今日はまず最初に、デモンストレーション実験

  • シャーペンの芯の反磁性(前回見えにくかったと言われたので、再度)
  • ネオジム磁石を熱して磁力を失わせる

を行った後、物質中の電磁場についてまとめた。

物質中の電磁場

真空中の静電場・静磁場の式は

$${\rm div}\vec E={\rho\over\varepsilon_0},~~~~{\rm rot}\vec B=\mu_0 \vec j$$

だった。まず、物質中ではこれが以下のように変わる。

$${\rm div}\vec E={\rho+\rho_P\over\varepsilon_0},~~~~{\rm rot}\vec B=\mu_0 (\vec j+\vec j_M)$$

$\rho_P$は「分極による電荷密度」、$\vec j_M$は「磁化による電流密度」である。

この二つは、「原子・分子の状態によって発生する電荷と電流」である。物質は原子・分子でできているが、その中に電荷や電流があるわけである。

ところが、$\rho_P$や$\vec j_M$は目に見えない(分子を覗くことはできない)。また、制御できない(「ちょっと分子電流を多くして」と分子に頼んでも無駄)。

$\rho$や$\vec j$は外部から与える電荷・電流だから、測定できるし制御もできる。${\rm rot}\vec B=\mu_0 (\vec j+\vec j_M)$という式は、右辺が「わかる量」と「わからない量」の足し算になっている。方程式は「右辺がわかれば左辺がわかる(あるいはこの逆)」という形になっている式だから、わからないものを片方(この場合、左辺)に寄せてしまいたい。

ではどうすればよいか、ということなのだが、実はこの$\rho_P$と$\vec j_M$を左辺にまとめてしまえるうまい方法がある。

ここで、androidタブレットのシミュレーションで、「分子電流」の雰囲気を掴んでもらった。

apkファイルは右のアイコンからダウンロードできます。→rotM.apk 

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このプログラムは、上の図のような画面で、円電流が流れている様子をアニメーションで見る(実際のプログラムは赤と緑の球がぐるぐる回る)。

円電流がこのようにならんで図の紫色の方向に磁場が発生している時、物質が「磁化」していると言う。上の図の状態では磁化は一様である。

このとき、電流は流れていない(正確にいうと、流れているのだが互いに逆回りになので消し合ってしまう)。

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では、場所によって「磁化」の強さが違っているとどうなるか。プログラムでは磁化を変化させることができるので、

#ref(): File not found: "rotM2.png" at page "電磁気学II2012年度第11回"

のように右へ行くほど磁化を強く(流れる電流を大きく)してみる。図では、緑の○の数で電流の大きさを表している。

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のように、今度は左右の電流は消し合わず、下向きの電流が残る。

ここで「x方向に増加」している「z方向の磁化」によって「y方向の電流が作られる」ことに注意しよう。 単に比例ではなく、この場合厳密に$j_z=-{\partial_y}M_x$が成立することは、次の図を使って確認しよう。

jM1.png

図に書き込まれた$-{\partial\over \partial y}M_x\Delta y\Delta z$を、電流が流れている部分の面積$\Delta y\Delta z$で割れば、電流密度が$j_z=-{\partial\over \partial y}M_x$となることがわかる。

さて、以上では$M_x$がyの変化に伴って変化する時に$j_z$がある、ということを説明したが、次の図のように考えると、$M_y$がxの変化に伴って変化する時も$j_z$がある。しかも、その方向は今度は正の向きになる。この二つが同時に起こっていれば、二つの和になる。

jM2.png

こうして、z軸方向の分子電流は、$M_x$がyに依存して変化する影響と、$M_y$がxに依存して変化する影響と、二つの原因で出現するので、

\partial_x M_y - \partial_y M_x = j_z

が成立する。 3成分まとめて考えれば


磁化と分子電流
{\rm rot} \vec M= \vec j_M

という式が出る。これを使うと

\begin{array}{rl}{\rm rot} \left({\vec B_{}\over \mu_0}\right)=&\vec j_{{}_{true}}+\underbrace{\vec j_M}_{={\rm rot} \vec M}\\{\rm rot} \left({\vec B_{}\over \mu_0}-\vec M\right)=&\vec j_{{}_{true}}\end{array}

