偏微分方程式の解き方

 ここまで考えた微分方程式は常微分$\left({\mathrm d\over\mathrm dx},{\mathrm d\over\mathrm dt},\cdots\right)$を用いた微分方程式だったが、偏微分$\left({\partial\over \partial x},{\partial\over \partial t},\cdots\right)$を用いた微分方程式もある。

 簡単にその解き方を紹介した後、いくつかの実例を示そう。

 以下では、求めるべき関数を$f({x},{y})$のように二つの独立な変数${x},{y}$によって決まる2変数関数として説明する。変数が${t}$になったり${r}$になったりしても考え方は変わらないし、3変数、4変数と変数の数が増えても、基本的には同様の手順で解いていくことになる。

変数分離による解法

\begin{equation} \left({\partial\over \partial x},{\partial\over \partial t}を含む微分演算子\right)f({x},{y})=g({x},{y}) \end{equation}

のような微分方程式が与えられた時、これの解をいきなり探すのは難しい。そこで、この方程式の解が$f({x},{y})=X({x})Y({y})$のように${x}$を変数とする部分と${y}$を変数とする部分の積になるだろう、と仮定してみる。その後計算した結果、

\begin{equation} \left({\partial\over \partial x}と{x},X({x})の式\right) = \left({\partial\over \partial y}と{y},Y({y})の式\right) \end{equation}

のように左辺と右辺に${x}$と${y}$が分離できたとする(これを「変数分離」と呼ぶ)。この式が成立するためには左辺も右辺も定数にならなくてはいけないので、その定数を$\alpha$と置いて、

\begin{equation} \left({\partial\over \partial x}と{x},X({x})の式\right)=\alpha,~~ \left({\partial\over \partial y}と{y},Y({y})の式\right)=\alpha \end{equation}

という常微分方程式二つを解けばよい、というのが「偏微分方程式の変数分離」である。なお、変数分離で答が求まるというのはあくまで「仮定」であるから、これで正しい解が出ているかどうかについては注意しなくてはいけない。

 $\alpha$は任意の定数だから、その定数に応じてたくさんの解が出るが、境界条件などにより実際の解がどのようになるかが決められることになる(このあたりは常微分方程式でもあったこと)。

特性曲線による解法

 一例として、$\left({\partial\over \partial x}+a{\partial\over \partial y}\right)f({x},{y})=0$という微分方程式を考えよう。まず、

\begin{equation} \left({\partial\over \partial x}+a{\partial\over \partial y}\right)(a{x}-{y})=0 \end{equation}

であることはすぐわかる。実は任意の関数を$F$として、$F(a{x}-{y})$は、すべてこの方程式の解となる。

 $F(a{x}-{y})$という関数は、$a{x}-{y}=C$($C$は定数)を満たす場所(つまり直線${y}=a{x}-C$上)では一定である。上で求めた解は、「直線${y}=a{x}-C$上で一定になる関数」だということになる。

 上の場合「直線」の上で解となる関数が一定となったが、

\begin{equation} \left( P({x},{y}){\partial\over \partial x} + Q({x},{y}){\partial\over \partial y} \right)f({x},{y})=0 \end{equation}

のような偏微分方程式の場合、解である関数$\Phi({x},{y})$を一つ見つけることができたなら、任意の関数$F(t)$の$t$に$\Phi({x},{y})$を代入した$F(\Phi({x},{y}))$もやはり解となる。この場合は、$\Phi({x},{y})=C$(定数)であるような線(直線とは限らない)の上で$F$は一定となる。

 たとえば、

\begin{equation} \left({\partial\over \partial x}+2{x}{\partial\over \partial y}\right)F({x},{y})=0 \end{equation}

の解は、一つの解として${y}-{x}^2$を持つ(代入して確認せよ)。よって、$f$は任意の微分可能な関数とすれば、

\begin{equation} F({x},{y})=f({y}-{x}^2) \end{equation}

が解となる。すなわち、${y}-{x}^2=(定数)$を満たす線($x=0$を軸とする放物線になる)の上で一定であるような関数なら全てこの微分方程式の解になる。

上の図は、$\sin(y-x^2)$のグラフである(放物線の上で一定になるような関数になっている)。

「どんな関数でもよい」と言われると「解が求まってない」と心配になるかもしれないが、それは境界条件を指定していないからである。偏微分方程式も常微分方程式と同様に、方程式だけからは決まらないパラメータがあり、それを指定する必要がある。このあたりは以下でやる実例のところで説明しよう。

