電磁誘導
先々週に電場、先週に磁場をやったので、今日はその二つの相互作用であるところの電磁誘導を考えた。
まずはネオジム磁石とLEDのついたコイルを使って実際に電磁誘導を起こす。
電磁誘導が起こっている様子は、授業では使わなかったが、でイメージを確認することができる。
この電磁誘導の起こる様子を理解するには、
自然は人間に逆らう
という考え方が役に立つ。たとえば、

のような考え方で電流がどう発生するかがわかる。
「人間に逆らう」を

のように力が逆向きに働くと考えてもいい。
この「逆向きの力が働く」というのはエネルギー保存則的にも大事なのである。というのは、「電流が流れる」ということは電流のエネルギーを誰かが供給しなくてはいけない。この「逆らう力」に対抗して磁石を動かす「手の力」がする仕事が、そのエネルギーの供給源なのである。こうして考えると「自然が人間に逆らう」というのは「電流を作る分のエネルギーの補給を求めている」という考え方もできる。
というわけで、ここで手回し発電機を回すなどをして「仕事をしなければ電流ができない」ということを実感してもらった。また、リング状ネオジム磁石を銅(電気を流す)またはアクリル(電気を流さない)などでできた棒に通して動かすと、銅の近くでは抵抗を感じる(電流を発生させているから)なども実感してもらった。
ついでに、センター試験で何年か前に出た手回し発電機の問題を聞いてみた。正確ではないが、
手回し発電機の負荷の部分に
- 直結した場合
- 豆電球をつないだ場合
- 何もつながない場合
に、手応えのもっとも重いもの、軽いものはどれか?
というものである。
実はこの問題を出したときにはすでに「直結」と「何もつながない」は実感してもらった後なので、「豆電球をつないだ場合」がどこに入るかだけが問題となる。
これは実は直結がもっとも重く、何もつながないがもっとも軽く、豆電球がその中間に入る。
ここでしばらく「もし生徒から『豆電球でエネルギーを使っているんだから直結より重くなるんじゃ?』と質問されたらどう答えるか」について考えてもらった。
解答としては、
- 「手応えは電流で決まる」(電流が大きいということは、上の図で示した「逆らう力」が強くなる)ということを確認すること
- 電球という形でなくても、電流が流れればジュール熱という形でエネルギーは消費されていること
- 回す速さで電圧は決まるので、電流が大きいほど電力は大きいこと
などをきっちりと説明しかなくてはいけないだろう。
さて、電磁誘導は、
- 磁石がコイルに近づいた場合
- コイルが磁石に近づいた場合
のどちらでも起こる。このうち、コイルが動く方の電位差の発生(起電力の発生)を、を使いながら、説明した。
つまり、二つの電磁誘導のうちコイルが動く方は、すでに知っている電流と磁場の力(ローレンツ力)で説明がつく。一方磁石の場合は「磁場の時間変化が電位差を生む」という新しい法則になっている。
このように物理法則はいろいろと絡んでいるので(特に今日の話の場合、力学でのエネルギー保存と仕事の関係にも強く絡んでいる)、そのつながりを考えて理解し教えていかないといけない。
どちらの場合も、
起電力は、磁束の変化を妨げる向きに電流を流そうとする方向に発生する
というのは同じである。
そして実は、コイルをとめて磁石を動かしたときと磁石をとめてコイルを動かしたときの発生する起電力は、相対速度が同じならば等しい(これは偶然ではないが、それは相対性理論によって解決される)。
今日は最後に以下のようなショートレポート問題を課した。来週はこれの解答からやる。


ちょっと出来が悪くて困っている(^_^;)。
受講者の感想・コメント
青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。
主なもの、代表的なもののみについて記し、回答しています。
センター試験の手回し発電機の問題が面白かった。この授業を受けてなかったら間違えていたと思います。
実際、あの問題は正答率もかなり低かったようです。
結論を文章化して欲しい。
う〜ん。それを自分でできるのも教員になるための勉強のうちなんですが。
実際に目で見てわかる教材が多くてわかりやすかった。
目で見て、実感してってのは特に理科では大事。
自然は変化を嫌うという考え方が万能だと思った。
ここ以外でもいろいろ使えますね。
単に法則を覚えていただけだったが、原理がわかった。
ほんとはそれを、早い段階でやっておかないといけないんですよ。
電位がまだまだわかってないなぁと思いました。
電磁誘導のときは特に混乱しやすいので注意しよう。
ショートレポート難しかった(多数)。
この程度は平気でいけるようになろう。