初等量子力学講義録2005年第11回
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第7章
シュレーディンガー方程式と波動関数
7.1
シュレーディンガー方程式
いよいよ我々は、量子力学の基本方程式と言って良いシュレーディンガー方程式に到達する
35
。
量子力学の初期段階において、量子化という作業の手がかりとなったのは、プランクの関係式からアインシュタインが光量子のエネルギーの式として出した
E=hν
(7.1)
と、ド・ブロイの関係式
p=
h
λ
(7.2)
である。この2式は光や物質で一般に成立する。
ところで、振動数νで波長λをもち、x軸の正方向へと伝播する波は
ψ
λ
= e
2πi([x/λ]−νt)
(7.3)
という式で表すことができる。この指数関数の肩に乗っているものが[
i
/
]×(古典力学的作用)であり、解析力学とつながりのあるものであることはすでに述べた。シュレーディンガーもこのつながりをヒントに方程式の形を決めている。
(
7.3
)で表される波は平面波であって、宇宙の端から端まで同じ振幅で振動している波である。実際にできるのはこれらの波のいろんな波長のものを足し算したものになるであろう。
今からつくる方程式は線形方程式(変数に関して1次の量のみを含む方程式)であることを要求する。線形であれば、解の重ね合わせができる。つまり、Aという解とBという解を見つけたならば、αA+βB(α,βは適当な定数)も解である。したがっていろんなλに対してψ
λ
を求めれば、その重ね合わせでさらにたくさんの解を作ることができるであろう。これを「重ね合わせの原理」(principle of superpostion)と呼ぶ。電磁場や、音などの波には重ね合わせの原理が成立する
36
。ここまで考えてきたことからすると、重ね合わせの原理は量子力学でも成立していて欲しい。
逆に重ね合わせの原理が満たされているならば、複雑な波も簡単な平面波の重ね合わせで表現できるということになるので、とりあえず平面波をとりあげて考えていけばよいことになる。
というわけで一つの関数ψ
λ
を考えるわけだが、この前では
p=
h
λ
→
−i
h
2π
∂
∂x
=−i
∂
∂x
(7.4)
E = hν
→
i
h
2π
∂
∂t
= i
∂
∂t
(7.5)
という置き換えができる。つまり、
−i
∂
∂x
e
2πi([x/λ]−νt)
=
−i
×
2πi
λ
e
2πi([x/λ]−νt)
=
h
λ
e
2πi([x/λ]−νt)
(7.6)
i
∂
∂t
e
2πi([x/λ]−νt)
=
i
×(−2πi ν)e
2πi([x/λ]−νt)
= hνe
2πi([x/λ]−νt)
(7.7)
となる。このように(演算子)×(関数)=(値)×(関数)となるような関数を「固有関数」、右辺に出てくる(値)を「固有値」と呼ぶ。固有関数を考えることの意味については、後で述べる。
古典力学においては、エネルギーはハミルトニアンH(p,x)として、運動量や座標の関数として表された。量子力学におけるエネルギーE=i
[∂/∂t]も、同様に運動量や座標と関係付けられるはずである。その関係を、波動方程式の形で表したものがシュレーディンガー方程式なのである。
非相対論的な古典粒子の場合、E=H=[1/2m]|
→
p|
2
+V(x)であるから、そのような粒子を表す波は
i
∂
∂t
ψ =
(
−
2
2m
(
∂
2
∂x
2
+
∂
2
∂y
2
+
∂
2
∂z
2
)
+V(x)
)
ψ
(7.8)
のような方程式を満たすであろうと考えることができる。これがシュレーディンガー方程式である。このψは複素数で表され、「波動関数」と呼ばれる。
【以下長い註】
この部分は、最初に勉強する時は理解できなくともよい。
余談ではあるが、相対論的にはエネルギーと運動量の間には、
E
2
= |
→
p
|
2
c
2
+ m
2
c
4
(7.9)
という関係式が成立する。シュレーディンガーは最初この方程式を波動方程式に焼き直して
(
−
2
(
−
∂
2
∂t
2
+c
2
∂
2
∂x
2
+c
2
∂
2
∂y
2
+c
2
∂
2
∂z
2
)
+m
2
c
4
)
φ = 0
(7.10)
という式を作ったそうである。ところがこれを使って電子の運動を計算してみると、実験にあった答えが出なかったので、いったん書き上げた論文を撤回して、非相対論的な式である(
7.8
)を作った。
この相対論的な方程式(
7.10
