ベクトルポテンシャル、まとめと計算

静電場と静磁場でのポテンシャルの使い方をまとめよう。

静電場静磁場
ポテンシャル電位(スカラーポテンシャル)Vベクトルポテンシャル$\vec A$
エネルギー密度$U=\rho V$$U=-\vec j\cdot \vec A$
場との関係$\vec E=-{\rm grad}V$$\vec B={\rm rot}\vec A$

静電場のエネルギーが電荷×電位であったように、静磁場のエネルギーを(マイナス符号がつくが)電流×ベクトルポテンシャルにしよう、というのがベクトルポテンシャルの考え方。

電荷が電位の変化を作っている様子を図で書こう。

V.png

この中にある電荷は、エネルギーを下げる方向に力を受けるので、「電位の坂を降りる」方向に力を受ける(これが$\vec E=-{\rm grad}V$のマイナス符号の意味)。

電流がベクトルポテンシャルの変化を作っている様子は以下の通り。

この中にある電流もエネルギーを下げる方向に力を受ける。エネルギー密度の式$U=-\vec j\cdot \vec A$のマイナス符号のおかげで、これは「ベクトルポテンシャルの坂を登る」方向になる。

では次に、ポテンシャルと源の関係式を出しておこう。

${\rm div}\vec E={\rho\over\varepsilon_0}$に$\vec E=-{\rm grad}V$を代入することで、 $$\triangle V=-{\rho\over\varepsilon_0}$$ を得る。ラプラシアンは $$\triangle={\partial^2\over\partial x^2}+{\partial^2\over\partial y^2}+{\partial^2\over\partial z^2}$$ という二階微分であり、二階微分というのは「グラフの曲がり具合」で表される。

nikaibibun2.png

もしこのグラフの線がゴム紐のような弾力のあるものであったとすると、2階微分が+である場所では、ゴム紐のその部分は上に引っ張られる。2階微分が−なら話は逆となる。つまり、この2階微分はゴム紐の復元力のようなものを表現しているのである。物理の方程式ではラプラシアンがよく現れるが、それはこのような「復元力」が起こる物理現象が多いからである。

2Dlap.png

上の図は2次元の場合のラプラス方程式の解の立体的グラフである。このグラフをゴム膜のように考えると、x方向のたわみはこの膜を上に引っ張るだろう。そして、y方向のたわみはこの膜を下に引っ張る。この二つの力がつりあって、この膜が静止している。このつりあい関係を表すのが、$\triangle f=0$なのである。

電荷のあるところ($\rho\neq0$)では、外力がかかっているようなもので、このつりあいが崩れる。正電荷のあるところで電位が盛り上がり、負電荷のあるとこで下がるのはこのようにして数式$\triangle V=-{\rho\over\varepsilon_0}$に結びついている。

ベクトルポテンシャルも同様の図が書ける。そしてそのrotを取ることで磁場が出てくる。

vectorPotential.png

では、静磁場の場合のポテンシャルと源の関係式を作ってみよう。

${\rm rot}\vec B=\mu_0\vec j$に${\rm rot}\vec A=\vec j$を代入すると、 $${\rm rot}\left({\rm rot}\vec A\right)=\mu_0\vec j$$ である。数学の公式として、任意のベクトル$\vec A$に対して $${\rm rot}\left({\rm rot}\vec A\right)={\rm grad}\left({\rm div}\vec A\right)-\triangle \vec A$$ があるので、これを使う。さらに、実は後で示すように${\rm div}\vec A=0$にできるので、 $$-\triangle \vec A=\mu_0\vec j$$ という式ができる。係数の違いとベクトルかスカラーかの違いを除けば、$\triangle V=-{\rho\over\varepsilon_0}$と全く同じ式になった。

こうして、電位の計算と同じ計算法でベクトルポテンシャルが計算できることになったわけであり、同行電流が引き合うという物理現象も説明できることになった。

磁場が${\rm rot}\vec A$で表されることを示すもう一つの方法を紹介しておく。

#ref(): File not found: "EnergyjA2.png" at page "電磁気学II2012年度第10回"

のように直線電流の一部を長方形状に飛び出すように変形した時のエネルギーの増減を考える。その増減は(図をよく見るとわかるように)$\vec A$を力と考えた時の、図の長方形を回るときの仕事は$I|{\rm rot}\vec A|S$になる(Sは長方形の面積。rotは「単位面積当たりの仕事」であったことに注意)。一方磁場の出す力は$BIL$で、これに横にひっぱった距離$\Delta x$をかけると仕事は$BIL\Delta x$だが、$L\Delta x$は面積Sそのものである。この二つの式の比較から$B=|{\rm rot} \vec A|$とわかる(ここでは向きについては考えなかったが、もちろんちゃんと考えれば向きも一致する)。