 このような線を「特性曲線(charactaristic curve)」と呼ぶ。特性曲線を求めるということも、偏微分方程式の解法と言える。「偏微分には方向がある」ということを前の章で(少々くどく)述べたが、この節で述べた微分方程式の解き方は「偏微分が0になる方向を探す」という方針の解き方である。

「微分演算子の因数分解」による解法

 常微分方程式の時に、

\begin{equation} \left( \left({\mathrm d\over\mathrm dx}\right)^2 +(a+b){\mathrm d\over\mathrm dx} +ab \right)f({x}) =\left({\mathrm d\over\mathrm dx}+a\right)\left({\mathrm d\over\mathrm dx}+b\right)f({x})=0 \end{equation}

のように「微分演算子の因数分解」を行って解く方法があったことを思い出そう。この場合、解は$\left({\mathrm d\over\mathrm dx}+a\right)f({x})=0$の解である$\mathrm e^{-a{x}}$と、$\left({\mathrm d\over\mathrm dx}+b\right)f({x})=0$の解である$\mathrm e^{-b{x}}$の線型結合である$f({x})=C_a \mathrm e^{-a{x}}+C_b \mathrm e^{-b{x}}$になった。

偏微分方程式に関しても、線形な方程式である場合は重ね合わせの原理が成り立つ。以下ではそれを使って解いていくことになる。

 同様にもし我々がたとえば偏微分方程式の微分演算子を \begin{equation} \left( \left({\partial\over \partial x}\right)^2 +(a+b){\partial^2\over \partial x\partial y} +ab\left({\partial\over \partial y}\right)^2 \right)f({x},{y}) =\left({\partial\over \partial x}+a{\partial\over \partial y}\right)\left({\partial\over \partial x}+b{\partial\over \partial y}\right)f({x},{y})=0 \end{equation}

のように`因数分解'して

\begin{equation} \left({\partial\over \partial x}+a{\partial\over \partial y}\right) f({x},{y})=0 ~~または~~ \left({\partial\over \partial x}+b{\partial\over \partial y}\right)f({x},{y})=0 \end{equation}

のように式を分離することができれば、問題を簡単化(二階微分方程式が一階微分方程式になった!)できる。

 その他、常微分で使えたテクニック(たとえば線形であれば重ね合わせの原理が使える、など)の多くは偏微分方程式にも応用が効く。

 以下の節では、代表的な「自然科学で現れる偏微分方程式」を解いてみよう。

熱伝導方程式

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熱伝導方程式

 次の微分方程式は、1次元的な物体(細い棒など、断面積が無視できるような物体)の温度を表す関数の満たす微分方程式である。$\tau({t},{x})$は時刻${t}$、場所${x}$における温度を表す$\tau$はギリシャ文字の t に対応する文字で、読み方は「タウ」。温度(temperature)だから$t$を使いたいところだが、$t$は時間に使っているし、$T$も別の意味で使うのでギリシャ文字に登場願う。

\begin{equation} \left({\partial \tau({t},{x})\over \partial t}\right)_{\!\!{x}} =K\left({\partial^2 \tau({t},{x})\over \partial x^2}\right)_{\!\!{t}} \end{equation}

 この式にはどんな意味があるのかを図解しておこう。右辺は${x}$に関する二階微分、すなわち${t}$を一定として考えると、${x}$-$\tau$グラフの曲がり具合であり、$\left({\partial^2 \tau({t},{x})\over \partial x^2}\right)_{\!\!{t}}$が正だということはその場所でグラフが下に凸だということである。二階微分の意味を考えると、「自分の両サイドの平均に比べて、自分の温度が低い」という状況を表している。このような時は温度は上がるだろう温度変化が線形(グラフが直線)のときは温度が時間変化しない。「温かい方から流れてくる熱と、冷たい方に奪われる熱が平衡している」状況だと考えよう。流れてくる熱量が温度差に比例すると近似して考えれば正しい。

