今日の講義の内容

 ここまでで飛ばしてしまっていた、Crayperonの式の話と強磁性体の相転移の話を、のあたりの話を中心に行いました。

 ほんとは磁石を熱すると磁力がなくなることを、「ハサミにくっつけておいた磁石を着火マンの火であぶると磁力をなくしてポトンと落ちる」というデモンストレーション実験で見せたかったのだけど、着火マンが切れていて実行できず。かわりに、ゴムを伸ばすと温度が上がり、戻すと温度が下がる(気体の場合の断熱膨張、断熱圧縮と逆)を実際に体験してもらいました。

 このあたりの計算でも、何度も $$ \begin{array}{rl} \mathrm dU=&T\mathrm dS-p\mathrm dV+\mu\mathrm dN\\ \mathrm dF=&-S\mathrm dT-p\mathrm dV+\mu\mathrm dN\\ \mathrm dH=&T\mathrm dS+V\mathrm dp+\mu\mathrm dN\\ \mathrm dG=&-S\mathrm dT+V\mathrm dp+\mu\mathrm dN \end{array} $$ という式の御世話になった。これらの式とその物理的意味がわかって使えるようになれば、熱力学は理解できている、ということになる。

 最後に、$p=-{\partial F\over \partial V}$が負になる物体の例として、輪ゴムを持ってきて体験してもらった。気体が断熱膨張すると(エントロピーが増えて)温度が下がるのと逆に、輪ゴムの場合はエントロピーが下がって温度が上がる。二人で組になり、一方がゴムを持って、もう一方がゴムを伸ばすと、手の中のゴムが熱くなるのがわかる。しばらくその状態で待って、輪ゴムの温度が体温になった頃にゴムを放して伸びた状態から自然の状態に戻ると、このとき(断熱圧縮して)温度が下がる。この様子を体験してもらった。

★テストに関するお知らせ
 来週がテストですが、テストではA41枚(裏使ってよし)の「自作カンニングペーパー」のみ、持ち込みを認めます。「自作」は友人との合作を含めます(コピーはダメ)。復習して勉強しつつ、まとめを作成して持ってきてください。
受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

Clapeylonの関係から、改めてヘルムホルツの自由エネルギーの万能さがわかった。
相転移があっても使えますからね(いろいろ考えなくてはいけませんが)。

夏休みが楽しみです。
夏休みの間も物理しようね。

熱力学の話を磁性体に持っていくのは楽しかった。
今日はほんとにとっかかりの話しかしてないです。統計力学の方でも磁性の話は出てきます。

磁石が落ちる実験も見たかった。
普通の磁石とライターがあればできるので、やってみてください。

ゴムはなかなか面白かった。
温度変化を実感してみてください。

今回の説明でやっと相転移が理解できた。
最後に来てですが、よかったよかった。

磁性体にも熱力学が関係していることに驚いた。
実は深く関係してます(次の統計力学も)。

ゴムは体積が増えると動きにくくなるので温度が上がると考えていいですか。
はい、そういうことになります。

テストがんばります。
がんばりましょう。

熱力学の授業は全体的にとてもおもしろかったです。
熱力学を面白がっていただければ何よりです。

これからノートを見ながら教科書を読んでみます。演習問題を解いてみます。わからないところを質問しに行ってもよいでしょうか?
質問はいつでも歓迎です。

今日の講義