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先週はいろんな波動方程式とその解について考えました。

先週の最後にやった、水槽にできる波について、水槽にできる波のアプレットを見せながら復習した。

suisou0.png

↑波が起こってない時の水槽(一部だけ黄色に塗ってある)

suisou1.png

↑波が起こって、黄色に塗った部分が「背が高く、かつ横幅が小さい」状態になっている時。

suisou2.png

↑波が起こって、黄色に塗った部分が「背が低く、かつ横幅が大きい」状態になっている時。

横幅が小さくなると背が高くなるのは、水がほとんど圧縮されない液体であることから起こることである(面積が一定になるように動く)。

横幅が小さくなるのは、今黄色く塗っている部分の右側と左側で水の移動距離(変位)が違うからである。よって、

変位の差→横幅→水面の高さ

という因果関係がある。

ところで、水面の高さは今考えている黄色の領域の左右で違う。

suisou3.png

左右の高さの違いは左右の水圧の違いになる(↑の図参照)

水圧の違いに比例して、この黄色い部分に加速度が生まれる(左右の水圧が等しければ加速度は0である)。

よって

水面の高さの差→水圧の差→加速度

という因果関係がある。以上から、

「変化の差」の差→水圧の差→加速度

という因果関係となる。これから加速度(時間の二階微分)と変化の差の差(空間の二階微分)が等しいという方程式となるわけである。

これで4章が終わったが、宿題は次の5章とまとめて出すことにする。

第5章 1次元波動の進行


この章で学ぶ大事なこと
  1. 一次元波動の進行
  2. 波の接続条件と反射
  3. 波の運ぶエネルギー
  4. 分散関係、位相速度と群速度の違い

5.1 一次元波動の進行

前節で考えた波動方程式

{\partial^2\over \partial t^2}u(x,t)=v^2{\partial^2\over \partial x^2}u(x,t)

u(x,t)=F(x+vt)+G(x-vt)

という解を持った。ここではまず、このような波の進行について考えていこう。

namiidou.png

まずは一番単純な波動の形として、

u(x,t)= A\sin\left(k(x-vt)+\alpha\right)

の形を考えよう。この波は、t=0において

u(x,0)= A\sin (kx+\alpha)

という正弦関数の形をしていて、それが速度vでx軸正の向きへと進んでいく波である。このような波は「正弦波」と呼ばれる*1

これまでも使ってきた言葉をいくつか整理しておこう。このような形で波を表した時の三角関数の引数*2を「位相(phase)」と呼ぶ。上の式の場合、位相はk(x-vt)+\alphaである。特にx=0,t=0における位相αは「初期位相(initial phase)*3」と呼ばれる。

今、新型インフルエンザの流行が「フェイズ5になった」とか言われるが、あの「フェイズ」もこの位相と同じ言葉。波の位相が「今は山か谷か」を表現するのと同様に、「今どの状況にあるか」を表している。

位相が2π増加すると、三角関数は一回振動する。t=0での位相(kx)を見ると、xが{2\pi\over k}だけ増加すると波が一回の振動分の変化をする。つまり、\lambda={2\pi\over k}が「波一個の長さ」であり、これを「波長」と呼ぶ。

kのことは「波数」と呼ぶ。文字では「波の数」と書くが、正確には「単位長さあたり位相の変化」を表現する量である。あるいは、距離{2\pi}の中に入っている波の数だと考えてもよい(k={2\pi\over \lambda}であり、λが一個の波の長さである)。

nami.png

↑の図の動くバージョンを見せながら話した。

namiiso.png

上ではt=0というある時刻に着目して考えたが、今度はある一点x=0に着目すると、

u(0,t)= A\sin \left(-kvt+\alpha\right)

である。kvは単位時間あたりに位相がどれだけ変化するかを表す数であり、「角振動数」と呼ぶ(文字ωで表すことが多い)。位相が2π変化すると波が一回振動するのだから、{\omega\over 2\pi}は単位時間の振動回数、すなわち「振動数」であり、この逆数{2\pi\over \omega}は一回の振動に要する時間、すなわち「周期」である。

波の式は

\begin{array}{rl} u(x,t)=&A\sin\left(kx-\omega t+\alpha\right)\\=&A\sin\left( 2\pi\left({x\over \lambda}-{t\over T}\right)+\alpha\right)\end{array}

(正弦波の解)