ということになる。ここで、


物質中の磁場$\vec H_{}$の定義 $$\vec H\equiv{\vec B_{}\over \mu_0}-\vec M$$

と置くことで、方程式${\rm rot} \vec H_{}=\vec j_{{}_{true}}$が成立する。${\rm rot}\vec B_{}$には分子電流の寄与があるが、${\rm rot}\vec H_{}$には分子電流の寄与がない。

以上をまとめると、


静磁場の基本方程式
{\rm rot} \vec H_{}=\vec j_{},~~~{\rm div}\vec B_{}=0

をもって基本法則とする。この二つの式を使うと、分子内に発生している磁極や電流が(式の上では)見えなくなるというのが一つの利点である。真電荷や真電流は測定もできるし実験者が設定することもできるが、分極や分子電流は、直接測定したり操作したりすることはできない。そのような量を(見た目だけでも)式から追い出せるというのが新しい場を定義する理由である。

こうして、$\vec j$がわかれば$\vec H$が計算できる(アンペールの法則なりビオ・サバールの法則なりが使える)ということになった。

$\vec B$に、分子の中を流れる電流の影響を取り入れたものが$\vec H$である、ということができる。

「実際に測定されるのはどっちなのか?」という点が気になる人もいるだろう。

そこでHを測定したい場合はどうするかを説明しておく(Bの方はまた来週)。

今我々が「磁場測定器」を持っていたとして、物質中の磁場を知りたいとしたら、その測定器を物体の「中」にいれなくてはいけないが、そんなことはできない。そこでどうするかというと、物体の境界にぴったりと測定器をつける。

するとどうなるかというと、${\rm rot}\vec H=0$である。なぜならいまは分子電流はあるだろうが、真の電流はいないから。あるいは下の図に書いたように面積0の周回路でアンペールの法則を使うと、中を流れる電流は0だ、と考えてもよい。${\rm rot}\vec H=0$ということは一周で磁場のする仕事は0。ということは外の磁場(の上下成分)と中の磁場(の上下成分)は一致しなくてはいけない。

#ref(): File not found: "Hsokutei.png" at page "電磁気学II2012年度第11回"

こうして、境界にそった成分のHは「すぐ外」で測ることで測定できるのである。

(講義では電場と電束密度に関しても話したが、そちらは省略する)

学生の感想・コメントから

磁気モーメントは始めて聞きましたよ。

ビオ・サバールで円電流の話した時に、ISが磁石の強さを表すという話は一応、しました。

BからHへ移行するとこに式の扱いが分かったが、MやPのイメージがつかみにくい。

分子の中で起こっていることなので、イメージは難しいかもしれませんが、そこは想像力で。

来週も実験楽しみにしてます。

やりましょう。

復習をしっかりして理解する。

がんばろう。

地球は滅びないんですか!?12/21日ですよー。

滅びないでしょうねぇ(^_^;)。

物質中ではDとHを使えば、うまく電場・磁場を扱えることがわかった。

使いこなそう!

遅刻してしまって途中からの参加になりましたが、やはりいまいちつかめきれてない。

今日は最初に実験やらandroidやらがあって、面白かったのに。

$B=\mu_0H$の式が最初に出てきたときは、BとHの区別の必要性ああるのか、どういう時にBを使って、どういう時にHを使えばいいのかわかりませんでしたが、今日の授業でBとHの違いがわかって、すっきりしました。

来週もう少し実例と使い方をやりましょう。

アプリを使ったので、イメージしやすかったです。

作ったかいがあったかな。

前野先生は工作下手に分類されるのですか?(笑)実験屋にはかなり高度な技術が要求されるというこですかね?

いや、私ほんとに不器用なんですよ。プラモデル作るとたいてい部品余ったりするし。

火をつかって磁石をあたためると磁石じゃなくなる実験はおもしろかったです。

磁石の中で起こっていることを想像してみましょう。

磁場は仕事が出来なくても、磁場の変動は仕事が出来るということですか?

