規則正しく並んだニッケルの結晶表面に電
子の波がやってきて、原子一個一個によって散乱され
る。特定の角度に散乱された場合に限って、となりの原子での散乱波との行路差が波長の整数倍になって互いに強め合うことになる(原子がきれいに並んでなけ
れば、各原子ごとに強め合う条件が変わってしまうので、きれいな形で強弱が見えたりしない)。そのように波が強めあった場所にだけ電子が到達すると考える
と、特定の角度にだけ電子が散乱されることが説明づけられ、奇妙な凹凸も理解できる。
これと似た、X線が特定の方向に強く散乱されるという現象は、ラウエによって1912年に発
見されていた。この現象はX線が波動であるがゆえに起こることである。全く同じような現象を電子が起こすということは、電子も波動としてふるまっているこ
とになる。ダヴィッソンたちはいろんな運動量の電子をあててみて、運動量によって回折パターンが変化することを確かめ、その現象からド・ブロイの式p=[(h)/λ]
を実験的に確認した。こうなると、電子が波としてふるまうことも、誰にも否定できない事実となったのである。
電子波の波長は可視光に比べて短くできる。波長が短いほど、その波を使って作った顕微鏡の分解能は小さくなる。光学顕微鏡では発見できないウィルスを電
子顕微鏡でなら見ることができるのは、電子波の波長の短さのおかげである。
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(5.4) |
これは普通のエネルギー保存則にp=[(h)/λ]を代入したものである。すなわち、Vが大きいところでは
λが長くなり、V が小さいところではλが短くなる。つまり、ポテンシャル(位置エネルギー)の違いは波長を変化させるのである。
ある線を境に、上ではポテンシャルが大きく、下ではポテンシャルが小さくなっている時、何が
起こるだろうか。上では波長が長く、下では波長が短くなるから、ちょうど空気中から水中に光が入射した時と同じ現象である。この時、光は屈折するが、屈折
する理由は、上の部分の波(空気中の光)の波長が下の部分の波(水中の光)の波長より長いからである。図のABが1波長(Aが山の時Bも山)になっている
とすると、CDも1波長(Cが山の時Dも山)である。AB>CDであるために、上の部分では波面(山の連なり)がACと平行であったのに、下の部分では波
面がBD と平行になってしまう。
この屈折現象を粒子の古典力学で考えると、上より下の方がポテンシャルが低いため、下の方にひっぱりこまれる、という現象である。つまり、古典力学で
「落ちる」という現象が波動力学では「屈折する」という現象にとって変わっているのである。| |
h2
2mλ2 |
+ V=一定 |
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図で書くとこんな感じです。波には広がりがあるので、上の方の波ほど波長が長くなってます。で、やっぱり下
に落ちる。| エネルギー(eV) | 1 | 10 | 100 | 1000 |
| 運動量(kg・m/s) | ||||
| 波長(m) |
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図のように、ある物質波が円を描くように進行しているところを考えよう。内側(半径r)では波長がλに、外側(半径r+δr)
では波長がλ+δλになっているとする。このように物体が円運動する理由は、粒子として考えると、中心に向かう力があるために曲ったと考えらえるが、波動
として考えると、「中心に近いところほど波長が短いから曲る」と解釈できる。
粒子と考えた時、この粒子は半径r、速さvの円運動をしている。この場合の加速度は[(v2)/(r)]
で中心向きであり、働く力は[(dV)/(dr)]でやはり中心を向くので、運動方程式は
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(5.7) |
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h2
2mλ2 |
+ V=一定 |