)は後に電子ではな い、別の粒子に対する波動方程式として使われ、クライン・ゴルドン(Klein-Gordon)方程式と呼ばれている。1階の微分方程式であるシュレー ディンガー方程式と違って、クライン・ゴルドン方程式は2階の微分方程式である。後で述べるが1階であることとψが複素数であることは関係があるので、ク ライン・ゴルドン方程式の場合はφが複素数である必要はない。電子の相対論的方程式としてはディラック(Dirac)方程式という、全く別の式があり、相 対論的な計算ではそちらを使う必要がある。クライン・ゴルドン方程式は電子に適用すると実験に合わないと上で述べたが、ディラック方程式はぴったり実験に 合う。
【長い註終わり】
より一般的には、解析力学の手法にのっとって、一般化座標q
i
とそれに対する運動量p
i
を使ってハミルトニアンH(p
i
,q
i
)を書き下し、p
i
= −i
[∂/(∂q
i
)]と置き換えたうえで
i
∂
∂t
ψ = H
(
−i
∂
∂q
i
,q
)
ψ
(7.11)
としたものが波動関数となる。一般化座標q
i
には、x,y,zの他、θ,φのような角度座標も入ってくる。たとえば直交座標での作用と極座標での作用は
∫
dt
(
p
x
dx
dt
+p
y
dy
dt
+p
z
dz
dt
−H
)
=
∫
dt
(
p
r
dr
dt
+p
θ
dθ
dt
+p
φ
dφ
dt
−H
)
(7.12)
のように書ける。[i/
]×(作用)が波動関数ψのexpの肩に乗っていると思えば、φに対する運動量である角運動量p
φ
は、−i
[∂/∂φ]のように置き換えられることになる。その他の一般座標も同様である。曲線座標に対する運動量の中には単純に−i
[∂/∂X]と表すことができない場合があるが、それに関してはまた後で述べよう。
この考え方からすると、ボーア・ゾンマーフェルトの量子化条件∫p dq = nhは、以下のように考えることができる。p=−i
[∂/∂q]であり、波動関数がe
i(位相)
という形でかけていると思えば、pはすなわち、
[∂(位相)/∂q](−iとiが掛け算されて消えた)である。これにdqをかけて一周積分すれば、
∫
∂(位相)
∂q
dq =
×(一周の位相差) = nh → 一周の位相差 = 2nπ
(7.13)
という式になる。すなわち、任意の道を一周した時に、波動関数の位相が2πの整数倍だけ変化するということを示している。e
2πi
=1であるから、波動関数の値は変化してないことになる。つまり、ボーア・ゾンマーフェルトの条件は、波動関数の値が一価(一つの場所に一つの値しかないということ)であれという条件なのである。
7.2
波動関数の意味
これで方程式ができたが、ではこの方程式の解となる、ψとはいったい何なのか。
ヤングの実験(第1章を参照)の類推から考えよう。ヤングの実験では光を使い、電場や磁場が重ね合わされた結果の干渉により、干渉縞ができる。電場
→
E
1
と電場
→
E
2
が重なると
→
E
1
+
→
E
2
という電場ができる。この電場の持つエネルギー密度は
1
2
ε
0
(
→
E
1
+
→
E
2
)
2
=
1
2
ε
0
(
→
E
1
)
2
+
1
2
ε
0
(
→
E
2
)
2
+
ε
0
→
E
1
·
→
E
2
干渉項
(7.14)
となる。最後の項が二つの電場が重なったこ とによって強めあったり弱めあったりする効果の表れる項である。古典電磁気学で考えれば、この干渉項がプラスとなる部分は強い光となり、マイナスとなる部 分は弱い光となる。この電場や磁場はたくさんの光子によって作られているものである。
光と物質粒子(たとえば電子)の、粒子的・波動的描像での表現をまとめると以下の表のようになる。
粒子的描像
波動的描像
光子(エネルギーhν)
電場、磁場(
→
E,
→
H)
物質粒子(エネルギー
1
/
2
mv
2
+V)
波動関数(ψ)
我々はたまたま光については波動的描像を先に知ったし、電子については粒子的描像を先に知った。実は光も電子も両方の性質を持っているのだから、電子の波動的描像を表す実体が必要となってくる。それが波動関数である。
光の場合、エネルギー密度はρhνというふうに、光子の個数密度ρに光子一個あたりのエネルギーhνをかけたもとして書くことができるだろう。つまり、電磁場の場合は電磁場のうちある振動数を持つ成分について、
1
2
ε
0
(電場)
2
+
1
2
μ
0
(磁場)
2
∝ (光子数の密度)
(7.15)
のような関係がたっている。そこで一般の波動関数もこの類推で、
(ψの実部)
2
+(ψの虚部)
2
∝ (粒子の数密度)
(7.16)
