$\def\diff{\mathrm d}$

今日の講義の内容

 まず、前回の授業で飛ばしたテキスト冊子(クリックしてダウンロード)の8.7.2節平衡条件(等温環境内では$F=U-TS$が最小値を取るところが平衡になる)を説明し、安定性から${\partial^2 F\over \partial V^2} \geq 0$でなくてはいけないこと($F$が下に凸(:←こういう漢字を作ろうと前から主張しているが、誰も本気にしてくれない)な関数でなくてはいけないこと)を示した。

 この${\partial^2 F\over \partial V^2} \geq 0$という条件は要請ですか?
 いや、実は自動的にそうなるんです。

というわけで順番を変更して第10章の「相転移」のところを先に説明して、$F$がでない状況があると「$F$が最小であれ」という条件から二つの相が共存する状況が出現することの説明をした。

 授業では見せる時間がなかったが、↓にこの説明のアプリがある。

 そこからまた第9章にもどって完全な熱力学関数が$U,F,G,H$の4つあることとそれぞれがルジャンドル変換でつながることの説明をし、$H$の物理的意味を話した(9.2.1節)。その後相転移の話に戻って、潜熱がエンタルピーの差になることを説明したところで授業終わり。

 授業後に、

 相転移が起こるときの$F$の(じゃない)変な形はどうやって求めるんですか?

という質問がきた。これは理論的に気体の分子運動で働く力から$P$と$V,T$の関係を出す(van der Waals方程式)ということもあるし、実験で調べた$P,V$の関係から補完するということもある。同じ人から、

 擬似的な$F$のうち、真の$F$では直線に書き換えられてしまった部分は関係なくなるんですか?

という質問もあった。これはそのとおりで、実現するのは直線になった方の$F$なので、物理現象にはこの部分は影響しなくなってしまう。

 今後の予定は、

  • 7/31(期末試験)
  • 8/7(試験問題の解説と試験結果に関する授業)

となります。

 試験では、A4一枚の紙(何が書いてあってもよい)持ち込み可です。

受講者の感想・コメント

受講者の感想・コメント

 青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。

 主なもの、代表的なもののみについて記し、回答しています。


テスト頑張ります(今日はこのコメントが非常に多い)。
頑張ってください。

来週、偏微分と友達になって帰ってきます。
友達になっておけば大丈夫。

の漢字表記申請しましょう、えらいさんに。
誰に言ったらいいんだろうなぁ。

はノートに書くとき使ってます。
少しずつ広めていきましょう。

$\diff U=T\diff S-P\diff V+\mu \diff N$の式からいろんなことがわかる。
$\diff F$や他のと、つながりを含めて理解しておいてね。

ルジャンドル変換をうまく使えるようになりたいです。
どんどん使ってください。

エンタルピーの意味がわかった。
数式から、物理から、理解しておいてください。

エンタルピーはエントロピーのなまった言い方だと思っていた。
全然別物なのです。

普段眼にしている現象が式となって見えると、なんか不思議な感じがする。
でも、それこそが物理ですよ。

平衡の条件について理解できた。
とても重要な部分です。

テスト勉強でおさえて欲しいところをツイートまってます卍。
それはツイートするもんじゃないなぁ。授業中に言っていることです。

相転移が「自由エネルギーが下に凸でない場合」に最低エネルギーをとろうとするために起きる現象ということがわかって感激した。相転移というと何かとてもフクザツな状態の変化を考える必要がありそうだったので、単純にエネルギーの最低値を取ろうとする性質のみで導けるのはすごい。
単純な原理からいろんなことが説明できる、というのが物理の醍醐味。

授業の内容