量子力学講義録2005年第10回

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14.2  井戸型ポテンシャル:束縛されていない状態

前節では遠方で減衰する解を計算した。その条件はV0 > Eであった。この条件が満たされない時は、遠方でも減衰せずに波が進行していくことになる。このような場合の解を求めよう。やはり偶関数解を仮定すると、
ψ(x) = {
Ce−ik′(x+d)+Deik′(x+d)
x < −d
coskx
−d < x < d
Ceik′(x− d)+De−ik′(x−d)
x > d

(14.13)
となる。井戸の中(−d < x < d)の波動関数は偶関数であることからcosでなくてはならない。井戸の外に関しては「偶関数だからcos」などと短絡的に考えてはいけない。x→ −xをすると、x < −dの領域とx > dの領域が入れ替わることに注意しよう。それぞれの領域での波動関数をψとψと すれば、この  二つの関数についてψ(x)=ψ(−x)が成立せねばならない70。この条件は、二つの関数の間に関係 があることを示しているのであって、けっしてψ(x)=ψ(−x)のような条件をつけない。だから、 |x| > dの領域の関数はcosでもsinでもなく、一般的な波である。
 また、ここでも規格化をせず(どうせこのように無限に拡がった波を∫ψ*ψdx=1にはできない)、原点での波の振幅 を1にしてお いた。
さて接続条件を計算すると、
C+D = coskd,     ik′(C−D) = −ksinkd
(14.14)
という二つの式が出るので、これでC,Dを求められる。

C
=

1
2

( coskd +i k
k′
sinkd )

(14.15)

D
=

1
2

( coskd −i k
k′
sinkd )

(14.16)
というのが答である。
 奇関数解は同様の考察のもと、
ψ(x) = {
−G e−ik′(x+d)− Heik′(x+d)
x < −d
sinkx
−d < x < d
G eik′(x −d)+H e−ik′(x−d)
x > d

(14.17)
とおいて、接続条件
G+H = sinkd,    ik′(G−H) = kcoskd
(14.18)
から、G,Hが求められる。

G
=

1
2

( sinkd −i k
k′
coskd )

(14.19)

H
=

1
2

( sinkd +i k
k′
coskd )

(14.20)
となった。C,DおよびG,Hは互いに複素共役である(C*=D,G*=H)ことに注意せよ。これは、左行 きの波と右行きの波は位相がずれているだけで同じ振幅であることを意味する(そういう答えが出てくるのは当然である)。
 ここで束縛されていた状態との大きな違いは、k,k′の値にはなんら制限が付かないということである。よってエネルギー固有値E=[(hbar2 k2)/2m]もE > V0で あるという以外には、なんの制限もつかない。束縛状態で起こった、エネルギーの量子化は、ここでは起きない。数式上そのようになる理由は、束縛されている 場合には加えられていた「遠方で増大する解が落ちる」という条件が課されていないからである。よってエネルギーは連続的な値を取れる。これを「連続スペク トルを持つ」とか「連続的固有値を持つ」とか言う。
 なお、ここで求めた解は偶関数または奇関数であるため、必然的に左行きの波と右行きの波が同じ重みで(同じ振幅で)入っている。よって、「左から粒子が 入 射して、真中のポテンシャルで反射する波と、ポテンシャルを通り抜ける波に分かれる」という状況は、上の答えの中には入っていない。そのような状況にする ためには、偶関数解と奇関数解を適当に組み合わせる必要がある。たとえば、(偶関数解)−D/H(奇関数 解)とすることで、
ψ(x) = {

( C+ GD
H
) e−ik′(x+d)+2Deik′(x+d)
x < −d
coskx− D
H
sinkx
−d < x < d

( C− GD
H
) eik′(x− d)
x > d

(14.21)
という解が作れる。この解ではx > dの領域には左行きの波が存在しないので、左側から入射して波が反射している場合を計算していることになる。このような状況での計算については次節でより 詳しく行う。

14.3  ポテンシャルの壁を通過する波動関数


 次に、図のように有限の長さと有限の高さを持つ壁を考えよう。0 < x < dの間だけV(x)=V0と なり、通り 抜けた後は再びV(x)=0となるようなポテンシャルである71
 まず、壁の左側では入射波をeikx(これを振幅1として基準にする)、反射波をRe−ikxとおく。壁 の 内部ではAeik′x+Be−ik′xのように、左行きと右行きの波が共存している。壁を抜けて透過して行 く粒子の波動関数がPeik(x−d)(これは右行きのみ)で表せるとしよう。