変数分離による一般解

 この式を変数分離で解く。すなわち、$\tau({t},{x})$をいきなり考えるのは難しいので、

変数分離形

\begin{equation} \tau({t},{x})=T({t})X({x}) \end{equation}

のように、$\tau({t},{x})=T({t})X({x})$と${t}$の関数の部分と${x}$の関数の部分の積で表現されていると仮定し、これを代入してみる。$\left({\partial\left(T({t})X({x})\right)\over \partial t}\right)_{\!\!{x}} =K\left({\partial^2 \left(T({t})X({x})\right)\over \partial x^2}\right)_{\!\!{t}} $の左辺の${t}$による微分は$T({t})$にだけ掛かり、右辺の${x}$による微分は$X({x})$にだけ掛かるので、

\begin{equation} \begin{array}{rll} X({x}){\mathrm dT\over \mathrm dt}({t})=&K T({t}){\mathrm d ^2 X\over \mathrm dx^2}({x})\\[3mm] {{\mathrm dT\over \mathrm dt}({t})\over T({t})}=&K {{\mathrm d ^2 X\over \mathrm dx^2}({x})\over X({x})} \end{array}\label{heatbunri} \end{equation}

となるので、左辺と右辺が定数$\alpha$になると考えて、

\begin{equation} {{\mathrm dT\over \mathrm dt}({t})\over T({t})}=\alpha,~~K {{\mathrm d ^2 X\over \mathrm dx^2}({x})\over X({x})}=\alpha \end{equation}

の二つの常微分方程式を解けばよい。どちらも定数係数の斉次線形微分方程式だから、結果は

\begin{equation} T({t})= A \mathrm e^{\alpha{t}},~~X({x})=\begin{cases}B \mathrm e^{\sqrt{{\alpha\over K}}{x}} +C \mathrm e^{-\sqrt{{\alpha\over K}}{x}}&\alpha\neq0のとき\\ D{x}+E& \alpha=0のとき\end{cases} \end{equation}

であり$\alpha=0$の時に限り\reftext{tokusei}{特性方程式}が重解になるので別の解となる。、まとめると、

\begin{equation} \tau({t},{x})=\begin{cases} \mathrm e^{\alpha{t}}\left( F \mathrm e^{\sqrt{{\alpha\over K}}{x}} +G \mathrm e^{-\sqrt{{\alpha\over K}}{x}} \right)&\alpha\neq0のとき\\ {H{x}+J}&\alpha=0のとき \end{cases} \end{equation}

となる($AB=F,AC=G,AD=H,AE=J$と置いた)。様々な$\alpha$の値全てに対して一個ずつ解があることになる。

定数係数線形常微分方程式の解を$\mathrm e^{\lambda x}$と置いて解く方法があったが、偏微分方程式でも定数係数で線形(今の場合そうである)ならば、$\mathrm e^{\lambda x+\alpha t}$のように置く方法でも解を出せる。

 線形微分方程式なので、実際の解はいろんな$\alpha$の解に対する和であり、

\begin{equation} \tau({t},{x})= H{x}+J +\sum_{\alpha}\left( \mathrm e^{\alpha{t}}\left( F_\alpha \mathrm e^{\sqrt{{\alpha\over K}}{x}} +G_\alpha \mathrm e^{-\sqrt{{\alpha\over K}}{x}} \right)\right) \end{equation}

と書くことができる。係数$F,G$は各々の$\alpha$の値に対して別々に存在するので、$F_\alpha,G_\alpha$と添字をつけて区別することにした。

$\sum_\alpha$は「$\alpha$の取り得る値それぞれについて和を計算する」という意味でこう書いたが、状況によっては$\alpha$は連続的に変化する数となる。その場合は和$\sum_\alpha$ではなく積分$\int\mathrm dalpha$になる 。
これで境界条件を指定しない場合の解を求めることができた。

境界条件と初期条件

$H,J,F_\alpha,G_\alpha$を決めるためには初期条件と境界条件が必要である。ここでは境界は${x}=0$と${x}=L$だとしよう。境界条件は考えている現象に応じて選ばなくてはいけない。よく使われる境界条件には以下のものがあるディリクレ型は「固定端境界条件(fixed end boundary condition)」と、ノイマン型は「自由端境界条件(free end boundary condition)」と呼ぶこともある。

ディリクレ(Dirichlet)型境界条件

\begin{equation} \begin{array}{rl} \tau({t},{x}=0)&=T_0,\\[4mm] \tau({t},{x}=L)&=T_1 \end{array} \end{equation}

ノイマン(Neumann)型境界条件

\begin{equation} \begin{array}{rl} {\partial \tau({t},{x})\over \partial x }\biggr|_{{x}=0}=&0,\\[4mm] {\partial \tau({t},{x})\over \partial x }\biggr|_{{x}=L}=&0 \end{array} \end{equation}

