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★2009年4月3日(金)16:20 - 17:20

場 所: 理学部313教室

講演者: 鹿野 豊 氏(東京工業大学大学院 物理学科D1)

講演題名:「Born Probabilistic Interpretation Revisited」

講演概要:

量子力学の授業を最初に習ったときに、ボルンの確率解釈に面を食らってしまう経験があるのではないだろうか?例えば、存在確率とはサイコロを振る確率と本当に同じだろうか?などという疑問が生まれてくる。しかし、その後のボルンの確率解釈を使って説明される量子力学の諸現象は、"ほとんど"実験結果をうまく説明してきた。なので、この問題に関して、あまり深く考えることは今まで無価値なように思われてきたように思われる。そこで本講演では、まず、科学基礎論的な観点から今、確率解釈に対して操作論的観点から再考してみる必要性に関して議論し、その後、確率解釈をする上で数学の確率論との整合性がつかないことを説明する。また、確率解釈は量子測定理論の根幹を成しているので、量子測定理論に関してレビューを行い、操作論的視点がどこから生じるかを議論する。その後、Aharonovらによって、量子測定理論の枠組みから提唱されたWeak Valueと いう概念を使うことで、数学の確率論と整合する理論体系を作りあげることができるということを報告する。

★2009年6月26日(金)16:20

場 所: 理学部313教室

講演者: 佐藤 憲昭 先生(名古屋大学大学院理学研究科)

講演題名:「ウラン系磁性超伝導体における磁性と超伝導の相関」

講演概要:

近年、${\rm UGe}_2$や${\rm UCoGe}$において見られる強磁性と超伝導の共存・競合は、マイスナー効果と強磁性を如何に両立させるかなど、基本的な問題を内在し、多くの研究者の興味を引き付けている。講演では、これら磁性超伝導体研究の現状を紹介する。

★2009年7月16日(木)15:00-16:00

場 所: 理学部313教室

講演者: Luca Baiotti 氏(京都大学基礎物理学研究所)

講演題名:「Dynamics of binary neutron stars in full general relativity」

講演概要:

After an introduction about the importance of binary neutron stars in astrophysics and relativity and after outlining the basics of numerical relativity, an indispensable tool to study such systems, I will present our numerical results on the dynamics and waveforms from the inspiral, merger and subsequent collapse of the merged object. The relevance of magnetic fields in this scenario will also be sketched.

★2009年8月11日(火) 16:20 - 17:20

講演者: 熊本大学理学部教授   吉朝 郎

講演題名:「地球下部マントルの電気伝導機構と温度構造」

場 所: 理学部313教室

講演概要:

地球下部マントルの高い電気伝導度・断熱性やダイナミックな活動を説明するために多くの研究が行われている。ペロブスカイト型や岩塩型化合物では高温域で急激な伝導度の上昇が知られ、相転移などと関連付けた議論がなされている。高温高圧下での結晶合成、その場観察実験、局所構造分析、結晶構造解析、高圧下での物性測定等、最新の成果を基にアナログ物質を含めた共通の超イオン伝導特性や物理的性質を比較議論し、高い電気伝導度を有する下部マントルの伝導機構と温度構造の解釈、地球のダイナミックな活動を考える。

★2009年11月13日(金)16:20 - 17:20

場 所: 理学部313教室

講演者: 大野 隆 教授(徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究科先進物質材料部門量子物質科学)

講演題名: 高温超伝導におけるアイソトープ実験

要旨:

 Hgの超伝導現象が1911年にKamerlingh Onnesにより発見されたが、その発現機構の解明のためには46年もの歳月が必要であった。1951年にアイソトープ効果が観測され、格子振動が重要な役割を担っていることが示され、ようやく1957年に所謂BCS理論により、電子―格子相互作用によりクーパー対ができていることが明らかにされた。

