今日はビオ・サバールの法則を考えよう。まず電磁気学Iでやったことに戻る。

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$\vec x'$にいる点電荷Qが$\vec x$に作る電場は$\vec E_{}={Q\over 4\pi\varepsilon_0 |\vec x-\vec x'|^2}\vec {\bf e}_{\vec x'\to \vec x}$である。$\vec x'$に点電荷がいるのではなく、電荷密度ρの電荷分布が存在しているとすれば、その付近の微小体積${\rm d}^3\vec x'$の各点各点に微小電荷$\rho(\vec x') {\rm d}^3\vec x'$が存在していると考えればよい。各点各点にある電荷の作る電場を足し挙げていく事で全電荷の作る電場を計算できる。

こうやって計算した電場の式 $$ \vec E_{}(\vec x)= \int {\rm d}^3 \vec x' {\rho(\vec x')\over 4\pi \varepsilon_0 |\vec x-\vec x'|^2}\vec {\bf e}_{\vec x'\to \vec x} $$

(ρからEを求める式)

と${\rm div}\vec E_{}={\rho\over \varepsilon_0}$は、いわば「逆の演算」になっている。

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電場の場合で${\rm div}\vec E_{}={\rho\over \varepsilon_0}$から(ρからEを求める式)を作ったように、磁場で対応する法則を作ろう。

今から作る式の右辺にはどんな変数が入るべきか、と予想してみると、当然電流密度$\vec j$、位置ベクトル$\vec x,\vec x'$などが予想される($4\pi$という予想も出た)。

実は$\vec x-\vec x'$という引き算(変位ベクトル)が大事である。

つまり、 $$ \vec B_{}(\vec x)=\int {\rm d}^3 \vec x'\left(\vec j_{}(\vec x')と、\vec x-\vec x'の関数\right) $$ という法則を作り、各点における電流密度$\vec j_{}(\vec x')$が与えられればその各点の電流密度が場所$\vec x$にどんな磁束密度を作るかを考え(当然それは$\vec x-\vec x'$に依存する)、全空間の$\vec j_{}(\vec x')$の影響を足し上げる(積分する)ことで$\vec B_{}(\vec x)$がわかるようにしたいわけである。

その式は実は電場の真似をするだけで決めることができる。ただし、それが正しいかどうか、実験による確認が必要。その実験をしたのがビオとサバールなので、ここで作る法則は「ビオ・サバールの法則」と呼ばれている。

具体的には、電流密度$\vec j$と位置ベクトル$\vec x-\vec x'$の掛け算がベクトルになるようにするには、分子に$\vec j\times(\vec x-\vec x')$のような外積を使えばよい。この式は(ありがたいことに)ちゃんと右ネジの法則の形の磁場の向きを示す。

こうして $$ \vec B(\vec x)=K\int {\rm d}^3 \vec x'{\vec j(\vec x')\times(\vec x-\vec x')\over |\vec x-\vec x'|^n} $$ と予想される。後はKとnという数を決めなくてはいけない。

nはいくつになるだろう?

と聞いてみると、2という説と3という説が出た。n=2という説は

直線電流による磁場が$H={I\over 2\pi r}$だったから、距離に反比例するはず。

という考えであった。n=3といういう説は

電場の式と同じになると考えるとこっちも3のはず。

という考えであった。n=2という考えは悪くないが、積分をどのように行なっているかをちゃんと考えないといけない。こういうふうに物理で式を作るときに「長さの何乗になるか」を判断するのに使えるのが「次元解析」という方法である。

次元解析をしてみよう。単位で考える。電流密度jは[${\rm A/m}^2$]という単位を持っている。これを3次元積分すると[${\rm m}^3$]が掛算される。さらに$\vec x-\vec x'$という単位[${\rm m}$]を持つものを掛けると、分子は[${\rm A}\cdot {\rm m}^2$]という単位を持ってしまう。透磁率の部分を無視すると磁場の単位は[A/m]だから、[${\rm m}^3$]で割ると単位が合う。つまり、ここはn=3である。

n=2と考えてしまった人が見落としたのは、積分の結果でどのように距離依存性が変わるか、という部分であった。

こうして $$ \vec B(\vec x)=K\int {\rm d}^3 \vec x'{\vec j(\vec x')\times(\vec x-\vec x')\over |\vec x-\vec x'|^3} $$ まで分かった。後は定数Kを求めるために、知っている具体例である無限に長い直線電流と合わせる。

