前回から静電気学を考えているが、静電気力を考えるには二つの立場がある。
どちらが正しいかを判定するにはどんな実験をすればいいだろう?
間をなにかで遮るとか。
なるほどそれも一つの手だけど、その「なにか」が電場を遮るものかどうかが問題になるね。
片方の電荷をどかすとか。
それで、力が変化するのがすぐか、ある程度(電場が伝わる)時間が経過してからかで判定できるね。ただし、実はこの伝わる速度が光速度なので実験は難しいのだけど。
実際には近接作用論が正しいことが確認されている。
さて、電場の定義は
ある場所に試験電荷$q$を置いたと仮定すると、その電荷に力$\vec F$が働くとする。この時、その場所には$\vec E_{}={\vec F\over q}$の電場$\vec E_{}$が生じていると定義する。別の言い方をすれば、「電場$\vec E_{}$とは、その場所に単位電荷を置いた時にその電荷が受ける力である」としてもよい。
というものである。
実験で見つかった「クーロンの法則」がある。
という法則だが、これは点電荷どうしの式であることに注意が必要である。
この「距離の自乗に反比例」という性質は、「光源からの距離と明るさの関係」に似ている。
こう考えると、「電荷からなにかが放射されている」というイメージで電場の伝搬を考えたくなる(実際になにかが出てきているわけではないが)。
電場の方向を向いて伸ばした線として「電気力線」を定義し、電気力線は正電荷で始まり負電荷で終わり、途中で合流・分裂したり電荷以外の場所では途切れないと考え、
という「ガウスの法則」をクーロンの法則の代わりに据えてやると、
となる(こうすればクーロンの法則は導かれる)。
ここで、コンデンサの極板の間の電場を求めるという問題を考えよう。
コンデンサの極板に溜まった電荷はもちろん「点電荷」ではないから、クーロンの法則は使えない。もし使うとしたら、極板を微小な部分にわけて点電荷とみなしてからその足し算(具体的には積分)を行う。こういう場合はガウスの法則の方が圧倒的に使い勝手がよい。
「せっかく暗記したから公式を使いたい病」にかかっていると、「距離が2倍だから${1\over4}$倍」という大間違いを起こす(実際効いてみると全体の3分の1ぐらいがそう答えた)。
この場合電気力線の密度が変わらないのだから電場も変わるわけがない(なお、距離が遠くなると「コンデンサーの境界部分で電気力線が染み出さない」という近似が使えなくなるから少し電場は弱くなる)。
法則には「適用範囲」があるものが多い(クーロンの法則なら「点電荷」が条件である)。そこを考えないで「公式だから」と使ってはいけない。また、将来の生徒にそういう教え方をしてはいけない。
ここで、電気力線を表示するアプリ
を使いながら、以下の課題を考えてもらった。
つまりは電気力線の気持ちになって電気力線が「こうなりたい」と思っていると考えて引力と斥力を説明してほしい、ということである。
答えは、以下の通り。
これは電気力線の密度すなわち電場の強さの増加関数であるような「電場のエネルギー」があると解釈しても理解できる。「短くなろうとする」のは電場のいる範囲を狭くしてエネルギーを下げるし、「混雑を嫌う」のは電場の強さを弱くしてエネルギーを下げる。電気力線自体がエネルギーを持っている力学的存在だと考えると、引力や斥力のイメージが理解できる。
青字は受講者からの声、赤字は前野よりの返答です。
主なもの、代表的なもののみについて記し、回答しています。