 なぜ透過波はPeikxでなくPeik(x-d)なんですか?
 あまり深い意味はありません。後の計算が楽になるようにです。というのは後でx=dを代入するの で、その時に楽になるような形を選んだだけのことです。Peikxとしたとすると、この場合のPはさっきのPにe-ikdをかけたものになっています。だ から、透過波をPeikxとして計算してもかまいません。少し書く量が増えるだけのことです。
 ここでk′は
k′= {


  _______
2m(E−V0)

hbar

E ≥ V0
i

  _______
2m(V0−E)

hbar
=iκ
E < V0

(14.22)
としておく。
  接続条件は4つ出て、

x=0でのψ    
1+R = A+B
x=0での ∂ψ
∂x
   
ik(1−R) = ik′(A−B)
x=dでのψ    
A eik′d+ Be−ik′d = P
x=dでの ∂ψ
∂x
   
ik′(A eik′d−Be−ik′d) = ik P

(14.23)
となる。未知数4つで条件も4つなので、これでR,A,B,Pはすべて求められる。計算は少々面倒であるが、ここでは結果を書いておくことにする。計算の 答は

P
=

4kk′
D


(14.24)

R
=

((k′)2−k2)(eik′d−e−ik′d)
D


(14.25)

A
=

2k(k+k′)e−ik′d
D


(14.26)

B
=

2k(k′−k)eik′d
D


(14.27)
である。ただし、共通分母Dは
D=(k+k′)2e−ik′d−(k −k′)2 eik′d
(14.28)
である。
この場合の波動関数のグラフの一例を下に挙げておく。



[問い14-7] (14.25)を 見るとわかるように、ある条件が満た されると反射波がなくなってしまう。その条件を求めよ。なぜこの条件が満たされると反射波がなくなるのか、その物理的意味を考察せよ。
[問い14-8] 反射波がなくなってしまう時、透過波の振幅が1になってい ることを確かめよ。その物理的意味 は?



 上の問題は授業中に解いた。反射波がなくなるのは、k=k'の時とeik'd=e-ik'dの時。前者の場合はV0=0ということなので、壁がないのと同じであり、自明である。後者の場合は2kd = nλと書き直すことができる。これは壁の内部を往復する間波がちょうど整数湖はいるという条件になる。つまり、壁に入るところでの反射波と出るところでの 反射波(この二つの反射は自由端反射と固定端反射)が消しあう条件である。これによって反射波がなくなる。

 反射した波がまた反射したりはしないんですか?
 ここで考えているのは、もう何度も何度も反射した結果として定常状態に なっちゃった後のことだと思ってください。だから、もうたくさんの反射が起こった結果として反射波が消えてしまっているわけです。

 E < V0の場合、すなわち k′ が虚数になる場合はk′=iκと置き換えて、

P
=

i4kκ
D


(14.29)

R
=

(−κ2−k2)(e−κd−eκd)
D


(14.30)

A
=

2k(k+iκ)eκd
D


(14.31)

B
=

2k(iκ−k)e−κd
D


(14.32)
となる。この場合の共通分母は
D = (k+iκ)2eκd−(k −iκ)2e−κd
(14.33)
となる。
  たとえV0 > Eでも、Pは0にはならない。つまり、古典的には通過できないはずの壁がそこにあっても、粒子が向こう側へ通り抜ける確率は存在しているのである。ただ し、その確率振幅にはe−κdの因子がかかっているから、d が大きい時やκが大きい(つまりEよりV0の 方がずっと大きい)時にはその確率は非常に0に近くなる。
 
 なお、この場合、壁の中の波動関数は
A e−κx + B eκx
(14.34)
となる。この場合、どんどん振幅が増大する波であるeκxも解の中に入って来る。壁が有限の距離しかないので、このような場合でも 発散しなくてすむからである。もっとも、式の形からわかるように係数Bはだいたいe−2κdぐらいの大きさを持つ72ので、その値はAよりも小さい。
 このような状態の一例が右の図である。壁内部(濃く塗られた部分)では波は振幅が減衰する波と振幅が増大する波の和になっているが、増大する方の波は小 さ く、全体の波の形にあまり大きな影響を与えていない。
  この波の動く様子のアニメーションはこちらのjavaアプ レットで。