ゲージ変換

どうやって${\rm div}\vec A=0$にするのか、という話をしておく。$\vec B={\rm rot}\vec A$だが、 $$\vec A\to\vec A+{\rm grad}\Lambda$$ と置き換えても、$\vec B$は変わらない(${\rm rot}({\rm grad }\Lambda)=0$だから)。

我々が物理的に観測する量は$\vec B$だけなので、同じ$\vec B$を表すのであれば$\vec A$と$\vec A+{\rm grad}\Lambda$は物理的に同等である。この変換を「ゲージ変換」というのだが、ゲージ変換すると、${\rm div}\vec A$は $${\rm div}\vec A\to{\rm div}\vec A+{\triangle}\Lambda$$ となる。そこで${\triangle}\Lambda=-{\rm div}\vec A$になるように$\Lambda$を選べば、${\rm div}\vec A=0$にできる。

磁性体中の磁場

ここからは磁性体の話であるが、今日は時間がなかったので磁性体の説明をざっとやっただけ。

磁性体の種類

外部から電場をかけると誘電体内に分極が起こったように、外部から磁場をかけると何らかの反応が生じるが、その生じ方には(大きく分けて)3種類ある。

[反磁性(diamagnetism)] 磁場がかけられると、その磁場を打ち消すような磁場を作る*1

[常磁性(paramagnetism)] 磁場がかけられると、その磁場を強める*2

[強磁性(ferromagnetism)] 外部磁場だけではどのような磁場ができるかは決まらない。外部磁場がない時でも、磁場を作っていることもある*3

jisei.png

今日は反磁性の例としてシャープペンシルの芯が磁石から逃げるところを見せた。この時、N極を近づけてもS極を近づけても逃げる。強磁性体や常磁性体はどちらにもひきつけられる。

強磁性体が高温で磁性を失うところも見せようと思ったが、ライターを持ってくるのを忘れた。来週やります。

各々の磁性体の話と、磁場$\vec H$と磁束密度$\vec B$の違いなどについては、また来週。

学生の感想・コメントから

磁性についてよく学ぶことができた。

次でまだまだあります。

$\Lambda$は物理的にどんな量なんですか?

「物理的に意味のない量」です。

久しぶりに$\triangle$(ラプラシアン)を見ました。復習していきたいと思います。

ラプラシアンとは顔なじみになっておいてください。

$\vec A$と$\vec B$の関係を$V,\vec A$の関係と比べるとわかりやすかった。

対応が大事ですね。

今日の授業も難しかった…。勉強して理解してきます。

図を描いて概念をつかんどきましょう。

人間は一瞬で混ぜる塩と胡椒を分離するというマジックがある。あれはきっと電磁気に関係あるでしょう?

それ見たことないからわからないなぁ。マジックだから何かタネはあるのだろうけど。

磁性体には他にどんな種類がありますか?

反強磁性体(NSが逆に並びたがる)とかフェリ磁性などがあります。

磁石を温めるとくっつかなくなるところを見たかったです。

来週ね。

磁石に反発するシャーペンの芯が不思議でした。

反磁性はなかなか見れないから、見るとびっくりしますね。

外村彰さんのご冥福をお祈りします。

残念なことでした。

いろんな磁性体の種類があって面白い。

どうしてそういう種類がいろいろあるのか、というところにも物理があります。

身近にあったシャーペンの芯が反磁性体だったとは驚きでした。

実はもっと身近な水もですよ。

理解しやすい授業の時は気づかなったが、話すペースが早い気がする。だからといって理解できない訳ではないので問題はない。

すいません、つい早口になります。残り時間も少なくなってきたし。

12/7の質問なのですが、「ある座標でOK」ということの証明はあるのでしょうか?3次元の任意の1点は本当に(x,y,z)で表記できているのでしょうか?

「保証はあるか」と言われると困るが、とりあえず、できている。

結局${\rm grad}({\rm div}\vec A)$が消えるのはゲージ変換できるからですか?

そうです。

磁性についてなんとなくわかった。

まだまだわからなきゃいけないことがたくさんある。

水が反磁性なら、磁石を水に近づければ反発するような変化が起こるんですか?

弱い力ですが、反発します。

来週、シャーペンの芯に火を当てて、シャーペンの芯が磁石から離れるのを楽しみにしてます。

そんな実験はない(^_^;)。シャーペンの芯はそもそも磁石につかないから。

反磁性という、磁石と反発する性質を持つ物質があるとは初めて知りました。

弱いからなかなか気づかないのです。

うーん、体調がすぐれなくて集中できなかったです。

お大事に。体調管理は万全に。

前回の授業より少し理解できたので復習もしつつがんばりたい。また、磁石の火あぶりの刑を早く見たいです。

来週お楽しみに(そんなに派手な実験じゃないけどね)

ヨギ先生は、よく生徒に見せるための教材としての道具を色々作ってくれるんですか?前野先生が頼むんですか?

