ネール温度に関する普遍性の発見
本研究は、当初、三次元系における反強磁性秩序がどのように乱雑さによって壊されるのかを理解する目的で始まった。そのためには、まず、乱雑さがない場合のネール温度(その下の温度では反強磁性がある)を評価する必要があるが、この問題は高次元系の問題であるため、従来行われてきた平均場近似の理解を越えないものと思われた。しかし、我々の詳細な評価の結果、これまでの理解にはなかった普遍的な関係がネール温度と面間・鎖間相互作用の間にあることを発見した。具体的には、鎖内の相互作用が J、鎖間の相互作用が J' の反強磁性的な二体のスピン間相互作用を考え、この J' の値とネール温度の(上に表記してある)関係式を見出した。しかも、この関係式は系のスピンの大きさ S に依存しない普遍的な性質を有していることが分かった。この関係式を用いれば、ネール温度の実験結果からその物質の正確な J' の値を評価できる。また、面間に J' の相互作用がある擬二次元系でも同様な関係式を得ている。
関連論文:
- "Neel Temperature of Quasi-Low-Dimensional Heisenberg
Antiferromagnets":
C. Yasuda, S. Todo, K. Hukushima, F. Alet, M. Keller, M. Troyer, and H. Takayama,
Phys. Rev. Lett. 94, 217201 1-4 (2005). preprint: cond-mat/0312392.