[問い14-9] kが実数の場合も虚数の場合も、反射波の振幅|R|と透過 波の振幅|P|の間には、|R|2+|P|2=1 が成立することを確かめよ。



残念ながら時間の関係でこの章のここ以降については省略。

 このような長方形ポテンシャルで、長方形の面積を変えずに壁の幅を少しずつ狭くしていく(つまり壁の高さは高くしていく)と何が起こるかを考えておこ う。 シュレーディンガー方程式を−dからdまでという、狭い範囲で積分する。



d

−d 
dx ( hbar2
2m

d2
dx2
+V(x) ) ψ
= d

−d 
dx Eψ


hbar2
2m

d
dx
ψ
d

−d 

= d

−d 
dx (E−V(x))ψ

d
dx
ψ(d)− d
dx
ψ(−d)
= − 2m
hbar2

d

−d 
dx (E−V(x))ψ

(14.35)
 
 この式の右辺はもしV(x)に発散がないならd→0で0になり、微分[d/dx]ψは連続的につながる。しかしもしこの範囲でV(x)=V0δ(x) のような発散があれば、


lim
d→0 

( d
dx
ψ(d)− d
dx
ψ(−d) ) = 2mV0
hbar2
ψ(0)
(14.36)
となり、微分がx=0の点で不連続となる(だいたい、右の図のような状況となる)。
x=0の点にだけこのデルタ関数的発散をするポテンシャルがある場合、つまり定常状態のシュレーディンガー方程式が

( hbar2
2m

d2
dx2
+V0δ(x) )
ψ(x)=Eψ(x)
(14.37)
で表される場合を考えよう。x=0以外では自由なシュレーディンガー方程式が成立しているのだから、解はAeikx+Be−ikxの 形になる(当然、[(hbar2 k2)/2m]=E)。x > 0とx < 0で係数A,Bが変化するだろう。これまで同様、入射波+反射波をeikx+Re−ikx、 透過波をPeikxとおけば、接続条件は

1+R
=
P

(14.38)

ikP − ik (1−R)
=

2mV0
hbar2
P

(14.39)
となる。二つめ(微係数の接続)にデルタ関数的ポテンシャルの影響が現れている。この式の右辺は(境界の右の領域での[dψ/dx])-(境界の左の領域 での[dψ/dx])という形になっていることに注意せよ。この解は
P= ik
ik− mV0
hbar2
,     R=
mV0
hbar2

ik− mV0
hbar2

(14.40)
となる。P,Rはどちらも複素数になるので、反射、透過の際に位相がずれることがわかる。

14.4  1次元周期ポテンシャル内を通過していく波動関数

 
位置エネルギーV(x)が
V(x+a)=V(x)
(14.41)
のような周期性を持つ場合のシュレーディンガー方程式を解こう。このような周期的ポテンシャル内での波動関数は、「固体中の電子が、規則正しく並んだ原子 核の間を通り抜けて行く」ような現象をモデルにしたものと考えることができ、固体の電気的性質を量子力学を用いて考える手がかりとしては有用である(もち ろん、まじめにやるにはここでやるように1次元でやっていたのではだめで、3次元でちゃんとシュレーディンガー方程式を解かなくてはいけない)。
 上の周期的条件はポテンシャルに対するもので、波動関数に対するものではない。前に周期境界条件を考えた時には波動関数自体にψ(x+a)=ψという条 件 を置いたが、ここでは少しだけ条件をゆるめて、
ψ(x+a) = eiKaψ(x)
(14.42)
と置く(Blochの条件と呼ばれる)。 Kは定数であり、一周期ごとにKaだけ位相が変化すると考えていることになる。波動関数に周期境界条件を置いた時はいわば空間自体をまるめて左端と右端が つながっているような状況を考えたのだが、今は空間自体は無限にひろがっていて、その空間内に周期的なポテンシャルがおかれている状態を考えている。だか ら波動関数が一致する必要はない。問題設定が周期的なのだから、波動関数も観測の範囲内では同じ状態になっているだろう。しかし上のように位相がずれるこ とは許される。この位相差があっても、
ψ*(x+a)ψ(x+a)=ψ*(x)ψ(x)
(14.43)
は成立しているからである。このように考えるとBlochの条件が出てくることが納得できる73
 計算を簡単にするため、ポテンシャルとしては前節の最後に示したようなデルタ関数的ポテンシャルが周期的にならんでいるものを考えよう。x = ma(m は整数)にV0δ(x−ma)で表現される「幅は狭いが高さの高い壁」があると言う状況である。この時の波動関数の解を
ψ(x) = A eikx+ Be−ikx
(14.44)
とおく。[((h/2p)2k2)/2m] =Eなのはこれまで通りである。ただしこの式が成立するのは0 ≤ x < aの範囲である(x=0やx=aでは波動関数がなめらかにつながらない)。a ≤ xの範囲やx < 0の範囲にでは別の関数となる。たとえばa ≤ x < 2aの範囲にあったならば、その時の波動関数の値は

