これまでの研究概要
固体をミクロに見ると、アボガドロ数(10^23)程度の原子が、(ジャングルジムのような)
結晶を形作っていることが、20世紀の始めごろ解明されました。その後、さらに詳しく調べて
行くと、原子から解き放たれた多数の電子が、イオンが作る結晶構造による強い影響を
受けながら複雑な運動をしており、固体の多彩な性質(力学的、電気的、磁気的、
光学的性質)を決定付けていることが分かってきました。
私の主要な研究テーマは、現在の固体物理学の最前線の一つ、電子間のクーロン力が
極めて強い物質群「強相関電子系」の理論研究です。強く相互作用する電子集団、
それは一つ一つの電子の個性からは想像もつかない不可思議な集団現象を創出する魅力的な
研究対象です。私はこれまで、数学とコンピュータを用いて、こうした電子相関に起因する
新しい物性の解明に取り組み、いくつかの成果を挙げてきました。
主な仕事の要約を以下にまとめておきます。
-
多極子秩序の群論的分類
-
四極子相のNMRと磁場誘起八極子の理論
-
遷移金属系における軌道効果の解析
-
近藤格子の諸問題
-
充填スクッテルダイトの多極子物性
-
非従来型CDW状態での輸送現象の理論