今日の授業は波動についてAndroidタブレットを使ったシミュレーションを使いながら説明をした。

 まず↓のプログラムで波の重ね合わせについて。

などをアニメーションを見ながら確認した。

 位相が$\pi$ずれると波が消し合うというところでついでにノイズキャンセリング・ヘッドホン(外からの雑音に位相差$\pi$の音を合成して消すという原理)の話をした。ついでに

こうやって消えたら、エネルギーが保存してないみたいだけどどうなっている??

という質問をしてみた。

 実はこういう場合、ある場所(この場合耳)で消しあっていても他の場所(ヘッドホンの外側)ではむしろ強めあっていたりするのである(後でやる二重スリットの話などでよくわかるだろう)。トータルのエネルギーはちゃんと保存する(あたりまえだが、これを自信を持って言い切れるようになろう)。

 次に、

を動かしながら、

を確認した。

 ここでまた問題。

ちょうど$n=1$だったら反射はどうなる???

 これは昔高校生に質問されて「ぐっ」と詰まってしまった経験のある質問である。ただ、答えは実に簡単。少ししたら答えが出てきた。

 反射が起こらない。

というのが答え。

 屈折率が同じだと反射が起こらないことを見せる現象として、吸水ポリマーの球を瓶に入れたものを見せた。

↑この状態だと中に何が入っているかわからないが、水を入れると、

↑となって中が見える。吸水ポリマー(実は99%が水)は屈折率が水とほぼ同じなので、境界面で反射も吸収もおきないため、水を入れてやるとわからなくなるのである(この写真では泡が残っているので何かあるな、とはわかる)。

 屈折の話をしたので、

を見せながら屈折の法則の説明をし、その後

を見せながら「場所によって強め合ったり弱め合ったりすること」を確認した。

最後にいくつかおもちゃを見せて終わった。その一つは、放物面鏡を使ったおもちゃである3Dマジックミラー。

ちなみにこのおもちゃはある曲面でできた鏡を2枚向きあわせて張り合わせた形をしていて、下においてある物体が上の部分にあるかのごとく浮き上がって見える。上の写真は斜めから見たところ。てんとう虫が上にいるように見えるが…

上からのぞき込むと、てんとう虫は底の部分にいることがわかる。

 というわけで授業はここまで。来週が試験です。

 試験は、A4の紙1枚(何が書いてあってもよい)持ち込み可です。
  • 試験60点+ショートレポートの平均40点
  • 試験100点

のどちらか、高い方の点数で判定することにします。ショートレポートが悪かった人は、試験の方で取り返せるように頑張ってください。

 試験は、計算問題などは出しません。むしろ授業中にいろいろ注意したこと(たとえば中学生や高校生はこういう間違いするから気をつけようね、とくどくど言いましたね)などを整理して勉強しておいてください。

受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

 主なもの、代表的なもののみについて記し、回答しています。


波の特性について視覚的に判断できたことで式だけで学ぶよりわかりやすかった。
物理は、まずは「絵(イメージ)」なんですよ。

固定端での端にある波がどういう形になるか位相がπ違うと覚えずに実際に見て理解させるのは良いと思った。
まず最初にあるのは現象で、それをどう理解するか(その段階で式に落としていく)は後でいいのです。

実験をみせたときの小学生の反応がいいなら、波も苦手と思わず、しっかり理解したいと思いました。
音や光は派手な実験のネタがあるところなので、いろいろ探してみてください。

ただ勉強するだけだとつまらなかった物理が、教えるための勉強だと難しいけど面白かったです。解釈の仕方や教え方など、ただ学ぶだけではわからないことも多くてよかったと思います。
教えるために、と思って勉強するとそれだけ真剣になるし、いろんな方向から見ることになるので、面白さが発見できるのかも、です。

イヤホンのところでエネルギーという点で考えたときの保存則の成り立つ説明がしっくりきた。
エネルギー保存則ってうまくできてますね。

波の反射や透過について、アニメーションを使用してわかりやすかった。高校のときは先生の言うように呪文のように唱えてただけだったが、今になって理解できた。透過の$n=1$のはわかっているつもりであったが、いざ聞かれると答えられず、理解できてなかったと感じた。
呪文でない理解を進めていこう。