などと書くことができる。式(正弦波の解)の意味するところは、右行きの波の場合、ある時刻に着目すると「場所を移動すると、単位距離進むごとに位相がk増える(λだけ進むと位相が2π増える)」ということになり、ある一点に着目すると「時間が経過すると位相が単位時間あたりωずつ減る(Tだけ経過すると位相が2π減る)」ということになる。こういうのは公式を(御経のように唱えて)覚えようとするよりも、

位相2πの変化 = 距離λの移動 = 時間Tの経過

という関係を頭に入れておいてその都度意味を考えて導き出すようにした方がよい。

以上からわかるように、波の速度と波長と周期の間には、v={\lambda\over T}あるいは、v={\omega\over k}という関係が成立する。ただし、ここで考えた波の速度は一般に「位相速度(phase velocity)」と呼ばれるものである。波には他にも速度の定義がある。そのうち重要なもう一つは「群速度(groupe velocity)」である。これについては後で解説する。

y=A\sin\left(2\pi\left({x\over\lambda}-{t\over T}\right)+\alpha\right)なんて式が出てくるが、この式もちゃんと意味を考えて理解しよう。{t\over T}は「時刻0から今までの間に出た波の数」である。そして、{x\over\lambda}は、「原点からこの場所までの間にある波の数」である。{t\over T}-{x\over\lambda}には「時刻0から今までに原点から出た波のうち、まだ届いてないものを除いた数」という、ちゃんとした意味があるのである(これに波1回の振動の位相である2πがかけられている)。

5.2 正弦波の反射

波がずっと同じ状態で続くのではなく、どこかに「端」があってそこで反射が起こる場合を考えよう。すでに述べたように、この「端」がどのような性質を持っているかによって反射の起こり方は違う。代表的な例は「自由端反射」と「固定端反射」である。

固定端は「端」において合成波の変位が0であるという条件であり、自由端は合成波のx微分が0であるという条件である*4

固定端、自由端などの端がないならば、波はずっと右(あるいは左)に進行していられる。この場合、方程式の解がF(x+vt)のみだったりG(x-vt)であったりすることが許されるのである。ところが、端(簡単のためここではx=0としよう)があると、その場所の波の変位もしくはその微分に制限がつく。もし、u(x,t)=F(x+vt)という解を採用したとすると、たとえば固定端条件としてx=0でuが0(つまり、u(0,t)=0という条件をつけてしまうと、それはF(vt)=0ということであって、Fは常に0ということになってしまう(自由端の場合はF'(-vt)=0となって、Fはずっと定数になってしまう)。端での条件を満たしつつちゃんとした解が出るためには、

固定端の場合: F(vt)+G(-vt)=0   自由端の場合: F'(vt)+G'(-vt)=0

というふうに、FとG二つの関数の相互関係を使って条件が満たされるようにしなくてはいけないのである。G(x-vt)=A\sin \left(k(x-vt)+\alpha\right)という正弦波解の場合、端での条件式は


固定端の場合:

F(vt) + A\sin\left(k(-vt)+\alpha\right)=0

よって、

F(x+vt)= -A\sin\left(k(-x-vt)+\alpha\right)= A\sin\left(k(-x-vt)+\alpha+\pi\right)

なお、2こめの等号では、\sin(\theta+\pi)=-\sin\thetaを用いた。

自由端の場合:

F'(vt)= -k A\cos\left(k(-vt)+\alpha\right)

より、

F'(x+vt)= -k A\cos \left(k(-x-vt)+\alpha\right)

となって、この式の両辺をxで積分して

F(x+vt)= A\sin \left(k(-x-vt)+\alpha\right)

となる(積分定数は0であるとした。原点を中心とした振動が起こるならば、これは正しい)。


のようにして、F(x+vt)の形を完全に決めてしまうことになる。

ここで、x=0における左行きの波G(-vt)=A\sin \left(-kvt+\alpha\right)と右行きの波(固定端ならF(vt)=A\sin\left(-kvt +\alpha+\pi\right)、自由端ならばF(vt)=A\sin\left(-kvt+\alpha\right))を見比べると、


反射による位相差 固定端では、反射の時に波の位相はπだけ増える。自由端では、反射しても波の位相は変化しない。

ということが言える。「位相がπ増える」という言い方は少しややこしく聞こえるが、\sin(\theta+\pi)=-\sin\thetaであることを考えれば「符号がひっくり返る」ということと同義である。

わざわざ「位相が増える」という言い方をするのは、πではない角度で位相が変化する場合もあるから。


自由端反射
jiyutan.png


固定端反射
koteitan.png

このあたりは、動く画像を見せながら話をした。

なお、自由端の「微分が0」という条件の意味は、この授業の最初で言った「力∝変位の差」ということを考えると「力が働いていない=変位に差が生じない」と考えることもできる。自由端の「自由」の意味は「力がかからないよ」ということなのである。