のような関係が成立するだろうと考える。ψ そのものを粒子数密度と考えることはできない。ψはプラスになったりマイナスになったり(どころか複素数にもなったり)する関数であるから、粒子数という 絶対負にならない実数と直接に結びつかない。実際電子波の散乱実験で「電子が干渉によって消し合う」という現象が起きていることを思い起こそう。
(ψの実部)
2
+(ψの虚部)
2
はψ = ψ
R
+iψ
I
(ψ
R
,ψ
I
はどちらも実数)と書けば ψ
*
=ψ
R
−iψ
I
なので、
ψ
*
ψ = (ψ
R
+ iψ
I
)(ψ
R
− iψ
I
) = (ψ
R
)
2
+ (ψ
I
)
2
(7.17)
となって、ψ
*
ψと書くことができる。これは複素数ψの絶対値の自乗になっている(ψ = Re
iθ
と書いたならば、ψ
*
ψ = (Re
−iθ
)(Re
iθ
)=R
2
)。あとでこの量がちゃんと保存量になっていることを確認する。
上では粒子の数密度だと書いたが、今考えている系に粒子が一個しかないような場合(この後考 えるのはたいていこのような系)、数密度と考えるより、その粒子がここにいる確率密度と考えた方がよい。実際、ヤングの実験であっても、一度に一つしか光 子がこないような弱い光で実験しても明暗は表れる。つまり、波動関数というものを「粒子がたくさんいて、そのたくさんいる粒子の密度を表すもの」と考える のは実験にそぐわない。実際に粒子を見つけようとすると、どこか一点に見つかる(ヤングの実験であれば、スクリーンのどこか一カ所だけが感光する)。
シュレーディンガー本人は、電子などの粒子が実際に広がっていて、|ψ|
2
は密度そのものだと思っていた。ゆえに彼は確率密度という解釈には反対していた。しかし、ψを実体のともなった密度のようなものだとすると、波を分割することで「電子
1
/
2
個」が作れてしまうことになるが、そんな現象は決しておきない。電子を金属結晶で散乱させるような場合を考えてシュレーディンガー方程式を解いてψを求めたとしよう。たくさんの電子で実験すると、確かに|ψ|
2
が電子がやってくる数に比例している。では一個の電子を散乱させた時に何が起こるのかというと、別に一個の電子が分割されて届くわけではなく、|ψ|
2
が0でないようなどこか一カ所に一個の電子が到着する。
たとえ波動関数が二つに分かれたとしても、観測してみると電子はどちらか片方で一個見つかる のである。つまり、「波動関数は、たくさんある粒子のうち何個がここにあるかを表している」という考え方は正しくない。非常に気持の悪い解決法なのではあ るが、「波動関数はその絶対値の自乗ψ
*
ψが、一個の粒子が見つかる確率を表しているような関数である」と考えなくてはならない。これを確率解釈と言う。
ヤングの実験の場合でも、スクリーンにあたるまでは光子の波動関数は広がっており、あたると瞬時に一点のみに光子が表れると解釈しなければならなかっ た。このように何か(観測器など)に出会うことで波動関数の広がりが小さくなることを「波動関数の収縮」と言う。この意味でも、|ψ|
2
が電子の密度だとすることは具合が悪い。電子が1点に届いた瞬間に広がっていた電子が(超光速で!)収縮することになってしまう。
波動関数を計算しただけでは、「粒子がどこにいるか」はわからない。これが本質的にわからない(わかりようがない)のか、それとも本当はわかるのにただ 量子力学が不完全であるためにわからないのか、ということはしばしば論争の種になっている。「ほんとうは粒子がどこにいるのかは決定しているのだが、量子 力学では計算できない」という考え方は「隠れた変数の理論」と呼ばれる。その「隠れた変数」を知ればちゃんと粒子がどこにいるのかがわかるはずだ、という 考え方である。
たとえば波動関数は粒子を導く場(guiding field)であって、粒子はその中を|ψ|
2
に 比例する確率で動いていく、という考え方などがある。これは少なくとも「粒子が一点にいる」という点に関しては感覚的には納得しやすい考えなのだが、残念 なことに「隠れた変数」の存在は実験的には否定されており、「粒子がどこにいるのかは本質的に決定不可能」と考えるほかなさそうである。これについては詳 しい話は難しいので述べない
37
。
ここに波動関数の規格化についての話があったが、そこは来週に回す。
量子力学では、波動関数が与えられても、「粒子がどこにいるか」は判定できない。「このあた りにいる確率は80%」というような曖昧な予測しかできないことになる。そのような予測ができないのは「観測機器が悪いから」とか「誤差が入ってくるか ら」というような二次的な理由からではない。すでに何度か述べたように、物質波はいろんな波の重ね合わせでできている。つまりもともと波動関数は「いろん な状態の重ね合わせ」であり、何かを観測した時にその状態のうち特定のものが選ばれることになる。そして、どの状態が選ばれるのかを決める方法がないので ある。
