部で磁場がつながる)で決まります。

とてもわかりやすい授業でした。アンペールの法則を理解できました。

よかったよかった。

細かく区切って積分する極意は本当に便利だと思った。

平板の問題で磁場をイメージするのが難しかったので、頭の中ですぐイメージできるようにしたい。

極意はあちこちで使います。3次元をイメージする訓練をしましょう。

あっという間の時間でした。

もう少し進みたかったかな。

前回の先生の返信から、やはり多忙であることが感じられました。日々の健康管理や、色々な面での自分磨きなどを含めて、何か習慣されていることはありますか。もし良ければ教えてください。

う〜ん、何もないです。やりたいことをやって疲れたら寝る。

${\rm rot}\vec H$の理解が深まってきたのか、質問されてもすぐ答が出るようになった。

それは素晴らしい。この調子でがんばろう。

無限に長いと一定であるということに驚いたが、納得。

じっくり絵を描いて、物理法則を考えてみると、納得できる。

対称性で${\rm rot}\vec H=\vec j$が計算しやすくなったのにビックリした! 今日も理解できてよかった!

対称性は便利でしょ。

図を立体的にとらえて対称性を見つけられると式を簡単にできるので、イメージをするのは大切だなと思いました。

対称性を見つけて利用することは、物理の全分野で大事です。

アンペールだいぶ理解してきた。

次はビオ・サバールをよろしく。

対称性により$H_y$のz成分だけが残ったので、対称性を考えることは便利だと思った。。

それはよかった…けど一個訂正「z成分」じゃなくて「z依存性」だね。

無限に流れている時、z軸に対して回転対称性があるように見えました。

$I,{Q\over \varepsilon_0}$は整数でない事がありますか?

回すと電流の向きも回ってしまいます。整数でないことは普通にありますよ。

電場と磁場は似ている所があるな、と思いました。違いやそれぞれの性質に注意して勉強したいです。

磁場の方がいろいろとややこしいです。

計算して出てきた式が、ちゃんと物理現象を示しているからおもしろいです。来週の内容、向きを考えるのがとても大変そうだと思いました。

昔の人も来週やる式を出す時にはかなり苦労してます。でもじっくり考えればわかるはず。

アンペールの法則の積分形の理解が不十分でした。しっかり復習をします。発表に向けてがんばります。

じっくり復習を。課題発表も早めに。

対称性を考えるのが少し大変でした。

でも考えるだけの見返りはあるでしょ?

アンペールの法則の使い方がよくわかった。

使いこなしていこう。

イメージが大部形になった。

そのイメージ、大事にしましょう。

今日やったことがリニアモーターカーの原理なんですか?(平面板とのところです)。

いや、あまり関係ない(^_^;)。

ソレノイド内の磁場Hを強くするのに「単位長さあたりの本数」を増やす方法があると思うんですが、導線の太さを補足したらHは大きくなるのでしょうか。

巻き数だけで決まります。だから、細い導線である分密度高く巻けたら、磁場は強くなります。

磁場を求める際にベクトルだとこんなに面倒になるんだなと思いました。

電場は絵にする時も平面でイメージつかめるんですが、磁場は立体的に考えないといけないのです。

大変めんどくさい式のビオ・サバールをやりたくないです。

でもやります。めんどくさくてもやらなきゃいけないことが人生にはたくさんあるのです。

物理って理想的に考えて求める場合が多いけど、現実的に磁場を求める場合って計算が大変だなと思いました。

現実に近づくのは常にたいへんです(というわけで大学2年では理想的なのをやる)。本格的にやるときはコンピュータの助けを借ります。

対称性を考えるという事はとても便利なことだと思った。対称性をしっかりと見抜けるようにしたいと思った。

ぜひ、「この系にどんな対称性があるか」を常に気をつける癖をつけてください。

アンペールの法則についてより深く理解できた。

理解をしっかり定着させてください。

アンペールの法則、よくできていて驚いた。磁場の密集具合の違うコイルの端でも成り立つって気持ちいいですね。

例外なく成り立つほど、法則としてはいい法則です。アンペールの法則は、あとちょっとだけ修正すると、全宇宙で成立します。

磁化のこまかく区切って積分する方法が楽しみです電荷を電流に対応させて求める。

どこが変わってくるか、よく注意しておいてください。

先週の講義での疑問(前野注:磁場のエネルギーについて)ですが、電位を定義できるための条件を見なおして解決しました。エネルギーがちゃんと存在していて安心しました。

磁場のエネルギーについては、また少ししたらやりましょう。

磁場の場合でも、対称性を利用して問題をアンペールの法則を使って解くことができることが分かった。

そうです。そして逆に対称性がない場合はビオ・サバールを使って解かなくてはいけない…というのが来週からのお話です


何かコメントありましたら↓にどうぞ。



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Last-modified: 2012-11-02 (金) 17:29:53 (2174d)