ψ(x)=
eiKaψ(x −a)
=
eiKa(A eik(x−a)+Be−ik(x−a))

(14.45)
となる。0 ≤ x−a < aであるため、ψ(x−a)=Aeik(x−a)+Be−ik(x−a)と 書くことができることに注意。同様にma ≤ x < (m+1)a(mは整数)であったならば、~x = x− maとして、~x が0 < ~x < aの範囲に入るようにする。この領域でのψ(x)は
ψ(x) = ψ( ~
x
 
+ ma) = (eiKa)m ψ( ~
x
 
) = eimKa( A eik~x+ Be−ik~x)
(14.46)
となる。
 今考えている波動関数は、x=0やx=a(一般にはx=ma)の左右で関数形が変わるから、そこでうまくつながるように接続条件を設定しよう。つまり、 (14.44)でx→ aとしたものと、(14.45)でx→ aとしたものを比較する。
  結果は

Aeika+Be−ika
=
eiKa(A+B)

(14.47)

ik eiKa(A− B)−ik( Aeika−Be−ika)
=

2mV0
hbar2
( Aeika+Be−ika )

(14.48)
という式である。この式を解いてA,Bを求めるわけであるが、この式を行列を使って書くと、

(
eika
e−ika
eiKa−eika
−eiKa+e−ika
)
(
A
B
) = (
eiKa
eiKa

2mV0
ikhbar2
eika

2mV0
ikhbar2
e−ika
)
(
A
B
)
(14.49)
であり、整理すると、

(
eika−eiKa
e−ika−eiKa
eiKa− eika 2mV0
ikhbar2
eika
−eiKa+e−ika 2mV0
ikhbar2
e−ika
)
(
A
B
) = 0
(14.50)
である。もしこの行列に逆行列が存在したら、それを両辺にかけることでAもBも0という答えが出てしまう。これは粒子がどこにもいないということになって 意味のない解である。そこで逆行列が存在しない、つまり行列式=0という条件をおく。
  行列式の基本変形などを使って整理すると、
cosKa = coska+ mV0
hbar2 k
sinka
(14.51)
という式ができる。



[問い14-10] 確認せよ。



  この式の右辺は、coskaという振幅1の振動と、振幅が1/kに比例するsinkaによる振動の和であ り、kなどの値によっては絶対値が1より大きくなることは有り得る。一方左辺は−1 < cosKa < 1 という範囲の量である。それゆえ、kの値によってはこの方程式に解がなくなり、そのような波数kを持った波はこの空間内に存在できない。
 具体的に数値をいれて(14.51)の右辺のグラフを書いてみると例えば右の図のようになり、 |cosKa|が1 を越えないと条件が満たせない領域が現れる(グラフに網掛けで表した)。この粒子が存在し得ない領域を「禁止帯」と呼ぶ。粒子のエネルギー・運動量のこの ような制限を「バンド構造」と呼ぶ。束縛された状態については、エネルギーの値が離散的に制限されるという条件がついたのであるが、この場合には離散的で はないがやはりエネルギーの値に制限が加えられたことになる。
 なお、グラフでは、定数[(mV0)/(hbar2)]を−Cと書いていて、V0 < 0の場合である74
 ここではkが実数として考えたが、もちろんkが虚数になる事もありえて、その場合、k=iκとすると、
cosKa = coshκa+ mV0
hbar2 κ
sinhκa
(14.52)
という式になる。κがある値より小さいところでしか解は存在しない。
 すでに述べたようにこのようなポテンシャルは結晶のように規則的に並んだ原子の間に存在する電子の感じるポテンシャルをモデル化したものと考えることが で きる。実際に物質中の電子の状態にはバンド構造が現れる。自由に空間内を飛び回っている電子はどんなエネルギーでも持つことができるが、物質中ではそうで はない。この空白部分を「エネルギーギャップ」などと呼ぶ。
 物質内部の電子はここで求めたような波動関数で表せる状態にある。この物質に電流が流れていない時は、いろいろな方向へ進む電子それぞれの持つ運動量が 互 いに打ち消し合って、全体としては運動していない。電圧をかけるなどすると電流が流れるが、その時は電子のうち一部が最初持っていたよりも大きなエネル ギーを持つ必要がある(下図左から中央への変化)。
 
