この講義の中でもずっと、「物質には波動と粒子の二重性がある」ということを言ってきた。量子力学では全ての物体の運動を波動関数で表す。では、我々が
「ここに粒子が存在している」というふうに認識している状態は、どのような波動関数に対応しているのであろうか?
特定の波長を持った波(「単色波」7)
を考えると、式で表現すればeikx(これは波数k、波長[2π/k]の波)となるが、この波は空間のどこでも同じ振幅を持ってい
る。振幅の自乗が粒子の存在確率だから、eikxという波動関数で表される粒子は、空間のどこでも(宇宙の端から端まで!)同じ確
率で存在していることになる。そんなことは有りそうにない。eikxは、我々がとても出会うことがなさそうな波動関数なのである。
では「特定の場所にのみ存在する(局在する)波」はどのようなものかというと、いろんな波長を持った波が重なったものと考えることができる。右の図のよう
に、いろんな波長の波を、ある場所に波の「山」が集中するように重ね合わせると、結果としてその場所が大きくもりあがった「波の塊」ができる。
[
|
(2.1) |
|
(2.2) |
この波はいわば、平面波ei(kx−ωt)の振幅が2cos( ∆k x− ∆ωt )
に応じて変化していると考えることもできる。そしてこの振幅の変化は[π/∆k]の幅の「波のこぶ」を作る。そのこぶは[∆ω/∆k]という速度で進行し
ていくことになる。このこぶの速さは、位相速度vpとは一般には一致しない。
この「波のこぶ」の進む速度をvgと書こう。vgの事は、「波の塊(グループ)の速度」という
意味で、群速度(group velocity)と呼ぶ。
今、二つの単色波を足したわけであるが、それぞれの位相速度は[ω−∆ω/k−∆k]と[(ω+∆ω)/(k+∆k)]である。この二つの位
相速度が違う場合、群速度はどちらとも一致しない。
|
(2.3) |
|
(2.4) |
|
(2.5) |
|
(2.6) |
|
(2.7) |
ω = [(h2)/(2mλ2)]
であるから、ω(k) = [(
k2)/2m]となり、位相速度は
|
(2.8) |
|
(2.9) |

|
ω, p=
kはこの場合でも成立するので、ωとkの関係は
ω = √{
2k2c2+m2c4}
である。この場合の位相速度vpと群速度vgを波数kの関数として求め、vpvg=c2で
あることを確認せよ。vpとvgのうち一方は光速を超えることになるが、それはどちらか。これは物理的に許
される結果だろうか?