速度と微分の関係

 微分の最も重要な応用(ニュートンはまさにこのために微分を作った)は速度の定義である。速度は時間tを独立変数にして、座標(物体の位置)xを従属変数とした微分

$$ v(t)=\lim_{{\Delta t}\to0}{{\Delta x}\over {\Delta t}} = {\mathrm dx\over \mathrm dt} $$

 ${{\Delta x}\over {\Delta t}}$で定義される速度は${\Delta t}\neq0$でないと意味がないから、「有限の時間だけ待って、その間に進んだ距離を使って計算される量」だということになる。しかしでは例えば車のスピードメータが指している「時速60キロ(60 km/h)」は別に1時間待ってから測定するものではない具体的には車輪に連動している発電機から流れる電流などで測定されているだろう。。むしろ「瞬間の速度」というものが物理的には存在している。速度を座標と関連付けて計算する操作が微分である。

 物理の世界で有名な小話に、スピード違反で捕まった人が警官に「時速100キロだ」と言われて、「いや、おれはまだ1時間も走ってない!」と答える、というのがある。時速100キロ(100 km/h)を「1時間で100キロ走る」と単純に解釈すれば「まだ1時間走ってないから時速100キロじゃない」ということになるが、速度はグラフの傾きで表現できるものなのだから、1時間走るのを待つまでもなく、(理論的には、$\Delta t\to0$でも!)「時速100キロ」は測定もしくは定義できるのである。

 では、下のグラフで速度と微分の関係を直感しよう。

 以下のグラフは、横軸時間で、縦軸が物体の位置および物体の速度である。
←ここをチェックすると、緑の棒グラフで速度が表示される。
ボタンを押すだけでなく、●は全てドラッグして動かすことができるので、任意の運動を作ることができる。いろいろとこの図で物体を動かして「速度」と「微分」の関係をつかんで欲しい。

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