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電流をz軸に沿って置く。電流密度は$j_z$しかない。よって$\int {\rm d} x'\int {\rm d} y'\int {\rm d} z' j_z$という積分*1を行うのだが、このうち$\int {\rm d} x'\int {\rm d} y' j_z $をやってしまうと、全体の電流Iになる(電流密度を面積積分したことに対応する)。電流はz'軸(x'=y'=0)の付近に局在している(つまりその部分だけが0でない)場合を考えているので、積分の結果x'=y'=0の部分だけが残ると考えてよい。結局$\vec x'=z'\vec {\bf e}_z$となる。後は残った${\rm d} z'$積分をやっていく。

$\vec x=r\vec {\bf e}_r+z\vec {\bf e}_z$として、 $$ \vec x-\vec x'=r\vec {\bf e}_r+(z-z')\vec {\bf e}_z $$ である。電流は$I\vec {\bf e}_z$であるから、これとの外積を取ることで$\vec {\bf e}_z$の部分は消えてしまって、$\vec I\times (\vec x-\vec x')= I(\vec {\bf e}_z\times r\vec {\bf e}_r)=rI\vec {\bf e}_\phi$となる(次の図を参照)。

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これを使うと、 $$ \vec B_{}(\vec x)=K \int_{-\infty}^\infty {\rm d} z' {Ir \over (r^2+(z-z')^2)^{3/2}} \vec {\bf e}_\phi $$ となる(授業では直交座標でやりましたが、ここでは円筒座標に戻してます)。

この積分は前に帯電した棒の場合にした計算と同じである。$z'-z=r\tan\theta$とした後、θを$-{\pi\over2}$から${\pi\over2}$まで積分すれば計算できる。授業中はうっかりと積分範囲を逆にしてしまった(;_;)。

当然ながら、${\rm d} z'={r\over\cos ^2\theta}{\rm d} \theta$となる。結果は $$ \vec B_{}(r)={KIr} \int_{-{\pi\over2}}^{\pi\over2} {r{\rm d}\theta\over \cos^2\theta} {1\over ({r\over\cos\theta})^{3}} \vec {\bf e}_\phi={2KI\over r}\vec {\bf e}_\phi $$ となる。

この答が$\vec B_{}={\mu_0I\over 2\pi r}\vec {\bf e}_\phi$と一致しなくてはいけないので、比例定数Kは${\mu_0\over 4\pi}$とすればよい。

以上から、体積積分の形で書いた電流密度と磁場の関係式が求まった。ただしこれは証明ではない(直線電流の場合としかあわせてないので)。これでOKかどうかは実験で確認しなくてはいけない。

この式はビオ・サバール(Biot-Savart)の法則と呼ばれる。ビオ(Biot)とサバール(Savart)という二人の物理学者が1820年に実験的研究で確認した式に基づくものである。

こうしてできたのが、以下の法則。


ビオ・サバールの法則(体積積分形) 電流密度$\vec j_{}(\vec x)$が空間に存在している時、$\vec x$における磁束密度$\vec B_{}(\vec x)$は
$ \vec B_{}(\vec x)={\mu_0\over 4\pi} \int {\rm d}^3 \vec x' {\vec j_{}(\vec x')\times (\vec x-\vec x')\over |\vec x-\vec x'|^3}$ または $= {\mu_0\over 4\pi} \int {\rm d}^3 \vec x' {\vec j_{}(\vec x')\times \vec {\bf e}_{\vec x'\to\vec x}\over |\vec x-\vec x'|^2}$

である。


今は無限に長い直線電流の場合でのみ式を合わせたので、実際に他の状況でも成立するかどうかは実験で確認すべきことである。幸いなことに、この式は一般の静磁気的状況で成立することがわかっている。

ビオとサバールが行った最初の実験では、V字型に折れ曲がった導線を流れる電流が使われた。

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↑上のようにいろんな形の電流で磁場を測定し、それが積分で求めた式と一致するかを調べたわけである。

この3つの電流のうち、一番強い磁場を作るのはどれかな?