 異常に高い転移温度を持つ高温超伝導体の発現機構は何か、ということについて非常に多くの研究がなされてきた。クーパー対の対称性はd波であり、反強磁性スピン相関が高温超伝導の発現機構である、と大部分の研究者に信じられている。しかし、非常に小さいながらアイソトープ効果が観測され、電子−格子相互作用が重要ではないか、という考えがあり、小さいながら存在するアイソトープ効果を如何に理解するかが残された重要な問題であった。

 YBa2Cu4O8において、アイソトープ置換した2つの試料を用いて63Cuの核四重極共鳴を測定した結果、NQR振動数が変化することが解ったと共に、スピン−格子緩和率1/T1の詳しい温度変化を測定した結果、16Oを18Oにアイソトープ置換することにより電子状態が変化し、反強磁性スピン揺らぎが変化する結果として、スピンギャップ温度が低下し、超伝導転移温度が低下していることが明らかになった。すなわち、高温超伝導体におけるアイソトープ効果は、電子−格子相互作用の重要性を示すのではなく、実は高温超伝導体の発現機構は反強磁性スピン揺らぎであること、を裏付ける実験事実であることが明らかになった。

★2009年12月8日(火)16:20 - 17:20

場 所: 理学部313教室

講演者: Prof. Andrei Marshakov (Lebedev Institute and Moscow, ITEP)

講演題名: First-order string theory and the Kodaira-Spencer equations

要旨:

The first-order bosonic string theory, being just the common beta-gamma system, possibly perturbed by finite number of the primary operators is considered. The consistency of the effective action in this theory with the world-sheet conformal invariance requires, in particular, the Kodaira-Spencer equations to be satisfied by target-space Beltrami differentials. The same conclusion follows from studying directly of the correlation functions in the beta-gamma 2d conformal field theory. I will also discuss the symmetries of the theory, in particular within the BRST approach.

★2010年3月18日(木)16:00 -

場 所: 理学部313教室

講演者: 関口 雄一郎 氏(国立天文台理論研究部研究員)

講演題名:「大質量星の重力崩壊の数値相対論シミュレーション」

講演概要:

太陽質量の約10倍を越える質量を持つ大質量星は、その進化の最後に主に鉄族元素から構成されるコアを中心領域に形成する。鉄は最も安定な元素であるため、核反応によってエネルギーを生成することができない。したがって大質量星の鉄コアは、自身の自己重力を内部エネルギー生成によって支えることができず、ついには重力崩壊し、ブラックホールまたは中性子星が形成される。

 重力崩壊現象は、非常に動的で複雑な物理過程を含むため、その解明には解析的手法を越えて、数値的手法を採用する必要がある。すなわち、数値シミュレーションによって大質量星の重力崩壊をスーパーコンピュータの中に再現し、現象に理論的に迫るのである。

  ブラックホールはどのようにして誕生したのか?

  大質量星がその最期に起こす超新星爆発とは何か?

こういった問いに答えるために、自然界に知られる4つの力(強い相互作用・弱い相互作用・電磁気力・重力)をすべて考慮に入れたシミュレーションが現在盛んに行われている。

 ところで、これらの天体(ブラックホール・中性子星)は非常に強い重力場を持つため、その記述には一般相対性理論が必要となる。特にブラックホール形成においては一般相対性理論が本質的な役割を果たすと考えられる。従って、上記シミュレーションは、ニュートン重力理論の枠組みを越えて、一般相対性理論の枠組みで遂行しなければならない。しかしながら、一般相対性理論の枠組みでは、「時間」と「空間」の区別が曖昧なために、シミュレーションに おける「時間発展」の概念をもう一度考え直す必要がある。一般相対性理論の枠組みで数値シミュレーションを行うこの学問分野は「数値相対論」と呼ばれ、近年研究が爆発的に進んできた。

 本発表では、ニュートン理論の枠組みと数値相対論の枠組みでのシミュレーションの本質的な違いについて簡単にまとめた後、大質量星の重力崩壊の物理に関するレビューを行い、最近の最先端のシミュレーションについて紹介する予定である。


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Last-modified: 2016-11-19 (土) 13:06:24 (2714d)