helium

固体ヘリウムの磁性

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3He 原子は陽子 2 個、中性子 1 個、そのまわりの電子 2 個から成る質量の小さいフェルミ粒子であり、大きさ 1/2 の核スピンをもっている。また、ヘリウムは希ガス元素であるため、お互いの相互作用が弱い。そのため、その量子統計の効果が固体ヘリウムの性質に極めて顕著に影響し、古典的描像では理解できない多彩なふるまいを示す。グラファイト上に 3He を吸着させると、ある濃度で三角格子の固体を形成する。また、スピンの担い手が核スピンであるため、多スピン交換相互作用が重要な役割を果たしている。そのため、グラファイト上の 3He 薄膜は強いフラスレーションを伴った理想的な二次元スピン系と見なすことが可能である。我々は、三角格子上の多スピン交換相互作用をもつスピン模型を、解析的手法や数値的手法を用いて研究することにより、フラストレーションの強い系における多彩な相転移現象の理解を目指している。


本研究では、二体のスピン間相互作用と四体相互作用の共存・競合のため、それらの相互作用の割合を変化させると、この模型で記述される系は多様に変化する。我々は、その多様な相のなかでも、ある平面内で 120°だけ向きが違う三種類のスピンが存在する三副格子構造とそれらが立体的になった六副格子構造間の相転移に着目した。本研究では、スピン波近似を用いて三副格子構造の量子ゆらぎに対する安定性を調べ、四体相互作用の寄与が大きくなるとスピン波のソフト化が起こり、六副格子構造へ相転移することを示している。

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