と聞いてみたら、赤という答と緑という答が半々ぐらいであった。磁場がどのようにできるか考えてみれば、緑の場合では「行き」と「帰り」の電流の作る磁場が消し合ってしまう(赤の電流でも多少消し合う)ということがわかるので、一番強いのは赤である。

この法則が、${\rm rot}\vec B=\mu_0 \vec j$を意味していることについては、来週考えよう。

電磁気学Iの追試について

2回に分けて追試を行います。場所はどちらも理313教室を予定しています。

  • 11月22日(木)8:30〜10:00
  • 11月24日(土)12:50〜14:20

どちらかを受けてください(両方受けてはいけません)。受ける人は、どちらの日程で受ける予定かを連絡してください(「木に受けます」「土に受けます」だけでいいです)。

本試験同様、A4一枚(表裏使用してよい)までの自作カンニングペーパー(印刷物、コピーはダメ)のみ、持ち込み可です。

試験は100点満点で、60点以上で評価「D」となります。

これが最後のチャンスにする予定ですので、がんばってください。

追試希望者に対し、日程をメールしてますが、返信してこない人がいます。メールがなんらかの理由で送られていない可能性があるので、「私は追試希望したのにメールが来てない」という人はもう一度メールを送るか、メール以外の方法で連絡してください。

なお、携帯のメールで「携帯のメール以外は着信拒否」という設定になっている場合があり、その場合私のメールが受け取れない可能性があります。チェックしてみてください。

学生の感想・コメントから

ビオ・サバールの法則の式を、予想した項から形や係数を決めていくのが面白いと思いました。$\vec B={\mu_0 I\over 2\pi r}$という既に知っている式と比べて組み立てるやる方も面白いです。

予想が割と当たるところが、物理法則ってうまくできているな、と思います。

ビオ・サバールの証明、ややこしいですね。見直します。

授業中言ったけど、これは「証明」じゃない。実験で確認しなくてはいけません。

${\rm rot}\vec B=\mu_0\vec j$は$\vec B$を計算して$\vec j$を求める式で、ビオ・サバールの法則はその逆だというのは重要だと思った。

こんなふうに微分方程式を解いていく計算が、物理では結構重要です。

次元解析がとても便利だと思いました。

そうなんです。ぜひ使えるようになってください。

ビオさんとサバールさんはフランス人らしいです。てっきり名前的にブラジル人かなと思いました。

アルファベットではBiotと、Savart。綴り見るとフランス人っぽいでしょ。

今日は大丈夫でした。

OKOK。

ビオ・サバールの法則はガウスの法則に微妙に似ているんですね。

アンペールの法則の方が似ている度合いは大きいかな。

無いんですか?(←先週健康管理ありますか、と聞いた人)丈夫な身体ですね。休日にする趣味などはあるんですか?

丈夫じゃないです。あちこちガタが来てます。休日の趣味… 物理とプログラミングやっているような。

(今日の式のまとめが書いてあって)公式を覚えるのでなく、理解してわかるようにする!

その意気です。理解していれば、覚える必要なんてないのです。

先生でも間違える時があるのはおどろきでした。

いや、私これまでもよく間違えてますよ。この授業でも(^_^;)。

磁場の積分を理解できたのでよかった。でも計算忘れそうです。

忘れる前に、自分でもう一回やってみる。反復大事。

法則を証明するために実験することなく証明できたりすることはありますか?