円盤のおもちゃは昔マックのハッピーセットでみたことがありました。
あのとき買い逃したのは失敗だったなぁ、と後悔してます。

波の分野は高校で学習しなかったのでとっつきにくいと感じてしまいましたが、光、音でかんがえると楽しくなりました。
やっぱり物理は「実際に起こっている現象」で考えるのが一番です。

タブレットはイメージしやすくわかりやすい。どの授業も今までで一番わかりやすかった。ありがとうございます。
どういたしまして。わかってもらえてよかったです。

物理の前提条件をもっとちゃんと見直そうと思いました。
どんな学問でもそうなんですが、物理は特に「自分で体系を整理する」のが大事(それをやると理解が進む)と思います。

半年間講義を受けて、高校の頃は物理を受けていなくて難しくて大変なところもありましたが、たくさん工夫してくれて理解することができました。次回のテストでしっかり点数をとって単位を取得できるように残り一週間がんばります。
理解が進んでくれたのなら何よりです。がんばってください。

これはテストに出そうというのを言ってほしかったです。
言ったよ。授業中に「中学生や高校生が間違えるポイント」だと言っていたことが出ます。

どうして物理が苦手だったか、よくわかりました。根本的なこと(定義とか)を全く理解してない状態で受験用の問題集ばかりやっていたせいでした。半年間楽しかったです。ありがとうございました。
これからは根本を大事にして、がんばってください。

今まで物理から逃げてきた私にとっては、すごく楽しい授業でした(答えられなかったり、ジェスチャーばかりになってしまった時は辛かったですが)。とにかく教職の授業の中で一番といっていいほどに影響されたうえに、「勉強しなきゃ」と思わされる授業でした。根気強く物理の勉強を頑張ろうと思います。
物理から逃げない覚悟をしてくれたようで、それはとても嬉しい。がんばってください。

 今回は最後の授業なので授業評価アンケートもあったので、こちらについては記述部分の全文を書く。コメントはいくつかごとにまとめて。

とても楽しく授業を受けることができた。
わかりやすさという点では、満点。
今期自分が受けた授業の中で、唯一眠たくなる事がなく、引き込まれる授業でした。
目の前で実験してくれたので、理解しやすかった。
タブレットを使ってたのはよかった。
iPadを使って例や図を見せるのはとても効果的だと思います。
タブレットを利用した視覚で理解しやすい授業はとても良かった。
タブレット端末を使って、視覚的に理解できてよかった。
演示実験やアニメーションアプリなどが多く使われていて視覚的にわかりやすくしてくれたところが一番良かったです。
 ここまではよかったこと。やはり実験とタブレットは受けがいい。
事前にどこをするのか言ってほしい。予習すればもっと授業が楽しかったと思う。
次回の授業の要点の宿題など、最低限の知識のための課題を出して欲しい。
単位が取れるぐらいのテスト対策問題を配ってほしい。
 このあたりは初めての授業ということもあって何をやるか模索しながらだったのでできなかった。これについてはごめんなさい。もっとも少しは「予習してないとどうなるか」を見たかったという気もあった。テスト対策問題も、これが初めて作るテストだから作るのは難しい。
なんか、中学生を美化しすぎ。全員がずっと物理を勉強している(覚えている)わけじゃないから、答えられないの当たり前。物理より専門の勉強したい。あと、なんかできないのはありえない態度が感じられるので、答えたいと思わない。
 中学生を美化しているんじゃなくて、中学教師になる人たちを美化しているんです。つまり君たちの将来の姿は、もっと物理をわかっていて欲しいな、という気持ちでした。「答えられないのは当たり前」とは思わないで欲しい(実際、中学の教員になったらすぐにも教えなきゃいけないことです)。
熱力学やらないんですか?
15回の授業で一回だけやりました。他にもやることはたくさんあるから、これ以上は難しい(波もだいぶ飛ばしたし、原子は全くやれなかったし)。
早口なのがたまに聞きづらいです。
これはすみません、ついつい早くなってしまう。
わかりにくかった。板書で結果をしっかり書いてほしい。
うーん、これも私が初めての授業だったこともあってまとめにくかったかもしれませんね、すみません。次回までにまとめの方法は考えなくては。ただ、大学生なんだから何が大事かというのは板書しないでもわかって欲しいな。