周期境界条件

\begin{equation} \begin{array}{rl} \tau({t},{x}=0)=& \tau({t},{x}=L),\\[4mm] {\partial \tau({t},{x})\over \partial x}\biggr|_{{x}=0} =& {\partial \tau({t},{x})\over \partial x}\biggr|_{{x}=L} \end{array} \end{equation}
授業ではディリクレ型のみの説明をした。

熱伝導の場合、ディリクレ型は「境界部分の温度は一定という条件(等温条件)」、ノイマン型は「境界部分には熱の流れがないという条件(断熱条件)」(温度差があれば熱が流れることに注意!)になる両端で、$ \tau({t},{x})+\beta {\partial \tau({t},{x})\over \partial x }$($\beta$は定数)がある値を取る、という「ディリクレ型とノイマン型を混合した境界条件」もある。。周期境界条件は名前の通り、両端が繋がっているので、リング状の物体の温度を考えている場合に相当する。

FAQ:周期境界条件で微分も等しいのはなぜ?

二階微分方程式の一般解に含まれる二つの未定のパラメータを固定するには、二つの条件が必要。また、境界部分でもし微分がつながってなかったら、その場所での二階微分が発散($\to\infty$)してしまう(周期境界条件の「境界」はリング状の物体のある一点に過ぎないから、二階微分が発散されては困る)。

 簡単な例として、ディリクレ型でかつ$T_0=T_1=0$という場合について解いてみよう。

 まず$\tau({t},{x}=0)=0$という条件は$J=0$かつ全ての$\alpha$に対して$F_\alpha+G_\alpha=0$を意味する$\sum\mathrm e^{\alpha t}(F_\alpha+G_\alpha)=0$ではないのか?---と思う人がいるかもしれないが、任意の時間でこの和が0になるためには、係数$(F_\alpha+G_\alpha)$が全ての$\alpha$に対して0にならなくてはいけない。。そこで$J=0,G_\alpha=-F_\alpha$として、

\begin{equation} \tau({t},{x})=\sum_\alpha F_\alpha\mathrm e^{\alpha{t}}\left( \mathrm e^{\sqrt{{\alpha\over K}}{x}} -\mathrm e^{-\sqrt{{\alpha\over K}}{x}} \right)+H{x} \end{equation}

という形になる。次に${x}=L$での条件を考えると、

\begin{equation} \tau({t},{x}=L)=\sum_\alpha F_\alpha\mathrm e^{\alpha{t}}\left( \mathrm e^{\sqrt{{\alpha\over K}}L} -\mathrm e^{-\sqrt{{\alpha\over K}}L} \right)+ HL=0 \end{equation}

となるが、任意の時刻で0になるためには、$H=0$かつ、全ての$\alpha$に対して

\begin{equation} \mathrm e^{\sqrt{{\alpha\over K}}L} -\mathrm e^{-\sqrt{{\alpha\over K}}L}=0 \end{equation}

となる必要がある。上の式を変形すると$\mathrm e^{2\sqrt{{\alpha\over K}}L}=1$だが、「$\mathrm e^0=1$だから$2\sqrt{{\alpha\over K}}L=0$」と考えてしまうと$\alpha=0$になる。しかし、$\alpha=0$の場合はすでに別に考えているからおかしい。

 気をつけなくてはいけないのは$\mathrm e^{2\pi\mathrm i}=1$(あるいは、これを$n$乗して($n$は整数)、$\mathrm e^{2n\pi\mathrm i}=1$)ということで、これから、

\begin{equation} 2\sqrt{{\alpha\over K}}L=2n\pi\mathrm i~~~すなわち、\alpha=-{n^2\pi^2 K\over L} \end{equation}

を解として採用できる$\alpha$は連続的な量ではなく離散的な量である。こうなることを知っていたので、$\sum_\alpha$のように和を書いた。。この条件から$\sqrt{{\alpha\over K}}= \mathrm i{n\pi\over L}$として代入すると、

\begin{equation} \tau({t},{x}) =\sum_{n>0}\tilde F_n \mathrm e^{-{n^2\pi^2K\over L}{t}}\left( \mathrm e^{\mathrm i{n\pi\over L}{x}} -\mathrm e^{-\mathrm i{n\pi\over L}{x}} \right) =\sum_{n>0}(2\mathrm i \tilde F_n) \mathrm e^{-{n^2\pi^2 K\over L}{t}}\sin {n\pi\over L}{x} \end{equation}