5.3 媒質の違う領域への進入と反射

たとえば光が空気中から水中に進入するとき、あるいは音が暖かい空気から冷たい空気中へと進入するときなど、波はその境界でさまざまな現象を起こす。特に面白いのは屈折現象なのだが、それは2次元以上で起こることなので後に回して、1次元の波の場合でどのようなことが起こるかを考えよう。

非常に簡単な例として、x座標が負の領域では波数kの波が、正の領域では波数k'の波が存在できる(両方とも角振動数はωとする)場合を考えよう。このような状況でx=-\inftyから波が正の方向に進行してきたとする。波の一部はx=0にある境界で跳ね返り、一部はxが正の領域に進入していく。

kaidan.png

動く図ではこれである。

これを式で表すと、x<0で、

u(x,t)={\rm e}^{{\rm i}kx-{\rm i}\omega t}+R{\rm e}^{-{\rm i}kx-{\rm i}\omega t}

x>0で、

u(x,t)=P{\rm e}^{{\rm i}k'x-{\rm i}\omega t}

である。計算を単純にするため、入ってくる右行きの波(入射波)を振幅1として、{\rm e}^{{\rm i}kx-{\rm i}\omega t}と表現した。反射波は逆向きに進み、振幅は変化している筈なので、R{\rm e}^{-{\rm i}kx-{\rm i}\omega t}と表現する。xが正の領域に進入していく波はP{\rm e}^{{\rm i}k'x-{\rm i}\omega t}と書いた。

この時、u(x=0,t)は二つの表現(x<0の領域で考えれば{\rm e}^{-{\rm i}\omega t}+R{\rm e}^{-{\rm i}\omega t}x>0の領域で考えればP{\rm e}^{{\rm i}k'x-{\rm i}\omega t})を持つが、この二つはx=0において一致しなくてはいけない(でないと、x=0でuの値が不連続にジャンプしてしまう)。この接続条件から、

1+R =P

(接続条件1)

という式が出る。また微分{\partial u\over \partial x}|_{x=0}の接続から、

{\rm i}k(1-R)= {\rm i}k'P

(接続条件2)

が成立する。この二つを解く。{\rm i}k'\times(接続条件1)-(接続条件2)により、

{\rm i}k'(1+R) - {\rm i}k(1-R)=0~~~~~~\to~~~~  R= {k-k'\over k+k' }

が出るし、{\rm i}k\times(接続条件1)+(接続条件2)によって、

2{\rm i}k = {\rm i}(k+k')P~~~~~~\to~~~~ P={2k\over k+k'}

が出る。

katamuki.png

ここで、Pは常に正であるが、Rはk>k'なら正、k<k'なら負である。

もちろん、k=k'ならR=0。この状態が、以下の写真。

bin1.jpg

↑いっけん、水以外は何も入ってないようにみえる瓶。

bin2.jpg

↑ふたをあけてみると、おや??

bin3.jpg

↑水を抜いてみた。こんな透明の塊(園芸用に吸水材として売っているものです)が入ってました。

この塊の中での光の波数k'が、水中での光の波数kとほぼ等しい(k≒k')ために、全くと言っていいほど反射が(屈折も)起こらず、見えません。「k=k'の時にR=0」が、まさに実現しています。

学生の感想・コメントから

固定端、自由端が理解できた。

しっかり憶えておこう。

波動論が面白くなってきた。

いろいろ楽しいことがあるものです。

ゼリーが消えた。

ちなみにゼリーじゃありません。

油とガラスでも、ゼリーと水みたいなことできますか。

できますよ。ちなみにゼリーじゃありませんが。

光の速さは水の深さと関係ありますか?

ないでしょう。

何もない壁は自由端になるのか?

何もなかったら反射しませんよ。

位相は難しかった。

全然、どこにも難しいところはない筈です。言葉が新しいからとごまかされないように。

16講まで行いますか?

いえ、15講までです。


*1 cosを使って表すこともあるが、その時でも「余弦波」とは言わず「正弦波」と呼ぶ。
*2 複素数を使って表現した場合ならば、{\rm e}^{{\rm i}\theta}のようにexpの肩に乗っている量からiを取ったもの。
*3 「位相定数」という呼び方もある。
*4 「自由」端は名前に反して「条件がついていない」という意味ではないのである。

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Last-modified: 2017-03-06 (月) 05:51:38 (528d)