 しかし、ちょうどその「最初持っていたよりも少しだけ大きいエネルギー」の状態にエネルギーギャップがある(つまり、今より運動量の大きい状態に変化す る ためには、禁止帯を越えなくてはいけない)と、電子は簡単には動き出すことができない(一番右の図)75。すると電子は自由に動けず、電気が流れない。物質が絶縁体になったり導体に なったり、あるいは半導体になったりする理由である。

14.5  練習問題

[演習問題14-1] 
 右のグラフで表されるポテンシャル
V(x)= {
x < 0
0
0 < x < d
V0
d < x

(14.53)
の中に束縛された粒子のシュレーディンガー方程式を解け。
束縛状態が存在する条件は何か?
(hint:計算の筋道は14.1節の奇関数の場合と同様になる)
[演習問題14-2] 系が空間反転x→ −xに対して対称であるときには波動関数が偶関数または奇関数であるという定理を証明することができた。同様に系が時間反転t→ −tに対して対称である時、波動関数はどのような性質を持つか、考察せよ。
[演習問題14-3] 図のように二つのポテンシャル壁がある。ポテンシャルの高さVは、粒子の持つエネルギーEより大きいとする。
E,V,m,d(mは粒子の質量)がある条件を満たすと、壁にはさまれた領域(−d < x < d)の波動関数は外側に比べて大きい振幅を持つことができる。偶関数定常解の場合で、その条件を求めよ。

Footnotes:

70井戸内については ψ(x)=ψ(−x)のように一つの関数に対して要求している。
71前節の最後の計算 では一部がくぼんでいたが、この節で行う計算では一部が盛り上がっている。ポテンシャルの符号が逆になっていると思えばよい。
72分子にe−κdが あり、分母Dの主要項はeκdである。
73波動関数がこの形 になることはBlochの定理と呼ばれ、厳密な証明があるが、ここではだいたいの雰囲気としてこう考えておくことにする。
74電子と原子核の場 合、引力が働くからV0 < 0と考えられる。
75ここでは詳しく述 べないが、これは電子がフェルミ統計に従う(つまり、二つ以上の電子が同じ状態に属せない)からである。一つの状態に二つの電子が入ってよければ上のエネ ルギーに移る必要はない。


学生の感想・コメントから

 電子レンジの外に電磁波がもれる現象も量子効果でしょうか?
 もれるのは波だからで、電磁波は量子力学で扱う前から波ですから、量子効果とは言い難いですね。

 壁を突き抜けていく波にはびっくりで した。気功を使う人はこれですね!!
 そんなアホな(^_^;)。そういうマクロな現象に量子力学はまず効きません。

 真っ暗な部屋に外からレーザー光を当 てたら、壁の内側に光が届くこともあるんでしょうか?
 壁が光の波長なみに薄ければ別ですが、そうでないと無理です。上と同様、マクロな現象に量子力学 はまず効きません。

 E<V0の時でも入射波=透過波になることがありますか?
 ありません。その場合は常に透過波の方が小さくなります。

 なぜ透過波はPeik(x-d)とするのですか?  井戸型の時にeikxとしていたのとの違いがわかりません。
 別にPeikxとしても不都合はありません。後でx=dを代入した時に式が簡単になるようにしただけです。もし気になるな ら、Peikxと 置いて計算をやり直してみればよいかと思います。最終結果は同じになります。

 Aの波が0になることはないのですか??
 数式を見てみてください。0にはなれそうにないですね。

 ポテンシャルが下がる時にも反射波があるというのが理解できない(複数)。
 反射波がある理由は、接続条件です。ポテンシャルが上がろうが下がろうが、接続条件を満たすため には反射波が必要です。

 eik'd=e-ik'dから、e2ik'd=1になるところがわかりません。
 両辺にeik'dをかけます。右辺は1になり、左辺はe2ik'dになります。

 量子力学では古典では考えられないようなことが起こるんだなぁと思った(複数)
 まぁ、そこが面白いところです。

 実際の波がこういう壁にぶつかることはあるんですか?
 「実際の波」ってどういう意味かな??
 こういうポテンシャルを乗り越えるということならば、電子などの物質波が実際に起こす現象です。 波動であれば起こりえる現象なので、音や光でも同様の現象はあるでしょう。


File translated from TEX by TTHgold, version 3.63.
On 22 Dec 2005, 12:29.