ここまでで飛ばしてしまっていた、Crayperonの式の話と強磁性体の相転移の話を、のあたりの話を中心に行いました。
ほんとは磁石を熱すると磁力がなくなることを、「ハサミにくっつけておいた磁石を着火マンの火であぶると磁力をなくしてポトンと落ちる」というデモンストレーション実験で見せたかったのだけど、着火マンが切れていて実行できず。かわりに、ゴムを伸ばすと温度が上がり、戻すと温度が下がる(気体の場合の断熱膨張、断熱圧縮と逆)を実際に体験してもらいました。
このあたりの計算でも、何度も $$ \begin{array}{rl} \mathrm dU=&T\mathrm dS-p\mathrm dV+\mu\mathrm dN\\ \mathrm dF=&-S\mathrm dT-p\mathrm dV+\mu\mathrm dN\\ \mathrm dH=&T\mathrm dS+V\mathrm dp+\mu\mathrm dN\\ \mathrm dG=&-S\mathrm dT+V\mathrm dp+\mu\mathrm dN \end{array} $$ という式の御世話になった。これらの式とその物理的意味がわかって使えるようになれば、熱力学は理解できている、ということになる。
最後に、$p=-{\partial F\over \partial V}$が負になる物体の例として、輪ゴムを持ってきて体験してもらった。気体が断熱膨張すると(エントロピーが増えて)温度が下がるのと逆に、輪ゴムの場合はエントロピーが下がって温度が上がる。二人で組になり、一方がゴムを持って、もう一方がゴムを伸ばすと、手の中のゴムが熱くなるのがわかる。しばらくその状態で待って、輪ゴムの温度が体温になった頃にゴムを放して伸びた状態から自然の状態に戻ると、このとき(断熱圧縮して)温度が下がる。この様子を体験してもらった。
青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。