が境界条件を満たす一般解である。ここで、$\alpha$が$n^2\times(定数係数)$という形になったので、$F_\alpha$を$\tilde F_n$と書きなおした。解が実数であるためには、$\tilde F_n$は純虚数($2\mathrm i \tilde F_n$が実数)である。以下は$2\mathrm i \tilde F_n=\tau_n$と書こう。また、上の式を見ると$n\to -n$と置き換えても結果は本質的に同じであることがわかるので、$n$の和は正の部分だけを取れば十分であるので、$\sum_{n>0}$とした。

 微分方程式の解としては、初期条件今考えている微分方程式は時間に関しては一階だから、初期条件は${x}$の一つの値に対して一つでよい。も満たさなくてはいけない。$\tau({t}=0,{x})=\tau_初({x})$を初期条件とする($\tau_初({x})$は与えられた関数である)と、

\begin{equation} \tau_初({x})=\sum_{n>0}\tau_n\sin{n\pi\over L}{x} \end{equation}

になるように係数$\tau_n$を決めればよい。

「係数$\tau_n$を選ぶことで任意の関数$\tau_初({x})$が表現できるのか?」というのは数学的には証明が必要なことである。もちろん証明はあり、今の境界条件(${x}=0$と${x}=L$で0)を満たす関数は上のように$\sin$の和で書くことができる。境界条件が違う時はまた別の関数($\cos$など)も使う。最初に「任意の関数は三角関数の和で表せる」と主張したのはフーリエで、ここで述べた熱伝導の方程式を考えていくうちに彼はこの結論に達した。この考え方が「フーリエ解析」という重要なテクニックへと発展する。

 ここで、

\begin{equation} \tau({t},{x})=\sum_{n>0}\tau_n \mathrm e^{-{n^2\pi^2 K\over L}{t}}\sin{n\pi\over L}{x} \end{equation}

という式の物理的意味について考えておこう。この式には$\mathrm e^{-{n^2\pi^2K\over L}{t}}$がついている(しかも$n>0$)から、時間が立てば立つほど、温度は0に近づいていくことになる。今考えている状況は両端が温度0で、他に熱源はないのだから、十分に時間経過すれば全体の温度が0になるというのは「もっとも」なことである。$n$の違いはグラフで書いた時の「波の数」なので、より短い波長の温度分布(つまり頻繁に寒暖が入れ替わっている)ときに「早く冷める」というのは感覚的にも納得できるだろう。

では、以下のアニメーションで温度変化の様子を確認しよう。


偏微分方程式の解き方 波動方程式

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波動方程式

テキストは波動方程式を解くところを作っておいたが、実際の授業ではそこまできっちりできなかった。というわけでアニメーションのみを上げる。
\begin{equation} \left({\partial^2 u({t},{x})\over \partial t^2}\right)_{\!\!{x}} =v^2\left({\partial^2 u({t},{x})\over \partial x^2}\right)_{\!\!{t}} \end{equation}

という微分方程式を解いてみよう。

 実はこれは音などの「波」の方程式である。左辺は時間の二階微分だから加速度で、それは波の媒質(考えている波が音ならば空気、海の波なら海水)に働く力に比例する。右辺も力に比例するのだが、それが${x}$に関する二階微分になっている。二階微分は「曲がり具合」を意味するのであった。ここで海にできる波をイメージして、$u({t},{x})$はある時刻におけるある場所の海面の高さだとしよう。右辺の${x}$による二階微分は「海面の曲がり具合」を意味する。それが正なら海面は「谷」になり、負なら「山」になっていると思えばよい。海の波においては「山」なら下向きの、「谷」なら上向きの力が働くだろう、と考えると上の式の意味がわかるもちろん、海水に働く力をちゃんと計算して式にしていくと(適切な近似を行う必要はあるが)上の式が出てくる。ここではこの式の意味を解釈するだけでよしとしよう。。熱伝導方程式では${x}$の二階微分がそのまま温度の時間変化になったが、波の方程式の場合は${x}$による二階微分は「時間変化の時間変化」(すなわち加速度)になる。