このように量子力学で計算できるのが確率だけであることには昔から批判が多かった。アインシュタインの「神はサイコロを振らない」という言葉は有名である。しかし、いろんな実験からこのような解釈が妥当であることは確認されている
38
。 波動関数がどのように収縮するのか、そのメカニズムは何なのかということも古くから論争の種であって、いまだ決着がついているとは言えない状況である。と りあえずその難しい部分に踏み込むのはやめて、波動関数を確率と解釈する枠組みで考えて、シュレーディンガー方程式がどのような物理を記述することになる のか、それを考えていこう。
7.4
演習問題
(一部、まだ解けない問題も混じっている)
[演習問題7-1]
波動関数ψ(
→
x,t)がψ(
→
x,t)=φ(
→
x)e
−[i/((
h
/
2
p
)
)]Et
と書ける時、φ(
→
x)が満たすべき方程式を求めよ。この方程式は「定常状態のシュレーディンガー方程式」と呼ばれる。
[演習問題7-2]
波動関数ψ(
→
x,t)がψ(
→
x,t)=φ(
→
x)e
−[i/((
h
/
2
p
) )]Et
と書ける時は、ψ
*
ψが時間によらないことを示せ。また、エネルギーの原点をずらしてもψ
*
ψには影響がないことを確かめよ。
[演習問題7-3]
以下のような関数で表される波動関数を考える(考える範囲は [−π,π]としよう)。それぞれを規格化し、確率密度のグラフの概形を書け。
ψ(x)=sin(x)
ψ(x)=e
inx
(nは整数)
ψ(x)
=
x ( for x ≥ 0)
ψ(x)
=
−x ( for x < 0)
[演習問題7-4]
質量mを持つ自由粒子の波動関数がψ(x,t)=sinx f(t)で表されるとする。シュレーディンガー方程式を解いてf(t)を求めよ。
結果としてできあがるψ(x,t)は、右へ進行する波と左へ進行する波の重ね合わせであることを示せ。
[演習問題7-5]
質量mの物体が長さLの棒につながれ、原点に固定された棒のもう一方の端を中心に回転しているとする。この時のラグランジュアンはL=
1
/
2
mL
2
([dθ/dt])
2
、ハミルトニアンは[1/(2 mL
2
)](p
θ
)
2
である。波動関数をψ(θ)として、この系に対する定常状態のシュレーディンガー方程式を作って解き、エネルギーの値を求めよ。θ = 0とθ = 2πで波動関数の値が同じにならなくてはいけないことに注意せよ。
[演習問題7-6]
ある面(x=0)を境界として上(x > 0)ではポテンシャルがV(定数)、下(x < 0)ではポテンシャルが0になっているとする。つまり、上では
[
−
2
2m
∂
2
∂x
2
+V
]
ψ = i
∂
∂t
ψ
が、下では
−
2
2m
∂
2
∂x
2
ψ = i
∂
∂t
ψ
が成立する。解の形をψ = Ae
i(kx−ωt)
と仮定して方程式を解け。両方で振動数が等しい(エネルギーが保存する)場合を考えると、上から下へ入射した時、波長はどのように変化するか。
[演習問題7-7]
平面波解ψ = Ae
i(kx−ωt)
においては、ψ
*
ψが場所によらないことを示せ。なぜこのようになるのかを、不確定性関係から説明せよ。
[演習問題7-8]
3次元の自由粒子のシュレーディンガー方程式は
−
2
2m
(
∂
2
∂x
2
+
∂
2
∂y
2
+
∂
2
∂z
2
)
ψ = i
∂
∂t
ψ
である。この式の解をψ = Ae
i(k
x
x+k
y
y + k
z
z −ωt)
とした時、ωをk
x
,k
y
,k
z
で表せ。
[演習問題7-9]
1次元の自由粒子のシュレーディンガー方程式
−
2
2m
∂
2
∂x
2
ψ = i
∂
∂t
ψ
にガリレイ変換(x′=x−vt,t′=t)を施し、ψの満たすべき(x′,t′を変数とした)方程式を作れ。この式は、元々の座標系から見て速度vで運動しているような座標系での方程式である。
こうすると式の形が変わってしまうが、ここで波動関数を
ψ = e
i(kx+εt)
Ψ
とおき、k,εを適当に選べば、Ψの満たす方程式は元のシュレーディンガー方程式と全く同じ形になる。k,εを求めよ。
学生の感想・コメントから
確率解釈ってわけがわからな〜〜い
(という感想が当然ながら一番多い)
みんなが通る路です。
e
2πi([x/λ]−νt)
という式はどうやって導かれた式なんでしょうか?
