CENTER:[[根底からの物理]]に戻る #mathjax() *「根底からの物理」微分方程式と友達になる(その2) [#h73605bd] &color(Red){[[前回>「微分方程式と友達になる」(その1)]]は変数分離で解く話だったので、今回は単純に変数分離で解けない問題(といってもそんなに難しくはない)の演習をした。}; **一見変数分離できないが工夫するとなんとかなる場合 [#n9a101c7] 微分方程式 \begin{equation} {\diff y\over \diff x}={x-y\over x} \end{equation} はこのままでは変数分離できない。そこでまず \begin{equation} x{\diff y\over \diff x}+y=x \end{equation} とする。こうしておいて、「左辺が${\diff (なんとか)\over \diff x}$の形にならないかなぁ?」と考えてみる。 \begin{equation} {\diff \over \diff x}\left(xy\right)= x{\diff y\over \diff x}+y \end{equation} となることがわかる。つまり解くべき方程式は、 \begin{equation} {\diff \over \diff x}\left(xy\right)= x \end{equation} なのである。これは$xy=z$とおいて、$z$の微分方程式 \begin{equation} {\diff z\over \diff x}=x \end{equation} だと思えばすぐに解けて、 \begin{equation} z= {x^2\over 2}+C~~~すなわち~~~ y={x\over 2}+{C\over x} \end{equation} とわかる。 この方程式は、 \begin{equation} {\diff y\over \diff x}=1-{y\over x} \end{equation} としてから、${y\over x}=w$として$w$の方程式として解くという方法もある((左辺が${y\over x}$の関数になる時、微分方程式は「同次形」であると言い、この時は${y\over x}$を変数として解くとよい。))。 &color(Red){同次形についての説明はちょっと手薄だったかも。}; '問1':${y\over x}=w$と置き直すことで、$ {\diff y\over \diff x}=1-{y\over x}$を解け。 '問2': 以下の微分方程式を解け。 (1) ${\diff y\over \diff x}={x^3-2y\over x}$ (2) $(x+y)\diff x+(x-y)\diff y=0$ (3) $x{\diff y\over \diff x}+3y={\sin x\over x^2}$ **全微分 [#m0b836ad] &color(Red){順番としては、全微分を先にやった方がよかったかもしれない。}; 方程式が「全微分」の形をしている時は、比較的簡単に解を求めることができる。たとえば前に図で考えた${\diff y\over \diff x}=-{x\over y}$は(これは変数分離でも解けるのだが)、 \begin{equation} x \diff x + y \diff y=0 \end{equation} と変形できる。この式は \begin{equation} \diff \left({1\over2}x^2+{1\over2}y^2\right)=0 \end{equation} と同じ式である。逆にたどって確かめるのはたやすい。よってこの微分方程式の解は \begin{equation} {1\over2}x^2+{1\over2}y^2=C(定数) \end{equation} であることがすぐわかる。 つまり、ある式が、 \begin{equation} \diff(なにか) \end{equation} の形になっている時、これを「全微分になっている」と呼ぶわけである。$\diff (なにか)=0$という式は$(なにか)=(定数)$という解を持つ。 '問1':以下の微分方程式を、全微分の形に変形することで解け。 (1)$2xy\diff x+x^2\diff y=0$ (2)$y\cos x \diff x+ \sin x \diff y=0$ (3)$-{y\over x^2}\diff x+{1\over x}\diff y=0$ (4)$(9x^2+y-1)-(4y-x){\diff y\over \diff x}=0$ &color(Red){以下、積分可能条件などの話はできなかった。}; $x\diff x+y\diff y$という式を見て全微分であると判定するのは比較的たやすいが、もっとややこしい形の方程式が出てきた時、これが全微分で書けるのかどうかを判定する必要がある。 そのために「積分可能条件」と呼ばれる条件を使う。たとえば方程式が \begin{equation} P(x,y)\diff x + Q(x,y)\diff y=0 \end{equation} の形になったとする。これが \begin{equation} \diff f(x,y)=0~~ すなわち ~~ {\partial f\over \partial x}\diff x +{\partial f\over \partial y}\diff y=0 \end{equation} と書き直せるためには、 \begin{equation} {\partial P\over\partial y}={\partial Q\over \partial x} \end{equation} ことが必要十分条件である。 &color(Red){ちょっと長い説明省略}; 全微分でなかった時も、「何かの関数をかけることで全微分の形にする」ことが可能である場合がある。すなわち、 \begin{equation} P(x,y)\diff x +Q(x,y)\diff y =0 ~~\to~~ M(x,y)P(x,y)\diff x +M(x,y)Q(x,y)\diff y =0 \end{equation} として、たとえ、$P(x,y),Q(x,y)$が積分可能条件${\partial P\over \partial x}={\partial Q\over \partial y}$が満たされてなかったとしても、$ {\partial (MP)\over \partial x}={\partial (MQ)\over \partial y}$が満たされるように$M(x,y)$を選ぶのである。たとえば、 \begin{equation} (x^2+xy)\diff x -x^2 \diff y=0 \end{equation} はこのままでは積分できないが、両辺を$x^3$で割って、 \begin{equation} \left({1\over x}+{y\over x^2}\right)\diff x -{1\over x} \diff y=0 \end{equation} とすると、$\log x -{y\over x}$の微分になっている。つまり、 \begin{equation} \log x -{y\over x}= C \end{equation} が解である。 $\diff (x^my^n)=m x^{m-1}y^n \diff x+ nx^m y^{n-1}\diff x$であるということを使うと積分因子を見つけやすい。たとえば、$3y\diff x+x\diff y$という式があったら、$y\diff x$が3倍効いていることから、$x^3y$という形の微分ではないか、と推測される。$\diff (x^3y)=3x^2y\diff x+x^3 \diff y$であるから、$x^2$をかけることで全微分に直すことができる。 &color(Red){プリントでは、上の式が間違っていました。$\diff (x^my^n)=m x^{m-1}y^n \diff x+ nx^m y^{n-1}\diff x$の最後のyのべきがm-1になってますが、↑が正しいので訂正しておいてください。また、最後の「$x^2$をかけることで」も、プリントでは$x^3$になってました。}; &color(Red){ほんとうは物理への応用まで行きたかったのだが、ここで時間切れ}; ---- ↓コメントなどは以下にどうぞ。 #comments