 以下が、その解のアニメーションである。熱伝導の場合と違って、運動が「慣性」を持って行きすぎる(それによって振動がいつまでも続く)ことに注意しよう。

↓波のグラフ

↓速度のグラフ

初期状態を

初速度を

熱伝導方程式 受講者の感想・コメント

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受講者の感想・コメント

テストに関するお知らせ。
来週同じ時間で期末試験を行います。
前記の試験は「自作カンニングペーパー持ち込み可」で行いましたが、本日、
  • カンペ持ち込み可。その代わりテキストには出てない問題が出る可能性高し。
  • 持ち込み一切不可。
のどちらがいいですかと手を上げてもらったところ、圧倒的に「持ち込み不可」の方でしたので、そのようにします。

また、最初の授業で「小テスト30点+試験70点」で成績評価する、と言いましたが、小テストの受講状態がよくないので、
  • 小テスト30点満点+試験100点満点×0.7
  • 試験100点満点
のうち、点数の高い方で成績評価します。

がんばってください。

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

 今回は最終回なので受講者アンケートと同時に行いました。というわけで、講義全体に関する感想も多いです。
講義内容がとてもわかりやすかったです。
それはよかったです。

楽しかったなと思う。理解してテストに臨みたい。
楽しんで、かつ理解してもらえたら最高です。

テスト頑張ります。
頑張ってください。

色々忘れていた部分がありました。ちゃんと復習してテスト頑張りたいです。
テストがんばりましょう。

説明がていねいで、科学に対しての興味が高まりました。
今後は、この授業でやったことを使って、科学を勉強・研究していってください。

タブレットで視覚的に理解するやり方が良かった。
視覚的イメージをつけていってください。

1年間前野先生のお話聞けて楽しかったです。熱力学も楽しみにしてます。
またよろしく。

質問をしてくるのでとてもよかったです。とても理解できた講義でした。
それはよかったです。

これまでのことをしっかり勉強して来年以降につなげたい。
この授業でやったことは、これからもずっと役に立つと思います。

期末試験を易しくしてほしいです。お願いします。
ちゃんと勉強した人には、易しい試験になると思います。

毎回の授業でアニメーションや物をイロイロ使って授業を進めてくれたので、わかりやすかった。前記より復習しながら授業を行ったので、理解しやすかった。
よく理解してくれればありがたいです。

Androidを使った授業でわかりやすかった。
プログラムせっせとつくったかいがありました。

授業は難しかったですけど興味深くおもしろい内容でした。
より勉強して難しくない、と思えるレベルになると、もっとおもしろく感じられるでしょう。

プリントがわかりやすく自分で勉強するときとても役にたった。
それはよかった。

Android使った図の動きのイメージが取りやすくよかったと思いました。
動く図でイメージつかむのは大事です。

今日は最後の授業であったが、難しかったです。次のテストまで復習事項をまとめてテストに備えたい。ありがとうございました。
はいどうも。テスト頑張って下さい。

偏微分方程式を解くのは少し難しそうだなと思った。
いろいろテクニック使って解きます。

偏微分方程式はちょっと難しかった。
復習しておいてください。

今日は授業のペースが早かったのでついていくのが大変でした。ほかの範囲もそうですが、今日やったところは良く勉強しようと思いました。
じっくり復習宜しく。

アンドロイドを使うのは、イメージとかしやすくてとてもよかったです。頭の中で考えきれないのも、実際動画で見ることで考えきれるようになりました。
数学もイメージをつけて勉強していってください。

テストに向けて、ちゃんと勉強します。
テストだけでなく、今後のためにも、勉強しましょう。

熱伝導方程式の意味がわからなかったけど、説明を聞いていくうちにわかってきた。
中身は、わりと単純な式です。

自然科学についていろいろな例をやっていてとても面白かった。テストできるか不安。
これからこの数学を使って自然科学してください。

最後、ペースが速くてたいへんでした。来週テストなので頑張りたいと思います。
最後はこれで最後なので少し焦ったかも。テスト頑張りましょう。

懸垂線の実演、コンピュータによるシミュレーション、偏微分の図解などわかりやすかった。
ありがとうございました。

板書、トーク、ジェスチャー、アンドロイド、利用できるものは利用しているところが伝わりやすくてよかったと思う。まともに反応できなくてすみません。でも楽しかったです。
楽しんでもらえてよかったです。

タブレットを使う授業方式はよかった。
理解しやすくなっていればうれしいです。

フーリエ級数ですべての関数を表せるという知識を得ました。テストは簡単、かんぺなしで。
なかみをちゃんと理解している人には、テストは簡単なはずです。

オイラーの公式でてきた。しっかりおぼえる。
オイラーの式は何度も出てきているので、そろそろおなじみになって欲しいところ。

波動方程式

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