希薄磁性半導体の強磁性発現機構
半導体を用いたデバイスの開発は、従来もっぱら電圧、不純物等によってキャリアー濃度をコントロールし、電圧電流特性を変化させるものだった。しかし、最近、キャリアーのスピン自由度に注目してスピン自由度の制御をデバイスに応用するスピントロニクスが提唱され、(GaMn)As に代表される希薄磁性半導体がその有望な材料として注目されている。しかし、希薄磁性半導体は優良な試料の作成が困難なために、実験的な研究がまだ十分進んでいない。たとえば、従来再現性よく得られている最高の強磁性臨界温度は (GaMn)As における約 110K であり、応用上必要な常温に達していない。この分野の発展を促すために、磁性半導体における磁性発現および伝導のメカニズムを理論的に解明し、より機能性の高い物質を創成するための指針を与えることがこの研究の目的である。希薄磁性半導体には電子間の相互作用が強く働く遷移金属が含まれる事と、不純物による不規則性があるために、従来半導体分野で広く使われてきた第一原理計算だけでは、その本質を明らかにすることは困難である。我々は、これらの物質において本質的に重要な要素を取り込んだ模型を構築し、電子相関と不規則性の効果を取り込んだ理論計算を行うことにより、希薄磁性半導体における強磁性メカニズムを解明する。
関連論文:
- "Theory of Diluted Magnetic Semiconductors: - A Minimal Model -":
Kazushi Kagami, Masao Takahashi, Chitoshi Yasuda, and Kenn Kubo,
Science and Technology of Advanced Materials 7, 31-41 (2006).