まず位相が2π([x/λ]-νt)なのは、波長λや振動数νの意味を考えるとこうでなくてはいけないことがわかります。cosやsinでなく、複素数の波にする理由は後で述べます。
光に対するシュレーディンガー方程式に対応するものは何ですか?
そりゃもちろん、マックスウェル方程式です。
確率解釈について80年近くも謎になっているのはおもしろい。でもフェルマーの定理やケプラー問題は解かれるのに300百年上かかっているので、もしかすると解かれるかもしれませんね。
すっきりした答が出てくればうれしいんですが、なかなかこの問題は一筋縄では行きそうにありません。
壁にぶつかったら波動関数が収縮するのは、空間自体が波動関数の収縮を起こさせるような状態になっていると考えるのは間違いですか?
間違いじゃないかもしれませんが、わかりません。波動関数の収縮のややこしい点はいろいろありま すが、何より困るのはシュレーディンガー方程式のような微分方程式で記述できる連続的な現象ではなさそうだという点です。空間のせいだとしても、空間と波 動関数はどんな方程式にしたがっているのか、まるで検討もつきません。
わからないところもあるけど、アインシュタインもわからなかったそうなので、波動関数の収縮は、まぁそういうもんだと思いこみます。
おいおい。まぁ最初はそんな感じでもいいけど、いつかは深いところまで考えてください。
ψ
虚
は虚数なのなら、自乗したらマイナスにならないんですか?
ψ=ψ
実
+iψ
虚
と定義してます。つまりiを外した部分です。
光の粒がどこにいるかわかるようになったら、何かすごいことができるようになるんですか?
波動関数を収縮させる前にどこにいるかわかるとすると、波動関数を収縮は超光速で起こりますから、超光速通信ができますね(^_^;)。
運動量pが微分演算子に化けてしまうところが納得いかなかった。
まずはh/λに化けるところから納得していってみてください。確かになかなか納得いかないとは思いますが。
シュレーディンガーが波動方程式を導き出した過程を詳しく知りたいと思いました。
解析力学や統計力学の話がまざっていて難しいですが、読み物としては「量子論の発展史」(高林武彦・ちくま学芸文庫)などが詳しい。
波動関数は|ψ|
2
という形にしないとあまり意味がないということになるのですか?
もちろん物理的な意味は|ψ|
2
の方が強いことになりますが、ψに意味がないわけではありません。波の重ね合わせによって0になるのはψの方ですから。
古典力学的に解ける現象が量子力学的にも解けるということは、物質には波動性があるということを示しているのですか?
「物質には波動性があると考えても大丈夫」ということを示していますね。これが正しいかどうか は、量子力学的に考えないと解けないような現象をみつけないとわかりません。もし全ての現象が量子論的にも古典論的にも解けるんだとすると、量子力学は無 用の学問になってしまいます。
量子力学をやっている実感がわいてきた。
ちょっと前振りの部分が長すぎましたか??
他の解釈がどんなものか、気になる。
すいません。この授業ではそこまで話している余裕がありません。
Footnotes:
35
歴史的にはもちろん、もっと紆余曲折がある。特にこのテキストではハイゼンベルクの行列力学の流れについては完全に省略している。
36
たとえば浅い水の表面にできる波などは方程式が線形でなく、重ね合わせの原理が成立しない場合もある。
37
なお、厳密に言えば、隠れた変数にあたる物理量が超光速で伝播すると考えれば、実験的に矛盾しない理論を作ることもできるかもしれない。しかし、超光速で伝播するようなものを考えるのは非常に難しい。
38
量子力学の解釈は一つではなく、他にも多世界解釈とか、ボームによるパイロット波による理論などもあるが、確率解釈に比べるとマイナーである。
File translated from T
E
X by
T
T
Hgold
, version 3.63.
On 8 Jul 2005, 12:18.