いい疑問です。その話、電磁誘導のところでじっくり話しましょう。

磁石を熱すると磁性がなくなるのは驚きました。これを応用したら、物質の磁性を人為的に調整することができるのかなと思いました。

実際にそういうことをやって、記憶装置(テープとかディスクとか)にメモリーを保存しているわけですよ。

物質中のことも考えると色々大変だと思った。でも最終的に落ち着いた式の形になったのでよかったです。

きれいにまとまった式になります。

シャーペンの芯が今日見れたのでよかった。左の直方体の磁化による電流が右より小さいのはなんでですか?

磁化が場所によって変化する理由はいろいろあります。物質の様子の違いとか、並び方の違いとか。

理解が追いついてなかったので復習します。

がんばりましょう。

磁気モーメントがよくわかりました。

それはよかった。

物質中の磁場を、すぐ外の磁場をはかることによって測定できるのは面白いと思いました。

磁場Hと磁束密度Bの境界条件のおかげです(境界条件については、来週まとめてやりましょう)。

物質中の磁場の式を学びました。どのようにして導いたのかを復習します。また、期末テストはカンペありですか?

期末テストもカンペありです。

磁石を熱してはさみから取った時、「バチっ」と音がしたと思いますが、ンぜ音がなったのでしょうか? はさみと磁石が衝突した?

音は気づかなかったなぁ。落ちた時には音がしたと思いますが。

タブレットがあるとイメージしやすくて勉強しやすいです。

分子電流のイメージを持てたかな?

$\vec M$と$\vec P$がちゃんとわかった気がしない。androidの「ヒッグス粒子ってなあに?」が気になる。

分子の中のお話なので、想像力働かせてください。ヒッグス粒子ってなあに?はWebにもあります(→http://irobutsu.a.la9.jp/movingtext/HiggsHS/index.html

理解を深めなければ…。

深めまくりましょう。

今日出てきたHと高校から習ってきたHとではどんな感じに違うんですか?。

同じです。高校の時は詳しい説明が省略されていただけ。

HとBの違いがわかった!! Hはいらないかと思ったけど、説明を聞くと便利なものだと思った。無駄な式ってないんだと思った。

先人が整理して簡単にした結果がいまある式なので、無駄はずっと昔に省かれているのです。

難しかったです!

復習しとこう。

28日学校かよー。

そうなんです。面白い実験するから、ちゃんと来てね。

BとHの違いについて詳しく理解できた。

理解しときましょう。はまりやすいところです。

物理は測定できる物理量なのかどうかということを調べるのが大事なんだなと思った。

実際に測定してなんぼですから。

今日はちょっと進むの早くて理解が少ししかできなかった。

復習しておきましょう。

HとBの違いは$\mu_0$だけだと思っていたが、Mというのがいることがわかった。

こいつのためにHとBを使い分ける必要があるのです。

今日の写真が琉大のパンフレットに載るとうれしいです。

だねぇ。いい写真とれたかな。

BとHの違いの具体的内容がわかった。

それはよかった!

HとB,EとDにこのような関係があったと始めて知りました。ただ単にHに$\mu_0$かけてB、Eに$\varepsilon_0$かけてDだと考えていたため、今日の授業を通してこのような考え方はやめたいと思いました。

実はけっこう大きな違いがあるのです。

物質中における式が便利なものだと思った。

うまく作ってありますね。

静磁場であれば、物質中でも真空中でも基本的なところは同じだと思った。

基本はね。

3Dを考えるのがたいへんだったが、アニメーションのおかげで助かりました。自分なりに考えられるようにしたいと思います。

イメージをつけておきましょう。

物質のすぐ外でHを測れば。中のHがわかるというのが面白い。物質中に電流が流れているというのが不思議だ。電池も何もないのに。

それは例えば「原子核の周りを電子が回り続けているのはなぜ?モーターもないのに」というのと同じ疑問なのです。ちなみに答えは量子力学にある。


何かコメントありましたら↓にどうぞ。



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Last-modified: 2012-12-28 (金) 19:04:06 (2118d)