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世紀末、プランクが研究していたのは黒体輻射もしくは空洞輻射と呼ばれる現象である。空洞輻射の研究はもともと溶鉱炉の中がどの温度でどんな色に見えるか
という疑問から始まった。実際どうなるかというと、低温では赤く光るのだが、温度があがるにしたがって橙、黄、白と白っぽくなっていく。そしてさらに温度
があがると今度は青白くなる。これは実は恒星の色と温度の関係とほぼ同じである。右のグラフがこの輻射のスペクトルである。可視光は振動数が3.9×1014
から7.9×1014Hz
である。5000Kのグラフを見ると、この範囲では、グラフはおおむね右下がりになっている。これは振動数の低い(波長の長い)成分の方が多いということ
であり、赤い色であることがわかる。これがなぜ問題なのかというと、当時の常識にしたがって計算すると、決して赤い色は出ないのである。「熱平衡状態にある物質には、1自由度あたり1/2kT のエネルギーが分配される」という法則である。k=1.38×10-23J/Kで、ボルツマン定数と呼ばれる。
たとえば単原子分子の理想気体では分子一個あ
たりの持つエネルギーは3/2kTとなる(動く方向が3つあるので3倍される)。また2原子分子であれば、5/2kT
となる(単原子分子の場合に比べ、2方向に回転できる)。もちろん1/2kTなどの値は平均値もしくは期待
値である。実際の原子はいろんなエネルギーを持っているが、その分布の平均がこの大きさになる。また固体分子の場合、一定点を中心に振動を行っていると考
えることができるが、その振動の位置エネルギー(1/2kx2)に対しても同様に一
つの自由度あたり1/2kTのエネルギーが分配され、全自由度は6となり、1分子あたり3kTのエネルギー
を持つ。
実際に分子がこのようなエネルギーを持っていることは、比熱の測定から確認できる。上で述べたことから、二原子分子の気体の温度を1度あげると、1分子あ
たり5/2kだけエネルギーが上昇する。ということは、温度1度上昇させるには5/2k×
(分子数)が必要である。固体の場合は、温度を1度上昇させるには3k×(分子数)のエネルギーが必要である1。この値は、実測とだいたい一致する。
原子はさまざまな形態のエネルギーを持っている。そのさまざまな形態のエネルギー、たとえば回転のエネルギーにも並進のエネルギーにも振動の位置エネル
ギーにも、等しく1/2kTずつのエネルギーが分配されているのだから、この法則が普遍的なものであろうと
考えるのは理にかなっているように思われる。
まだ統計力学は勉強してないと思うが、ここではとりあえず「等分配の法則」というものがあるということだけ知っておけばよい。しかし,なぜこんな法則が
成立するのか、雰囲気だけでもつかむために、以下のようなたとえ話で考えよう。
6個のリンゴを3人でわける分け方を考える。3人に2個ずつ、と平等にわける分け方は何種類だろうか。まず最初の一人に2個渡す方法が6C2=15
通り。次に残った2個をもう一人に渡す方法が4C2=6通り。最後の一人には残ったものを渡すしかないか
ら、1通りだけ。結局「平等にわける」場合の数は90通りとなる。
| A君 | B君 | C君 | 場合の数 |
| 6 | 0 | 0 | 1 |
| 5 | 1 | 0 | 6 |
| 4 | 2 | 0 | 15 |
| 4 | 1 | 1 | 30 |
| 3 | 3 | 0 | 20 |
| 3 | 2 | 1 | 60 |
| 2 | 2 | 2 | 90 |
| 腹の数 | 波長 | 波数 | 振動の様子 | ||
| n=1 | 2L |
|
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| n=2 | L |
|
|
||
| n=3 |
|
|
|
||
| n=4 |
|
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(2.1) |
黒体輻射の場合、まわりの壁とエネルギーをやりとりすることによって、振動の様子は刻一刻と変
わっていく。実際に起こる振動はこれらのうちのどれかというわけではなく、いっせいに起こる。実現するのはいくつかの波の重ね合わせである。古典力学的に
考えれば、波のエネルギーは任意の値をとることができるので、いろんな振幅の波の足し算が実現可能である。右の図は(nx,yy)=
(3,5)の波と(nx,ny)=(2,4)の波の重なった状態である。
では次に、3次元の場合を式で示そう。空洞を一辺Lの立方体とすれば、中に存在できる電磁波の波数は3つの方向それぞれごとにn[(π)/L]のよう
に、[(π)/L]の整数倍になる。つまり電場は
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(2.2) |
2006.1.13補足上の計算は、ベクトルである電場をスカラーのように1成分の量と扱ってしまっていること、境界条件をいいかげんに処理していること、の2点で正しくない。実際の電場の境界条件は、x=0,x=Lの壁においてはExに対しては自由端境界条件、EyとEzに 対しては固定端境界条件を置く必要がある(yやz方向の壁についても同様)。ゆえに、Exに対しては
|
右図は(nx,ny)の分布を表す図である(本来はnzも
いれて立体的な図にするべきだが、ややこしくなるので省略した)。格子点(+の場所)一つ一つが、空洞内に存在する電磁波のモード一つ一つに対応する。こ
の空間で原点を中心とした一つの球面の上にあるモードは、同じ振動数を持つ。図に書かれたように、ある程度の振動数の幅の中(νからν+Δνまで、あるい
はν'からν'+Δνまで)にある格子点の数は、νが大きいほど大きい4。
振動数がνからν+Δνの間にある格子点の数(電磁波のモードの数)を勘定してみる。問い2.2から、ν =
[(c√[((nx)2+(ny)2+(nz)2)])/2L]
であることはわかっているので、逆に考えると振動数νならば、nxの最大値は
[(2Lν)/c]に近い自然数となる。(nx,ny,nz)
の空間で考えると、この空間内の体積1の立方体一つごとに格子点は一個あるので、体積を計算すれば格子点の数を概算できる。振動数がνからν+Δνの間に
ある格子点の数は、半径[(2L(ν+Δν))/c]の8分の1球と、半径[(2Lν)/c]の8分の1球の体積の差をとって、
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(2.3) |
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(2.4) |
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(2.5) |
| 水素 | 窒素 | アルゴン | ヘリウム | 水蒸気 | ベンゼン | |
| 1グラムあたりの定積比熱(J/gK) | 10.23 | 0.740 | 0.313 | 3.152 | 1.542 | 1.250 |
| 分子量(g/mol) | 2 | 28 | 40 | 4 | 18 | 78 |
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(2.6) |
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(2.7) |
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(2.8) |
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(2.9) |
| sin nx | π
L |
x sin ny | π
L |
y |