私は工作下手なので、時々頼みますが(^_^;)、他にもいろいろ作ってるようです。

いつも、なんで鉄だけ磁石にくっつくのか不思議に思ってたけど、他にもくっついたり反発したりする金属もあるんですね。

強磁性体は力が強いので目立つんですが、いろいろあるのです。

私もキュリー温度みたく、何か温度を発見したいざます(生きているうちに、ノーベル賞欲しいな)。

頑張ってください。期待して待ってます。

ベクトルポテンシャルの向きは必ず電流と同じ向きだと思っていたので、説明を聞けてよかったです。

電流はいろんな方向に流れて、いろんなベクトルポテンシャル作るので、一致するのは運がいい時だけですね。

磁石は熱運動で磁力を失うのはびっくりした。

高いところから落とすと衝撃で弱くなったりもしますよ。

金属は金属でもこんなに違うんだなと思いました。

もちろん、いろいろです。どうして違いが出るのか、というところにもまた、物理がある。

反磁性と常磁性の意味がわかってよかったです。

あと強磁性も含めて、理解しておきましょう。

磁性の話は興味深かったです。與儀先生の授業でも水も磁石を近づけると反発すると言ってたのを思い出しました。

力が弱いので実験してみせるのがたいへんなんですが、そうなんです。

電位と同じようにベクトルポテンシャルを考えたので、ベクトルポテンシャルは磁位にならないんですか?

磁位はベクトルポテンシャルとは別に、ちゃんとあるんです。教科書にも書いてありますので見ておこう。

今日はちょっと復習しとかないとやばいと思った。

今日に限らず、復習は必須です。

ベクトルポテンシャルでも電位と同じ形の式が出てきておもしろい。このパターンよくありますね。

物理の方程式って、けっこう同じパターンが出てくるものなのです。

反磁性って結局磁石じゃんと思ったけど、NとS両方で反発して面白い。でもやっぱり小さい磁石?

常に反発する、というのは磁石では出てこない性質です。

水が反磁性体っての驚いた。磁石が反磁性体になるのみたいです。

反磁性は弱いので、なかなか「見る」ことができないのですよ。

まとめてみるとあいまいな部分が多々あり、しっかり復習しなければ…

復習しましょう。自分でまとめを作ってみて。

磁性体にも色々な種類があって不思議な感じがしました。磁石にくっつくものとくっつかないものがある事は感覚的にもわかりますが「エネルギーは小さくなりたがる」という事から、全部同じ性質になりそうな感じもするので不思議です。

エネルギーが1種類しかないのならそうですが、いろいろなエネルギーが絡み合っているのです。最終的になぜ物体が磁石になるのか、は量子力学までいかないとわかりません。

今迄「磁力線が増えるとそれを減らしたがる性質」という考え方が強かったが、強磁性体や常磁性体ではそのような目的論的考えが通用しない場合もあるのだなと思った。

エネルギーが低い状態へ行くのは同じです。ただ、そのエネルギーが単純ではない。

磁束密度を使わずに$U=-\vec j\cdot\vec A$を使って電流に働くローレンツ力を求めたりできますか?

今日やった「コ」の字に曲げた電流もその一例です。もちろん荷電粒子の場合でもやればできます。

ベクトルポテンシャルの使い方を学びました。磁性についても理解していきたいです。

磁性はいろいろ複雑です。

反磁性の説明でシャーペンの芯を使った実験はおもしろかった。

あれは最初に見つけたときは「おおっ」と思いました。

鉄を中心に固定して、その周りを強い磁石がぐるぐる回れば原子磁石が運動して熱が発生したりします?

しますが、原子磁石が回ることによる熱より、磁場の変動で電流が流れることによるジュール熱の方が圧倒的に多いでしょうね。

シャー芯によって反発したり、くっついたりするのは面白いです。来週はライターを持ってきて実験してください。

はいお楽しみに。

${\rm div}\vec A=0$にするやり方はすごいテクニックだなと思った。先人の知恵ってのはあなどれない。

あれもいろいろ応用できるテクニックですよ。


何かコメントありましたら↓にどうぞ。

  • 他大の一年で電磁気を学習している者です。長期休みにも入るので復習がてら利用させていただきました。 -- 2012-12-19 (水) 21:09:35


*1 diamagnetismのdia-は「横切る」という意味。たとえば直径は「diameter」。「反対を向く」という意味が含まれる。
*2 「常磁性」という言葉は「常に磁性を持っている」というふうにイメージされるかもしれないが、それは誤解である。paramagnetismのparaは「parallel」の「para」。つまり磁場と平行な磁化を意味する。
*3 ferro-は「鉄」を意味する。鉄は代表的な強磁性物質である。

トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-12-22 (土) 08:59:30 (2125d)