これまでわかっていて、実験で確かめ終わっている法則を組み合わせて、別の法則を作ることなら、できます。なんにもないところから実験なしに法則はでてきません。。

電荷密度から電場を計算する式に対応させればビオ・サバールの法則も覚えやすい。

「覚える」のではなく理解しましょう。電場と磁場の共通する考え方があります。

ビオさんとサバールさんの二人とは思わなかった。なんか見たことある積分の形だったけど、やり方をぱっと思い出せるようにしたい。

授業中も言ったけど、大学で物理やっている人なら「これ何度もやったやつだ」と思えなくちゃ、ダメです。

微小電荷の作る電場を積分して電場を求める方法とビオ・サバールの法則が対応していることが分かった。

同じ考え方なので、平行して理解しておきましょう。

電場と磁場のでき方の違いだけで考え方が似ているのがイメージできた。

共通する考え方を身につけておきましょう。。

計算がちょっと怪しいところがあったのだ、しっかり復習して基礎的なところでつまづかないようにしたい。

計算は自分でも一度やってみること。

電磁気学Iでやった事に似ているところがあったので、混乱しないように、しっかり理解したいと思います。

頭の中を整理しておきましょう。

ミスは誰にでもありますよね。

はいそういうものです。

今日は寝不足であまり頭に入らなかったので、次はしっかり寝て備えます。

目が覚めてから今日の分の計算をやっておくこと。

ビオ・サバールの法則を使っていけるように頑張ります。

いろいろ問題解いてみてください。

ビオ・サバールの法則を自力で出せるように理解する。

やりましょう。いろいろ工夫してみて。

少し難しかったです。

自力で計算をやり直して見ること。「難しかったなぁ」で終わっちゃダメだよ。

単位ベクトルが必要だということを思い出した。

単位ベクトルというか、ベクトルの計算は向きをちゃんと考えてやらないとね。

ビオ・サバールの法則から積分形の形を考えることができた。

う〜んと、ビオ・サバールの法則がそもそも積分形なんだけど。

ビオ・サバールの法則を学んだ。電場と似ていてわかりやすかった!

理解した、と思ったときこそ、自力で計算できるかどうかやってみましょう。

「実験して初めて証明できる」ということを証明した二人はすごい。

実験というのはそれを目指してやるものです。

式を求めるときはまず予想して式がどういうふうになるのかも大切だと思った。

闇雲に計算してもなかなか答出ませんからね。

ビオ・サバールで二人いるのにおどろきました。色んな電流にもちゃんと使えるのか気になります。それと、電場の式と似ていてわかりやすかったです。

もちろん、いろんな電流に使えます。複雑になると、積分がたいへんですが…。

$\vec {\bf e}_z\times\vec{\bf e}_x =\vec {\bf e}_\phi$で計算してもOKですよね。

極座標と直交座標を混ぜるのは危険です。$\vec {\bf e}_z\times\vec{\bf e}_x =\vec {\bf e}_y$は正しい。$\vec {\bf e}_z\times\vec{\bf e}_r =\vec {\bf e}_\phi$も正しい。$\vec {\bf e}_x$と$\vec {\bf e}_r$は別のベクトル(たまたま一致する場所もあるけど)なので、二つの式を混ぜてはダメ。

ビオ・サバールの法則を学びました。もう一度やって自分のものにします。

いろいろな計算をやってみてください。

発表課題が出されたので今回もがんばろうと思いました。

がんばってください。そのためには欠席しないように!

ビオ・サバールの法則、アンペールの法則、計算ができるよう、努力します。

とにかく自分で手を動かしてやってみましょう。

ビオ・サバールの法則。復習がてら自分で計算してみようと思います。

自分で計算して、納得しましょう。

外積の計算がこの世にあってよかったです。このおかげでビオ・サバールの法則がかんけつになりました。

外積を発明してくれた人(グラスマンさん)のおかげです。

新しい法則を知れてよかった。

使いこなせるようになろうね。

今日も新しいビオ・サバールの公式を習ったので、しっかり定着するように覚えます!!

「覚える」じゃなく「理解する」。理解すれば定着する。

電場の式と似ていて安心しました。

似てはいるけど、計算のややこしさはこっちの方が上です。

ビオ・サバールフェスティバル開催します。

なんやそれ。

ビオ・サバールの公式…いただきました。

おあがりなさい。

ビオ・サバールの法則がどんな法則だったがわかった。

次は「使えるようになった」になってください。

吟味して、公式を出すのは非常によかった。理解が深まりやすい!

深めてください深めてください。

ビオ・サバールの法則について理解できました。問題などを解いてもっと理解を深めましょう

演習は大事です。

向きの問題で外積を使用するのはおどろいた。

ええっ、そこは驚くところかな? 外積はこういう時のためにあるんですよ。

電場の問題と同じで結局zが関係なくなるのに感心した。

z軸方向の並進不変性を使って早めに関係なしにしておく、という方法もあります。今日はその話しなかったけど。

イメージできるまで読み直し、書き直します。

3次元的な話なので、動きまわって考えてください。


何かコメントありましたら↓にどうぞ。



*1 さっきまでは$\int {\rm d}^3 \vec x'$と略記していたが、省略なしに書くと$\int {\rm d} x' \int {\rm d} y'\int {\rm d} z'$となる。

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Last-modified: 2012-11-02 (金) 19:23:11 (2174d)