|
|
粒子的描像 | 波動的描像 |
光子(エネルギーhν) | 電場、磁場(→E,→H) |
物質粒子(エネルギー1/2mv2+V) | 波動関数(ψ) |
|
|
(7.18) |
|
(7.19) |
|
(7.20) |
|
放射性物質が崩壊すると毒ガスが出て、中にいる猫が死ぬような仕掛けのしてある箱があったとする。放射性物質の崩壊とい う のも量子力学的現象で崩壊がいつ起るかは確率的にしか予言できない。だから、放射性物質の状態は(観測する前は)「まだ崩壊してない」と「すでに崩壊し た」の二つの状態の重ね合わせになっている。しかし、「まだ崩壊していない」は猫の生と、「崩壊した」は猫の死と結び付いている。だから、観測する前は 「まだ崩壊していない」と「崩壊した」のどちらにあるかわからない-つまり二つの状態の重ね合わせになっている-という状態を認めるのであれば、同様に、 観測する前は猫が「生」と「死」の二つの状態にどちらにあるのかわからない-つまり二つの状態の重ね合わせになっている-という状態の存在も認めなくては ならない。 しかし我々は「生」と「死」の二つの混ざりあった状態の猫なんて、見たことはない…。この疑問をどう解決するのかは難しい問題で、考え始めると夜も眠れないほどに「はまってしまう」問題である。それゆえとりあえずはあまり深く考えない方 が 精神衛生上はいいのだが、量子力学において「状態の重ね合わせ」という概念が非常に重要であり、ミクロな話をする時にはこのような考え方を避けることはで きないということは理解しておいて欲しい。 量子力学の標準的解釈であるコペンハーゲン解釈(または確率解釈)においては、観測することによって波動関数は重ね合わせの状態からいっきにどれか一つ の 状態へと収縮すると考える。そして、どの状態に収縮するかの確率がψ*ψ によって表されると考える。 シュレーディンガーの猫の話の焦点は、『波動関数の収縮はいつ起こるのか』という疑問である。これに対する答えとして、一つ有り得るのは、「測定器が放 射 性物質の崩壊を測定した時点でもう波動関数は収縮している」という考えかたである。この考えかたならば、生きた猫と死んだ猫の重ね合わせなどを考えなくて もすむ。しかし、「ではいったい何が波動関数が収縮するかしないかを分ける境界なのか?」という点はあいまいである。 もう一つの考え方はウィグナーらによる「人間の意識に到達した時に波動関数は収縮する」という考え方である。人間が感知していない時に波動関数が収縮し て いようがしてしまいがある意味「知ったことではない」 と考えるとこの考え方には一理あるが、人間の意識など所詮は一連の化学反応ではないかという立場に立つと、「人間の意識が物理現象に とってそんなに重要だと考えるのは傲慢ではないか」とも思われる。 また一つの考えかたは、波動関数の収縮などを考えず、観測した後も「猫が死んだと観測する観測者」と「猫が生きていると観測する観測者」の重ね合わせが で きていると考える。さらには観測者だけでなく、世界全体を重なり合ってたくさんあると考えてしまう。観測者がそれぞれ別の世界に存在しているので、各々の 観測者はけっして重ね合わせを見ない。この解釈では、ありとあらゆる世界が並列して(しかし、互いの間には何の干渉も相互作用もないままに)存在している ことになる。これを多世界解釈と言う。 もう一つの立場としては、確率で決まるようなものはどこにもなく、実際には粒子がどの場所にいるかは最初から決まっているという考えかたであるが、この 考 えかたで実験を説明するには、非常に複雑で、かつ不自然な相互作用があると考えなくてはいけないため、主流とはなっていない。 大事なことは確率解釈でも多世界解釈でも、計算の結果出てくる答は変化しないということである。たてるべきシュレーディンガー方程式も同じであるし、結 果 を見て「なるほど、50%の確率でこの粒子は崩壊しているな」と判断するところも同じである。 したがって、実用の面からすれば、どの解釈を取るべきかということに悩む必要は、(一応)ない。そこでこの講義では今後はどの解釈を取るべきかという話 は いっさいしないつもり(基本的にはもっともスタンダードな確率解釈の線にそって説明する)なので、興味のある人はいろんな本を読んでみること7。 波動関数がどのように収縮するのか、そのメカニズムは何なのかということも古くから論争の種であって、いまだ決着がついているとは言えない状況である。 と りあえずその難しい部分に踏み込むのはやめて、波動関数を確率と解釈する枠組みで考えて、シュレーディンガー方程式がどのような物理を記述することになる のか、それを考えていこう。
|
(7.21) |
|
(7.22) |
|
(7.23) |
力学変数 | 基本方程式 | 初期条件 | |
古典力学 (ニュートン) |
xi(t) | m [( d2 xi)/dt]=fi | xi(t=0),[(dxi)/dt](t=0) |
古典力学 (ハミルトン) |
xi(t),pi(t) | [(dpi(t))/dt]=−[∂H/(∂xi)], [(dxi(t))/dt]=[∂H/(∂pi)] | xi(t=0),pi(t=0) |
量子力学 | ψ(→x,t) | i(h/2p) [∂ψ(x,t)/∂t] = H ψ | ψ(→x, t=0) |
|
(7.24) |
|
(7.25) |
|
(7.26) |
|
(7.27) |
|
(7.28) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|